kainatsuさんのリストには入ってませんでしたが
「天国と地獄」「俺の家の話」に並ぶ我が家のお気に入りは「書けないッ!?」
「俺の話は長い」で、我が家を虜にした(笑)生田斗真さん主演の30分ドラマで
脚本は、甲斐さんが熱く語っておられた「龍馬伝」と「まんぷく」
それに「HERO」シリーズでお馴染みの福田靖さん
幼い頃からテレビが大好きで、業界で働きたいと思いつつも、その夢は叶わず
不動産会社に勤めていた主人公・吉丸圭佑(生田さん)
シングルマザーだった奈美(吉瀬美智子さん)が客として訪れ一目惚れ
結婚して、2人の第一子を妊娠中に、妻が書いた小説が文芸大賞新人賞を獲得
2作目、3作目も大ヒットし、一躍人気売れっ子作家になったことに刺激され
会社に勤めながら、シナリオを書いてはコンクールに応募していたところ
32歳の時に初めて佳作に入選し、それをきっかけに脱サラ
脚本家としてスタートしたものの、以来5年…
彼が書いたシナリオは、メインの脚本家が行き詰まった際に
「ピンチヒッター」で呼ばれて書いた「警視総監マリコ」の第6話の他に数本
…って、これは、このドラマが、シーズン8まで続いたおかげらしく(苦笑)
あとは、深夜枠の「ギャル谷ギャル男」が2本くらいと
2時間ドラマの「占い探偵・茶柱たつ子」のみで
都内の4LDKに住めるほど収入がある、忙しい妻の代わりに家事を引き受け
「たま~に脚本も書く専業主夫」状態…本人もその状態に慣れ切っていた頃
ある日突然、東西テレビから、ゴールデンタイムの連ドラの脚本を依頼され
ナゼ、そんな大きな仕事が自分に…?と半信半疑で話を聴くと
人気のイケメン俳優や、大御所俳優のスケジュールを押さえ
キャストこそ、ゴールデンに相応しいメンバーが揃っているものの
メインだった脚本家が、ゴルフ中に腰骨を骨折
「大丈夫!構想は出来ている」などと言っていたのに、実は何も考えていなかったことが判明し
本来なら、4月からのオンエアに向けて、第4話くらいまで書けていないといけない時期なのに
クランクインが迫る中、まだ、ドラマの企画もタイトルすらも決まっていない状況…(汗)
名だたる脚本家たちは皆、他に仕事を抱えているか
あるいは、あまりの時間のなさに尻込みするばかりで
手が空いているのは吉丸だけ…という身も蓋もない理由を明かされた上に
社内での立場は崖っぷちで無責任なプロデューサー(北村有起哉さん)
意気込みだけで実力が伴っていない感じの新米監督(小池徹平さん)
有能みたいだけど、やる気のなさそうなアシスタント・プロデューサー(長井短さん)
…といった3人に「第1話を1週間で上げて貰いたい」とムチャぶりされ
「やっぱり、こういうことか…事故物件じゃん
…っていうか、ピンチヒッターが、今まで単発ドラマしかやったことがない僕に連ドラなんて…
しかも、時間もないのに、ゼロからストーリー考えるなんて…」と心の中でボヤいている内に
監督が「男くさくて、女が1人も出て来ない
『ダーティハリー』みたいな刑事ドラマは?」と言い出し
「それ、アリ!アリ!ありおりはべりいまそがり!」と軽く乗っかるプロデューサー(笑)から
「明日までにストーリー案、考えて!当たってバズればいいから!」と一方的に通告され(苦笑)
フツーなら半年…イヤ、1年くらい前から準備を始めるはずの連ドラをゼロから生み出し
そのストーリー案を提出するまで、13時間しかないのに
「ダーティハリー」は、昔テレビで観たことあるものの内容を全く覚えていないと気づき
配信でやってないか?と調べようとして「悠長に映画観てるヒマないだろ!」と吉丸(苦笑)
翌朝の打合せで「『出来ませんでした』じゃ僕は終わる!脚本家として終わる!」とか
「そんなに簡単に書けたら、僕はとっくに売れっ子になってる!」と焦り混乱しつつ
「落ち着け!まず、主人公の名前を考えよう」と前向きに考え始めた途端
「あ、木下マリアが出るって言ってたな…えっ!?どーすんの?判んな~い!」(汗)
そして…主人公は当然アウトローだから、平気でムチャをする非常識なヤツだ
どんなムチャをする?僕が主人公なら…僕はどんなムチャしたことある?
