ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【日銀、買い入れ基金91兆円へ】難波先生より

2012-10-31 23:03:32 | 難波紘二先生
【日銀、買い入れ基金91兆円へ】今朝10/31の朝刊は一面でこの記事を載せているが、「中国」は例によって割り付けがヘタで、凧みたいな記事になっており、読む気にも切り抜く気にもなれない。配信した「共同」が可哀想だ。で「産経」を1面と3面から切り抜く。こちらはちゃんとかたちが黄金比になっている。おまけに1面ウラに2本の社説のうち、関連した1本が入るようになっている。切り抜きのウラまで配慮して割り付けする新聞社は滅多にない。


 日本経済ことに金融政策が異常かつ危機的状況にあることは、すでに何回か指摘した。今年4月に書いたものがここに転載されている。
 http://blog.goo.ne.jp/motosuke_t/e/5f58b29c8c0e2dd8be3f8d53f9121f3e
 
 日銀の「試算買い入れ基金」は2010年10月に創設され、当初35兆円だった。11年10月に55兆円に増額、今年に入って2月に65兆円、4月に70兆円、9月に80兆円、そして昨日91兆円に増額された。実にわずか2年間で約3倍である。しかも「日銀の中立性」を冒して、政府が日銀に対して「共同文書」により資金供給を約束させている。


 臨時国会で「参議院施政方針演説」をしなかったこといい、今回の日銀法無視といい、野田内閣は前代未聞の「トンデモ政府」である。国会は即刻解散すべきだ。政府が日銀を動かした理由は、30兆円の国債を発行するための法案が国会で可決される見通しが立たないので、日銀に圧力をかけ、通貨供給量を増やしインフレを起こそうというのである。


 江戸時代には「経済学」は未発達だったが、「通貨の金銀含有量を半分に減らせば、通貨は倍に増える」ことは知っていた。だから幕府は「改鋳」と称して良貨を悪貨に変えたわけである。百万両の金貨を集め、金含有量を半分に減らしたものを、同じ一両小判として通用させれば、通貨額面は二百万両になる。この手で、何度も改鋳をやり金銀の含量を減らして、幕府財政をまかなったから、最後は粗悪通貨だけが流通し、「グレイシャムの法則」により良い金貨は退蔵され、粗悪通貨のみが市場に流通し物価騰貴をもたらした。インフレである。これが庶民をいたく苦しめた。


 政府が日銀にやらせようとしていることは、これと同じである。日銀は新たな11兆円の調達には、輪転機を動かして一万円札を刷ればよいだけだ。企業にまわす1兆円というのは、設備投資意欲が企業にないのだから、これを口実にして実際は10兆円で国債を買わせようというのである。「企業融資」は「日銀が直接国債を買う」ことを禁止している法律から目をそむけさせるための目くらましである。野田政権は延命のためなら、国会の伝統を無視することも、「日銀法」の中立性を冒すことも平気でやろうとしている。


 情けないのは日本のメディアで、すでに元財務大臣の塩爺が「2012年度末には国と地方の長期債務残高は合計940兆円になる。対GDP比で196%だ。この数字は太平洋戦争末期の水準だといったら、いくらなんでも、少しはゾッとしてくれますか…」(「文春5月号」)と述べているのに、正確な解説記事を掲載しようとしない。1000兆円の借金を1兆円に減らすには、100倍のインフレを起こせばよいのである。それには通貨供給量を100倍に増やせばよい。一挙にやれば大混乱が起こるから、年に10兆円(1%)増やせば、理論的には1%のインフレが生じる。


 しかし通貨操作でインフレを起こして、「デフレ脱却」というのは邪道である。いまの不況は「ものつくり」の経済の成長ではもはや脱却できない。なぜなら根本的な原因は、「将来への不安」があるため庶民が安心して金を使えなくなり、「通貨流通速度」が低下しているからGDPが増えないのである。厚生年金基金の廃止だとか、国民年金の切り下げだとか、高齢者にとって不安材料は山ほどある。現金は預貯金かタンス預金に流れている。
 私は経済学者でないので、間違っているかも知れない。理論経済学がご専門のM先生、間違っていればご指摘下さい。


 昨年のこの頃副島種彦「新たなる金融危機に向かう世界」(徳間書店, 2010/7)という本を読んだ。円が対ドル80円になるという予測は当たっていたが、後はみなはずれている。ギリシアの財政破綻もスペインの危機も予測されていないし、「オバマが胃潰瘍になって引退し、任期途中でヒラリーが大統領になる」と書いてある。そして「世界恐慌に突入」だと。よくもこんなデタラメを書いて本が売れるものだ。「血液型占い」と変わらないではないか…。
 そうそう、その批判本の原稿修正を終わらなくては…
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【口腔病理専門医】難波先生より | トップ | 少し走って、プールも »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事