我が家の地球防衛艦隊

ヤマトマガジンで連載された宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部「アクエリアス・アルゴリズム」設定考証チームに参加しました。

続・地球防衛艦隊2199 前編

2012-08-16 14:59:52 | 地球防衛艦隊2199
【前書き】
以下の文章は、1974年にテレビ放映が開始された『宇宙戦艦ヤマト』及び1978年放映開始『宇宙戦艦ヤマト2』の設定をベースにしています(『宇宙戦艦ヤマト2199』の設定には基づいていません)。
また、かなりの部分で独自設定が入り混じっており、その世界観を御理解いただく為に(たいした世界観でもありませんが)、前作『地球防衛艦隊2199』を先にご覧いただいた方が良いかもしれません。


【続・地球防衛艦隊2199 前編】



 勃発から実質的終結まで凡そ九年を要したガミラス戦役において、科学技術的にも軍事的にも終始圧倒され続けた地球防衛艦隊が、それでも最後まで抗戦を継続することができた理由や原因は、それこそ無数に存在する。
 しかし、その理由の一つに、当時の地球防衛艦隊が金科玉条としていた『宇宙魚雷戦術』『空間宙雷戦術』を挙げるのは極めて妥当と思われる。なぜなら、“圧倒的”という言葉ですら不足するほど強力な大ガミラス帝国宇宙軍艦艇に、地球人類が唯一突き立てることが可能であった“牙”が、この宇宙魚雷だったからだ。

 “宇宙魚雷”の実態は、当時最新の核融合反応弾頭――純粋水爆弾頭――を装着した、直径二〇インチ以上の超大型誘導弾である。その威力は凄まじく、人類側の放つフェーザー砲にはほぼ無敵のガミラス軍クルーザー級やミザイラー級でも一撃で撃沈、より大型のデストロイヤー級戦闘艦であっても中破以上の損害を与えることが可能であった。

 但し、それには条件があった――命中させる、という最難事が。

 ガミラス戦役時の地球防衛艦隊において、宇宙魚雷戦術の担い手は“カゲロウ型突撃駆逐艦”であった。しかし、当時の防衛艦隊最速艦でもあった本型にしても、最大戦術速力は一五宇宙ノットが精々であり、三〇宇宙ノット以上の快速で巧みな艦隊運動を行うガミラス艦隊が相手では、“頭を抑える”どころか追尾すら非常に困難、言い換えれば、殆ど不可能だった。
 確かに、未だ人類が母星の海洋上で覇権争いをしていた頃の水雷戦術と、対異星人戦争における宙雷戦術とでは多くの点が異なる。しかし、決して変わらない原則もあった。たとえば、目標対象の直近にまで肉薄しなければ必中至難という嘗ての水雷戦の原則は、その最たるものと言えるだろう。
 しかし当時の人類には、ガミラス艦へと詰め寄る手段(脚)がなかった。最大戦術速力に、実に二倍以上もの開きがあっては如何ともしがたく、正攻法では必殺の宇宙魚雷を投じえないのは誰の目にも明らかであった。
 その現実故、2195年以降の地球防衛艦隊が選択した戦術はある意味極端だった。それを極論すると、以下の二つになる。

 “囲む”か“待伏せる”か。

 追いつけない以上、逃げられないように包囲するか、向こうから近づいてくるのを待つ、という訳だ。至極簡単に聞こえるが、現実はそれほど甘くも無かった。
 囲んだ相手が自らより強力であれば、逆に分散した状態で各個撃破されてしまうし、待伏せるにしても、敵が“運よく”そこを通りかからなければ、自らを遊兵化してしまう――戦術的イニシアティヴを最初から放棄しているも同然だったからである。
 その為、地球防衛艦隊司令部は、『落伍した独航艦を狙う』『攻撃は戦術的奇襲が成立する状況に限る』という原則を麾下部隊に徹底させることで、この困難な状況に現実を適合させようとした。しかし、その実行には多くの時間と労力が必要だった。
 “地球防衛艦隊”と名乗ってはいても、その実態は各国宇宙軍(それも、長期に渡る戦役を生き残った残余)の寄せ集めに過ぎず、それらを統一指揮することが法制上定められた防衛艦隊司令部とて、発足から未だ間がなく、各部隊(旧各国軍部隊)との信頼関係も著しく不足しているのが実情だった。また、装備面での圧倒的劣勢、打ち続く損害、日々荒廃していく母星――そんな生き地獄のような状況においても、ガミラス戦役は紛れもない“祖国防衛戦争”であるだけに、防人(さきもり)たちの士気が非常に高かったことも、原則を徹底させる上では寧ろ障害になった。
 それでも、防衛艦隊司令部の定めた原則に従った部隊が、確実に戦果を(しかも自らの損害は最小に留めて)挙げていくことで、この原則は徐々に各隊に浸透し、2196年を迎える頃には、完全に防衛艦隊の常套戦術として定着することになる。また、この結果を受けて、防衛艦隊司令部と各部隊の信頼関係も醸成されるという副産物まで得られた。
 その後、2197年の『“静かの海”直上会戦』、2199年の『冥王星会戦』という二つの“決戦”が生起した結果、地球防衛艦隊は奮戦空しく遂に壊滅する。会戦の結果は、いずれも地球艦隊の完敗(少なくとも戦術的には)であった。
 しかしそれでも、地球艦隊の放つ宇宙魚雷という名の“牙”はその鋭さを失わず、地球側の英雄的活躍やガミラス側のミスといった僥倖が重なって命中を果たしたならば、どのような状況であろうとも確実にガミラス艦を引き裂いた。
 事実、後のヤマト型宇宙戦艦――宇宙戦艦ヤマトの登場まで、大ガミラス帝国が地球側装備において唯一脅威と見なしていたのは、この宇宙魚雷のみであった。後のガルマン・ガミラス帝国との交流によって開示された当時のガミラス軍の記録には、地球艦の放つ宇宙魚雷は“野蛮な短剣”としばしば表現されていた。之は“懐に飛び込まれて繰り出されれば、致命傷足り得る”ということをガミラス側も十分に理解していたが故の表現であったと思われる。




