さて、光秀は、またまた信長に呼び出されたらしく…(苦笑)
「改元を言上した。本来、改元の申し出は将軍が行うべきもの
なれど、今、将軍はおらぬ。ワシがその役目を負わずばなるまい。違うか?」と訊ねられ
心の底から、両手を上げて賛成!…といった表情ではないながら「仰せの通り…」と答えると
「そうしたら…見よ!早速、朝廷から5つの案を出して来た
うーん…やはり、これだな…『天』が『正』しい…『天正』!どうだ?」と再び質問
光秀が、先ほどと同じような表情で頷くと「よし、決まりだ!」と一人完結(笑)
光秀が「時に…公方様をどうなされるおつもりでございますか?」と訊いても
「将軍?家来を何人か付けて、どこへでも追い払えば良い。藤吉郎に任せてある」
と、もうそんなことはどうでもいい…といった調子(苦笑)
そんなことより…と、ばかりに「武田のこと、聞いておるか?
三河に攻め行ったあと、急に兵を返したというが…信玄めに何があった?
東への心配がなくなれば、一息に朝倉・浅井を潰せるのだが…」と口にし
光秀は辺りを見回した上、信長にだけ聞こえるような声で
「まだ確かなことは判りませねが、武田信玄が死んだという噂がございます」
と、菊丸の部下から受け取った文に書かれていた情報を明かすと
その後、元号が改まった天正元年、岐阜に戻った信長に
浅井家の重臣が寝返ったとの知らせが入るや、その夜の内に近江へ出陣
同じ頃、朝倉義景も越前から出陣しており、信長は再び朝倉・浅井軍と激突
織田軍の急襲により、朝倉家家老の山崎吉家は討死
勢いを増した織田軍は、義景の本拠・一乗谷へ突き進んで火を放ち
満身創痍で賢松寺に逃れた義景は、一門である朝倉義鏡から
「最早これまで…義景殿、ここは潔くお腹を召されませ」と迫られ
「馬鹿な!ここでワシが腹を切れば、朝倉家はどうなる!
百年続いた朝倉家の名が絶え果てるぞ!」と断固拒否
…が、景鏡が寝返ったことに気づき、寺の外に出ようすると、鉄砲隊が取り囲んでいて
「お主ら、誰に筒先を向けておる!
足利尊氏公から、越前をあてがわれて以来11代、一乗谷に本拠を構えて5代
ワシは、朝倉宗家・朝倉義景じゃ!」と叫んだものの
自刃を余儀なくされ、朝倉家は滅亡…(汗)
そして、信長は近江に兵を返して、小谷城を攻め落とし
浅井長政とその父・久政に降伏勧告を出すも、2人はこれを拒否して自害
浅井家も滅び、240年続いた室町幕府は倒れ
ついに、信長による新しき世の始まり始まり~!
朝倉・浅井家から奪い取った財宝の数々を、今井宗久が値踏みし
織田家の家臣たちの前で披露する席で、信長は光秀に文を差し出し
「松永久秀が許しを乞うて来た。朝倉、浅井、今はなく、将軍も去った…
悟ったのであろう、孤立無援じゃと…どう思う?」と質問
光秀が「松永殿は、味方にすれば心強い。欲しいお方です」と答えると
「ならば、許すか…土産は城じゃ。多聞山城を明け渡すと…」と満足気
そこへ宗久が「さすが越前で5代続いた大大名、名品揃いでございました
しかし、織田様、これだけの物を一手に収められたことは、他にはございますまい
もはや天下を取ったも同然!」などと言ったものだから、更に気分がアガったのか?
