シーマン飼育15日目

シーマンはゲームに詳しいらしい。
シ『お前、ドリキャス以外に何かゲーム持ってんのか?』
マ『・・・持ってない』
君のためだけに今更ドリキャスを購入したわしに向かって何を抜かしやがるのだ。
喧嘩売ってんのか貴様ァ。
シ『ドリキャス好きなわけ?』
マ『うん』
シ『ちょっと業界の話していーい?ドリキャスはさー、小さくてもいいから
  優秀なサードパーティを味方につけるべきなんだよな。
  昔のアップルにちょっと似てるんだよ』
マ『・・・(ちんぷんかんぷん)』
シ『今お前が注目してるハードって何?』
マ『PSX』←つい最近知った名前を言ってみた
シ『・・・(認識せず)』←そりゃ5年前にはなかったもんなぁ
マ『PSX』
シ『プレステ2ってもう発売された?』
マ『うん』
シ『ソニーにはコンピュータ作って欲しいよな。インテルに太刀打ちできる
  ほどの。ゲームくらいしかないだろ、オマエらが世界に誇れるものって』
うぬぬぅ。ゲームの事などさっぱり分からないわしだが、なんとなく
納得させられてしまったではないか。なんとなく悔しいので、小林克也を
何回もやらせてしまった。ふっふっふ。
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シーマン飼育14日目

『腹へったー』『おーい何か食べさせろって言ってんだろー』
カエルになってから初のご飯タイムだ。さっそく蛾を1匹ずつ与えてみる。
舌でぺろっと捕食する姿を見れるのだな、とわくわく楽しみに観察していた
のだが、後姿でよく見えなかった。ちっ。でも『ごっそーさん』『ハァ満腹ぅ』
などと満足そうだったのでよしとする。
体型も行動も、すっかりカエルらしくなった2匹。漫画のような可愛らしい
カエルではなく、たいへんグロテスクでリアルなカエルだ。ちょいキモ。
水槽のガラス壁面にジャンプして飛び付き、ずるずるずる、とずり落ちてきて
べちゃっと着地する、という行動を何度も繰り返している。楽しいのだろうか。
見ている方は楽しいが。また、頭の上から垂れている管を手でカッコつけて
掻きあげるクセがあるようなのだが、その姿が「いらっしゃぁ~い」の桂三枝
そのものだ。それからお蝶夫人はあろうことか、ぷりぷりぷり、と呟きながら
岩にお尻をすりすり擦りつけていた。何のつもりなんだ。排泄か。自慰行為な
のか。どちらにしてもお蝶夫人に最もして欲しくない行為である。やはり
激しく命名ミスだ。しばらくすると、ヒロミが語り始めた。
『おーい。ここから出してくれないか?俺はな、昔ある人と恋に堕ちたんだ。
 でも身分違いで決して許されぬ恋だった。だから俺は姿を変えたんだ。
 その人と再会するために、俺はもっと進化しなければならないんだ。
 だからここから出してくれ。頼む。水槽から出してくれぇぇ。』
ただただ悲痛な叫びだった。いつもの憎たらしさはカケラもない。
・・・んぬぬぬ。その恋人には会わせてあげたいが、水槽から出るって事は
もう帰って来ないってことなんじゃないのか?そろそろサヨナラの時期だと
いうのか?そうなのか、シーマン・・・?