 悪戦の末の壊滅、その終末的状況に変化が訪れたのは2199年9月以降のことだった。遠くイスカンダル王国からの技術供与によって画期的機関技術――波動エンジン――が実用化されたことにより、地球防衛艦隊を取り巻く状況は一変する。
 その筆頭は、言うまでもなく『宇宙戦艦ヤマト』であった。しかし彼女は就役(進宙)と同時にイスカンダルへの長期航宙を開始し、大ガミラス帝国軍冥王星基地の壊滅と在太陽系ガミラス艦隊主力の殲滅という空前の大戦果を残して、外宇宙へと旅立っていった。
 そしてその戦果に後押しされるように、太陽系に残る地球防衛艦隊も、再建への道を歩み出す。その端緒の一つは、数少ない残存艦への波動機関(機能を限定した簡易型)搭載改装であった。
 その効果は劇的、いや、長年その艦に乗り続けた防人たちにしてみれば、最早一つの奇跡だった。
 これまでは延々と加速を継続しても一五宇宙ノットが精々だったカゲロウ型突撃駆逐艦の速力が、何の苦も無く(それこそ慣性制御による耐Gを考慮しなければならない程の勢いで)一気に三〇宇宙ノットを超えたのだ。その“感動”は、滅多に感情を表さないことで有名だった、とある英王立宇宙軍出身士官が『我らの愛すべき“農耕馬”が“駿馬”へ生まれ変わった』と声を震わせて評した程だった。
 波動機関は、初起動時の立ち上げにこそ外部からの膨大な電力供給(日本人たちはそれを“呼び水”と称した)を必要としたが、製造された簡易式波動機関はヤマトのそれに比べれば遥かに小型小容量であり、各行政管区単独の電力供給能力でも辛うじて立ち上げ可能であった。また、最初の一基の立ち上げにさえ成功してしまえば、後はその一基の発する電力で以って後発機を立ち上げることもできた。
 更に、一度立ち上がった波動機関は即席の“無限発電機”としても非常に有用だった。事実、最初期に製造された簡易式波動機関の内の二基は“波動発電機”として、深刻なエネルギー不足に喘いでいた地球の電力事情改善に貢献している。実際のところ、地球上(しかも地下都市内)に設置された波動機関は、宇宙空間を航行する艦船に比べてタキオン粒子の収集効率が著しく劣る為、極めて非効率という側面もあったが、それでも発揮される電力は当時の地球にしてみれば破格の大出力であり、慈雨以外の何物でもなかった。

 波動機関という新たな心臓と“健脚”を手に入れ、極めて小規模ながらも再建された地球防衛艦隊は、2200年に入って活動を再開する。
 当時、冥王星基地と侵攻艦隊主力を失ったことで、太陽系内における大ガミラス帝国の活動域は著しく縮小、それどころか殆ど観測されなくなっていた。少なくとも、火星軌道より内側にガミラス艦艇が侵入してくることは皆無となり、地球―月―火星間の連絡・交通線は、ほぼ完全に復活(自然回復)していた。
 しかし同時に、様々な観測と分析によって、木星圏以遠にはガミラス艦隊残存戦力が分散、潜伏していることも確認されていた(具体的な艦数は一〇隻以下と推測)。また、木星以遠の各惑星やその衛星群にも未だ小基地・拠点が存在し、残存艦への補給支援等の活動を継続しているものと推測された。
 つまり、ガミラス軍は活動域を自ら大きく後退・縮小させただけであって、仮に人類が木星圏以遠にまで足を踏み込めば、相応のリアクションを呼び込むであろうことが確実視されていた。
 しかも残存勢力は、現在こそ作戦能力を低下させているものの、仮に太陽系外から増援や支援が得られた場合、当然その活動が再開・活発化するであろうことも想像に難くなかった。故に地球防衛艦隊としては是が非でも、太陽系外ガミラス軍による増援・支援が行われる前に、太陽系内残存勢力を各個撃破する必要があった。
 2200年初頭に取り急ぎ再建された地球防衛艦隊の戦力は、波動機関を搭載したことで『改カゲロウ型』に改称された突撃駆逐艦が二個駆逐隊(六隻)であった(後に、同じく改装に伴って『アドバンスド・カイザー型指揮戦艦』へと改称された“エイユウ”と“ジョゼッペ・ガリバルディ”の二隻が加わる)。
 しかし、当面の戦力強化が、この二個駆逐隊で打ち止めであるのも事実だった。
 地球―月―火星の連絡交通線が復活し、各種資源の確保や流通の部分的回復、更に“波動発電機”の稼働で電力事情にも多少の安定が得られるようになった為、特に各種工業生産については半年前とは比べ物にならないほど状況は改善していた。にもかかわらず、地球防衛艦隊の戦力強化は停止を余儀なくされていた。
 肝心要の波動機関製造に必要な希少鉱物資源がこの時点でほぼ払底し(完全にゼロではなかったのが、残分は“新型艦艇用”に割り当てられていた)、既存戦力を利用した戦力強化が不可能になっていたのである。
 件の鉱物資源は『コスモナイト』と呼ばれる高機能特殊合金の原料であり、その最終製錬物は、高圧高濃縮下のタキオン粒子にも耐久し得るほどの耐熱性と耐食性を有する――高濃縮型波動機関製造には不可欠のものであった。しかし悩ましいことに、太陽系広しといえど、コスモナイトの存在が確認されていたのは土星の衛星『タイタン』のみであった。
 つまり、これ以上の戦力強化にはタイタンでのコスモナイト回収が必須であり、それは同時にガミラス軍勢力圏への侵入を意味していた。
 その為の戦力が僅か二個駆逐隊、たった六隻の突撃駆逐艦。非常にささやかな、一年前であれば、投入するよりも“逃げる”か“隠す”ことを考えなければならないほどの小戦力であった。しかし――“彼ら彼女ら”の考えは、一年前とは一八〇度異なっていた。

