掃除マジック

お茶でも入れようかな、とあなたは台所でお湯を沸かしています。
ふと、壁タイルの隅っこの油ハネに気付きました。
キッチンクイックルを取り出し、ちょっと拭いてみます。
汚れが綺麗に取れました。そこだけピカピカです。
ちょっとその周りも拭いてみたくなります。
拭いてみました。見事に綺麗になりました。
まぁなんて汚れていたんでしょう。
ヤカンがピーピー鳴り始めたので火を止めます。
おや?お茶を飲むんじゃなかったんですか?
そうですか。もうちょっと拭いてみたいんですか。
もうちょっと、もうちょっと、と言っているうちに、とうとうタイルを全部拭いてしまいましたね。
とっても気持ちいいですね。
おや?今度は蛇口の根元の水垢が目に入りましたね?
液体クレンザーを取り出し、ゴシゴシ擦り始めます。
ピカピカになりました。
おや?どうしたんですか?
今度はシンク全体を磨いているじゃないですか。
もういいじゃないですか。
…え?
やめられない止まらない?
あちこち気になり始めちゃった?
まるで催眠術にかかったかのように手が勝手に動いてしまう?
…ふっふっふ。
…そうです。
それが掃除マジックなのです。

その掃除マジックに、見事にかかっちまいやした、本日(泣)
きっかけは洗面所の鏡の歯磨き粉飛びだったんですが、洗面所からお風呂場に飛び火、現在台所に進出中。
すんごい勢いで家中掃除しまくってます。
やめられません。止まりません。
このままでは、年末恒例スペシャルイベントであるべき大掃除にかなりフライング気味に突入しそうな勢いです。
だ、駄目です。それだけは駄目です。
『年末大掃除』は『年末』にやるから『年末大掃除』なんだぁぁぁ。
こんな半端な時期にやっちゃったらちっとも年末イベントっぽくないじゃないかぁぁぁ。

…あぁ。
でもやめられない止まらない。
それが掃除マジックの恐ろしさなのです。
誰か止めてぇぇぇ(泣)
コメント ( 0 ) | Trackback ( )

年賀状と訃報と吉報と

年賀状を印刷していると、
『年内に親類がぽっくり逝っちゃったりしたらこのハガキ無駄になるよなぁ…』
などと不届きな考えが頭をよぎりませんか?

印刷の途中でふと手を止め、やっぱり残りの印刷は年末ギリギリにしようと決意した直後、
皇族逝去のニュースを知り非常にべっくらしたマスターです、こんばんは。
いや、もちろん親類でも何でもないのですけれども。

ほいで各局訃報ニュースが繰り広げられる中、小室家披露宴生中継を強行したTBSに更にびっくり。
普段はTVってほとんど見ないんですが、厳粛ムードとお祝いモードが入り乱れてなにかしらハプニングでも起きやしないかとわくわく披露宴の中継を見てました。

