【特派員記者】8/25「毎日」一面トップにイスラム過激派が支配するイスラエル「ガザ地区」の住民200万人の窮状を報じた記事が載っていた。アルダス・ハックスレーの小説「ガザに盲いて」(1932)で知られる同地区は、エジプト領シナイ半島への回廊地帯にあたる。
当初アラファトのPLO(パレスティナ解放戦線)に属していたが、今はヨルダン川西岸の「パレスティナ自治政府(PA)」と過激派ハマスが支配するガザ地区は敵対関係にあるらしい。元々は第一次大戦中に英仏露が「サイクス・ピコ協定」によりオスマン帝国領の戦後分割処理を決めたところに、クルド人問題やパレスティナ問題の淵源があると思う。
自然地理や文化人類学的境界と無関係に人為的国境を引いたのが原因だ。
それはさておいて、記者署名に「高橋宗男」とあるのに驚いた。
高橋記者は2000/11の「旧石器遺跡」捏造事件の時に毎日北海道支局報道部にいて、「旧石器遺跡取材班」の有力スタッフだった。11/5の「世紀のスクープ」の前に、取材班の活動は8/25から始まっている。高橋記者は8/29に東京に飛び、藤村遺跡に懐疑的な考古学者竹岡俊樹を取材し、8/30には小諸市に民間考古学者故角張淳一を訪ねている(1)。
1) 毎日新聞旧石器遺跡取材班「発掘捏造」(毎日新聞社, 2001)
あのスクープには3ヶ月以上にわたる綿密な「隠密取材」が先行していた。
その後、高橋記者は本社に栄転になり、報道部から外信部に移り、エジプト特派員になった。今日の記事を見ると、おそらく10年近くカイロを中心に中東地区の取材を続けているのではないかと思う。
丁度、「産経」の黒田勝弘「隣国への足跡」(角川書店)を読んで、ソウル駐在が35年になると知り驚いたところだった。ジャーナリストも現地経験がこのくらいにならないと、本当に味のある記事は書けないのかも知れないな、と思った。
本書には昭和43(1968)年に発生した「金嬉老事件」(「寸又峡事件」)の主犯が日本で無期懲役刑に服していたのが、仮釈放になり韓国に強制送還(1999)された後のことが述べてある。
本田靖春「私戦」(潮出版)を読んだ時には、事件について「よくもここまで調べて書いたな」と思ったが、この本には「無期懲役判決」と仮釈放、韓国への強制送還の話が書かれていない。
初め「抗日愛国テロリスト」として金嬉老を英雄視して歓迎した韓国社会も、この男が愛人関係のもつれから放火、監禁、殺人未遂事件を起こすに及び、すっかり「墜ちた偶像」になってしまったという。彼の死は2010/3(81歳)だった。
本田が生きていたら、「私戦」に見られるものとは違う視点で続篇を書いただろうと思う(2004/12没)。
日本文学を研究して日本にのめり込んだアメリカ人に、ドナルド・キーン、エドワード・サイデンステッカーがいるように、ジャーナリストも対象国にこれくらいのめり込まないとだめだと思う。
「記事転載は事前にご連絡いただきますようお願いいたします」
当初アラファトのPLO(パレスティナ解放戦線)に属していたが、今はヨルダン川西岸の「パレスティナ自治政府(PA)」と過激派ハマスが支配するガザ地区は敵対関係にあるらしい。元々は第一次大戦中に英仏露が「サイクス・ピコ協定」によりオスマン帝国領の戦後分割処理を決めたところに、クルド人問題やパレスティナ問題の淵源があると思う。
自然地理や文化人類学的境界と無関係に人為的国境を引いたのが原因だ。
それはさておいて、記者署名に「高橋宗男」とあるのに驚いた。
高橋記者は2000/11の「旧石器遺跡」捏造事件の時に毎日北海道支局報道部にいて、「旧石器遺跡取材班」の有力スタッフだった。11/5の「世紀のスクープ」の前に、取材班の活動は8/25から始まっている。高橋記者は8/29に東京に飛び、藤村遺跡に懐疑的な考古学者竹岡俊樹を取材し、8/30には小諸市に民間考古学者故角張淳一を訪ねている(1)。
1) 毎日新聞旧石器遺跡取材班「発掘捏造」(毎日新聞社, 2001)
あのスクープには3ヶ月以上にわたる綿密な「隠密取材」が先行していた。
その後、高橋記者は本社に栄転になり、報道部から外信部に移り、エジプト特派員になった。今日の記事を見ると、おそらく10年近くカイロを中心に中東地区の取材を続けているのではないかと思う。
丁度、「産経」の黒田勝弘「隣国への足跡」(角川書店)を読んで、ソウル駐在が35年になると知り驚いたところだった。ジャーナリストも現地経験がこのくらいにならないと、本当に味のある記事は書けないのかも知れないな、と思った。
本書には昭和43(1968)年に発生した「金嬉老事件」(「寸又峡事件」)の主犯が日本で無期懲役刑に服していたのが、仮釈放になり韓国に強制送還(1999)された後のことが述べてある。
本田靖春「私戦」(潮出版)を読んだ時には、事件について「よくもここまで調べて書いたな」と思ったが、この本には「無期懲役判決」と仮釈放、韓国への強制送還の話が書かれていない。
初め「抗日愛国テロリスト」として金嬉老を英雄視して歓迎した韓国社会も、この男が愛人関係のもつれから放火、監禁、殺人未遂事件を起こすに及び、すっかり「墜ちた偶像」になってしまったという。彼の死は2010/3(81歳)だった。
本田が生きていたら、「私戦」に見られるものとは違う視点で続篇を書いただろうと思う(2004/12没)。
日本文学を研究して日本にのめり込んだアメリカ人に、ドナルド・キーン、エドワード・サイデンステッカーがいるように、ジャーナリストも対象国にこれくらいのめり込まないとだめだと思う。
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