 敵に先んずることができる“脚”がある。しかも、敵はまだそれを“知らない”。

 すなわち、ガミラス戦役勃発後初めて、戦術的イニシアティヴを握ることができるかもしれないという期待と確信はそれほどのものだった。そして、常に絶対的劣勢下での戦闘を強いられ続けた(そして生き残ってきた)彼ら彼女らにとっては、それだけで充分だった。侵略者どもが“野蛮な短剣”と恐れる彼らの“牙”は――変わらずそこにあるのだ。




 2200年1月、六隻の突撃駆逐艦と二隻の中型輸送船からなる小規模な地球船団は、土星の衛星タイタンを目指す航路を進んでいた。
 作戦名称は『ミッキーマウス』。
 作戦目的は、波動機関及びその関連設備の製造に不可欠な希少鉱物資源(コスモナイト)の回収と輸送。
 その航宙速度は、中型輸送船の空荷時巡航速度に合わせた五宇宙ノット。現在の視点に立てば、情けなくなるほどの低速であったが、非波動機関の民間徴用バルクキャリア―(バラ積み運搬船)ではこれが限界だった。
 しかし、ほぼ同速力で並進しながら護衛を続ける駆逐隊側に焦りの色は全くなかった。さすがに緊張の色は隠すべくも無かったが、そこには悲嘆も絶望もなく――寧ろ皆、祭りの前日のように嬉々として“その瞬間”を待ち侘びていた――と、後にある駆逐艦乗員が自らの著作の中で述懐することになる。

 そして遂に、待望の“瞬間”がやってきた。

 船団が、タイタンへと至る最終軌道調整を完了した直後の地球標準時一月二九日二〇時〇二分。その兆候を最初に捉えたのは、船団中央に位置した輸送船の一隻“パサディナ・スター”であった。
 大型レーダーシステムと指揮区間を増設し、広域索敵兼指揮艦として臨時改造された特設艦である。もちろん、充分な資材も時間も無い中、無理やり仕立てられた艦であるだけに、一たび攻撃を受ければ生存性など皆無であったが、乗員の士気は駆逐隊と同様に高かった。
 本来ならば、指揮艦としては前述したアドバンスド・カイザー型指揮戦艦を編制に加えたいところであったが、ヤマトに比べればささやかとは言え、仮にも戦艦級艦艇の波動機関の製造と換装には、本輸送任務の成功による希少資源の大量確保が絶対に必要だった。また、オリジナルの状態で出撃させるという選択肢もあったが、“エイユウ”“ガリバルディ”共に損傷と消耗がひどく、一度徹底した修理かオーバーホールを行った後でなければ、足手まといにしかならないとして断念されている。
 “パサディナ・スター”の増設レーダーが捉えたのは、大ガミラス帝国宇宙軍主力軽艦艇――ミザイラー級戦闘艦二隻からなる小部隊であった。ガミラス軍艦艇としては最小クラス、しかも僅か二隻とはいえ、彼我の個艦戦力差と最終軌道調整完了直後というタイミング(つまり逃げられない)を思えば、絶望を覚えさせるに充分な状況であった――もしそこにいたのが、一年前の彼ら彼女らであったなら。
 ミザイラー級二隻は、船団に対するレーダー妨害すら行わず、二五宇宙ノットという速度で側面から船団に接敵しようとしていた。最速三五宇宙ノットを叩き出す快速艦を操りながら、何故そのように中途半端な速度で接近を図ったのかは分からない。油断があったのか、あるいは冥王星基地壊滅によって補給と整備を絶たれ、艦の機能に不調があったのか――しかしそれは永遠の謎となった。
 “パサディナ・スター”から、二隻のミザイラー級以外に後続する敵戦力が存在しないという戦術情報と共に、開隊から僅か数年で早くも地球防衛艦隊の伝統となった感のあるシンプル極まりない突撃命令――全軍突撃セヨ――が下された瞬間、機関換装を悟られないよう機関出力を絞りに絞っていた駆逐隊が一斉に動いた。
 まるで、ロールを打った軽戦闘機のような小気味良い転舵と同時に、弾かれたように加速を開始した改カゲロウ型の速力は、瞬く間にミザイラー級の最大戦術速力すら凌駕する三七宇宙ノットにまで達した。
 嘗ての所属軍も艦齢も全く異なる六隻の突撃駆逐艦は、それぞれが別個のコースを取りつつ、しかし完璧に調和の取れた六つの光跡を閃かせ、その名が示す通りの“突撃”を敢行していた。




 目前で展開されている異常極まりない(信じ難い)光景へのあまりの驚愕故か、ミザイラー級二隻は対応機動すら見出せないまま、闇雲にフェーザー砲を閃かせたものの、その照準計算は従来のカゲロウ型の機動性能データ(最大一五宇宙ノット)を元に算出されたものであり、その二・五倍もの速力を突如として発揮されては、命中弾など発生する訳がなかった。
 そして襲撃機動最終段階に入った六隻の駆逐艦は、各駆逐艦長が自ら信じる必中距離とタイミングで宇宙魚雷を撃ち放った。高度な宙雷撃戦管制機能を有するカイザー型が存在すれば、完全な統制宙雷撃戦が可能であっただろうが――少なくとも本会戦における結果に変わりはなかった。
 至近距離から発射された宇宙魚雷は各艦二発、計一二発。内三発が機能不全で脱落したものの、残る九発が僅か二隻のミザイラー級に襲い掛かった。それでも混乱の中、近接対空防御で四発の宇宙魚雷を叩き落としたガミラス軍将兵の技量こそ賞賛すべきかもしれない。しかし、残る五発は悉く命中(一番艦に二発、二番艦に三発)、核融合反応の純白のヴェールが消え去った後には、それが嘗てガミラス艦であったことを感じさせる存在は皆無であった。

