ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【献本お礼など】難波先生より

2017-04-07 23:02:04 | 難波紘二先生
【献本お礼など】
① 4/4(火)「日経」の一面を開いて驚いた書籍・雑誌広告欄に、いつもご恵送頂いている雑誌「医薬経済」の広告が載っているではないか!
 間もなく宅配便で本物の雑誌が送られて来た。タイミングの良さに感心した。私はこの雑誌では、鳥集徹の「口に苦い話」と鍛冶孝雄の「読む医療:医師が書いた本の斜め読み」が面白いから必ず読む。ご恵送に感謝します。
 鳥集さんは今号では、京都府立医大病院とノバルティス・ファーマ社の降圧剤「ディオバン」の臨床試験データ不正問題と、これにからんで、患者の個人情報が製薬会社に流出した問題を取り上げている。
 付記:〔4/5(水)、西高屋SCの大型書店に行ったら、「週刊文春・春の特大号」4月6日号が、東京ではもう4/13号が発売だというのに、売れ残っていた。目次を見ると小さい活字で「新<医療の常識を疑え>」という15ページにわたる特集があり、上記の鳥集徹さんが執筆していた。今年1/1号の「医療の常識を疑え」という同氏による特集が大好評だったので、再度、今度は別の個別テーマで取り上げたのだそうだ。ためらわずに買った。
 いつの間にか私も鳥集さんの「追っかけファン」になった。ぜひこれらの記事をまとめた新書として出して欲しいものだ。私のメルマガで取り上げたい。〕

 「医薬経済」には、別にトップ記事として「無罪判決で終わったディオバン裁判:問えなかった医師の<不正な行為>」という見開き2ページ記事が載っている。事件は吉川勇一学長の辞任につながったもので、後は府立医大の「自然治癒力」に期待するしかない。
 もし自然治癒力がなければ、必ず事件は再発する。
 「広島大学医学部の人工心臓データ不正事件」では外科の教授が辞職し、その後おもて社会から完全に消えた。事件については、W.ブロード, N.ウェイド(牧野賢治・訳)「背信の科学者たち:論文捏造, データ改ざんはなぜ繰り返されるのか」(講談社, 2014/6)で、訳者の牧野が「日本の事例」を長い「あと書き」で取り上げており、その中に概要が述べられている。(但し当時、同時進行していた「理研・STAP細胞事件」は取り上げられていない。)

 鍛冶さんは「いじめ」を問題にした、斎藤環「承認をめぐる病」(ちくま文庫)を取り上げていた。精神科医、筑波大学教授による本だ。執筆者紹介がないので、「鍛冶先生は何歳だろう?」と思っていたが、今号では「小中高を過ごしたのは昭和の時代」とあるから、筆者(昭和16年生まれ)と同年代かと思う。「いじめを受けた記憶がない」と書かれている。私は親が芸備線沿線の駅前に住む母の伯母を頼って戦争中に広島市から疎開した。広島の家は原爆で丸焼けになったので、戦後は江の川の支流にあった先祖の地にUターンし、ひなびた農村で農業を手伝いながら小中時代を過ごした。そこではいじめを受けた記憶がある。

 広島市内の名門高校に進学しても、やはりいじめはあった。いろいろ考えて、「よし、いじめっ子の群に身を投じて、彼らを操ろう」と覚悟を決めた。こういう「適応」ができなかった外からの同期入学生は、卒業後はクラス会に来ない者が多い。
 で、遊び方や必要な軍資金の稼ぎ方まで、私がいろいろアイデアを出すもので、いじめはピタリとやんだ。中でもピクニックや修学旅行でスナップ撮影をし、友人宅にある暗室を利用して、フィルムを現像し、引き伸ばし機を用いて、印画紙に焼き付けたものを模造紙に貼りつけ、教室の後壁に貼り、希望者に鉛筆で名前を書いてもらい、後日、希望枚数だけ「焼き増し」して売るという方法で、相当のお金を稼いだ。これが仲間と遊ぶ資金になった。
 当時は35ミリ小型カメラを持ち、モノクロ・フィルムの現像から焼き付けまでできる技術を持った高校生は他にいなかったと思う。私はピンホール・カメラとか固定焦点カメラとか、中学生の頃から、カメラに興味を持ち、現像法や引き伸ばし法は父の暗室で教わった。

