晴れときどき風

ノンキな主婦が時に風に吹かれながら送る平凡な毎日。

「まほろ駅前多田便利軒」読了。

2009年12月08日 10時17分04秒 | 趣味
ホットミルクを飲みながら読書。

そういうと、陽だまりのようなホッコリとする絵が浮かびそう。
実際は、胃痛が治まらず、少しは緩和するようにと苦肉の策であります

胃をさすりながら読んだ、三浦しをんさんの直木賞受賞作。
モデルとなった街は、町田ですな。

「ここも一応東京なんだがな。」のっけから親近感。
しかし、知らない顔を見せられ、そうなの?と思ったり、やっぱり作者の頭の中の街なのかしら、と思ったり。
本筋とは違うところにも関心が行ってしまった。


まほろ駅前で便利やを営む「多田」のもとに転がり込む、高校の同級生「行天」。
なにやら2人の間には「わけ」がありそう。

雑事一般を扱っているはずの多田便利軒なのに、思わぬ難事がふりかかり。


この本、ほんとに人物が魅力的。

負った傷の深さがうかがえる。

「忘れるな。永遠に赦されるな。君も、俺も。」
そう思いながら生きていく多田の苦しさと優しさ。

子供の頃に負った心の傷が原因で(本書では詳しく書かれていない。)、痛覚を失ったかのように思える行天。
彼自身は気づいていないようだけど、その優しさに私は憧れる。
飄々とした雰囲気の中に垣間見れる子供っぽさも魅力的。

そして彼の言葉。
「傷はふさがってるでしょ。たしかに小指だけいつもほかよりちょっと冷たいけど、こすってれば、じきにぬくもってくる。すべてが元通りとはいかなくても、修復することはできる。」

本当にそうだなあ。無くしたもの。たとえば信頼とか。無くしたという事実は心の奥底で絶対消えないよね。でも、その後のあり方で修復は出来る。 
低くなった温度も、少し優しく撫でてやれば、上げることが出来る。
それって、自分自身を守るための方便かもしれないけど、そうでもしなきゃ、長い人生辛いことが多すぎる。

街角に立つ女、ルルとハイシーもいい味だしてます。

それらを描き出す文章がとても魅力的。
多田の独白は面白く、とてもスマート。

2人が再会するバス停の存在感はでかいなあ。
終バスもなくなったバスのベンチにぽつねんと座る行天の姿が脳裏に焼きつきました。

私、三浦しをんさんは初めて読みましたが、とても面白かった。
シリーズ化されているなら、是非違うものも読みたい。