【またも五学会反対声明】8月23日に行われる「先進医療」で「修復腎移植」が審議される蓋然性がきわめて高くなった。今夜の「読売」は下記のニュースを伝えた。
病気腎移植「適切な医療ではない」…5学会声明
<がんで摘出した腎臓から病巣を除き別の腎臓病患者に移植する「病気腎移植」について、日本泌尿器科学会や日本移植学会など関連する5学会は16日、「先進医療に認めるべきではない」とする声明を発表した。
学会側は、〈1〉日本泌尿器科学会の指針が守られずに腎臓が摘出される恐れが高い〈2〉患者の精神状態を考えると、医師の十分な説明や患者の理解が難しい――などを理由に、「適切な医療とは言えない」としている。
病気腎移植については、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)が昨年10月、費用の一部に健康保険が適用される先進医療を国に申請したが、書類不備で差し戻され、今年6月に再申請した。
(2012年8月16日20時51分 読売新聞)>
1,2)ともに「先進医療」として、臨床試験を行うことを否定する論理としてはきわめて薄弱だ。なぜなら、この2点とも通常の移植医療、特に「献腎移植」の場合に起こりえることだからである。交通事故が起こりえるからと、自動車を禁止するバカがどこにいるだろうか? 要はトータルとしての利益と危険性の問題である。100%安全な手術などどこにもない。
すでに関連五学会は、去る2月に厚労大臣宛に「修復腎移植の先進医療に反対する学会共同要望書」を提出し、3月には日本泌尿器科学会は厚労省健康局疾病対策課臓器移植対策室からの「小径腎癌の治療実態調査」に対する依頼を拒否している。このため同対策室と総務課がん対策推進室は両室長の連名で、全国のがん拠点病院長宛に、「集計結果を病院名を伏せた形で公表する」と明記して3月16日付で、独自のアンケート調査を依頼した。
同時に4月冒頭、厚労省は徳洲会に対して2010/10に提出されていた「修復腎移植の先進医療認可申請書」の不備を指摘し、「返戻」扱いとして再提出を指導した。これを「却下」と誤解した日本移植学会は、6/26衆議院議員会館で超党派議連を対象とした「勉強会」を開催し、心臓外科の福嶌委員(阪大)が医者主体の議員に、修復腎移植について「ブエノスアイレスでの受賞はない」などと大デタラメを並べ、およそ学者のすることとも思えない、「病腎移植実施施設の保険診療取消処分の時効が近づいている」として、政治的処分を求めるという動きがあった。議員諸公の猛反発をくらい、剣持委員長が平謝りに謝って、すごすごと退散した。
8/8の各紙は市立宇和島病院に対して1億2,000万円の診療報酬返還と「戒告」処分を通知し、減額された3,000万円が「病腎移植」関係費に相当することが明らかとなったと報じた。移植学会幹部が山本議員を通じて、国会質問までさせ、「修復腎移植」潰しに必死になっていたことは、速記録などから明らかとなっている。厚労省はもはや移植医療に関して、日本移植学会に信をおいていないのである。
8月16日の「五学会共同声明」は、8/23の審議会を目前にしての、移植学会の最後の悪あがきである。この間の厚労省関係諸課の動きには、従来になかった新しいパターンが認められる。
1)小径腎癌の治療実態調査を、泌尿器科学会より拒否されたのを受け、独自調査を開始したこと。(4/16終了) これとは別に、厚労省はかつて移植対策室にいた医系技官をロンドンに留学させ、独自に海外の腎移植事情の調査を開始している。高原が300万円もらって書いた「海外に病腎移植なし」という報告書を信用していないのだ。
2)徳洲会に対して申請書の不備を指摘し、再提出を指導したこと。(6/20再提出)
3)先進医療の審議をする専門家のうち、「泌尿器科/腎移植」を担当する専門家の任期切れを待って、五学会に距離をおく別の専門家と差し替えたこと。(7月末)
4)8/23開催の「第67回先進医療専門家会議」の取材、傍聴をオープンにしたこと。(添付1)
【訂正】厚労省の「先進医療専門家会議」は従来からオープンにやっているそうです。
