【認知症と遺言】日経メディカルONLINEに院長が患者の遺産相続トラブルに巻き込まれた例が載っている。
『医療にたかるな』には、「カリフォルニアの親戚」という呼び名で、臨終の時だけかけつけて、「聞いてない!」、「もっとちゃんとした病院へ送れ」と医療側に詰め寄るモンスターのことが書かれているが、「モンスター遺族」というのもあるようだ。
<X院長が末期癌のAさんを在宅で診始めたのは7年ほど前から。Aさんは独り暮らしだったが、近隣に息子夫婦が住んでおり、彼らが身の回りの世話をしていた。しかし1年後、Aさんより先に息子が心筋梗塞で亡くなり、Aさんの世話は息子の奥さんのBさんが一人で見ていた。
「Bさんはとてもよくできた方で、血もつながっていない義理の父親に対して献身的といえるほど、こまめに世話をされていました。…」とX院長。4年前、AさんはBさんに見守られながら息を引き取った。
Aさんの自宅は敷地面積300坪を超える大邸宅で、具体的な金額は分からないが、土地以外の資産もかなりあったようだ。Aさんは遺言書を残し、そこにはBさんに全財産を渡すと書かれていたという。
「兄の嫁が都合のいいように遺言を書かせた!」
…Aさんの死後1年ほどして、Aさんの実の娘と孫を名乗る2人の人物が突然、クリニックを訪ねてきた。
「Aさんに娘がいることは知らなかった」とX院長は話す。娘の名はY子と言って、ちょっと派手な感じの服装で現れ、飲食店を経営していると話していたという。
Y子はX院長に「お話ししたいことがあります」と切り出すと、次のように一気にまくしたてた。
「父が介護保険を利用していたことは、役所で調べたので知っています。X先生が主治医意見書を書いたそうですが、まずそのコピーを頂けますか。それから、父は認知症をわずらっていたと思っているんですが、実際のところどうだったのですか。かなりひどかったんじゃないですか」
X院長が「どうしてそんなことを聞くんですか」と尋ねると、次のような答えが返ってきた。「全く赤の他人である兄の嫁のBが、父の病気に乗じて、自分の都合のいいように遺言を書かせ、財産を横取りしたんですよ。…」。
どうやら、“生前に書かれた遺言書は無効であり、自分にも父親の遺産を受け取る権利がある”と言いたいようだ。「これは大変な騒動に巻き込まれそうだ」と当惑したX院長はこう答えた。「申し訳ありませんが、主治医意見書は介護保険を申請した役所で閲覧申請してください。認知症の症状はなかったと記憶していますが、カルテを見てみないと詳しいことは分かりません。…」。
Y子は「あらためて連絡する」と言って帰っていったが、以降、連絡はなかった。音沙汰がなかったので、「あの件は終わった」と安堵していたら、それから3年近くたった先週、クリニックにY子の代理人を名乗る弁護士から突然電話がかかってきた。何とY子は、遺言書の無効を裁判に訴え出ていたのだ。
弁護士から「質問があるので答えてほしい」と言われたX院長は、びっくりすると同時に、うかつなことは言えないと思い、「今、手が離せないので、後ほど連絡する」と言って電話を切り、すぐ私(弁護士)に電話をかけてきたという。>
こういうケースは今後増えてくると思われる。おそらくYは父親と仲違いしていて、看病にも見舞いにもまったくタッチしていなかったのであろう。
私見では、ポイントは遺言状が法的に有効かどうかがまず問題になると思われる。
X院長がAの在宅診療を始めたのが7年前、息子が死んだのが6年前、以後息子の嫁Bが単独で看病を2年間続け、Aは4年前に亡くなった。
すると「遺言状」は息子の死からAの死までの2年間に書かれたことになるが、これが公正証書のかたちだったのか、自筆遺言状で証人が付けられていたのか、そのへんが問題となろう。
もし公正証書か自筆遺言状であれば、法的には有効で、後は実の娘Yの「遺留分」だけが問題になるに過ぎないと思う。
(もし間違っていたら、弁護士の先生どなたかご指摘ください)
しかし、多くの人が介護施設や在宅介護で亡くなるようになると、この手の紛争に医師が巻き込まれる例も増えるだろうな、と思う。