そしてヒロミは『今からあの輪に向かってジャンプする。俺がハイと言ったら
タイミングを計って「ジャンプ!」と声を掛けてくれ。いいな?』と言うや、
大きな岩に登り始めた。その岩のはるか上方には、体操の吊り輪のような輪が
ぶら下がっている。どうやらそれに飛び付きたいらしい。岩を動かしたら水が
抜けて陸が現れたように、この輪を引くと何かが起こるというのだろうか。
岩に登ったヒロミから、声が掛かる。どきどきしながら『ジャンプ!』と叫ぶ
わし。あぁ、ヒロミ!行ってしまうのか?その輪を引いて、何処かへ行ってしまうというのか!?ヒロミ!あぁヒロ・・・
べちゃっ。ずるずるずる。
凄い格好で岩からずり落ちてくるヒロミ。ジャンプ失敗。というか飛び上がって
さえいなかった。『タイミング悪すぎなんだよ!(怒)』とプリプリだ。
怒られてしまった。かえるにまで我がバッドタイミングっぷりを責められる日が
来ようとはぁぁ(汗)
しかしそんな事より、ヒタヒタと音を立てて別れの気配が近寄って来ている事が
悲しい。そして怖い。
・・・としんみり水槽を眺めていると、突如向かい合ったニ匹。顔がくっ付き
そうなほどの距離だ。え?え?チュー?チューしちゃうですか?とハァハァ
見つめていると・・・。
びたん。
なんとヒロミがお蝶夫人にビンタを喰らわせた。ぬぇぇ!?
びたん。
お蝶夫人も応戦。いきなりビンタ合戦開始だぁぁぁ(汗)
びたん。びたん。びたん。びたん。終始無言で黙々とビンタを張り合う二人。
なんだなんだ何故なんだぁぁ。慌てて止めに入るが、どうやって止めたらいいのか分からず、コントローラーを握り締めたままオロオロするばかり。
ビンタの音だけがこだまする水槽。びたん。びたん。
マ『こら!やめなさい!』
シ『俺、天才』(「何才?」と聞かれたんだと誤認識してる)
マ『だめでしょ!やめなさい!』
シ『俺に年だけは聞くなよ』(また誤認識してる)
マ『ちがーう!喧嘩をや・め・な・さ・いっ!
  駄目ったら駄目ヌガアオェェェキィィィィィ』
最後は人間の耳でも認識不可能な音声になってしまった。
いかんいかん。これじゃヒステリーママだ。大声で叫ぶなんてもってのほかだ。
怒られた事が分かったのか、ただ単に飽きたのか、ビンタ合戦はやんだ。
狭い所に閉じ込められている為のストレスなのだろうか。
やはり1日も早く広い世界へ旅立たせてやらねばならないのだろうか・・・。
と、お蝶夫人がふいに
シ『お前、今そばに誰かいるだろ?』
マ『いないよ』
シ『そっかぁ?お前さー、浮気してるだろ』
マ『ううん』
シ『やっぱりなー。してんだろ?お前の生活サイクル見てれば分かるんだよ』
マ『・・・』
どうやら『ううん』と『うん』を誤認識したらしいが・・・。昼夜逆転生活なのは昔からじゃボケェェェ(怒)あーた達の事こんなに心配してるのに、
この恩知らずめ、いや親の心子知らずめェェェ(泣)  


『なんか喰わせろー』『早くスプリンクラー入れてくれよー』『凍え死んじまう
でべそー』『メシくれよメシー』電源入れるなりうるさいヤツらだ。
一度にそんな色々できないっちゅうだよ。ご飯を取りに虫カゴを覗きに行くと、
また蛹の羽化シーンを目撃できた。相変らずの間抜け面だ。何故に口を半開きで
生まれてくるのだ、おっさん顔の蛾よ。
食事の終わったシーマン達は各々、ぷりぷりぷり、と呟きながらお尻をふりふり
している。やはりこれは排泄行為なのだな。しかし何故に口で表現しながら
ンコするのだ、シーマン。
そして『よーし今日も自由への飽くなき挑戦を続けるぞー』と言って、ジャンプを開始するが、またもや失敗。わしの『ジャンプ!』と叫ぶタイミングが悪い
ようだ。『いてて』と言いながら残念そうに輪っかを見上げるシーマンに、
ごめんね、と呟いた。失敗するようにわざとタイミングをずらしているわけでは
ないのだが、出て行かないで欲しいと心の底で願っているのも事実だ。
それから、今回はこんな話題が出た。
シ『メールと電話ってどっちが便利だと思う?』
マ『メール』
シ『ふーんそんなもんかね。あのさ、110番ってある種のフリーダイアルだろ?