今頃TBSは右翼の襲撃に合ってるのかなぁ?
間違いなく苦情の電話は殺到してるんだろうなぁ。
まぁ皇族って言っても、新聞に載ってた皇位継承順位図を見ると微妙に遠い人っぽいから、そうでもないのかなぁ。
でも年配の方々からは反感買っただろうなぁ。
滅多にTV見ないわしでさえ見てる位だから、視聴率軽く30%くらい行ってるな、こりゃ。
招待客、さすがにゴージャスだなぁ。
華原朋美が『あ~きら~めま~しょう~♪』とか歌いながら乱入してきたらおもろいんだけどなぁ。
おぉぉぅアムロだ。サムとは別れたんだっけ?
そう言えば小室は吉本入りしたんだったな。
だからお笑い芸人がいっぱい居るのか。
カメラ向けられた今くるよ姉さんが、勢いで『スカッシュ!』とか言いつつ腹をぱぁんと一発やらないかなぁ。やらないだろうなぁ。
ぬぇぇぇぇぇぇ!?
YOSHIKIってglobeに加入したのぉぉぉぉぉぉ?
ほへぇ~知らなんだ。はぁびっくらした。
ほいじゃぁあの変な外人はクビだな。
分け前減るからな。
いや、元々あの外人にギャラは行き渡ってないのかもしれんな。
このゴージャス披露宴も、小室の税金対策だったりして。
ええなぁ、笑っちゃうほど儲かってるんだろうなぁ。
こういう独占中継の権利って、一体なんぼ積んで手に入れたんだろ。
吉本興業とTBSでなんか繋がりがあるってことかなぁ。
まぁ、いいか。
とりあえずおめでたい席(!?)だから、呑んどくか。
まだ二日酔いだけど、迎え酒しとくかねぇ。
ちょっとは良くなるかな。
ぬぁぁぁ。んまい。
やっぱ迎え酒ビールは、胃にピシッと愛のムチなカンジで美味いなぁ。
それにしても、わし、小室ってあんまり好かんのになんでこんなTV見てるんだろう。
KEIKOだってあんまり好みの女じゃないのになぁ。
やっぱ、あの気の強そうな顔面がいかんよ、顔面が。
いや、正直言っちゃえば、嫌いなんだろうな。二人とも。
なんつったって、あのチキチキサウンドがどうにも好きになれんのだよなぁ。
まぁ、あんだけ売れてるんだから、ちゃんと売れる理由があるんだろうなぁ。
わしには理解できんくても。
いや、売れてるっつっても、もう下火か。
今回の中継は、どぉんと起死回生を狙ったんだろうなぁ。
…などと言ってるうちに、ぬっという間に披露宴はクライマックスに。
あっ。あっあっあっ。
小室が泣いとるぅぅぅぅ。
感極まって涙ぐんでるじゃないかぁぁ。
…うぅむぅ、なぁんだ。
なかなかええヤツなんじゃないか、小室。
なんか誤解してたのかなぁ、わし。
あ。ちょっと好きになってきたかも。
いやいや。騙されちゃいかん。
ヤツは商売上手だからな。好感度UPを狙っての事かも知れん。
いやいや。深読みしちゃぁいかんよ。
本当に心からの涙かも知れんじゃあないか。
おっ。やっぱ最後は二人の演奏で〆るのか。
まぁそう来るだろうなぁ。
あっ。この曲は知っとるぞ。さすがにわしでも知っとる。
むっちゃ売れたもんなぁ。思い出の曲なのかなぁ。
KEIKOの歌い方ってなんか好きになれないんだけどなぁ。
まぁ色んな思いを込めて歌っとるんだろうから、聞いとくか。
あっ。あっあっあっ。
KEIKOも泣いとる。やっぱそうだ。
きっと二人の思い出の曲なんだ。
ぬぉぉぉぅ…泣いとる。


何故かわしまで泣いとる。


なんで?なんでなんでなんでなにょ?
あんまし好きでもない二人なのに、
どっちかっつぅと嫌いな二人なのに、
なんでわしまでもらい泣きしちゃうの?
よりによって小室ファミリーの披露宴中継で。
二日酔い後の迎え酒で涙腺が緩んでるのか?
…いや待てよ。
そういえば、つい最近も何かで泣いちゃって自分で自分にびっくりしたよなぁ。
あれは何の時だったっけ。
やっぱ年と共に涙腺弱まってるのかなぁ。
絶対泣かないのがチャームポイント(!?)だったのになぁ。

…あっ。
思い出した。あれは確か。
久々に指に『ささくれ』が出来たんで、面白くてぴろぴろ剥いてたら
指の根元の方まで剥けちゃって痛さで泣いた。
うぅぅむ。
どうやら涙腺の強度とはなんら関係ないようだな。
『慶んで』なような『悼んで』なような
企業戦略にまんまと乗せられたような
ワケ分からぬまま、オチがつかぬまま、
もらい泣きと迎え酒にオチてゆくマスターなのでひた。ぬひひ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( )