 いじめの問題は心理学や精神医学だけでなく、中根千枝「タテ社会の人間関係:単一社会の理論」(講談社現代新書)が論じている「ウチの者」「ヨソの者」という日本社会に特殊な人間関係を考察しないと解けないだろう。講談社の新聞広告に累計「117万部突破!」とある。
 まあ、アンデルセンの「醜いアヒルの子」は「ヨソ者だから」いじめられたので、こういう現象は中根のいう「日本特有の現象」ではない。人種的偏見に基づくいじめや、アメリカの小学生時代に息子が受けたいじめを見ると、程度の差はあれ世界的に存在すると言えるだろう。

 「医薬経済」の記事は、読み始めた頃は「薬局がらみ」の記事が多くて、なかなか読めなかったが、今は病院の医局において置きたいほど、医療・医学の記事が充実して来た。
 例えば今号では、フランスで行われた「免疫チェックポイント阻害剤」(がん治療薬)の臨床試験結果が、「仏HAS、腎細胞がんでのオプジーボ評価結果」(筆者:五十嵐中、東大大学院薬学研究科、肩書は不明)というタイトルで掲載されている。面白いのはフランスでの新薬評価は「効いた、効かない」ではなく、「対費用効果」が基準になっており、社会保険への過剰な負担を避ける仕組みがあることだ。
 だが、この記事は読みにくい。ローマ字の略号が多用され(多くはフランス語のそれ)、スペルアウトされていないし、「間違いだらけのHTA、21」という連載タイトルも肝心のHASが何の意味か分からない。見開き記事の文字制限をするか、日経のように活字ポイントを落として5段組にするか、さもなければ、「横組み」にするような編集上の工夫が必要だろう。

②友人の渡邊昌君(元国立栄養健康研究所理事長、雑誌「医と食」編集長)から雑誌「医と食」が送られて来た。こういう雑誌の編集発行は大変だろうと思う。

 「◯◯の整理学」シリーズで有名な随筆家の外山滋比古(近著に「乱読のセレンディピティ」)が大学の恩師(福原麟太郎)に言われて雑誌「英語青年」の編集長を12年間勤めた話が書いてある(同書p.134-40)。当初発行部数1万部、返品率20%だったが、号を追う毎に返品率が高くなっていく。いろいろ考えて、工夫を重ね部数を増やしても完売できるところまで持って行った。その工夫が書いてある。
 数値としては、「1万2000部発行、ほぼ完売」としか書いてない。
 私も高校時代、文芸部や新聞部にいたから記憶があるが、当時の「活版印刷」は金属活字の組み版であり、刷り終えたら組み版を解体し、文選工が活字を元の活字箱に戻した。だから、雑誌や新聞の増刷はできなかった。店頭販売分は「完売」をねらうしかなかった。

 4月号に「集合知の会」のメンバーである山口昌美さん(食品化学者)と堤寛さん(慶応大医学部卒。病理学者・感染症専門, 去る3月に藤田保健衛生大学・医学部病理教授を定年で退任)から、それぞれ論文とエッセイが載ると聞いていたので、家内がレストランに置く前に、こっそりと母屋のダイニングで読んだ。
 アメリカの一流レストランには、必ずといってよいほど、待合室に雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」ともうひとつ何かの高級誌が必ず置かれている。政治と宗教の雑誌はない。サンサーラもそれをまねて「食」に関する日本語の雑誌や本がいろいろ置いてある。まるで小さな図書館だ。

 2000年11月の「旧石器遺跡ねつ造発覚」事件のあと、私が旧石器に付着していたとされる「ナウマン象」の脂肪酸について、発掘報告書を読み、出土状況・測定法・脂肪酸組成に疑問を抱き、いろいろ文献を調べた。その結果、石器に付着していた脂肪酸は、その成分組成上、ナウマン象ではありえず、人の手の脂の可能性が高いと2005年春に駒澤大学で開かれた「日本考古学協会」の総会で発表した、会場から拍手が湧き、「これで勝負あったな」と思った。

 旧石器に付着していた脂肪酸の分析を担当した、問題の帯広畜産大教授はこれに懲りず、今度は「縄文クッキー」の宣伝を始めた。「朝日」がころりと騙されて全国版に記事を書いた。やはり脂肪酸分析の手法を用いていた。このインチキを指摘したのが、食品化学者の山口さんだ。その論文は食品化学関係の日本語雑誌に掲載されたので、私は読んでいない。まだお会いしたこともない。ネットとメールでのお付き合いだ。

