厳しい財政状況の中、適正さを欠く予算執行が相変わらず見受けられるのは問題である。
報告書では、多額の税金を投じた事業が成果を上げていないとの指摘が目立つ。その典型が、メタボ健診の効果を検証する厚生労働省の取り組みだろう。
厚労省は28億円をかけて、メタボ健診のデータと、同じ患者のレセプト(診療報酬明細書)のデータを突き合わせ、医療費が抑制されたかどうかを分析するシステムを整備した。しかし、入力したデータの8割が照合不能だった。
入力の際、数字を全角と半角のどちらかに統一しなかったため、システムが同じ人物の情報を別人の情報と誤認したのが原因だ。厚労省は不具合を把握しながら、原因究明を怠っていた。あまりにお粗末な対応と言うほかない。
耕作放棄地を再生する農林水産省の交付金事業では、100か所以上で作付けが行われていなかった。せっかく農地として使えるよう整備したのに、耕作者を確保できず、作付けを再開する見通しが立たない土地もあった。
耕作希望者の実情を考慮した上での整備が欠かせない。
検査院は近年、国民の安全を確保する観点から、社会資本や公共施設の維持・管理状況を重点的に調査している。今回、安全性に懸念が生じる実態が浮かんだ。
国が管理する空港のうち、羽田など7空港は、滑走路の路面に航空機のタイヤのゴムが付着して滑りやすくなっていた。各空港事務所は、点検でそれを確認したのに、補修を先送りしていた。
事故の芽があれば迅速に摘み取るという、安全対策の基本が疎おろそかになっていたのではないか。
国庫からの補助で整備された公立小中学校の校舎についても、4300校以上で、火災報知機の故障や外壁・天井の損傷が見つかっていたにもかかわらず、1年以上放置されていた。
市町村の財政難で補修に手が回らないという事情があるにせよ、子供の命にかかわる問題である。事故が起きたら取り返しがつかない。地域の学校施設の劣化情報を集約し、危険度の高い施設から優先して工事を行うべきだ。
限られた予算の中で、効率的に事業を進めることが肝要だ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます