ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

近況&雑感6

2023-12-13 14:50:00 | 日記
著名なミュージシャンの相次ぐ訃報にショックを受けていたら
今度は、甲斐さんのお知り合いの作家の方々…
かつて甲斐さんに宛てられた手紙に…「甲斐さんの曲を(ご自身の)ドラマに使いたいと思っても
甲斐さんの作品は、しっかりした自分の世界を持っているから、ドラマの方が負けてしまいそうだ」
…と綴られていたという脚本家の山田太一さんと

「旅で、酒場で、仕事場で出逢った忘れ得ぬ人々を描く」エッセイ
「眺めのいい人」で甲斐さん評を記されていた伊集院静さん
が、立て続けに亡くなられ、今更ながら、何だか「昭和」が遠くなったなあと…(汗)

山田さんは…「東日本大震災から5年後の被災者を描いたドラマ『五年目のひとり』が放送されて
ある程度、これで僕の仕事は終わりかなという気持ちもあったんですね
しばらくは仕事抜きで遊びたいなと…」と思っておられた矢先に脳出血で倒れられ
「いつ死ぬか判らないと実感した」ものの、ある週刊誌が「事実上の断筆宣言」と報じたことに
「宣言はしていないと、ハッキリ言いたい」と宣言なさって

もうちょっと待って貰えれば、あと1本くらい書く余裕はあるかも知れないですね
そういうのがないと、これからの人生どうしていいか判んないってところもあるから…
明日死ぬとしても、余裕があったらアレ書けてたなと、僕らの仕事は、そう考えるものです
余白を残しておくためにも、待って貰いたいですね」と話されていたし

その訃報の直前には、80年代の人気シリーズだった「ふぞろいの林檎たち」と
76年にスタートした「男たちの旅路」の未発表シナリオが見つかり
出版もされたというニュースを目にしたばかりで
前者の「幻のパート5」では、主人公たちが40代になっているとの設定を知り
オリジナルのキャストの皆さんで、是非ともドラマ化して頂きたいなどと話していたところでした

後者は、第4部の第2話にあたる「オートバイ」という作品らしいんだけど
当時、水谷豊さん目当てで視聴していた奥さんは、第3部までしか覚えておらず
「熱中時代」の撮影と重なり、出演出来なくなられた水谷さん抜きでオンエアーされた
「影の領域」という作品も観てみたいと、オンデマンドを利用するか悩んでおります(笑)

まあ、こちらのシリーズは、水谷さんが、当時の鶴田浩二さんの役柄に近い世代になられたし
新たなキャストで…というのも興ざめしそうな気がナキニシモアラズですが…(苦笑)

ともあれ、70年代と言えば…「勧善懲悪」的なドラマが主流というか
老若男女、一家揃ってテレビを観るのが当たり前の時代だったせいか?
「子供の教育上よろしくない」ものは、ゴールデンタイムでは流されなかったところへ
山田さんがお書きになったのが「岸辺のアルバム」
このドラマに関する取材で、山田さんは「癒されるものばかりがエンターテイメントではない
時に視聴者が見たくないと感じる場面も入れなければならない」とおっしゃったそうで

実際、あのドラマでは、企業戦士の夫(杉浦直樹さん)、専業主婦の妻(八千草薫さん)
そして、2人の子供(中田喜子さん・国広富之さん)という、当時の平均的な核家族を題材にしながら
アノ、幾つになられても清純で可憐でいらした八千草さんに「不倫に走る妻」の役を振られ
ドラマの内容に関する驚き以上の衝撃をお茶の間に与えていらっしゃいました(笑)

そう言えば…八千草さんは、今や「フツー」になった「両足を揃えて乗れるスクーター」の
初代CMキャラクターを務めておられたけど
そのオファーの理由が「またがって乗るスクーターには絶対乗らなさそう」だったような気が…?(笑)
この当時の八千草さんは、かなり攻めておられたのかなあと…?(笑)

ちなみに…「岸辺のアルバム」には、松藤さんがドラムをお貸しになったことがおありだという
「ずうとるび」の新井康弘さんが、国広さんの友人役でレギュラー出演なさっていたそうです
…って、今はもうすっかり「役者」さんというイメージだし
甲斐さんも「良い役者だもんね」とおっしゃってましたよね?

あと、周囲の人々から結婚を急かされる20代前半の女性たちが主人公という
当時の風潮を反映したドラマ「想い出づくり」では
「森昌子さんは演技がね、演技が、あの人イイんですよ、実は…
田中裕子、古手川祐子とか出てたんですけど、それよりも、彼女が一番素晴らしかった!
あの…非常に自然な演技で、この人ウマイなー!って
すごい思った記憶がありますね、ハイ

ナンか、あのー、普段の自分みたいなことを、変に構えず
わりと自分の心の有り様そのまま、表現に変えられるという人は
何やっても出来るっていう感じが、僕、しますね、ナンかね」…と大絶賛なさってましたが
奥さんの記憶が正しければ、甲斐さんは、山田さんの脚本にあまり興味がおありじゃなかったのが
「岸辺のアルバム」で心を掴まれてしまわれたみたいで(笑)
「想い出づくり」も「山田太一脚本」ということで、ご覧になっていたらしい

それは、山田さんが「ふぞろいの林檎たち」でも顕著な特徴である
「視聴者が共感できる登場人物や憧れる状況」を描かれ
更に、その時代の空気を写し取られたにも関わらず歳月を経ても色褪せない普遍的な作品だということが
同じ作り手としての琴線に触れられたんじゃないかと…?