おじちゃんからの

買い物はもちろん、日常生活にまつわる全ての用事を、自宅から半径百m圏内で強引に済ませがちな霊長類ヒト科高円寺属ナマケモノのマスターです、こんばんは。

昨日ね、買い物しようと家を出て、道を歩いてたんです。
すると、一台のワンボックスカーが歩行者をよけつつノロノロ向うからやって来るのが目に入りました。
助手席側の窓からは、人の手がヒラヒラ。
どうも誰かを手招きしてるようです。

運転手も助手席のおじちゃんも、頭にタオルを巻いた作業着スタイル。
助手席のおじちゃんは、満面の笑顔で、んもぅにっこにこのくっしゃくしゃの笑顔で一生懸命に手招きしています。
年の頃は50代から60代くらいでしょうか。
仕事焼けと酒焼けがミックスされたような、浅黒い肌。
見るからに情の厚そうな、人懐こい笑顔。
車の後部座席には、ペンキだか洗剤だか分かりませんが、なにやら業務用の道具がぎっしり詰まっているのが見えます。

あぁ、仕事帰りのおじちゃん達なんだな、今日も一日ごくろうさん。
どうよ、今日は疲れたかい?早く家に帰ってビールで一杯やりたいでしょう。
誰か知合いを発見して手招きしてるんだねぇ、でもなかなか気付いてくれないんだねぇ。

と、なんとなく微笑ましいその光景を眺めつつ歩いてたんです。
おじちゃん、ついに窓から上半身乗り出しちゃって危ないなぁ。
ほらほら、通行人にぶつかっちゃうよぉ。
知り合いの人はどうして気付いてあげないんだろう。
おじちゃん、あんなに手を振ってるのになぁ。
よっぽど会いたかった人を偶然発見したんだろうなぁ。
思い出の人なのかな?幼少の頃に生き別れた妹とか。
まさか初恋の人だったりしてね。
こんな街中でばったり出会ったら、運命的な再会だよなぁ。
あんなに手を振ってるんだもん、きっとそうだよ。
ほいで、恋が再燃しちゃったりして。
おじちゃんの年じゃあ妻子があるだろうから、不倫!?
いや、相手も夫と子供がある身なんだけど『このまま連れて逃げて』とか言われて、二人でどっか外国に逃避行しちゃうのかも。

『おぅヤス、このまま空港までやってくんな』
『ええ?親方、帰るんじゃないんスかぁ!?』
『ぅるせぇっ!黙って空港へ行けぇぇぇ』

…などとウキウキ妄想列車を暴走させていると、車はもう目の前に。

そして。

わしの横でぴたりと止まった車。
にこにこ笑顔のおじちゃんが、じっとわしの目を見つめています。

『わ、わし!?』

と、咄嗟に自分の鼻を指差すと、おじちゃんは笑顔のままウンウンと頷きます。
辺りをキョロキョロ見渡して他に該当者が居ないか確かめてから、再度『わし!?』と鼻を指差すと、おじちゃんは笑顔のまま再度ウンウンと頷きます。

わ…わしなの?
さっきから激しく手招きしてた相手はわしだったと言うの…??
ど、どう見ても、し、知らないおじちゃんだぞ?
んん?…待てよ?
知ってる人なのかも…?と、瞬時にめまぐるしく過去の記憶をまさぐるが、該当人物なし。
おじちゃんは、相変わらず笑顔のままわしを手招きしています。

な…なんだろう?
新手の誘拐か?
このまま拉致監禁なんて事態に…?
いや、誘拐して身代金が取れそうな相手じゃない事くらい見りゃ分かるだろう。
ソープに売り飛ばしたところで一銭も儲からなそうな事はもっと分かるだろう(泣)

な…なぜにわし?
あなたは一体誰?
おじちゃぁぁぁぁん!?