『医療にたかるな』には、「カリフォルニアの親戚」という呼び名で、臨終の時だけかけつけて、「聞いてない!」、「もっとちゃんとした病院へ送れ」と医療側に詰め寄るモンスターのことが書かれているが、「モンスター遺族」というのもあるようだ。
<X院長が末期癌のAさんを在宅で診始めたのは7年ほど前から。Aさんは独り暮らしだったが、近隣に息子夫婦が住んでおり、彼らが身の回りの世話をしていた。しかし1年後、Aさんより先に息子が心筋梗塞で亡くなり、Aさんの世話は息子の奥さんのBさんが一人で見ていた。
「Bさんはとてもよくできた方で、血もつながっていない義理の父親に対して献身的といえるほど、こまめに世話をされていました。…」とX院長。4年前、AさんはBさんに見守られながら息を引き取った。
Aさんの自宅は敷地面積300坪を超える大邸宅で、具体的な金額は分からないが、土地以外の資産もかなりあったようだ。Aさんは遺言書を残し、そこにはBさんに全財産を渡すと書かれていたという。
「兄の嫁が都合のいいように遺言を書かせた!」
…Aさんの死後1年ほどして、Aさんの実の娘と孫を名乗る2人の人物が突然、クリニックを訪ねてきた。
「Aさんに娘がいることは知らなかった」とX院長は話す。娘の名はY子と言って、ちょっと派手な感じの服装で現れ、飲食店を経営していると話していたという。
Y子はX院長に「お話ししたいことがあります」と切り出すと、次のように一気にまくしたてた。
「父が介護保険を利用していたことは、役所で調べたので知っています。X先生が主治医意見書を書いたそうですが、まずそのコピーを頂けますか。それから、父は認知症をわずらっていたと思っているんですが、実際のところどうだったのですか。かなりひどかったんじゃないですか」
X院長が「どうしてそんなことを聞くんですか」と尋ねると、次のような答えが返ってきた。「全く赤の他人である兄の嫁のBが、父の病気に乗じて、自分の都合のいいように遺言を書かせ、財産を横取りしたんですよ。…」。
どうやら、“生前に書かれた遺言書は無効であり、自分にも父親の遺産を受け取る権利がある”と言いたいようだ。「これは大変な騒動に巻き込まれそうだ」と当惑したX院長はこう答えた。「申し訳ありませんが、主治医意見書は介護保険を申請した役所で閲覧申請してください。認知症の症状はなかったと記憶していますが、カルテを見てみないと詳しいことは分かりません。…」。
Y子は「あらためて連絡する」と言って帰っていったが、以降、連絡はなかった。音沙汰がなかったので、「あの件は終わった」と安堵していたら、それから3年近くたった先週、クリニックにY子の代理人を名乗る弁護士から突然電話がかかってきた。何とY子は、遺言書の無効を裁判に訴え出ていたのだ。
弁護士から「質問があるので答えてほしい」と言われたX院長は、びっくりすると同時に、うかつなことは言えないと思い、「今、手が離せないので、後ほど連絡する」と言って電話を切り、すぐ私(弁護士)に電話をかけてきたという。>
こういうケースは今後増えてくると思われる。おそらくYは父親と仲違いしていて、看病にも見舞いにもまったくタッチしていなかったのであろう。
私見では、ポイントは遺言状が法的に有効かどうかがまず問題になると思われる。
X院長がAの在宅診療を始めたのが7年前、息子が死んだのが6年前、以後息子の嫁Bが単独で看病を2年間続け、Aは4年前に亡くなった。
すると「遺言状」は息子の死からAの死までの2年間に書かれたことになるが、これが公正証書のかたちだったのか、自筆遺言状で証人が付けられていたのか、そのへんが問題となろう。
もし公正証書か自筆遺言状であれば、法的には有効で、後は実の娘Yの「遺留分」だけが問題になるに過ぎないと思う。
(もし間違っていたら、弁護士の先生どなたかご指摘ください)
しかし、多くの人が介護施設や在宅介護で亡くなるようになると、この手の紛争に医師が巻き込まれる例も増えるだろうな、と思う。
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