 ――四八時間後、徴用輸送船、特設指揮艦(輸送船を小改装した艦である為、十分な積載能力がある)、そして六隻の突撃駆逐艦に至るまで、希少鉱物資源を詰め込めるだけ詰め込んだ(さすがに駆逐艦だけは艦内積載ではなく輸送用コンテナを曳航した)輸送船団はタイタンを後にした。懸念されたガミラス艦隊の追撃も遂になく、船団は一隻も欠けることないまま未だ赤い地表を晒し続けている地球へと無事帰還を果たす。
 無傷で帰還した船団の姿と『ミッキーマウス作戦』成功の報は、未だ高濃度放射能の脅威に苛まれ続けている全人類に対して大々的に宣伝された(二隻ほぼ同時に爆沈するミザイラー級の光学映像すら公開された)。

 本作戦の名称に“ミッキーマウス”を提案したのは、防衛艦隊司令部付の若い女性士官であったという。実は、作戦立案時に実施部隊から提案された“別の”作戦名称がほぼ内定していたのだが、作戦成功後の市井に対する宣伝効果を考えれば本名称の方が相応しいとして、作戦実動直前に急遽変更が行われたという経緯があった。
 結果的に、その変更は英断となった。作戦結果と世界的に有名なキャラクター名への親しみやすさから、“ミッキーマウス作戦”は世界各地の地下都市で逼迫を続ける市民たちの士気高揚にも大いに貢献したからである。
 だが、あまりにメディアで“ミッキーマウス”が連呼されたため、一時は著作権者(企業)から地球防衛軍に対して法的クレームと無許可名称使用に対する賠償請求が行われた。しかし、その事実が明るみ出るや、今度は市民側から企業に対して凄まじいほどの非難が殺到、慌てた企業が急いで告訴を取り下げ、“地球防衛軍に対してのみ”名称の無許可使用を認めて謝罪する騒ぎにまで至っている。
 それは、種としての滅亡すら目前に迫った戦時であっても、そこに人間が集団で存在し、社会生活が営まれている限り、“日常”は存在し得るということを示す何よりのエピソードであったのかもしれない。
 尚、“ミッキーマウス”作戦の改称前の名称は“ネズミ輸送”であったという。その名称を提案した、ある女性駆逐艦長は作戦開始直前の名称変更と新作戦名を知らされると、天を仰いで軽く嘆息し――自艦の主計士官に、規定量以上の宇宙魚雷の確保を指示したとされる。

 2200年1月はミッキーマウス作戦の成功以外にも、新たな兆し(きざし)があった。
 土星圏で地球駆逐隊が初めてガミラス艦を正面から粉砕していた頃――地球軌道上では待望の新造艦艇の公試が行われていた。小粒ながらも地球防衛艦隊の切り札として完成した“ハント型フリゲート”である。




 人類初の波動機関搭載艦である宇宙戦艦ヤマトの完成、カゲロウ型突撃駆逐艦の簡易波動機関換装工事、そして火星に不時着したイスカンダル王室専用船の調査分析を経て建造が開始された、初の量産新造艦艇であった。何より特筆すべきは、設計時点から波動機関の搭載が考慮された初めての宇宙艦艇であるという点だ(“あの”ヤマトですら、建造中艦艇に波動機関を強引に搭載したのが実情であり、設計時から考慮されものではない)。
 完成に至るまでには様々な苦難・苦闘があったが、公試において一番艦『ハント』は目標を上回る性能を発揮、関係者全員を安堵させた。また、第一ロットとして並行建造されている二番艦から四番艦も既に竣工直前であり、新編が決定した戦隊司令・司令部スタッフはもちろん、各艦艦長や幹部乗員の選抜も最終段階に至っていた。