クエスチョンマークで頭の中が埋め尽くされていたのも、実際にはほんの数秒間だったでしょう。
おじちゃんの目に見つめられ、手招きされ、まるで吸い寄せられるようにワンボックスカーに近付いて行ったわし。
無視して通り過ぎる事だって十分可能だったわけですから、まさにおじちゃんの笑顔に吸い寄せられたとしか言いようがありません。

助手席窓の横に立ったわしに、おじちゃんは笑顔のまま、さっきまで手招きしていた手とは反対の手を窓からにゅっと差し出しました。
なにやらギュッと固く握り締めたグーの手を。

するとどうでしょう。
あぁ。条件反射です。
人間の悲しい、いや、貧乏人の卑しい条件反射です。

目の前に下向きグーを出されると、思わず両手で受けるポーズを、すなわち蛇口の水を受けるポーズを、すなわち

『なんかイイもんくれるの?ポーズ』

を条件反射でしてしまっているではありませんか。
今、思い返すとゾッとします。
おじちゃんのあの手の中にもし、某国が極秘裏に開発した生物兵器でも入っていたとしたら。
小型核爆弾が入っていたとしたら。
金銀パールプレゼントが入っていたとしたら。
(それは好ましい)

話がそれましたが、条件反射でわしが出した両手におじちゃんの手から落とされたモノは。


落花生6粒。


な…何故にぃぃぃぃぃぃ。
長い時間、おじちゃんが握り締めていたからでしょうか。
ソレは人肌に、いい塩梅に温まっていました。
ええ、心地よく。ほかほかに。

両手の平にほかほかの6粒の落花生を乗せたまま呆然と立ち尽くすわしを残して、おじちゃんを乗せた車は何事も無かったかのように走り去って行きました。

な…なんだったんだ一体?
おじちゃんは誰だったんだ?
この落花生は…なに?
どうしたらいいの?食べろってこと?
おじちゃんはなんで終始無言だったんだ?
単なる好意?

落花生を食べつつ
『おぅヤス、この落花生うめぇなぁ』
『うまいッスよねぇ、親方ぁ』
なんてほのぼの帰宅途中、いかにも栄養が足りてなさそうなわしが通りかかったもんだから、思わず落花生をあげたくなっちゃったんかいな?

落花生を握り締めたままでお店に入るわけにもいかないので、買い物はあきらめて、あんまりの不思議な出来事に首を捻りながら家に戻りました。


今、わしのPCモニターの脇には、6粒の落花生が飾ってあります。
コメント ( 0 ) | Trackback ( )

ACM初体験~後編

『それではお客様のお名前・住所・電話番号をお教え下さい』

そう来たか。
該当データが無ければいっそもう手動でデータを入力してしまえ、という最終手段に出ようというのか。

…よしわかった。いいだろう。
君のやりたいようにやったらいいよ、おねいさん。
『何故該当データが無かったのかを考えてみる』よりも、
『自動入力されるはずの空欄を手動で強引に埋めてしまう』という
思い切った方法を選んだ君に乾杯。
もうこうなったら、どこまでも着いて行きますよ。
言いましょ、言いましょ。住所でも電話番号でも何でも。

…と、ちょっと面倒臭いなぁとは思いつつも、おねいさんに問われるがまま、まず住所を答えると、画面上に一文字一文字住所が入力されていきます。

う~む、やはり入力が遅すぎる。
でもおねいさんの顔が一生懸命だから、まぁ許しちゃう。
あくまで笑顔を崩さないよう努めながらも、眉間にちょっと皺が寄っちゃったりなんかして、一生懸命入力しとる顔がたまらんのぉ。
しかしあれだな。リアルタイムで、しかも一文字一文字タイプして変換して決定される模様まで実況されちゃうのは、ちと笑えるな。

あっ。高円寺は『公園時』じゃないっちゅぅのねん。
なんで『こうえん』で先に変換しちゃうの?
あっ。消えた。…おぉぉぅ打ち直しとる。
『こうえん』待て!まだそこで変換しちゃいかーん!
『こうえんじ』よし、そこだ!そこで変換だ!