ただ、晩年の山田さんは「私たちは少し、この世界にも他人にも自分にも期待し過ぎてはいないだろうか?
1人で出来ることも、衆知を集めて出来ることも、たかが知れている
人の生の通奏低音は『無力』である
可能性を極点まで探るのもいいが、そうすると、自他への不満を抱え
追い立てられるように生を終わることになる
可能性があっても、どこかで断念することも大事
『力点』を間違えてはいけない」…とおっしゃっていて
この先の甲斐さんが、どこに一番「力点」を置かれるのか?気になるところではアリマス

もっとも、甲斐さんは「音楽という表現を通して 
『甲斐よしひろっていうのは何者なんだ』っていうのを、たぶん死ぬまでずーっと探ってるんだよね
それが、ある日、急に判っちゃうのか、10年後に判るのか、あるいは死ぬまで判らないのか
でも、判っちゃったら、音楽辞めそうな気がするんですよね
さっさと詩人を辞めて、アフリカに行って、奴隷商人になっちゃったランボーみたいにね」
…と話されていたし、これからもお変わりにならないような気も…?(笑)

そして…「最後の無頼派」と呼ばれていらした伊集院静さん
広告会社のCMディレクターから、ユーミンや松田聖子さんのステージ演出を経られ
作家デビューを飾られたあと、伊達歩名義の作詞家として、レコード大賞も受賞なさったという
その経歴は華々しく、私生活も華やか、かつ波瀾万丈な方でしたが

甲斐さんとは、歌謡曲の話題で盛り上がり、ご一緒にカラオケへ行かれ
「戦後のほとんどの日本の歌謡曲を歌詞まで記憶していることに驚いた」…って
甲斐さんは、物心がつかれた頃に「紅白歌合戦の曲を全て歌えた」方ですもんね?(笑)
その甲斐さんが繁華街の真ん中で生まれ育たれたのをお知りになって
「ああ、子供の頃に甲斐さんは歌謡曲を身体の中に入れてしまったのだとわかった」と伊集院さん

「甲斐さんと一緒にいると、妙な安堵を感じる
存在感の大きさはおそろしくあるのだが、それをやんわりと隠している気がする
おそらく、この人は若い時に切ないものを見たのではないか
それが何かはわからないが、人間の、大人の男にとって肝心なものに触れているような気がする
甲斐さんのもっと若い時の姿も、年老いた甲斐さんも見てみたい…と書かれていたんだけど

当の甲斐さんは、前述の「レコ大歌手」の方のラジオ番組で
「僕、伊集院さんともすごく仲が良いんですけど
2年くらいずっと連れ立って飲み歩いてたんですよ、2人で…
あの人、ホントひどい人なんで、性格が…(笑)
『小林旭を今日どうしても聴きたいから』って言って

六本木で一番古いオカマバーに、僕を無理やり連れて行って
『甲斐、頼むから6曲だけ歌ってくれ!』って…すごい乱暴な人ですからね(笑)
僕、6曲歌ったこと、ちゃんとありますよ」…とNHKの某ディレクターの方と同じく
甲斐さんを「ジュークボックス代わり」になさったことを明かされてました(笑)

ちなみに、伊集院さんご自身は…「歌が上手い訳ではない、むしろ音痴に近いし
野球部時代に声がつぶれて嗄れている」とおっしゃってますが
元々、歌謡曲がお好きらしく、ご自宅で鼻唄を歌っておられると
「大人の男の人が、鼻唄なんて品がない…」と奥様に注意されていらしたそうです(笑)

伊集院さんは、紫綬褒章を受賞なさった際に…
「大酒を飲み、ギャンブルをやり、女性の噂があったから
『無頼派』と呼ばれているけど(笑)無頼派だと小説は書けません
執筆は丁寧にやるべき仕事。頭で考えても限度があるため、小説は基本的に体で書くもの
農夫が朝早く起きて、土を返すことを繰り返すような営みなんです」

…とコメントなさっていたんですが、そんな伊集院さんに
「『この人は歌手でなければ、無頼の徒になっていたろう』と、つくづく想像してしまう」
…と評されていらした井上陽水さんって、どんだけ~!?(笑)
でも、そうお感じになったということは、やはり伊集院さんも「無頼の徒」ってことじゃ…?(笑)

余談ですが…作家の桜木紫乃さんが「ホテルローヤル」で直木賞を受賞された時に
伊集院さんは、桜木さんがお泊まりになっていたホテルへ、お祝いのお花を贈られたらしいんだけど
送り主の名前は、桜木さんがお好きな伊集院さんの著作「羊の目」の登場人物の名前だったんだとか…
こういう粋なことをサラリとお出来になるトコが
男女を問わず、おモテになった秘訣なのかなあと…?(笑)
コメント
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