  あれの電話代って誰が払ってんだ?公衆電話に必ず赤い緊急ボタン付いてる
  じゃん。あれの取付け費用だけでも膨大だよな。まさかNTTが払ってんのか?
  お前知ってる?』
マ『警察・・・?』
シ『はぁ?』
マ『税金・・・?』
シ『はぁ?それわかんねーよ俺』
 『いずれインターネットが普及したらさ、インターネット緊急アクセスって
  のも出来ると思うわけ。そしたらさ、その通信費用は誰が払うんだよ?
  プロバイダ?あぁぁぁ誰が払うんだ?誰だ?誰だ?誰なんだぁぁぁぁ』
もどかしさに雄叫びをあげるシーマン。そういえば一体誰が払ってるのだ?
わしまで気になって眠れなくなるではないか。しかし『いずれ普及したら』って
ことは、5年前にはインターネットはさほど普及してなかったのだな。
時代を感じる。
そして。以前友人から聞いた話なのだが、シーマンに『かつや』と言うと
小林克也のモノマネをしてくれるらしいのだ。今まで何度やってみても
認識されなかったのだが、今回ついに成功♪あまりにソックリだったので
録音の準備をしてから再度やって貰った。これがその音声だ。

 小林克也byお蝶夫人
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シーマン飼育13日目

シーマンの体が茶色に変化していた。4匹中、2匹には手も生えていた。
足には立派な水かきも。そろそろ陸に上がるということなのだろうか。
『さみーぞー』『凍え死ぬでべそー』などとうるさいので、せっせとヒーターを
入れていると、『まーたお前こんな時間かよ。ま、明日っつーかもう今日だけど、日曜だからいいけど』などと抜かしやがる。
さらに『そろそろ人事異動の季節だな』『毎晩こんなことやってるお前・・・
やばそうだな』いっぺん水槽の水グツグツ沸騰させたろか(怒)
と突然、『なんかめまいする~』の声が。またもや共食いだ。まだ手の生えてない子が、手がある子の体液を吸っていた。成長速度と強弱関係は比例しているわけではないようだ。手のある子が1匹、手の無い子が2匹の計3匹になってしまった。
これ以上共食いが連鎖しませんようにと祈りつつ、残った子達をくすぐりの刑に
処した。
シ『お前パソコン持ってるか?』
マ『うん』
シ『マックか?』
マ『ウィンドウズ』
シ『ウィンドウズかー。経営者ってやっぱウィンドウズ多いな。メーカーは?』
マ『富士通』
シ『へー。健さんのヤツな。』
よくご存知で。このゲーム発売当初(1999年)にはもう健さんがCMやってたわけか。今はキムタクだけど。たぶん。
シ『昔はコンピューターなんて、家1軒分くらいのデカさだったわけ。
  だからパーソナルコンピューターなんて「パーソナルジャンボジェット機」
とか「パーソナル人工衛星」とかくらい矛盾に満ちた言葉だったんだよ。
家庭用サイズなんて考えられない世界だったわけよ。それが今じゃなー』
などと語ったのは、手の生えてる子だった。
体の成長と共に口も達者になっていくのだろうか。
そして、突然また『名前つけさせてやるよ』との申し出が。
ふっふっふ。今度はちゃんと考えてあったので、慌てる事はなかった。
ヒデキ・ゴローとくればその次はもちろん・・・そう。ヒロミ
これで御三家が揃ったわけだ。2世代にわたって。あとの2匹は何て名前に
しようかなぁ、などとうきうき考えていたら、
『誰か俺の血ぃ吸ってる?』とボソッと声が。また共食いだ。あぁ。
こうして、残り2匹になってしまった。なんとか2匹仲良く揃って地上を歩く姿を