訂正しお詫びいたします。なお傍聴は当日、先着順だそうで、予約ではないそうです。
傍聴希望者は早めに並ぶ必要があります。
5)市立宇和島病院の処分を「戒告」にとどめ、「実質お咎めなし」にし、しかも病腎移植関係費は不正請求額に含めなかったこと。
この5つのパターンを見れば、事態が日本移植学会にとって「想定外」の方向へ動きはじめたことは明瞭である。ここでより説得的な資料を掲げる。小川由英名誉教授がベルリンの国際移植学会で発表した「修復腎移植」についての演題抄録である。(添付2) 合計9例となっているのは、2011/9/14実施症例までが報告されているからで、2012/8/10実施分で「他人間修復腎移植」は11例に達している。「待機リスト」の患者数(志願制)の実数は知らないが、80人程度と聞いている。途中「腎臓売買事件」が起こり、東京の内科医が暴力団を介してドナーから腎臓を買っていたことが発覚し、臨床試験が一次中断されたが、これがなければ年率10%の待機リスト短縮が可能だったろう。
日本の腎移植待ち年数の長さは先進国でも最悪で、日本透析学会の英文HPにある「16年待ち」が、英国専門誌の総説論文に引用されているほどだ。なのにどうして「五学会」は修復腎移植にかくも強硬に反対するのであろうか? 移植学会理事長の高原は製薬会社(免疫抑制剤を売っている)の寄付講座の教授であり、任期が5年であることはよく知られている。移植学会に影響力がなくなれば、製薬会社も利用価値がなくなることを知っている。他方で、奈良医大の吉田克法のように泌尿器科医とはいうものの、実態は「透析部」の部長というのもある。移植医と透析医が同一人物であるケースは多い。内科系の透析医もいる。
そうすると年間1兆5,000億円の医療費(国費)を使う透析医療は、ひとつの大いなる利権を構成していることは疑いないだろう。仮に年率10%の割で修復腎移植が進行し、待機リストにある透析患者が減ると、医療機関を含めた「透析業界」にとって大打撃となるのは、火を見るよりも明らかである。欧米並みに「2~3年」で腎移植が受けられるようになると、「患者の極楽、業者の地獄」なのである。この辺の真相はまだ闇に隠れていると思う。何よりも日本透析学会は、「移植希望登録患者」が待機期間中に死亡する率を公表していない。
もうひとつ、田中紘一(元移植学会理事長)、大島伸一(元移植学会副理事長)、高原史(移植学会理事長)、寺岡慧(前移植学会理事長)、相川厚(元厚労省調査委員会委員長)の5名は、患者団体から「修復腎移植禁止」により憲法に定める幸福追求権を妨げられたとして、損害賠償を求める訴訟を起こされている。公判は原告患者側に有利に展開しているが、裁判長にいまいち覇気が乏しく、来年の定年待ちで次に引き継ぐ気らしい、という噂もある。
しかし、もし来る8月23日の「専門家会議」で、修復腎移植が先進医療として認可されれば、いかに凡庸な裁判官でも、原告と被告のどっちの言い分が正しいか判断できるだろう。いや、判断しないと無能呼ばわりされることに気づくだろう。自己保身のため先送りする者は、自己保身のため果断にもなる。
戦場のことを英語ではStageという。舞台のことである。シェークスピアの言葉に「人生は舞台だ!」というのがある。修復腎移植のための戦いは当初、日本国内では戦えなかった。移植学会や泌尿器科学会が学会発表を禁じたからだ。言論の自由を圧殺したからだ。大手メディアも同様だ。発言の機会を与えなかった。「毎日」に拒否された2006年11月の論評を掲げる。(添付3)
そこで支持派はドイツ・エッセン、ローマ、オーストラリア・シドニー、フロリダ、シカゴ、ブエノスアイレス、ベルリンと主戦場を海外に求めざるをえなかった。その過程で多くの支持者を見いだし、「世界の常識、日本の非常識」だと知った。当初から私が主張した「データの公表」が実現し、予後追跡により「レシピエントに癌は発生しない」ことが証明されたことは、たいへん嬉しい。いよいよStageは東京に移った。
まだ余談は許さないが、「真昼の決闘」が近づきつつある。ディミトリ・ティオムキン作曲の主題曲「High Noon」の静かなメロディーが聞こえる。