 ミッキーマウス作戦に続く、『ミッキーマウスII』は本型四隻の就役を待つ形で2200年5月の実施が決定された。
 参加戦力は前回のものに加えて、第一一戦隊と命名されたハント型フリゲート四隻、そして輸送力として民間徴用貨物船が更に二隻加わっていた(アドバンスド・カイザー型は未だ波動機関及び主兵装換装工事中であった為、本作戦にも不参加)。
 新編の一一戦隊については、訓練期間の点で未だ完熟には程遠い状態であったが、宇宙戦士訓練学校長から同戦隊司令に転じた土方竜提督が、自らの異名である“鬼竜”の名に恥じない猛訓練を麾下部隊に課すことで、辛うじて戦力化に成功していた。
 尚、本作戦は地球防衛艦隊(地球防衛軍)の上部組織である国際連合から、より早期の発起が希望されていた。しかし、防衛艦隊司令部がこれに強く反対し、この時期まで作戦開始を引き延ばした経緯があった。
 地球防衛艦隊司令部にしてみれば、“たかが”一度の小さな勝利で浮かれるつもりは毛頭なかった。八年にも渡り戦い続けているガミラス軍は確かに強大であったが、同時に狡猾でもあった。『ミッキーマウスI(ミッキーマウスII実施が確定した時点で、前作戦名には“I”が冠せられた)』における地球艦艇能力の“激変”は、既に残存ガミラス軍内で周知されているものとして行動すべきだった。
 事実、“ミッキーマウスI”において撃沈されたミザイラー級は、その断末魔に地球艦艇の機動性能データを最大出力で発信していたし、土星圏のガミラス基地も観測した戦術データを残存戦力間で共有を図っていた。
 だからこその第一一戦隊参加であり、更に地球防衛艦隊司令部はこの作戦によって太陽系内に潜伏するガミラス残存艦隊を可能な限り誘出、まとめて殲滅する意図であった。
 もちろん、おびき出した敵戦力が予想より遥かに巨大であった場合、逆にこちらが殲滅されてしまうリスクもあったが、元々の在太陽系ガミラス艦隊の規模(各種戦闘艦約四〇隻)と、ヤマトから報告のあった戦果報告を照らし合わせれば、その可能性は極めて低いと判断された。
 残存ガミラス艦隊は、“ミッキーマウスI”実施以前ですら一〇隻以下という判定評価であったし、それらにても一箇所に集結している訳ではなく、整備能力の限界から拠点ごとに分散展開しているものと見られていた。
 故に、“ミッキーマウスI”立案時には、残存ガミラス艦隊が全力で迎撃に出ることはないと判断された。補給にも支援にも事欠く孤立した状態で、戦力の過剰投入を行うなど、戦力の経済的運用と戦術原則の徹底ぶりでは地球防衛艦隊司令部以上とまで評されるガミラス軍が行う訳がない――そう考えられたからだ。
 その点で言えば、“ミッキーマウスI”において襲撃してきたのが“僅か”二隻のミザイラー級であったのは、決して偶然や僥倖ではない。過去の地球艦隊との戦闘結果、それに基づく戦力評価からすれば、ミザイラー級二隻は極めて妥当な戦力投入量だった(もし地球駆逐隊が従来のままの能力であれば、ミザイラー級は無傷の内に地球船団を全滅させていたであろう)。
 しかし、この“ミッキーマウスII”では状況が大きく異なる筈だった。
 地球艦艇の“激変”を考慮した戦力の再評価が為されていることは最早必至であり、更に地球艦隊が前回以上の戦力(戦闘艦艇一〇隻)で出撃すれば、必ずガミラス軍も稼働全戦力(最大でも八隻程度)を投入してくるものと予想された。
 著しく強化された地球艦隊を完全に殲滅するには、未だ個艦戦闘能力では確実に優越するガミラス艦艇を以ってしても、それだけの数が絶対に必要であったし、また、補充が期待できない状況下では、投入戦力量を最大化することで相対的に損害を最小化させる必要もあった。
 もちろん、残存ガミラス軍指揮官が戦力の保全を図り、迎撃そのものを断念するという可能性もゼロではなかったが、それならば“ミッキーマウスII”は何の障害もなく無事に完遂されることになり、回収した資源を活かした更なる戦力強化後に、改めて討伐作戦を実施すれば良い――。
 ともかく今は、ガミラス軍にとっては未知の存在であるハント型フリゲートを投入することで確実に得られるであろう衝撃力(奇襲効果)を、最大まで引き出す作戦構想が必要だった。
 これから始まる戦いのリングに上がる両者は、どちらも“後”が無かった。一方は母星ごと滅亡寸前にまで追い詰められ、もう一方はその国是的価値観――勝利か、然らずんば死か――から撤退・帰還を許されない者たちであった。
 地球艦隊、ガミラス艦隊共に敗北によって戦力を失ってしまえば、それが補充される望みは限りなくゼロであり、故に両者は戦闘前から知力を絞り、その準備に死力を尽くした。
 その点で言えば、既に戦(いくさ)は始まっていた。それぞれの根拠地で、工廠で、補給処で、司令部で、限られた物資とエネルギー・人員をやり繰りし、出撃する艦の整備と維持に全力を注ぎ、敵戦力の分析に寝食を忘れて没頭する――そんな後方要員同士の戦いはとっくに開始されていたからだ。

 これから起きる戦い――ミッキーマウスII作戦――は、後に地球防衛艦隊が戦うことになる幾多の大規模会戦に比べれば非常に小規模なものであった。参加艦艇数や艦の規模で言えば数一〇分の一、いや、百分の一にも満たない、極めてささやかな戦いであった。
しかし、互いの存亡を賭けているという点では――紛れもなく“決戦”であった。




――つづく。

えーーー実は、この文章の元々のタイトルは『リヴァモア級突撃駆逐艦』でした。
はい、“我が家”世界における『さらば/2』の“駆逐艦”です。
地球防衛艦隊宙雷戦術の申し子のような艦ですから、やっぱりガミラス戦役時の駆逐艦の活躍から触れなければいかんよなぁ・・・・・・と思って書き始めてみれば・・・・・・止まらない止まらないガミラス戦役・・・・・・(;´Д`A ```
気が付けば“ミッキーマウス作戦”とか名づけて悦に入り、しかも“Ⅱ”ってどうなんよ・・・・・・(汗)
で、結局『リヴァモア級突撃駆逐艦』用妄想としては完全ボツとなり(そちらは改めて書きます)、この『続・地球防衛艦隊2199』に生まれ変わった(?)訳ですw

先日の予告の際には『戦術局面にまで踏み込んで・・・・・・』と書いておきながら、今回の前編はほぼ情勢説明に終始してしまいました(唯一の戦闘局面は突撃駆逐艦のダイブだけ^^;)
次回後編はほぼ一〇〇パーセント戦術状況で行きますので・・・・・・どうかもう少しだけお付き合いください(^_^;)
後編の公開は、日曜日の予定です。
それでこの入院中に書き溜めた文章はカンバンです、はい。

ところで昨夜のNHKスペシャル「終戦 なぜ早く決められなかったのか」は非常に考えさせられる番組でしたね。
『組織』というものが根源的に持っている危うさと、それに呑まれてしまった『個人』がいかに愚劣足り得るのかということを非常に際立たせる内容でした。
そしてそれは、悪し様に言われることの多い軍部のみならず、文民組織である外務省とて同じことでした。
もちろん私は『組織』というものを否定する者ではありません。
いつ登場するか分らない天才に頼らずに、常人だけで社会を健全に維持していく為には『組織』は不可欠なものです。
ただ、『そこには常に危うさが潜んでいる』ということを認識できているかいないかで、『組織』構成員たる『個人』は随分と変わってくると思います。
昨晩あの番組を見て、自らが所属する組織のことのみを考え、決断を先延ばしにし続けた軍人や政治家、外務官僚の姿に、震災後の原発に係る政府や某電力会社の対応を重ねてしまった方も多いのではないでしょうか?
少なくとも私はそうでした。
その点、この国は本当に歴史の教訓を活しているのか?と思い知らされた夜でありました。
いや、もちろん『NHKという“組織”にそんなことを言う資格があるのか』という、いつもながらの御意見もあるでしょうが、それはまた別次元の話だと思いますねw