 学会での発表後、共同通信の記者が、東京か大阪から教授室に訪ねて来た。「ともかく帯広に本人を取材に行くべきだ。私が脂肪酸分析インチキ論を考古学学会の総会で発表すると知りながら、会場に出てこないというのは理解に苦しむ」とアドバイスした。
 後日、記者から電話があって、ドイツ留学中に動物の脂肪酸分析で、動物種による違いがあることの研究をしたこと、同じ大学に考古学学者で、東北大から留学した岡村道雄がいて友人になったこと、京大卒でラグビー部かなにかにいて体育会系であること、人柄は愉快だが、誇張やほら吹きの傾向があること、などを教えてくれた。「案の定…」と思った。
 この取材により「共同」は、「朝日」と異なり、「縄文クッキー」についての記事は流さなかった。メディアにとって大切なことは「何を書くか」だけでなく、「何を書かないか」である。

 雑誌「正論」5月号が、「朝日新聞解体新書 特別版:戦前のアサヒグラフはヒトラー・ユーゲントを礼賛した」という佐瀬昌盛(防衛大学校・名誉教授)の論文を載せている。
 当時グラフ雑誌は朝日しかなかったので、朝日だけを責めるのは酷だと思うが、「時流に便乗しよう」という空気が「朝日」には、連綿としてあることは事実だ。
 戦後「毎日グラフ」が創刊され、戦前や戦争中の写真が多く取り上げられた。同社の「一億人の昭和史(全15冊)」はこれをベースに、戦争中には検閲により使用できなかった写真を多用している。「慰安婦問題誤報」の先鞭をつけた千田夏光は当時まだ毎日にいて、「一億人の昭和史」に執筆している。「千人斬り事件」は書いてない。

 「朝日」によるサンゴ礁損壊の自作自演記事、教科書検閲問題の誤報、慰安婦記事誤報、福島第一原発事故誤報。これらはみな同根で、「朝日」の体質は変わっていないと思う。
 しかし、新聞販売店主の話によると「朝日」には固定読者がいて、「何が起ころうと新聞は朝日」と決めている人が多いという。まあ、一種の「生活習慣病」だな。

 今回、山口論文の末尾にある英文抄録を読んで「メイラード反応」の英語スペルが「Mailard Reaction」だと知った。私の脳は、外国人名の場合、欧文スペルでないと永続記憶できない。
 高血糖(高グルコース血症)(特に食後のグルコース・スパイク)が、グルコースとタンパク質の非特異的な結合を促進し、糖尿病、がん、アルツハイマー病・骨の脆弱化(骨そしょう症)を促進するというもので、私も病理学的理論と矛盾しないと考えている。
 「医と食」の同じ号に、江部康二、門脇孝、渡邊昌の鼎談(三人での談話会)記録が載っている。(写真)

 私のスキャン技術が下手で、顔がつぶれてしまい、申し訳ありません。
 左から京都高雄病院の江部康二先生、次が日本糖尿病学会理事長・門脇孝先生(東大・代謝内科教授、右端が渡邊昌さんだ。
 ここでは「メイラード反応」の代わりに、江部先生が「糖毒」という言葉を用いておられる。糖(グルコース)には毒性があるということだ。つまりグルコースとタンパク質の非特異的な結合反応については、日本の糖尿病専門医の間でも、まだほとんど知られていないと分かった。山口さん、まだ出番がありそうですよ。

 今の「糖尿病・血液検査」では、グルコースが赤血球内に取り込まれ、ヘモグロビンと結合してできるHbA1c(ヘモグロビン・エーワン・シー)と食後1時間、空腹時の血糖値しか測定していない。これでは食後すぐに起きるグルコース・スパイク(糖分と炭水化物による)の正確な値はわからない。これは血糖値で、180〜200mg/dLが短時間に出る。だから食後に眠くなるのだ。昔、母から「食後に眠ると牛になる」としょっちゅうさとされたが、意味がわからなかった。