…よし。直ったよ。ふぅ。焦ったじゃないか。

『次はお電話番号をお願いします』
『はい。03の××××の△△△△です』
『あ?ち…ちょっとお待ち下さい』

…ん?おねいさんの身に何が起きたんじゃ?
と画面を見てみると、電話番号入力欄に

『03-××××-△△△△』

とちゃんと入力しようとしてるらしいのだが、途中で数字が消えてしまう。何度もやり直してるらしいが、それでも数字は途中で消えてしまう。

子画面の中のおねいさんのデコが、再び輝き始めている。

…お…おねいさーん!
待てーい!落ち着け!
画面をよく見て!
電話番号入力欄は3つあるんだぞ!
っちゅうことは、『市外局番』『市内局番』『下4桁』に分けて入力する筈だぞ?
な…なぜに君は無理矢理1つのブロックに詰め込もうとしているのだ?…しかもハイフンまで使って。

『…あっ!』

という呟きと共にやっと真相に気付いたおねいさんは、隣のブロックに移動して数字を入力し始めた。

…ふぅ。よかったよかった。自分で気付いてくれたよ。
顧客から指摘されたんじゃ、おねいさんのプライドずたずただもんなぁ。
よかったよかった。まぁこうやって一つ一つ仕事覚えていくんじゃろ。
それにしても、社員教育がなってない銀行だなぁ。
これじゃぁ、おねいさんが可哀想じゃないか。
操作マニュアルとかないのかなぁ?
こんな行き当たりばったりで大丈夫なのかしらん?
分からない事だらけで、このおねいさん、毎日辛い思いをしてるんじゃないだろうか?

『優子ぉ~。今日もミスしてお客様に怒られちゃったのよぉ~』

とトイレで同僚の胸でさめざめ泣いてたりしないだろうか。

…などというわしの心配をよそに
『それでは再度検索しますのでしばらくお待ち下さい』
と言い残し、またおねいさんの子画面がフッと消える。

…そうか。今わしが言った住所や氏名なんかを元に、逆に顧客番号を検索しておるのだな。
そんな回りくどいやり方するより、顧客番号をわしに聞き直した方が手っ取り早くなかったかい?
という思いはそっと胸にしまい、ひたすらおねいさんの再登場を待ちます。
ひたすら。ただひたすら…。

と、おねいさんが画面にフッと現れました。
激しくホッとした表情です。激しく嬉しそうです。
そして心なしか、目が誇らしげです。

『お客様のデータが見つかりましたぁぁぁぁ♪』

と、受話スピーカーが割れるほどの大声で叫ぶ愛しい人よ。
あぁ…よくやった。おねいさん、よくやったねえ。
頑張ったね。さっきは泣きたい気分だったでしょう。
こっちも泣きたかったけどね。
これでひと皮剥けたねぇ、おねいさん。
この数々の試練を乗り越えたんだもの、きっと次からはサクサク操作できるねえ。
次のお客様も、わしみたいにおねいさんの顔が好みか、恐ろしく気の長い人かどっちかだといいねえ。うんうん。

その後は結構スムーズにやり取りが進んで、なんとか無事に取引終了。
途中、『金利区分』と入力すべき箇所が何度やっても『禁裏九分』になってしまい、どうやったらそんな変換になるのか小一時間問い詰めたい衝動に襲われましたが、なんとか無事終了。

ほひぃ…と全精力を使い果たした脱力感で個室ブースを出ると、そこには順番待ちの長蛇の列が。
…しかも。出て来たわしを、全員が非難轟々の眼差しで睨んでいるではないか。

ち…違います違うんです!
時間がかかったのは、
わ、わしのせいじゃないんですぅぅ(泣)
うぁぁそんなに睨まないでぇぇぇ(泣)


などと小心者のわしが言えるはずもなく、ひたすら長蛇の列に向かって
『すびばせん、すびばせん』とぺこぺこ謝りながら小走りでその場を去ったわしだったのでした(泣)

長文になりましたが、『ACM初体験の巻』おわり(泣)
コメント ( 0 ) | Trackback ( )

ACM初体験~前編

皆さんはACMってご存知ですか?