本当はもっと言及したい事件があるんだけどなぁ・・・・・・でも、それはまた後日にします。

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9 コメント

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アナライザーさま (MJ)
2012-08-18 20:57:37
こんばんは(^_^)
コメントと御見舞いの御言葉ありがとうございますm(__)m

> 波動エンジンの開発・実用化は果たして、一年足らずで可能なのか

この記事、非2199なんだけどなぁ・・・・・・ま、いいか(笑)
2199で波動機関完成までの期間は旧作に比べて随分と延長された訳ですが、それでも苦しいのが正直なところですよね。
前に、護衛艦の記事で『複葉機を作れるようになったばかりの人々に、超音速ジェット機を作らせるようなもの』という例えをしましたが、図面等の資料どころか、仮に現在の技術者が付っきりで教えたとしても、やはり難しいと思います。
工業水準、技術水準、生産水準、それらの水準の中にも更に様々な要素がある訳ですが、その要素のどれか一つでも要求水準に達しなかった場合、それらの結晶体である工業製品は完成しません。
一年程度ではそれら全ての水準・要素を百年単位のオーバーテクノロジーに合せて、底上げするのはやはり不可能でしょう。
でもまぁ、ファンならそんなことには目をつむって、何事も前向きに考えることが大事ですよねw

> かなり前から波動エネルギー理論の研究がなされ

これは必須のファクターでしょうね。
既に助走がついていたので、ゴールに到着するのも早かった、と。
それが独自の理論研究だったのか、ガミラス艦の研究から生み出されたのかは分かりませんが、可能性としてはそのどちらかだと思います。

> イスカンダルと地球との科学技術の格差はなん世紀

三世紀とか五世紀とか・・・・・・うーん・・・・・・どうでしょうね?(^_^;)
正直こればっかりは分かりませんですね(白旗)
返信する
MJ様へ、退院おめでとう(*^▽^)/★*☆♪ございます。熱い日々が続くなかお身体をご自愛下さい。 (アナライザー)
2012-08-18 18:35:45
さて、本日のコメントなんですが、波動エンジンの開発・実用化は果たして、一年足らずで可能なのかになります。
(たぶん、それを言い出したら切りが無いのでしょうが、汗ゞ)
わずか一年足らずで波動エンジンの開発・実用化に成功をした背景には、地球(主に日本)ではかなり前から波動エネルギー理論の研究がなされ、基礎理論技術の研究開発は高水準にあった?のではと推察をしています。
(でないと不可能なんですよね・・・・・)
地球からの脱出計画『イズモ計画』では波動エンジンの雛型が搭載される予定だったのでは?、ですが戦争による疲弊が波動エンジンの開発を大幅に遅らせ、本当に地球人類滅亡直前に間に合うのかと誰もが疑問に思い始めた時に、波動エンジンの開発を急激に技術革新速度を数十倍に早まらせる事態が発生をする。
そうイスカンダルからの使者ユリーシャが波動エンジンの設計図を持って地球に訪れた。
ユリーシャが持って来た設計図は、日本の科学者・技術者達に取って聖書に等しい存在になった、波動エンジンの小型・高出力化の壁を突破出来ずに居たからだ。
(何しろ、フライホール1つの大きさが戦艦きりしまの全高と同じになってしまい、フライホールの数も6枚も必要だった、しかも雛型波動エンジンを動かす為に・・・・・・)
そして、その問題解決をその設計図が解決をした。
画して波動エンジンの小型化・高出力化の目通しはたったが、今度はそのエンジンを動かす動力《コア》の壁にぶち当たった。日本の科学者・技術者達が開発をした《コア》では、数十倍、或いは数百倍に性能が向上をした波動エンジンを動かせない事が判明、【ヤマト】に搭載をした波動エンジンを起動させる為には、イスカンダルから届けられる予定でいたイスカンダル製純正波動《コア》の到着を待たなければ為らなかった。

とまあ、例によって懲りずに妄想仮説をたてて見ました。
汗(^_^;)
しかしまあ、イスカンダルと地球との科学技術の格差はなん世紀あるのでしょうかねー。
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> 僕は婿養子さま (MJ)
2012-08-17 22:39:34
こんばんは(^_^)

> 古代艦

間違いなく傑作キットですよね。
発売からとっくに二〇年以上が経過しているキットですが、より後発の傑作と言われるキットと並べても、全く遜色ありませんから(^_^)
B社の昔のキット、それも非ロボット系のものって、たまに妙なところに傑作が出るんですよね(^^;)
マゼラ・アタックとかビグロとかガウとか、異様にできが良かったもんなぁ・・・・・・w
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> もすけさま (MJ)
2012-08-17 09:23:26
こちらこそ初めまして(^_^)
ご感想ありがとうございますm(__)m

> 元ネタ

公式には無いと思いますが、二次創作の世界では比較的多いシチュエーションだと思います。
それだけ『ヤマトのイスカンダル航宙中の太陽系戦線』という状況は魅力的なのかもしれませんね。
逆に言えば、私の妄想はオリジナリティーを主張できるものではないと思っています。
まぁ、両軍共に故障・不発連続の極貧っぷりや戦力量が“恐ろしく地味”という点については、独自性があるかもしれませんが(^_^;)

別に私、凹んだりしていませんよw
周りに迷惑をかけながらなので恐縮ではありますが、今更焦っても仕方がないので、気長に治していきますわ(^_^)

> 大隈さま

おはようございます(^_^)

> んで、本編についてコメントをば。

いやー、催促してしまってすみません(^_^;)