会社員を辞めて脚本家になったこと?イヤイヤ、そんなことじゃない
燃えるゴミの日に、燃えないゴミを出して回収されなかった
白Tを色物と一緒に洗って、まだらに染めた
シュウマイを具にして餃子を作った…
って、一番最初に思いついたことが、一番ムチャなような気がしますが…(笑)
ともあれ…そんなことを考えながら、夜中に外を歩き回っていると
ツルツル頭の男が、ロボコップみたいな刑事に、いきなり拳銃で撃ち殺される幻覚?を見て
「見えた!ドラマが見えた!書ける!書けるぞ!神が降りて来た!」
…と書き上げたストーリー案「刑事ウルフ」を提出すると
「これはないな」とプロデューサー(汗)
しかも、主演のスター俳優(岡田将生さん)である「八神くんが刑事ドラマ、イヤなんだって!
女性活躍社会に相応しいドラマがいいって…もちろん、自分が一番活躍するんだけどね
沢山の女性たちを生き生きと描いて欲しい…要するに、女の子たちに囲まれたいんだよ」
…と、あっさり路線を変更したことを告げると
監督が「学園モノ…女子校のイケメン教師とか…」と思いつきを口にし
またもや「アリ!アリ!ありおりはべり!明日までにストーリー考えて!」とムチャぶり(汗)
「この人たちは鬼だ…」と思いつつ、あと16時間で「学園モノ」を書く羽目に…(汗)
妻の小説に「女子高生の話」があったと思い出し、妻から本を借りたものの
「悠長に本を読んでるヒマはないんだよ!
でも、何かヒントになるものがないと…」とか
「いけない!じっくり読むとパクってしまいそうだ」
「ダメだ!流し読みすると入って来ない!」とか
女子校のイケメン教師に、直接会いに行って
「どんなオイシイ思いをしてるのか?どんな葛藤があるのか?」話を聴こうとして
「どこ行くんだよ!そんなヤツ知らないし…」
って感じで、時間だけがムダに過ぎてしまい…(苦笑)
それでも「イケメン教師には、実は秘密がある…王子様?あり得ねぇ!待てよ!見えた!」
…ということで、ナンとか捻り出したのは「財閥の御曹司」
打合せでは「なかったっけ?こういう設定…」と言いながら
「このストーリーで進めよう」と、ようやくGOサインが出て、ホッとしたのも束の間
「2日でホンにして!」「登場人物表も欲しいです」と告げられ「鬼だ…」AGAIN(苦笑)
このドラマのレビューをお書きになったライターの方が
「他人の不幸は蜜の味なのか…『書けないッ』と悶々とする圭佑にニヤニヤしてしまった」
…と記されていたんですが、ボクは、こんなゆるゆるのブログを書くことさえ
時に…イヤ、往々にして、思ったように「書けない」と悩むことがあるんだから(苦笑)
プロの文筆家の方々の苦しみはいかばかりかと…(汗)
ちなみに…このドラマの脚本家でいらっしゃる福田さんは
「30代半ばまで、アルバイトをしながら劇団をやっていて
たまたま、芝居を見に来たプロデューサーに声をかけられたのが始まりでした
デビューしても5年くらいは、結構のんきだったんです
そこに突然『HERO』を書くことになりました
僕は、1話で終わると思っていたんですよ。そしたら『次も次も』って言われて
そこからは怒涛の、訳が判らない数ヶ月間でした
当時の僕も圭佑と同じで『求められているから応えなきゃ』と必死でした」…と話され
「ツルツル頭の男」の幻覚は「作り話」でも
「書けなくて、夜中に外に出たり、真夜中のファミレスをうろつき回ったりするのは
普通にありましたね」と振り返っていらして
フィクションと思いながら観ていても、リアルさを感じるのは
やはり、ご自身の実体験をベースになさっているからなんだなあとナットク致しました