晴れときどき風

ノンキな主婦が時に風に吹かれながら送る平凡な毎日。

「赤朽葉家の伝説」読了。

2008年01月11日 10時36分04秒 | 趣味
久しぶりに何の用もなかった昨日。
途中になっていた「赤朽葉家の伝説」(桜庭一樹著)を読み終えました。
面白かった。

これは、大通りの一番上、樹木や土に半分埋もれるようにしてたつ少し傾いだ真っ赤なお屋敷「赤朽葉家」の女三代記です。
と言っても語り部である「瞳子」の人生はまだまだこれから、で終了していますが。

幼い頃「山の人」に置き去りにされた未来を見る力を持つ異端の子「万葉」。
だんだんの職工の家で育てられた万葉が「赤朽葉」の大奥様に乞われて嫁入りし家を守り続ける。

私はこの一部の「最後の神話の時代」が一番面白かった。
万葉のエピソードの強烈なこと。それでいて万葉自身は淡々としていて。
視える事で家を守り、視えることで深い悲しみを知る。
それでも、大きくて力の強い女はじっと守るべき場所に居続ける。

万葉の子「毛毬」は猛女である。
中学の頃からバイクとケンカに明け暮れ、レディースとして山陰を傘下に治める。
その後、いきなり人気漫画家となり、夭折した兄の代わりに家を継ぎ、傾きかける「赤朽葉」をその収入で守り続ける。

この物語は「赤朽葉」の三代の女を描くと共に、その背景となる時代も見事に描いています。
まるで大河小説のようです。
二部は「巨と虚の時代」と名付けられ「子供達の作るフィクションが現実世界に漏れ出し、この頃には校内暴力が深刻な問題化し始めていた」とある。
この頃と時代を同じくしない私はこの頃の子供の気持ちがよくわからない。
暴力で全てを支配化におく「毛毬」も、優秀でありながら同級生に春を売らせ金を稼ぐ「蝶子」もよくわからない。
こまかな感情が欠如しているようで。なにかに追われているようで。悲しくなる。

そして語り部である「瞳子」の三部は「殺人者」。
「万葉」を祖母に「毛毬」を母にもつ「瞳子」は普通のなんの力も持たない女の子。
なにやら人類の進化をみるようですね。
「万葉」が死に際に残した「わしは昔人を一人殺したんよ」という言葉に驚き、真実を知ろうとする。
そしてたどり着いた結果は・・・。

この本って「このミステリがすごい!!」2位だそうですが、ミステリでしょうか?
素朴な疑問。
それと、この傾いだお屋敷のイメージがなんともチグハグで。
初期の手入れの行き届いた広い庭が荒れ果てていく様子や、つるつるとした曲がって坂になっていてどこまで続く廊下はなんとなく想像できるのに、それに続く部屋がどれもちんまりとした印象でまとまらない。
なんだか長い廊下に部屋がぽつりぽつりとくっついているような感じ。

まあ、いろんな感想は持ちますが、「万葉」の持つ魅力には圧倒されました。
あとネーミングが面白い。
「泪」「鞄」「孤独」とは。
つけられたほうは溜まったものじゃないだろうけど。