◯夜、自室で絵を描いていると、庭に人の気配を感じる。それも、ひとりやふたりではなく、かなり大勢の。どうやらこの家は取り囲まれたらしい。ぼくは急いで2階へ駆け上がる。2階は広い厨房で、いまそこでは、ピザの本場イタリアから催眠術師を講師として招いたイタリアピザづくり講座が、昨夜から夜通しで行われている。生徒はみな、床に体育座りで並び、講師である催眠術師の話を食い入るように聴いている。と、そのなかに仕事 . . . 本文を読む
◯ドライブインの裏手で、ぼくはある男と将棋を指すことになってしまう。将棋盤を挟んで、相手の男は云う。「わたくしは住宅総合メーカーの者でして」ぼくはさっきから震えている、じつは将棋のルールを知らないのだ。この、いよいよ対局がはじまろうという、いまになって、そんなことを云いだしたら、この男にどんな目にあわされるだろう……。ぼくは、相手が目をそらした瞬間、ドライブインへ駆け込む。目についたドアを開けて入 . . . 本文を読む
描いた絵を見ながら、絵のなかにいるこの人物は何者なのか考える。最初に思いついたのは「住宅総合メーカーの男」…けれども文章が思いつかない。次に思いついたのは「湖底の詩人」…けれども文章が思いつかない。次に思いついたのは「宅地開発の精霊」…けれども、やっぱり、文章が思いつかない。この人物はいったい何者なのだろう……?すっかりふてくされたぼくは、近くの研究所の4階の給湯室で、スパゲティを茹ではじめる . . . 本文を読む
前の前の回で、ライブドアブログのほうに投稿した絵を数枚、こちらにもあらためて載せましたが、今回はそのカラー版です。◯「おにと雑居ビル」・以前はよくおにを描いてましたね。雑居ビルは散歩の途中に見つけたものをアレンジして。「新たな野望と予兆と帰還」・海王星の腹話術師らしいです。左下にアジサイがあるので、これからの時季にふさわしいかと。「ねぎまの森」・大好物のねぎまを描きたかったのだと思います。こっちの . . . 本文を読む
元日。初日の出をボウリング場の非常階段から見てから、ぼくは県内すべての市役所めぐりに出かける。ところでぼくは、最前から何者かに尾行されていることに気づいている。◯縁もゆかりもない新興住宅団地の見知らぬ家の縁側に、ぼくは座っている。見知らぬ家の縁側に座っているというのに、ぼくは不思議と落ち着いている。家の主人らしき男が云う。「そろそろ帰ってもらえないか?」どうやらぼくは邪魔らしい、出て行こうと立ち上 . . . 本文を読む
今年のはじめまで、数年間身を寄せていたライブドアブログのアプリを久しぶりに開いてみると、誰にも見られなくなった絵たちがひどく寂しげに見えたので、ぼく自身お気に入りのものを、いくつかこちらにも載せようかと、この夕暮れどきに思い立ったわけです。「男が語る夢」「ある日の散歩の印象」「ある日の散歩の印象2」「ある日の散歩の印象3」ほかにもたくさんありますが、ぱっと見返してみて、今日のこの瞬間のぼくが見て「 . . . 本文を読む
ある夜のこと…。ぼくは、朝ご飯と昼ご飯との間隔に比べ、昼ご飯と晩ご飯との間隔が不自然に空きすぎていることに気づく。これは歴史的な発見に違いない!ぼくは、自分へのご褒美にと、久しぶりに近所のそば屋の上カツ丼を食べることにする。ぼくはすぐにスーツに着替え、家を出る。店に向かう途中、コンビニの前の道で一頭の水牛とすれ違う。直後、違和感のようなものが頭をよぎり、ぼくは立ち止まる。「…あれ?あの水牛…もしか . . . 本文を読む