病気腎移植「適切な医療ではない」…5学会声明
<がんで摘出した腎臓から病巣を除き別の腎臓病患者に移植する「病気腎移植」について、日本泌尿器科学会や日本移植学会など関連する5学会は16日、「先進医療に認めるべきではない」とする声明を発表した。
学会側は、〈1〉日本泌尿器科学会の指針が守られずに腎臓が摘出される恐れが高い〈2〉患者の精神状態を考えると、医師の十分な説明や患者の理解が難しい――などを理由に、「適切な医療とは言えない」としている。
病気腎移植については、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)が昨年10月、費用の一部に健康保険が適用される先進医療を国に申請したが、書類不備で差し戻され、今年6月に再申請した。
(2012年8月16日20時51分 読売新聞)>
1,2)ともに「先進医療」として、臨床試験を行うことを否定する論理としてはきわめて薄弱だ。なぜなら、この2点とも通常の移植医療、特に「献腎移植」の場合に起こりえることだからである。交通事故が起こりえるからと、自動車を禁止するバカがどこにいるだろうか? 要はトータルとしての利益と危険性の問題である。100%安全な手術などどこにもない。
すでに関連五学会は、去る2月に厚労大臣宛に「修復腎移植の先進医療に反対する学会共同要望書」を提出し、3月には日本泌尿器科学会は厚労省健康局疾病対策課臓器移植対策室からの「小径腎癌の治療実態調査」に対する依頼を拒否している。このため同対策室と総務課がん対策推進室は両室長の連名で、全国のがん拠点病院長宛に、「集計結果を病院名を伏せた形で公表する」と明記して3月16日付で、独自のアンケート調査を依頼した。
同時に4月冒頭、厚労省は徳洲会に対して2010/10に提出されていた「修復腎移植の先進医療認可申請書」の不備を指摘し、「返戻」扱いとして再提出を指導した。これを「却下」と誤解した日本移植学会は、6/26衆議院議員会館で超党派議連を対象とした「勉強会」を開催し、心臓外科の福嶌委員(阪大)が医者主体の議員に、修復腎移植について「ブエノスアイレスでの受賞はない」などと大デタラメを並べ、およそ学者のすることとも思えない、「病腎移植実施施設の保険診療取消処分の時効が近づいている」として、政治的処分を求めるという動きがあった。議員諸公の猛反発をくらい、剣持委員長が平謝りに謝って、すごすごと退散した。
8/8の各紙は市立宇和島病院に対して1億2,000万円の診療報酬返還と「戒告」処分を通知し、減額された3,000万円が「病腎移植」関係費に相当することが明らかとなったと報じた。移植学会幹部が山本議員を通じて、国会質問までさせ、「修復腎移植」潰しに必死になっていたことは、速記録などから明らかとなっている。厚労省はもはや移植医療に関して、日本移植学会に信をおいていないのである。
8月16日の「五学会共同声明」は、8/23の審議会を目前にしての、移植学会の最後の悪あがきである。この間の厚労省関係諸課の動きには、従来になかった新しいパターンが認められる。
1)小径腎癌の治療実態調査を、泌尿器科学会より拒否されたのを受け、独自調査を開始したこと。(4/16終了) これとは別に、厚労省はかつて移植対策室にいた医系技官をロンドンに留学させ、独自に海外の腎移植事情の調査を開始している。高原が300万円もらって書いた「海外に病腎移植なし」という報告書を信用していないのだ。
2)徳洲会に対して申請書の不備を指摘し、再提出を指導したこと。(6/20再提出)
3)先進医療の審議をする専門家のうち、「泌尿器科/腎移植」を担当する専門家の任期切れを待って、五学会に距離をおく別の専門家と差し替えたこと。(7月末)
4)8/23開催の「第67回先進医療専門家会議」の取材、傍聴をオープンにしたこと。(添付1)
【訂正】厚労省の「先進医療専門家会議」は従来からオープンにやっているそうです。
訂正しお詫びいたします。なお傍聴は当日、先着順だそうで、予約ではないそうです。
傍聴希望者は早めに並ぶ必要があります。