> 倍の速度差まではなかったのでは、と。

突撃駆逐艦の最大戦術速力をどうするかは、このブログを始める時にかなり悩んだことを思い出しました。
旧作第一話のどのシーンに着目するかで、随分と印象が変わってくるんですよね。
古代艦がガミラス艦を沈めるシーンに着目すれば、『追尾及び撃沈に成功している』という事実から、より高い(同等の)速力が発揮可能だったと考えることができると思います。
しかし、一話全体でガミラス艦と地球艦の機動描写は大きく異なる印象で描かれていますし、特に最後の古代艦の突撃シーンで、ノロノロと突撃する古代艦の速度とその周りをクルクルと取り囲んでいくガミラス艦の速度の違いから、最終的に二倍以上の速度差があることに決めました。
古代艦がなぜガミラス艦を追尾して沈めることができたかについては、古代は護衛隊長(謎の役職ですがw)であり、沖田艦の直衛についていたが故と考えることにしました。
ガミラス艦の沖田艦への肉薄(突撃)を比較的遠距離の内に察知し、その突撃軌道を読んで自艦の軌道を交差させた形でしょうか。
まぁ、あくまで私の中での理解なので、強弁するつもりもありませんけども(^_^;)

> 「主砲で敵艦を撃沈できる」コト

本当は改カゲロウ型にも三~五インチくらいの連装ショックカノン二基を搭載したかったのですけどね。
残念ながら模型が難しいことと、妄想後編の演出上wの観点から、改カゲロウ型の主砲は従来のままとしました。
手前勝手極まりない話ですが、演出上、前編は『魚雷』、後編は『ショックカノン』で差別化したかったので(^_^;)
とはいえ、主砲へ供給可能なエネルギー出力は波動機関によって格段に強化されていますから、砲の耐久性さえ改造なりで対応できたならば、従来のフェーザー砲でもかなりの威力アップにはなっているでしょうけどね。

> 白色彗星帝国の襲来が1年後って無理

さすがにこればっかりは絶対無理ですねぇ(^▽^;)
まぁ・・・・・・言っても仕方がないので、無理やり合せていますが(爆)
以前にも書きましたが、2199の続編を作られる時には、最低一〇年、できれば二〇年先の時代設定にして欲しいです“o(><)o”
それと少し前から思うようになったのですけど、『波動コア』の設定って、もしかしたら安易に続編作らせないために製作スタッフが仕掛けた論理爆弾なんじゃないかなぁ・・・・・・とか。

> 終戦工作

東条は憲兵を完璧に手先化していましたからねぇ・・・・・・。
早期講和派としては、ここで芋づる式に釣り上げられては、講和派そのものが殲滅されかねない・・・・・・と慎重に動かざるを得なかったのは理解できます。

> 早期和平の難しさ

結末に対して明確なビジョンを描かないまま戦争を始めたくらいですから(^^;)
結局、1930年くらいから政治家も軍部もマスコミも国民も、痛みを伴う現実から目を逸らせ続けてたツケが皮肉にも自縄自縛を生み、誰にも止めようのない終末的事態にまで至ってしまったのかもしれませんね。

> 新聞

あぁ・・・・・・〇日新聞とか、戦前と戦後の豹変ぶりも含めて有名ですよねw
しかも煽った理由が『その方が新聞が売れるから』って言うんだから、ジャーナリズムが崇高な商売だなんて到底思えませんよね(思ったこともないけど)。
もちろん報道は必要ですが、そこから何を読み取るかは個人の力量にかかっているのだと思います。
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追記。 (大隈)
2012-08-17 00:59:37
1945年どころか日本政府上層部(陸海軍含む)で終戦工作がスタートしたのはマリアナ沖海戦(1944年6月)前後からだったりします。
これが何故政府全体の動きにならなかったのかというと、憲兵や特高と言った組織があちらこちらに目を光らせていた為、そして何より「相談を持ちかけた相手が本当に和平派の保証がない」という現実です。
この為和平工作(或いは降伏)を本気で考えていた人達は個人的な伝手を手繰っていく形でしか勢力を伸ばせなかったのです。
おまけに国民が本当の意味で戦争がヤバいと感じ始めたのはそれこそ頭上にB-29が襲来するようになってからで、迂闊に和平、降伏なんて言葉を口に出せない状況だった事が最大の障害でしょう。
……その状況を作り出したのは「新聞」なんですけどね。

何はともあれ、当時の状況を調べれば調べる程「早期和平の困難さ」が浮き彫りになってきます。
ぶっちゃけレイテ沖海戦なんて主戦派を黙らせる為に艦隊を磨り潰す(戦果を挙げようが挙げまいが)事が目的化していたフシすらあります。
近衛の言葉にも似た様な事がありますが、「戦力が残っている限り国内の強硬派は戦争を諦めない」のですから……。
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んで、本編についてコメントをば。 (大隈)
2012-08-16 22:42:57
実際、太陽系内のガミラス帝国軍にヤマトが大打撃を与えているわけで、地球としては若干でも余力は出ている筈なんですよね。
2199と違って波動エンジンも(状況と資材が許せば)量産可能な訳ですし、デチューン・モデルを用いた発電用や艦艇用というのは大いにありうると思います。
既存艦艇の殆どは戦没しているとはいえ、本論にあった通り少数の艦が残っていても不思議ではないでしょうし。

さらに初代ヤマトでは試製空間魚雷ではなく、通常の制式兵器としてあの魚雷(ミサイル?)が配備されていた訳ですから威力も充分。
機動力に関してはちょっと疑問があって、守の艦は相応に食いついていたので倍の速度差まではなかったのでは、と。
個人的には波動エンジン採用後の地球防衛艦隊にとっての僥倖は「主砲で敵艦を撃沈できる」コトではないかと思います。
艦首方向を敵艦に向けないと攻撃不可能な魚雷と違い、戦術的自由度が格段に上昇しますし。
にしても、作中の護衛艦とか駆逐艦、本気で何時頃初期建造艦が就役したんでしょうねぇ……。
やはり白色彗星帝国の襲来が1年後って無理があり過ぎる⊂⌒~⊃。Д。)⊃
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はじめまして。 (もすけ)
2012-08-16 22:40:55
今日宇宙戦艦ヤマト2199を調べていてたどり着きました。
探していた2199の話ではなかったですがとても面白かったです。
この話は何か元ネタがあるのですか?
大変だと思いますけど、へこまずに頑張って下さい。
また日曜日に後半見に来ます
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大隈さま (MJ)
2012-08-16 21:30:50
こんばんは(^_^)