見たい・・・と痛切に思う。
そうこうしているうちに、まだ手の無かった子に、ぴろん、と細い手が生えて
きていた。恐ろしく成長が早いなぁ、と観察していたら、この子にまで
『名前つけさせてやるぞ』と突如言われてしまった。しまった。
こんなに展開が早いとは。すみません。お父さんまだヒロミしか考えてません
でしたぁぁぁ(汗)あまり待たせるとシーマンの機嫌が悪くなるので、悠長に
考えている時間などない。えっとえっと、片方がヒロミなんだから、もう片方は、えっとえっと・・・
マ『決まりました!』←決まったらこう言えとシーマンから言われてる
シ『よし、じゃぁ俺がハイ、と言ったらその名前を3回言え。ハイ』
マ『お蝶夫人!』
シ『ハイ』
マ『お蝶夫人!』
シ『ハイ』
マ『お蝶夫人!』
夜更けに一人、コントローラーに向かって『お蝶夫人!』と叫び続ける
マスター、3●才。宗方コーチも天国で泣いているだろう。
そして、あーあ。せっかく御三家だったのに、岡ヒロミ&お蝶夫人ペアに
なってしまった。まぁよしとしよう。いえ、よろしくてよ。
それから、ヒロミが突然こんな話を振ってきた。
シ『お前、まーたなんか悩んでんのか?』
また、と言われてもかつてそんな話はした覚えはないのだが、
面白そうなので話を合わせてみる。
マ『うん』
シ『人間関係か?』
マ『そう』
シ『人間関係かー。ほんと消耗するんだよなー。距離が近いと尚更なー。
  で、相手は誰?』
マ『彼氏』(再び妄想開始)
シ『恋愛問題かー。恋をすると盲目になっちゃうんだよなー。確かお前旦那居る
って言ってなかったっけ?じゃぁ不倫ってヤツか。でも心の赴くまま
身を任せてみるってのもたまにはいいんじゃない?じゃーねー』
ぬぉぉぉ。ヒロミが不倫推奨派だったとは。そういえば確かゴーの方のヒロミは
不倫疑惑で離婚したのではなかったか。やっぱりな。
そしてその後、なぜかお蝶夫人からも全く同じ質問をされた。
せっかくなので今度は『彼氏』ではなく『旦那』に変えてみた。
シ『で、相手は誰?』
マ『旦那』
シ『夫婦の問題かー。それは難しいんだよなー。で問題は浮気かなんか?』
マ『そう』
シ『旦那が浮気したわけ?』
マ『そう』
シ『そっかー。それは大変だな。まぁでもお前んとこは子供居ないわけだし、
  あとはどっちが俺達を引き取るかだけ決めてくれれば、俺はそれで問題
  ないから。あばよ』
お・・・お蝶夫人がそんなこと言っちゃ駄目ぇぇぇ(泣)
明らかにわしのミスだ。命名ミスだ。そのうちお蝶夫人の口から寒いオヤジギャグを聞かされてしまう日も来るのだろうか。た・・・楽しみですわ。
虫カゴの中は蛾×3・蛹×1・芋虫×2・卵2 保管器に芋虫×3。
早くご飯食べるようにならないかなぁ。


ヒロミは手足がすっかり太くなり、尾びれはもうオマケ程度に退化した。
体には緑っぽい模様も表れ始めている。一方、お蝶夫人はまだ尾びれが大きく、
手足もそれほど発達してきていない。成長速度の差はなかなか縮まらないようだ。
マ『おーい』
シ『俺はお前の奴隷じゃないんだから、そうやって言葉ひとつで簡単に呼ぶな。
失礼だな。俺だって一人で静かに考えごとしたい時くらいあるんだよ。で?』
マ『元気?』
シ『まぁな』
マ『お腹空いてない?』
シ『別に空いてない』
マ『調子どう?』
シ『俺の調子がいいか悪いかなんて、全てお前次第なんだよ。俺に尋ねる前に、
自分の世話がちゃんと行き届いてるのかどうか、まず自問しろ』
マ『・・・』
