ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

8月15日はライオン銀座7丁目店でビールを飲もう

2006年08月15日 | アフター・アワーズ
 ライオン銀座7丁目店のビヤホールは昭和9年(1934年)創建の店舗がそのまま残されていて、壁面のモザイク画とともに昭和初期のレトロな雰囲気に浸れる。

 ホールいっぱいの客とウエイター、ウエイトレスのきびきびした振る舞いがかもしだすビヤホールならではの活気にひたっていると、ミュンヘンあたりのビヤホールにいるような気分になる。老夫婦が2人でジョッキを傾けている。柱の影の席でひとり蝶ネクタイの紳士がパイプをくゆらせていたる。客も老若男女幅広い。つまみもアイスバインから冷奴まで多彩。ちょっと昼下がりに一杯のつもりがついジョッキが進んでしまう。
 
 70年以上前の戦前の建物がそのまま残され使用されているのは、もはや東京では数少ないが、それだけにメニューに記されていた老婦人のエピソードを読んで、ウルウルッとさせられた。

 老婦人は少女時代、戦地に赴く前の父親にこの店に連れてきてもらったのだという。父親はジョッキを、少女はリボンオレンジを注文してひと時をすごした。その後父は帰らぬ人となった。もう一度この店を訪ねる気になったのは60年以上もたってからだった。ビヤホールはあの時と何も変わっていなかった。あの日に連れ戻してくれたことに感動して、店の方に感謝の言葉を述べたのだという。
 
 僕はこういう話に弱い。メニューにさりげなく書かれていたこのエピソードを読みながら、少女は、きっと強くてやさしい父親が大好きだったのだろう、少女の胸にはこの日の父親の笑顔が永遠に刻まれていたのだろう、その思いが伝わってきて目頭が思わず熱くなった。
 
 今日は8月15日だ。あの鳥居をくぐるより、この少女の気持ちになってライオン銀座7丁目店でビールを飲んでみよう。
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