イーゴリ・ストラヴィンスキー:
・バレエ音楽「火の鳥」全曲
・幻想的スケルツォ 作品3
・幻想曲「花火」 作品4
指揮:シャルル・デュトワ
モントリオール交響楽団
ポリドール: F35L 20054
ストラヴィンスキーの三大バレエ音楽第一弾「火の鳥」の作曲のきっかけは以前の記事に書いた通りピンチヒッターだったわけですが、バレエ興行師のディアギレフがこのディスクにも収録されている『花火』を聴いてその才能を認めたから、という逸話が有名です。作品番号1の『交響曲 変ホ長調』では厚ぼったい響きが特徴ではありましたが、作品番号3の『幻想的スケルツォ』にて木管楽器の使い方に強烈なスタイルを確立していて、この曲をスケールアップしたのが『火の鳥』という印象です。
さてこの『火の鳥』には作曲者による多くのアレンジバージョンがあります。
・1911年版組曲
・1919年版組曲
・1945年版組曲
・室内楽版組曲
・ピアノ版
・その他断片
いずれもそれぞれの魅力がありますが、最もファンタジーでゴー☆ジャスなのはオリジナルの1910年版全曲なのです。特に王女やイワン王子のモチーフを配置した前半部分はなかなかの聴きものなのですが、大きな盛り上がりに欠けるのは事実です。けれども、その前半のほのぼの展開があるからこそ、後半の魔王カスチェイが引き立つような気がします。
特に、クライマックスの「カスチェイら一党の凶悪な踊り」の部分について、組曲版ではいきなり演奏されるのですが、私はその直前の「火の鳥に魅せられたカスチェイと手下どもの踊り」から連続して聴かないと物足りなく感じます。そこで鳴るシロフォン(木琴)の乾いた音の連打が魔王の残酷さをイメージさせるためです。
下のバレエの動画では、「火の鳥の出現」ー(0:38より)「火の鳥に魅せられたカスチェイと手下どもの踊り」ー(1:22より)「カスチェイら一党の凶悪な踊り」ー(6:02より)「火の鳥の子守歌」ー(9:08より)「カスチェイの眼ざめ」まで連続していて私も満足。
出演者、演奏者等の動画の詳細は不明ですが、カスチェイなどはなかなか現代的なメイクです。
オケは4管編成にピアノ、チェレスタなどが加わっており、さらにバンダと呼ばれる別働隊のラッパが舞台上(または舞台裏)に配置されています。このディスクではそのバンダが極めて効果的に再現されていて、舞台の雰囲気が濃厚な録音になっています。特に最後のバンダのトランペットによるHigh-H(高音の「シ」の音)は類を見ないほど強烈な印象を残します。
全曲の演奏時間は45分程度であり、音楽だけ聴けというのも集中力がいるし演奏する方も大編成が必要だったりで全曲が演奏会のプログラムにのることは少ないのかもしれませんが、このオリジナルバージョンが一番好きな私としてはもっと演奏されて欲しいと願っているのです。
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