5)市立宇和島病院の処分を「戒告」にとどめ、「実質お咎めなし」にし、しかも病腎移植関係費は不正請求額に含めなかったこと。
この5つのパターンを見れば、事態が日本移植学会にとって「想定外」の方向へ動きはじめたことは明瞭である。ここでより説得的な資料を掲げる。小川由英名誉教授がベルリンの国際移植学会で発表した「修復腎移植」についての演題抄録である。(添付2) 合計9例となっているのは、2011/9/14実施症例までが報告されているからで、2012/8/10実施分で「他人間修復腎移植」は11例に達している。「待機リスト」の患者数(志願制)の実数は知らないが、80人程度と聞いている。途中「腎臓売買事件」が起こり、東京の内科医が暴力団を介してドナーから腎臓を買っていたことが発覚し、臨床試験が一次中断されたが、これがなければ年率10%の待機リスト短縮が可能だったろう。
日本の腎移植待ち年数の長さは先進国でも最悪で、日本透析学会の英文HPにある「16年待ち」が、英国専門誌の総説論文に引用されているほどだ。なのにどうして「五学会」は修復腎移植にかくも強硬に反対するのであろうか? 移植学会理事長の高原は製薬会社(免疫抑制剤を売っている)の寄付講座の教授であり、任期が5年であることはよく知られている。移植学会に影響力がなくなれば、製薬会社も利用価値がなくなることを知っている。他方で、奈良医大の吉田克法のように泌尿器科医とはいうものの、実態は「透析部」の部長というのもある。移植医と透析医が同一人物であるケースは多い。内科系の透析医もいる。
そうすると年間1兆5,000億円の医療費(国費)を使う透析医療は、ひとつの大いなる利権を構成していることは疑いないだろう。仮に年率10%の割で修復腎移植が進行し、待機リストにある透析患者が減ると、医療機関を含めた「透析業界」にとって大打撃となるのは、火を見るよりも明らかである。欧米並みに「2~3年」で腎移植が受けられるようになると、「患者の極楽、業者の地獄」なのである。この辺の真相はまだ闇に隠れていると思う。何よりも日本透析学会は、「移植希望登録患者」が待機期間中に死亡する率を公表していない。
もうひとつ、田中紘一(元移植学会理事長)、大島伸一(元移植学会副理事長)、高原史(移植学会理事長)、寺岡慧(前移植学会理事長)、相川厚(元厚労省調査委員会委員長)の5名は、患者団体から「修復腎移植禁止」により憲法に定める幸福追求権を妨げられたとして、損害賠償を求める訴訟を起こされている。公判は原告患者側に有利に展開しているが、裁判長にいまいち覇気が乏しく、来年の定年待ちで次に引き継ぐ気らしい、という噂もある。
しかし、もし来る8月23日の「専門家会議」で、修復腎移植が先進医療として認可されれば、いかに凡庸な裁判官でも、原告と被告のどっちの言い分が正しいか判断できるだろう。いや、判断しないと無能呼ばわりされることに気づくだろう。自己保身のため先送りする者は、自己保身のため果断にもなる。
戦場のことを英語ではStageという。舞台のことである。シェークスピアの言葉に「人生は舞台だ!」というのがある。修復腎移植のための戦いは当初、日本国内では戦えなかった。移植学会や泌尿器科学会が学会発表を禁じたからだ。言論の自由を圧殺したからだ。大手メディアも同様だ。発言の機会を与えなかった。「毎日」に拒否された2006年11月の論評を掲げる。(添付3)
そこで支持派はドイツ・エッセン、ローマ、オーストラリア・シドニー、フロリダ、シカゴ、ブエノスアイレス、ベルリンと主戦場を海外に求めざるをえなかった。その過程で多くの支持者を見いだし、「世界の常識、日本の非常識」だと知った。当初から私が主張した「データの公表」が実現し、予後追跡により「レシピエントに癌は発生しない」ことが証明されたことは、たいへん嬉しい。いよいよStageは東京に移った。
まだ余談は許さないが、「真昼の決闘」が近づきつつある。ディミトリ・ティオムキン作曲の主題曲「High Noon」の静かなメロディーが聞こえる。
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