「蘭奢待、存じておるか?」と信長
宗久が「あの『古めきしずか』と呼ばれ、えもいわれぬ香りの…?」と返し
光秀が「天下一の名香と名高き、確か伽羅の香木とか…」と説明したこの蘭奢待は
「代々続く世の中で、大きなことを成し遂げた者しか見ることが叶わない」という
まあ、ある意味「国民栄誉賞」バリに選ばれし者にのみ拝観を許される幻の香木で
信長は「そのようじゃな」とその価値を認めつつ
「ワシはどうかな?今のワシは、蘭奢待を拝見できると思うか?どうじゃ?」と訊き
宗久は、一瞬、そのあまりの不遜さに驚きながらも
「それはもう!今やこの国のお武家衆で、織田様の右に出る者はおりませぬ
拝見には何の障りもございますまい」と請け合うと
「そう思うか?ならば、一度見てみるか!どうだ?十兵衛」とすっかりその気(笑)
光秀が「もし拝見となれば、東大寺は元より、帝のお許しを得ませぬと…」と慎重論を唱えるも
「帝?…帝はお許しになるであろう」と自信満々(笑)
その戦利品お披露目の席の帰り…
光秀が「宗久殿はどう思われますか?蘭奢待拝見について…
殿はいったい何をお考えなのか…?」と訊ねると
宗久は「公方様を京から追われ、朝倉・浅井を討ち果たした
今や京の周りに敵なし…いわば、ひとつの山の頂に立たれた
そういうお方なればこそ、見たい景色があるということでございましょう」と答えたものの
光秀は「そうであろうか?…誠にそうであろうか?…私に言わせれば、頂はまだこれから…
公方様を退け、さてこれからどのような世をお作りになるのか
今は、それを熟慮すべき大事な時…まだ、山の中腹なのです。頂は遠い…」と沈痛な表情
このやり取りを見て、奥さんは「来年、俺たちは1位になります!」と宣言し
「HERO」でそれを実現した甲斐バンドを重ね合わせたらしく(笑)
「チャートに食い込むロックバンド」を目指していらした甲斐さんが
「チャート1位の景色を見てみたかった」「25歳になるまでに発言力を持ちたかった」
…と、それをひとつの目標になさっていたことはもちろん
その位置に立たれて初めて、お知りになったり、お感じになったりしたこと
…いわゆる周りの環境の変化に対する姿勢を、つぶさに拝見して来た訳で
信長の心境についての宗久の推察に頷く一方で
ひとつの大きな区切りを迎えた、そのあとどうするのか?次は何をすべきなのか?
いつまでも勝利の美酒に酔いしれている場合ではない…といった光秀の考えについても
「追う」立場から「追われる」立場になったバンドに対する当時の思いが甦ったんだとか…(笑)
それはさておき…この光秀の言葉に、宗久は「なるほど…」と返しつつ
「しかし、あのお方は、今ここで、ご自分の値打ちを知りたがっておられる
人の値打ちは、目に見えませぬ
しかし、何か見える形でお知りになりたい…違いますかな?
見る景色が変われば、人もまた変わるとか…」
…と、光秀が、あの義昭もそうであったことを思い起こすような言葉を残し去って行き
さすが堺の豪商といった名シーンでしたが
信長の承認欲求はとどまることを知らないというか
幼い頃にたった一度、大きな魚を釣って母に褒められたことがあるだけで
その愛情は全て弟に注がれていることに気づき
それでもまた褒めて貰えるやも知れぬと、連日釣りに通ったものの、振り向いても貰えず
それを町民たちに分け与えることで「皆が喜んでくれるのが嬉しい」と言っていたのが
今度は、父に武士として認めて欲しい一心で務めるも
時に、大局にまで考えが及ばず、父に叱責され
その父もまた、若い頃の自分に似た息子に目をかけ、気にもかけていると
上手く息子に伝えることが出来なかったため
帰蝶や帰蝶の父・斎藤道三に認められたことを、この上なく喜び
帰蝶を喜ばせたい一心で、帰蝶の故郷である美濃の国を獲るための戦をしたり…と
信長役の染谷将太さんによれば…「信長は承認欲求が原動力の男」であり
「最も承認欲求を満たすことが出来るのは
一つの大きな国を作ることだと思っている
でも、どんどん力をつけて行く中で、そのピュアさと狂気は紙一重になる」…そうで
その「紙一重」を踏み越えんとするのを止めるのが
「本能寺」であり「光秀」なのかなあと…