ベリーダンススタジオ★☆★ぱわふるマドンナ★☆★ 主宰・坂口せつ子 

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すてきないのち vol.2

2007-02-26 23:56:44 | すてきな命
彼はヴァイオリニスト。小学5年生の時に心臓の手術をして、たぶん麻酔のミスで目が見えなくなった。中学3年のときにお母さんがいなくなり、実業家だったお父さんが男の子2人のお弁当を毎日作り、一生懸命育ててくれた。そのお父さんは事業が傾き、彼が20歳の時にいなくなり、住み慣れた家を債権者から逃れる様に、ヴァイオリンと身の回りの物だけを持ち、ひとり家を出てこの5年間生きてきた。彼の家は今、東京のある街の駅のすぐ近くにあるマンションの4階。4畳しかない部屋に、ピアノ、本棚、テーブル、琴、ヴァイオリンなどきちんと整理されて、収まっている。私は彼の家を訪れたとき、自分が恥ずかしかった。目の見えない彼がこんなにもきちんと生活している。彼の名前は穴澤雄介。2枚目のCDが、年内には発売される、今回は彼の作曲集だ。ぜひ多くの人に聞いてもらいたい。彼の生き方が伝わったら素晴らしい。彼に絵の展示会でご案内をした。私の説明を脳裏のキャンパスに描いていた。後に、あの絵を描いた何々さんですと紹介すると、作品の話で会話がはずんだ。彼は言う。目が見えない分、記憶力が発達しましたね、と。

(高崎市民新聞 2000年11月02日号より転載)

すてきないのち vol.1

2007-02-26 23:34:00 | すてきな命
 O君は何の抵抗もできず、お父さんから虐待を受けていた。お母さんはそれを助けられなかった。O君は声が出なくなり、小中学校も行っていない。今から11年前、精神科入院病棟で彼に出会った。週1回のエアロビクス出前クラスに、必ず部屋から出てきて遠くから私を見ていた。その後、彼は退院し、私のかかわっていた、学校へ行かない子ども達と一緒にボーリングやカラオケに行った。O君は出ない声で歌った。それから私に電話をくれるようになった。無言の電話はO君だった。私が名前を呼ぶと、つぶれた声で「ン」と言う。私の質問に答えるだけの電話のやりとりが続き、今では何でも話をするようになった。ただし、誰とでもという訳にはいかない。心を許す人に限るようだ。O君が私に、本を読んで欲しいと筋肉マンの表紙の本を見せた。私は、彼が私を喜ばせようと見せてくれたものと思った。でも何度も言うので、私は気がついた。O君は読んで欲しかったのだ。私はO君に「あいうえお」から教え始めた。彼はよく覚えた。25歳だった。周りの人は精一杯だったとは思うが、今まで何をやってきたのか、私は考えてしまった。

(高崎市民新聞 2000年10月19日号より転載)