 激しい肉体労働をする昔の農村では、食事は一日5食だった。朝ご飯、午前10時頃の「小昼」、昼食、午後3時頃の「おやつ」、風呂に入った後の夕食だ。小昼(こびる)とおやつは、しばしば田のあぜに座り、お茶とおにぎり1個を食ったものだ。いま思うと、「牛になる」という戒めは江部先生の糖毒、山口さんのメイラード反応を避ける、「生活の知恵」だったのだな、と分かる。
 農業が大規模化し、機械化された後も、昔の食習慣を維持している農民の間には糖尿病など「糖毒」由来の病気が増えている。

 江部先生は食後すぐの血糖値ピークの際に、グルコースが血中アルブミンと結合してできる、「グルコアルブミン(文中ではグリコアルブミンという表記もある)」を測定するのが、糖尿病の管理に一番よい、述べておられる。理にかなった意見だ。
 この点、修復腎移植を否定している石頭の「日本臨床腎移植学会」理事たちとは大違いだ。

 それにしても日本糖尿病学会の理事長が自ら「糖質制限食」を実践しているとは知らなかった。昌さんの結びの言葉にあるように、「食事療法は大きなバラダイム・チェンジを迎えています」というのは、その通りだと思った。
 こういうものを普及させないと、糖尿病患者が3000万に達したら、日本の健康保険制度は破綻するだろう。

 読売東京本社社会部の花形記者だった本田靖春の晩年は悲惨だった。糖尿病に苦しめられ脚を次々と切断、最後は両手首も切断し、腕に万年筆をくくりつけてもらい、それで原稿用紙に文字を書いた。遺著「我拗ね者として世を閉ず」は大学を定年退職する前に単行本で読んだ記憶があるから、本が出たのは2004年頃かも知れない。(本田靖春「我、拗ね者として生涯を閉ず」講談社文庫, 2007)本田の一生については、「本田靖春:<戦後>を追い続けたジャーナリスト」(KAWADE夢ムック、2010/7)がある。

 思えばあの頃から約20年、糖尿病治療も新しい「食事療法」の導入により、大きく進歩したものだ。


「記事転載は事前にご連絡いただきますようお願いいたします」
コメント (376)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【カタツムリとマイマイ】難... | トップ | 【府立医大事件・結末】難波... »
最新の画像もっと見る

376 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2017-04-11 00:02:39
>グルコースとタンパク質の非特異的な結合反応については、日本の糖尿病専門医の間でも、まだほとんど知られていないと分かった

AGEのことなら、この2デケードほどの間、集中的に研究されていますよ。
返信する
Unknown (花土子)
2017-04-17 21:16:24
偏見を持っている人間の希望に沿った現実が引き寄せられる。(引き寄せられやすい)
返信する
Unknown (花土子)
2017-04-18 23:48:33
いじめる側の欲求不満が問題なんですね。
返信する
Unknown (Unknown)
2017-05-18 21:21:50
ワトソンくんはHNを変えてもシツコイ性格は変わらないね、花土子さん。
ドラさんも漸く分かったかな?
返信する
Unknown (Unknown)
2017-05-18 21:35:39
No.4さんもすぐ分かる。
返信する
Unknown (Unknown)
2017-05-19 05:59:54
花土子さん
Ooboeさん、まあえりさんでもいいけど、「謎解きをお楽しみ」なんて台詞はNGよ。。。。あそこではね。

本当に小保方さん応援している人は書き込まなくなったね。
分かってるから。
でも、まあ、見てる人もいるからね。
返信する
Unknown (Unknown)
2017-05-19 06:21:50
実際は余裕なんてないだろうね、オーボエさんたちは。
返信する
Unknown (Unknown)
2017-05-20 09:38:15
花土子さん、えりさん白々しい。
だって『あの日』の後でしょ神戸地検が「事件の発生自体が疑わしい事案」と言ったのは。
まあ、えりさんが一番詳しいでしょうが、石川さんなんてどうでもいいでしょう。
返信する
Unknown (Unknown)
2017-05-20 11:13:09
花土子さん、書き忘れたけど、オーボエリさん同じということも、ペコリNo.4も分かってるし、mひかり通院FEもその他分かってるからね。
返信する
Unknown (Unknown)
2017-05-20 11:29:11
花土子さん
さっき書いたこと、もうどうでもよくなったよ。

若様捏造確定!
ご苦労さん!!!
返信する

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事