今日ね、用事があって銀行に行って来たんです。
『ACMでお手続きお願いします』って案内されて初めて知ったんですが、『ATM』じゃなくって『ACM』っちゅう機械が出来たらしいんですよ。その手の省略称号が異様に気になるわしが帰宅後すかさず調べたところ、

ATM=Automated Teller Machine『現金自動預入れ及び引出し機』
ACM=Automated Consulting and contract Machine『自動応対サービス機

っちゅう事なんですが、まぁ英語はさておき。
ACMって何じゃ?と首を捻るわしが係員に連れて行かれたのは、ATMが並んでるコーナーの片隅の、ちょっとした個室ブース。
中に入って椅子に腰掛けると、丁度顔の前の位置にATMのタッチパネルみたいなヤツがあり、その下には書類を出し入れするための、ATMの現金出入口みたいなのが付いている。
机の上はコピー機のようになっていて、扉をぱかっと開けるとスキャナーが現れ、身分証明書等をスキャン&リアルタイム送信できるようになっている。これらを使って、口座開設や住所変更やローン申込等の各種手続きが、窓口で順番待ちをすることなく機械で簡単に出来ちゃうらしいんです。

…ぬぉぉぉう。何てハイテクな世の中になったんじゃぁ。
わしがヒキコモリ生活してるうちに、外界はどんどん進化しておるのぉ。
すごいぞすごいぞ。なんだかドラえもんの世界っぽいぞ。
これじゃぁ、全ての銀行が無人化される日もそう遠くはないなぁ。

…などと感心しながら、画面の指示に従ってタッチパネルのボタンを押していくと、突然画面上に子画面が出現して
『お待たせ致しました。本日担当させて頂きます○○と申します』
と、こぼれんばかりの営業スマイルのおねいさんが登場したではないか。

ぬぉぉぉ!こいつはテレビ電話になっとるのか!
しかも、ほとんどタイムラグのないスムーズなテレビ電話ではないか。
ぬぉぉぅ、すごい。すごすぎる。ますますドラえもんワールドだ。

オペレーターが画面上で親切に指示してくれるなら、お年寄りでも安心だしなぁ。それにしても、なんとも初々しいおねいさんであることよ。新卒ほやほやかなぁ?スレてないっちゅぅか、まだ板に付いてないぎこちない営業スマイルがオヤジ心をくすぐるっちゅぅか。まぁ手っ取り早く言えばわしの好みの顔だ。

そんなわしの感動を知ってか知らずか、インカムを装着したオペレーターのそのおねいさんは、子画面いっぱいに笑顔を振りまきながら言います。

『まず左手にございます受話器をお取り下さい』

おお?これか?なんで受話器?自分はインカム付けてるくせに。
わしもインカムがええなぁ。インカムの方がかっこええのになぁ…などと不満に思いながらも、受話器を取りました。
これ以降、子画面の中のおねーちゃんの顔を見つつ、音声は受話器でやりとりするわけです。

『はい、それではお客様番号をお教え下さい』
『えっと~、××××、△△△△、○○○、・・・・です』

と十数桁の数字を答えながら画面を見ると、おねーちゃんはうつむき加減でカチャカチャ入力してる様子。と同時に、メイン画面の顧客番号の欄に、わしが今言ったばかりの数字が次々と表示されていくではないか。

うぉぉぉぉ。おねーちゃんが入力してる文字が、リアルタイムで画面に出るんだ。すんごいなぁ~画期的。ビバハイテク!ビバおねいさん!

