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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

さすらいー幽霊屋敷10

2009年04月24日 | 投稿連載
幽霊屋敷 作者大隅 充
      10
秀人が見つけたシルバーの鍵は、タツヤ兄ちゃんの
手で開かずの書斎の扉の鍵穴に差し込まれたが、何
回試みてもカタリとも開かなかった。
僕が兄ちゃんのでかいサーチライトを代わりに持っ
て、その引っ掻き傷だらけの分厚い扉を照らして、
タツヤ兄ちゃんが秘密の部屋を開けてくれるのを待
ったがあれやこれや長い時間かけてやったがダメだ
った。だんだんでかいサーチライトが重くなって両
手で支えているのがつらくなった。
おかしいな。やっぱりこれじゃないのか。
兄ちゃんは舌打ちして鍵を僕が照らした明りの中に
かざしてマジマジと見つめた。
グラグラと目眩するような地震の揺れが起きた。
ぐぐうううこくんーーーー
今度はぼくの後で唾を飲み込むびっくりするくらい
大きな音がして、僕とタツヤ兄ちゃんとが振り返る
と階段の下の方でか細い僕のライトをもって秀人が
喉を鳴らしながらぶるぶる震えていた。
「どうしたん?秀人。」
「・・・・・・・」
僕が秀人に声をかけても唇が真っ青になってガタガタ
震えるばかりで言葉の入った箱を全部ひっくり返して
しゃべる日本語を川に落としてしまった人みたいに尖
った舌を突き出すだけで言葉が出て来ない。
「ヴヴヴヴ・・・・・・ブブブ・・」
そう呟いている秀人がどういうわけかみるみる背が高
くなっていった。
確かに僕より下の階段にいたはずなのに目の高さまで
一緒になって、さらに目線より上に昇っていった。
タツヤ兄ちゃんと僕は、秀人が天井へ浮き上がってい
くような錯覚にとらわれた。
幽霊屋敷の魔法にかかって、オバケに捧げる生贄の子
豚として秀人がこのまま天井を突き破って夜空へ消え
ていってしまうのではないかと僕は本気で心配した。
しかし秀人は、天井へは届かず僕より頭ひとつ上にな
って止まった。
駿!
タツヤ兄ちゃんが後から僕の両肩を大きな手で掴んで
小さく叫んだ。
ふりかえると僕よりずっと背の高かったタツヤ兄ちゃ
んが僕より下になっていた。
いったいどうしたのか。目の奥の方でクラクラする痛
みが走って、回りすぎたメリーゴーランドに乗って平
衡感覚がすっかりなくなってしまった時と同じ吐き気
がした。
駿!動くな・・・・じっとしてろ!
タツヤ兄ちゃんは、今度はしっかりと僕を背中から抱
きしめた。
そしてガタンと足の下で突き上げるような振動音がし
て、止まらないエレベーターに乗っていたようなフラ
フラした気持ち悪い感じが止まった。
僕は、目の中にものすごい量の埃が入って来て目を開
けていられなくなった。
目を開けるな。下を向いてろ。
兄ちゃんも顔を伏せているみたいだった。
わわわわああああー、階段がー。
秀人がやっと日本語の落し物を拾い上げたようにカイ
ダンとはっきりと発音した。
床下から風が吹いているのか咳き込むような埃がみる
みるガラスの割れたバルコニーの外へ流れていく。
背の高くなった秀人がようやく見えるようになると、
棒のようにカチカチに硬くなって階段のステップで立
ち尽くして僕を見下ろしながら正面を指差している姿
が目に入ってきた。
「駿ちゃんー。階段が落ちたー。」
僕とタツヤ兄ちゃんは、明らかに床下に落ちていた。
床上の階段にいるのは、秀人だけだった。
起きた事が一瞬だったので状況がつかめなかったが、
兄ちゃんのサーチライトで辺りを照らして見ると僕
の立っていた階段のステップを基点にしてシーソーの
ように階段が反対側に持ち上がって、下だった秀人が
上に、僕より上だったタツヤ兄ちゃんが真下に入れ替
わったのだった。
「やっと止まったべ。びっくりしたあ。このまま地獄
へ落ちていくか思った。」
タツヤ兄ちゃんは、僕から離れて僕の手に握られたサ
ーチライトを僕の手首ごと、後ろの階段の上だった書
斎の扉のあるところに明りのレンズを向けた。
それは見上げるような天井すれすれの位置にあって階
段がずり落ちた分、埃りやクモの巣のないまっすぐな
長方形の新鮮な形が壁できていた。
つまりその遥か上に書斎の分厚い扉が天窓のようにに
乗っかっていたのだ。
「兄ちゃん。こっちにも扉がー。」
声を震わしながら上から秀人が小さいライトで指さし
て言った。
見ると、床下のタツヤ兄ちゃんの後ろの壁に新しい扉
があった。
「あったべな。こんなところによ。」
タツヤ兄ちゃんは、振り返ってシルバーのあの鍵をそ
の扉の鍵穴に差し込んだ。

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堂島ロール~シーちゃんのおやつ手帖92

2009年04月24日 | 味わい探訪
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コメント (2)
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