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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

宗家・源吉兆庵の金魚~シーちゃんのおやつ手帖143

2010年07月16日 | 味わい探訪
レモン味の和風ゼリーの中に、金魚型の羊羹を
閉じ込めたお菓子です。
見た目涼しく、お口に入れたらとても爽やか☆
夏期限定の涼やかなゼリーです。1個270円。
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さすらいー若葉のころ25

2010年07月16日 | 投稿連載
若葉のころ 作者大隅 充
      25

 島津君のスナックでのぷち同窓会は、五人しか集ま
らなかった。ここも駅前の商店街の中にあり、スナッ
クというより洋風居酒屋に近かった。女は私とオマツ
にもう一人文芸部のタムラの三人で男は、島津君とい
つもつるんでいた吉村君だった。
 11時半まで会はナリキヨ先生と西高のことに終始
したが私は、この島津君たちとのスポーツや賭け事の
話はついて行けず、孤独感を味わう。特に島津君のや
たら「独身」と何回も自分を強調する態度がむしろ虫
唾がはしる。だれでもそういえば堀の深く背が高く今
でも西高のバスケの顧問もやるくらいのスポーツマン
でおまけにスナックの経営者でもある自分に恋心を抱
いてくれると思っているバカさ加減が実に子供だなあ
と思ってしまう。
 そして又もうひとり・JAの農業指導員をやってい
る吉村君は、二人の娘がいるというのに地元ケーブル
テレビのディレクターでちょこちょこレポーターとし
ても有線テレビに顔を出しているボーイッシュなタム
ラに焼酎のボトルの交換度とカラオケのマイク持つ回
数が増える度に「昔から好きだった」とラブコールが
異様にねちっこくなって、女三人、ますます白けてし
まう。それこそ島津君が「おまえ。日ごろ種牛しか相
手してねぇから久々の人間のメスで酔っぱらい過ぎ!」
と割って入らなければもっと悲惨な同窓会になってい
ただろう。
 しかし今度はフラフラの吉村君がターゲットを私に
替えようとマイクを胸にチャゲアスの「セイ・イエス」
のデュエットをねだって来たときには、正直困ったな
と思ったけどオマツがすかさず西高の校歌を歌おうと
助け舟を出してくれて、この一番の歌詞もうる覚えの
酔っ払い種牛指導員を見事撃退することができた。
 深夜散会して駅前大通りをオマツとタクシーをそれ
ぞれ捕まえるまで肩くんで西高校歌を三番まで繰り返
して歌う。

仰げば岩木山。われらの胸に輝く未来。
夢と自由の翼を羽ばたけば、希望の空。
ああ。われら、西高。心も熱き北斗人。
ああ。われら、西高。清き純情の防人。

 私は、オマツと別れて鶴田までタクシーに乗ってし
ばらく、別れ際オマツが言った校歌の三番の最後の「
サキモリ」って意味わかると思い出し笑いして言った
言葉が気になって頭から離れなかったがとうとう思い
当たらなかった。  
  
 次の日がんセンターに成清先生を一緒に見舞いに行
ったオマツに昨日の西高校歌のナゾかけの答えを教え
てと言ったが首を横に振って、本当に覚えてないのと
教えてくれない。ケチと粘ったりしている内に先生の
病室に着いてしまう。
「オマツです。すみれを連れて来ました。」
オマツは、慣れた手つきで仕切りカーテンを開けて先
生に呼びかける。
 二人部屋の西日の差す右側で先生は、付き添いもな
く静かにひとりで眠っている。オマツは窓辺の花瓶に
目をやり、花が新しくなっているのを見て奥さん、看
えられて帰ったばかりなんだと納得してベッドの下か
ら丸椅子を取り出して座る。私は、布団の胸の上で手
を組んでいる先生の痩せた指に触ってみる。
 先生は、生まれたての赤ん坊のように小さな息で機
械仕掛けの時計になったように眠りつづけている。こ
の掛け時計は、ゼンマイが緩やかなシナリを残してガ
ラス蓋の外の世界と無関係に動きつづけているんだな
あと思う。
オマツは、先生の額に垂れた前髪をそっと撫で上げて
オデコにお絞りを当てる。
 私は、もう一度先生の指を少し強く握ってみる。先
生は、変わらず眠りの底にいる。
おそらくこの掛け時計のゼンマイを巻く鍵はすでに失
われている気がしてハッとする。
「先生。すみれです。」
と言ったつもりが語尾が鼻声になってしまう。 
 結局私たちの訪問している間ナリキヨ先生は、目を
開けなかった。私は、病院の駐車場でオマツとアコー
ドに乗り込むとき先生の病室の窓をもう一度見上げる。
 閉められた窓ガラスに西日に映えた岩木山が映って
いる。私は、今にも成清先生が窓を開けて手を振って
くれるような幻想を抱いたが窓ガラスは、岩木山の白
い雲の帽子を被った姿を映したままただ見下ろしてい
るだけだった。
 弘前駅ローターリーでオマツをアコードから降ろし
て別れた。
「・・でも先生のオデコまだ暖かかった。」
「来て良かった。私、先生に会えて良かった。ありが
とう。オマツ。」
そう言ってウィンドーを閉めようとした私をとどめて、
オマツは、そういえばと前置きして神妙な顔でナゾか
けの回答をきりだす。
「あの、三番の校歌の最後。『サキモリ』っていつも
トミーに茶化して歌っていたの。『詐欺・森』って」
 私は、トミーの苗字が森だったことを思い出した。
ああ。われら、西高。清き純情の詐欺・森
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