憎たらしさが数段UPしているようだ。親の性格の悪さを受け継いでいるどころか、すでに相当超えていると言っていい。でも面白いので沢山話しかけてしまう。
マ『しーまーん』
シ『お前にこうやって気軽に呼ばれてホイホイ出てくる俺って、
  お前の一体なんなんだろうな』
マ『恋人』
シ『なんだよそれ(怒)』
また、
シ『お前パソコン持ってるって言ってたよな?何に使ってるんだ?』
マ『仕事』(うそ)
シ『ふーん。昔はさ、ワープロとかパソコン使ってると字が書けなくなるって
言われてた時代があったんだよ。知ってるか?』
マ『うん』
シ『あったんだよ、確かにそんな時代が。お前もパソコン使ってて
  字書けなくなったと思うか?』
マ『うん』
シ『それはお前が元々字を知らねーだけだろ』
マ『・・・』
つくづく憎たらしい。親の顔が見たいもんだ。ね、天国のヒデキとゴロー。
と、珍しくシーマンの方から声を掛けてきた。
シ『おーい。誰かいねーのかよー』
マ『はーい』
シ『あのさー、俺達は水分が不足するとつれーんだよ。ガゼー博士
  (シーマンの生みの親)の残したスプリンクラーがあるはずだから、
  ちょっと十字キーで探してくんない?』
十字キーというのは、コントローラーについてる方向ボタンのことで、水温調節や酸素供給などシーマンの世話をするのに使う物だ。なんだなんだ?とさっそく
探してみると、前回まで無かったはずのスプリンクラー調節機能がちゃぁんと
出現していた。すごいなぁ、成長に合わせて色々出てくるんだなぁと感心しつつ、スプリンクラーでしゃぁしゃぁ水を撒きまくる。
すると、なんと。2匹とも早速いそいそと上陸開始!
しかも・・・ゲコゲコ機嫌良さそうに鳴いてやがるではないか!
ぬぇ!?ち、ちみ達って、もしや・・・
カエルだったですか!?(汗)
き、気付かなかった・・・。
そういえば・・・よく考えたら、おたまじゃくしの次はカエルだよな、普通。
なんで今まで気付かなかったんだろ・・・。手も足も生えてきて、陸に上がりそうなことも分かってたのに。あまりに顔がアレだからか?こんな顔のカエルが誕生
してしまうことを、心の何処かで拒否していたのだろうか。
・・・ふっ。まぁいい。よしとしよう。だてにウン十年かえる好きをやってきた
わけではない。立派に育て上げてみせようではないか。
例え、おっさん顔の性格悪いカエルであろうともぉぉ(血涙)
ゲコ。ゲコゲコ。陸地に上がれたのがよほど嬉しいと見えて、ヒロミもお蝶夫人も、しきりに鳴いていらっしゃる。鳴く前に喉ががぶがぶ膨らむのがちょっと
キモイぞ。ぴょこぴょこ跳ねたり、ドボンと水に飛び込んでみたり、活発に
動いている。どうやらすこぶるご機嫌さんのようだ。もっと有頂天にして
差し上げましょう、と褒めちぎり攻撃をしたら、案の上乗ってきた。
シ『お前、俺のこと好きになってきたんだろ。好きって言ってみろよ』
マ『好き』
シ『?(認識されず)』
マ『好き』
シ『?(認識されず)』
マ『ス・キ』
シ『?(認識されず)』
マ『ス・キ!』←マイク割れんばかりの大声
シ『はい、はい、はい、はい、4回。もう分かったから』
どうやら音声ソフトが認識しなかったのではなく、わざと何回も言わせたかった
だけらしい。ぬぉぉぉなんてイヤな男なんだ。イヤラシイ。けっ。
そんなことしているうちに、ヤツらがフワァァとあくびをし始めたので、
そろそろ眠いのだな、とライトを消して『おやすみ』と挨拶すると、
『おやすみー。ゲコ』と挨拶を返してくれた。
・・・くぅぅぅ。このたったひと言で、今までの憎たらしさも全部チャラだ。