> 「日本はもう少し早く降伏すべきだった」というのは良く聞く話

歴史状況を詳しく御説明いただきありがとうございますm(__)m
もちろん降伏が成立し得るかどうかは、相手があっての話ですから、日本のみアクションだけで決定できるものではありません。
また、実態はともかく、戦争は対米一国ではなく連合国相手ですから、他の連合国(英・ソ・中など)の思惑も少なからず絡んでくるでしょう。
ただ、恐れ入りますが大隈様のコメントには少し誤解があるようにも感じました。

番組タイトルにしても、私が昨夜の番組を見て感じた内容にしても、それは決して『日本は早く降伏すべきだったし、それが現実的に可能だった』というものではなかったと思います(もちろん、それにこしたことはありませんが)。
『なぜ早く決められなかったのか』つまりは、各状況・場面における組織トップの不決断を問うたものでした。
強引な早期降伏の取りまとめは、軍部強硬派が激発し、クーデターを起こすかもしれない、左翼革命が起こるかもしれない、様々なリスクがあったでしょう。
しかし、昭和二〇年三月以降、講和に向けた連合国に対する能動的アクションについては、各組織が協調するどころか自組織の面子と組織間優位を維持することに終始した結果、各組織が互いに牽制し合ったことで、最後まで非常に消極的だったという印象です。
また、各国に駐在する陸・海軍武官から、かなり早い時期にソ連の参戦情報を陸海軍がそれぞれ得ていながら、その情報が共有されることもありませんでした(
もちろん、それは百個の情報の中の僅か一つか二つにすぎず、信頼性のある情報として評価されなかった結果なのかもしれませんが)。
私があの番組見て強く感じたことは、『あなた方はいったい何に所属していて、いったい誰と戦争しているんだ?』という組織エゴの愚かしさです。

> 本来なら本編に関してコメントすべきなんでしょうけれど

たいした内容でもありませんし、別に良いのではないのでしょうか(^_^)
まぁ、そりゃ、、、多少悲しくはありますがね、、、(´・ω・`)
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かべ|ω・`)本来なら本編に関してコメントすべきなんでしょうけれど……。 (大隈)
2012-08-16 19:43:56
日本が早い段階で降伏を考えた(例えば昭和20年4月頃)としても、アメリカ側の都合で成立し得たかどうかは微妙な所です。
昭和20年4月12日に当時のルーズベルト大統領が死去した為、対日政策の一貫性が失われてしまったからです。
ソフトピース(対日融和策)を目指すグルー元駐日大使らは「日本は国体護持を条件にすれば早期に和平に応じる」と考えていたのに対し、ハードピース(額面通りの無条件降伏を求める)派は本土上陸作戦も辞さない心算でした。
そしてこれらの派閥が対立する中、ルーズベルト大統領はハードピース派のハル国務長官を解任、ソフトピース派のグルーを国務長官に任命しています。
が、この後ルーズベルト大統領が死去、トルーマンが大統領に就任します。
しかしこの時点でルーズベルトがどのように終戦へ向わせようとしていたのか、それを知っていた者は誰もいませんでした。
この為、ルーズベルトが表向き求め続けていた「無条件降伏」という終戦への道がそのまま引き継がれる結果になってしまったのです。
仮に沖縄戦直後くらいに日本から降伏を申し出たとしても、僅かでも条件付きであればハードピース派が黙っていないでしょうし、同じ理由でアメリカから日本に対し譲歩する事も難しかったでしょう。

「日本はもう少し早く降伏すべきだった」というのは良く聞く話ではありますが、相手のアメリカがそれを簡単に受け入れられる状態であったかは別問題なのです。

また、具体的に終戦工作を開始したのは東条内閣が倒れる前からです。
計画を立てたのは近衛文麿で、
1、最初に登場内閣を潰す
2-1、終戦に向けた内閣を発足させる
2-2、2-1が難しい場合は短期内閣を作り、あえて主戦派を首魁とする(意図的に決戦を発生させる為)
3、2-2の内閣が倒れた後、皇族を首魁とする内閣を発足させ、事態の収拾を図る
という計画を立てていました。
これらの計画は昭和19年頭頃から実働していたと言われ、日本の終戦工作は土壇場で突然起こったものではない事を示しています。
逆に言えば終戦の1年以上前から国内を混乱させない為の工作を行い、アメリカの都合もあってようやく実現したのが8月15日なのです。

早期降伏に際し、国民の戦意が衰え切っていなかったら?
若しくは陸海軍に一定の戦力が残っていたら?
「停戦は速やかなるを要す。ただし、速やかに停戦する事により和平条件を多少にても緩和すべしと期待するは誤りなり。停戦即無条件降伏と覚悟せざるべからず。人往々余力ある間に速やかに和平すべしと言う。彼の艦隊を無疵のまま残し置くべしとの説はかかる考えより出発せるものならん。然れどもこれは英米の戦争目的を充分認識せざるものなり。彼らの目的は日独の戦争力を余す所なく撃破して、再び第一次欧州戦争の轍を踏まざらんとするにあり。故に余力あるを顧みて条件の緩和を図らんとするは甘き考えなり」
「敗戦恐るべし。然も敗戦に伴う左翼的革命さらに恐るべし」というものがあります。
……どちらも政治家として無能と評されるコトの多い近衛文麿の言葉です。
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