…それにしても、ちょっと入力遅いなぁ。
これじゃぁわしの方がまだ早いんでないかい?
テンキーでこれじゃ、文字入力はもっと遅そうだなぁ。
まぁ、可愛いから許しちゃうけど。
やっぱ新人さんなんだろうなぁ。
…あっ!そこは200じゃなくて020なのに。
ちゃんと復唱までしてたのに、なんで間違っちゃうのん?
これ…間違い指摘していいもんなんかなぁ?
一生懸命やってるのに、おねいさん傷つくよなぁ…。
『うぅっ(泣)私、辞めますっ』とか泣いちゃわないかなぁ。
でも最初に顧客番号を聞いてきたってことは、その番号から顧客データを呼び出すってことだよなぁ。
この画面にある、住所・氏名・電話番号・生年月日とか空白の欄はさぁ、顧客番号から呼び出されて一気に自動入力されるようになってるんじゃないのかなぁ。
その検索キーの番号が間違ってたんじゃこの先進めないもんなぁ。
やっぱ教えてあげなきゃマズイよなぁ。
『すいません。私番号言い間違えちゃったみたいです』
とか言えば、おねいさんもプライドが傷つかなくていいかなぁ?
それともズバリ『そこ間違えてますよ』って言った方が、おねいさんの今後のタメかなぁ。う~むむぅぅ。

…などとわしがあれこれ悩んでいると、
『お待たせ致しました。ではデータを検索しますので、受話器を置いてしばらくお待ち下さいませ』
と言い残し、おねいさんの子画面はフッと消えてしまいました。

あっ。あっあっあっおねいさーん!ちょっとちょっと!
検索しても出ないってばぁ!と言う隙も与えられず、ポツンと取り残されたわし。

…ぬ~むむぅ。まぁこうなったらしょうがないか。
検索に失敗すれば、番号が間違ってる事に気付くだろうしな。まぁ待ちましょ。

それにしても、よう作ったなぁ、こんな機械。
むっちゃ高いんだろうなぁ。数千万円単位?
おぉう、ちゃんと朱肉と印鑑拭きティッシュも設置されてる。
この印鑑拭きティッシュというヤツは、銀行用に特別生産されてるのかなぁ?
それとも暇な時に行員が手分けしてちまちま切って作ってんのかなぁ?
新人さんの役目なのかも。

『あ~ぁ毎日毎日印鑑ティッシュ切らされてぇ~チョームカツクぅ~』
などと給湯室で愚痴ってるのかなぁ。

…おっと。あんまりキョロキョロしとると、挙動不審で係員がすっ飛んで来ちゃうな。どっかに隠しカメラが仕込んであってこっちの様子はどっかで監視されてるんだろうからなぁ。

…それにしても遅いなぁ。遅すぎるよなぁ。
間違った顧客番号で検索かけても『該当するお客様は存在しません』とか出てるんだろうなぁ。おねいさん困って泣いてるのかなぁ。
大丈夫かなぁ?それとも懲りずに何度も検索かけてるのかなぁ?
何度やっても出ないもんは出ないんだけどなぁ。番号違うんだから…

『大変お待たせして申し訳ございませんでした』

キタキタキタァァァァ。
おねいさん、やっと登場。

…ぬ?
子画面の中の彼女の額が、なにやらキラキラ輝いている。
ま…まさか…汗…?
汗かくほど何度も検索かけてたというのか?
わ…悪い事しちゃったなぁ。
さっさと教えてあげれば良かったよ。
ごめんよぉ、おねいさん。
あ~ぁ。なんかこの数分の間に、3つも4つも年とっちゃったみたいにヤツレてるなぁ。
相当困ってパニクっちゃってたんだろうなぁ。
営業スマイルも強ばって、なんか目がオドオドしちゃってるし。
これからわしに顧客番号をもう一度言わせて、再検索してる間また待たせなきゃならないんだから、ビクビクしてるんだろうなぁ。
きっと前にも『貴様のミスで客を待たせるとはけしからん!』とか怒られた苦い経験があるのかもしれないしなぁ。
でも大丈夫だよ、おねいさん。わしはそんなに意地悪じゃないよ。
もう一度顧客番号言い直すくらい、屁でも…


長いので後編に続く。
コメント ( 0 ) | Trackback ( )
« 前ページ