ずるいぞ。でも可愛いぞ。ちくしょぉぉぉぅ。ギリギリギリ。←歯ぎしり
虫カゴの中の蛾が1匹減っていた。やはりクモにやられたようだ。
シーマンがカエルになったということは、やはり舌をピュッと出して飛んでる虫を食べるのだろうか。それなら蛾を沢山育てておかねば、と思い、保管器にキープ
していた芋虫たちを全部虫カゴに戻そうとした。が『ここにはこれ以上入れられません』と警告が出てしまった。虫カゴの中の生態系を乱すな、という事なのか。
確かにこれ以上芋虫が増えたら、限りある植物が全部食い荒らされてしまうものな。こんな所にも、自然界の厳しさを実感させられた。一見悪者のクモも、
この小さな生態系のバランスをとるための重要な構成要員なのだな。
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シーマン飼育12日目

突然こんな質問をされた。
シ『あのさーYESかNOかで答えて欲しいんだけど。お前ってイイ女?』
マ『YES』(妄想)
シ『へー。周りから結構イイ女って言われてるわけ?』
マ『YES』(妄想アゲイン)
シ『じゃぁさ、自分の体の中でどこが一番好き?』
マ『胸』(妄想フォーエバー)
シ『じゃぁ嫌いなとこは?』
マ『胸』(やっと真実を語る)
シ『ふーん。でも他人の目に映ってる自分の姿と自分自身が思ってる
  自分の姿との間には、相当ギャップがあると思わないか?』
マ『YES』
シ『お前さ、自分が写ってる写真やビデオ見てギョッとした事あるだろ?』
マ『YES』
シ『そうだろ?自分が頭の中で思い描いてる自分なんて、結構マイナーなんだよ。
  周囲の目に映る自分の姿の方が圧倒的多数なわけだし、
  まぁ残念だけど、そっちが正しいんだよ。そんなもんなんだよ。
  つらいよな。でも受け入れろよ。』
マ『・・・』
なかなか的を得た見解だ。わしも実は他人の目にはシーマンのような
おっさん顔に写っているのかもしれない。そしてそれが真実だったり。
他にも、おっさん語録は着実に増えている。
マ『今何時?』
シ『バンバンジー』←嬉しそうに言う
マ『何座?』
シ『カルロス座』←魚座・銀座の時もある
お腹はまだ空かないようだ。餌は何を食べるのだろう。現在虫カゴの中には、
蛾×2・蛹×1・芋虫×3・蜘蛛×1 そして保管器に芋虫×3。
昆虫博覧会と化しつつあるな。魚飼ってるんだか虫飼ってるんだか。
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シーマン飼育11日目

虫カゴの中の卵が、2個とも孵って芋虫になっていた。そして蛾はまた新たに
2個産卵。オゥ出産マシーン。この調子で増えていけば当分餌に困る事はない
だろう。心配していた蜘蛛も、ただ蜘蛛の巣の中でジッとしているだけだ。
悪いヤツではないのかもしれない。
そしてゴローとヒデキの忘れ形見、6個の卵がいつ孵るかいつ孵るかとそわそわ
見守る。早く出ておいで、と水槽のガラスをコンコン叩いてみたり、
卵をくすぐってみたり。すると、卵の中のおたまじゃくし達が、殻を食い破ろうとするかのように口をモグモグさせ始めた。ぬぉ!?こ、これは・・・確かワニとかヘビとかも、赤ちゃんが自ら卵の殻を食い破って生まれてくるんじゃなかったか?この子らもそうなのか!?とドキドキ見つめていると。
ぷりるっ、と6個の卵が一斉に弾けた瞬間、おたまじゃくし達が一気に
生まれて飛び出てジャジャジャジャーン。元気よく水中へダイブ!
