いい日旅立ち

日常のふとした気づき、温かいエピソードの紹介に努めます。

カモカのおっちゃん②「パンダは女」

2019-06-15 21:20:00 | 文学

先日91歳で亡くなった田辺聖子の「カモカのおっちゃん」。

第2話

このあいだ東京は上野でパンダを見ました。
もうこの頃は見物人も少し減ってるかなあと思って、見に行ったのだ。
ところが、なんのなんの、妊娠騒ぎからこっち、また連日、見物客が増加しているそうである。
上野動物園、裏から入って、荷物を預けようとすると、あずかり所はない。
そこから10分も歩いたパンダの前の案内書にしか、あずかり所はない。不便だ。
私は、あるものだと思ってバッグを持ち込んだので、たいそう困った。
でも、カモカのおっちゃんがいてたすかった。
おっちゃんに荷物をもたしてやった。
「爺さん婆さんの東京見物という図ですなあ」
「唐草の風呂敷に包んでくればよかったですね」
神戸の王子動物園を考えるものだから、上野動物園はやたら広く思われる。
モノレールに乗って反対側に行く。
木はずいぶんたくさんあるけれど、人が多くて埃っぽく猥雑であった。
いやもう、あまりにも人が多い。とても神戸の王子どころのさわぎじゃない。
大坂の天王寺動物園も人が多いけれど。
神戸の王子が好きなのは、景色がいいのだ。
春のさくらどきもいいが、何でもないときでも、一番奥の山側の。カバとサイのいるあたり、すばらしいながめなのだ。






































宮柊二の歌③~旧約聖書との接点~

2019-06-15 20:51:52 | 短歌

宮柊二は、戦後になっても、
必ずしも幸福にはなれなかった。
戦争での体験から、素直な悲しみや喜びにひたることができなかったのだ。
その一端として、
旧約聖書を題材とする作品がある。
詩編第80章を意識している。
古代イスラエルの教典からとり、日本の再生を願ったものといわれる。

……

なんぢ葡萄の樹をエヂプトより携え出しもろもろの国人を逐ひ退けてこれを植えたまゑり

汝その前に地を設け給へしかば深く根差して国に蔓れり

その影はもろもろの山を庇ひその枝は神の香柏の如くにてありき

その樹は枝を海にまでのべ其若枝を河にまで延べたり

汝いかなれば其垣を崩して路ゆく凡の人に摘み取らせたまふや

……

(詩編第80章)
イスラエルを養う方
ヨセフを羊の群れのように導かれる方よ
御耳を傾けてください
ケルビムの上に座し、顕現してください
エフライム、ベニヤミン、マナセの前に。
目覚めてみ力を振るい
わたしたちを救うために来てください。
神よ、わたしたちを連れ帰り
み顔の光を輝かせ
わたしたちをお救いください。
(以下略)
























































カモカのおっちゃん①田辺聖子さんの作品

2019-06-15 20:26:48 | 文学


2019年6月6日、作家の田辺聖子さんが亡くなった。
91歳であった。
1928年大阪生まれ。
知人の医師、川野純夫さんと結婚。
後妻で、夫には4人の子どもがいた。
なぜか、すぐに離婚するという風評がながれ、
2か月で離婚、4か月で離婚、6か月で離婚、という説しかなかった。
が、2002年、川野さんが亡くなるまで添い遂げた。
小説「感傷旅行」で第50回芥川賞を受賞。
文化勲章も受賞した。

「カモカのおっちゃん」は、
夫との会話をもとに、おもしろおかしく書いたエッセイ集である。

……

王貞治さんが国民栄誉賞を受賞した時の小話。

おっちゃんと、国民栄誉賞の話をしていると、末広真樹子さんがきた。
「ねえねえ、こんな笑い話、知ってる?王選手が2本足だったらもっとはやく新記録を出してたろう……って」
おっちゃんと真樹子ちゃんは笑うが、私はどこがおかしいのか、頭が禿げるほど考えた末、
「王選手って、3本足だったっけ?」
と聞いたら、2人は声をそろえて、
「バカ、大きな声でなんちゅうこという!」
「こわいこわい、こんなこと言う人うっかり放送にだせない」
とさわいでいる。
「王は1本足やないの、あほちゃう」
と叱られ、アッそうか、何でも奇数とおぼえてたんだけど。
ほんとは私、よく野球を知らないんです。野球オンチからみると国民栄誉賞というのは、王サンにそぐわないんです。