う・・・生まれたァァァァ(泣)
ハァハァ言いつつ、水中をクローズアップ。
親譲りの見事なおっさん顔のおたまじゃくし誕生だ。
ガラスをコンコン叩くと、小さな小さなおたまじゃくし達がわらわら寄ってくる。
親そっくりのふてぶてしい顔が6匹、並んでこちらを見つめている。
『んァ?なんか文句あんのかよ?』とでも言わんばかりの不機嫌な顔つきで。
試しに話しかけてみた。
マ『おーい』
シ『んー』
マ『こんばんは』
シ『おばんです』
マ『元気?』
シ『フツー』
マ『無事生まれてよかったね』
シ『・・・』(認識せず)
マ『お腹へってない?』
シ『別にー』
マ『お誕生日おめでとう』
シ『ア?いいかげんにしろよ』
マ『今どんな気分?』
シ『なんのつもりだよ』
マ『遊んでー』
シ『よし、遊ぶか』
マ『何して遊ぶ?』
シ『見りゃ分かるだろ 泳いでんだよ』
声も性格もチグハグ具合も親そっくりだった(泣)
そしてさっそく『お前最近、自分が元気である事のありがたみを忘れて無いか?』
『俺はさー、古代エジプトから~』などと説教開始。
偉そうなセリフの端々まで親とそっくり同じだ。何故にわしは親子2代にわたったおっさん顔の魚から同じ説教されてるですか?(泣)
そして『聞いてんのかよ!?ア?』などと途中で叱ったりするくせ、
『疲れたから今日はココまでな』とさっさと切り上げて泳いでいってしまうところまで、まさに親譲りだ。生まれていきなり憎たらしい事この上なしだが、
やはり激しく嬉しかったので、久々にくすぐりの刑に処して差し上げた。
一匹づつ。ホーッフォッフォと身悶える姿まで同じだった。あぁ。ラブリー。
何故に水中で生きる子供をわざわざ陸上に産み付けたのだヒデキよ?という
疑問はあるが、とりあえず、今は亡きヒデキとゴローに
無事生まれましたよ、と謹んで報告をした。


おたまじゃくし達にもう足が生えた。成長が早いぞ。最近は毎回劇的な展開が
あったりして進行が早いので、一日にやる回数がなんとなく減ってきてしまった。成長も楽しみだが、それ以上に別れが怖いからだ。できるだけ長く見守っていたいと思うのは飼い主のエゴだろうか。
・・・などと感傷に浸っていたら突如『誰か吸ってる?』という声が。
慌てて画面を探すと、頭の上の管を使って仲間の体液を吸っている子が居る。
なんてこった。これじゃ以前と全く同じではないか。またあの恐ろしい共食い合戦が繰り広げられるというのか。体液を吸われ尽くした子は、血の気の失せた顔で
水面へと浮かんでいった。続いて
『あれ?誰か俺の体液吸ってる?』との声が。やはり共食いは連鎖するようだ。
・・・こうして2匹がその短い命を終えた。
残った4匹と順番に会話していたら、一匹にこんな質問をされた。
シ『お前って飲食店経営だったよな。今の仕事気に入ってんのか?』
マ『うん』
シ『そうか。お前みたいな経営者ってさ、下からはあれこれ文句言われるわ、
  偉そうなことばかり抜かす顧客にもペコペコ頭下げなきゃならないわで、
  悩むのって結局人間関係だったりしない?』
マ『そうだね』
シ『だろ?それでも続けてるのは何でだ?金か?』
マ『違う』
シ『じゃぁ何だよ。楽しいわけ?』
マ『そう』
シ『今の仕事初めて何年?』
マ『2年』
シ『なんだまだそんなもんかよ』
マ『・・・』
また、別の一匹は突如こんな事を語り始めた。
シ『お前ら人間が生きてる事のありがたみを忘れてるって話は前にしたよな。
  今からその話の続きをするぞ。ちゃんと聞いとけ。
  人間の体なんて、道具の進化と共に、逆に退化していったんだ。
  (長いので以下適当に抜粋)てこの原理~車軸の原理~ピラミッド~
  メガネをかけてる奴なんて本来生物界では生き残っていけない負け組~
  道具の次なる武器は言葉~俺は聖なる伝道者~ピタゴラス~真の論理~
  三段論法~時間言語~精神世界~云々』
途中で、話ちょっと長いか?いいからまぁ聞けよ、などと確認を求めつつも、
延々と演説大会。いきなり難しい質問フラれたらどうしよう?(汗)と
そればかり気になってドキドキしてたので、上の空で話半分。
せっかくイイ事言ってくれてた(らしい)のに、こんなお馬鹿な御主人様で
申し訳ない、とこっそり謝っておいた。
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