「よっと、やれやれ」
喫茶アーネンエルベの路地裏。
全身刺繡男ことアヴェンジャーが溜まったゴミを出していた。
現在アーネンエルベはアヴェンジャー、マジカルアンバー、カレンの3人で運営しており力仕事はアヴェンジャー担当であった。
カレンはこうした力仕事をもっとも不得意としていたし、アンバーは調理に忙しい。
ゆえに、配膳担当のアヴェンジャーがこうした力仕事全般を担当していたが流石に疲労を覚えつつあった。
おまけに今はモーニングを終え、ランチタイムに入りつつある時間帯。
配膳だけでも大変にも関わらず、こうした雑務に追われているのだから仕方がない。
会計でカレン、調理はアンバーとある程度役割分担をしているためどこぞの牛丼チェーンのごとく。
一人で何でもしなければならないことはないが、それでもオーバーワークであることには変わりがない。
「というか、あの自称魔法少女が言っていた援軍はいつ来るんだ?」
だから、周囲に人がいないためアヴェンジャーがボヤく。
というか、今日の働きに給料でるのか?と疑問を覚えた所で人の気配。
それなら特にアヴェンジャーは気にしなかった問題はその人物が発する気配が堅気のものではなかった。
そう、とても濃厚な魔の空気を纏っていた。
「っ……おいおい、こんな昼間っから…………はい?」
反射的に振り返り、右歯噛咬(ザリチェ)と左歯噛咬(タルウィ)を具現化する。
最弱を自認する英霊であるが、それでも意地というものがあり戦闘準備を整える。
もしも、相手が自分に敵意をむき出しにした瞬間、立ち向かうつもりであったが、アヴェンジャーは絶句した。
確かに堅気の雰囲気ではない。
だがその人物は何故かしま○ろうの着ぐるみを着込んでいた。
「……もしかして、アヴェンジャー?」
しま○じろうから声が漏れる。
年齢性別が不詳であったが、少女であるらしい。
この姿をあまり人前で出さず、かつ知っている人物は限られている。
にも関わらず、開口始めに自分の名前を言い当てたこの少女は何者か?
アヴェンジャーは警戒心と疑問が内心で浮かんだが、その思考は一度中断された。
「あ、弓塚さん来てくれたんですね!」
アンバーこと琥珀が裏のドアから顔を出し、少女の名前を呼んだ。
どうやら、目の前の着ぐるみの少女がアンバーが言っていた助っ人らしい。
にしてもここまで強力な魔が喫茶店の助っ人とは……と、自分の事を棚に上げてアヴェンジャーは呆れる。
「ああ、琥珀さん。いくらこれで日中歩けるとはいえ、この姿は狙っているでしょ!!」
「当然じゃありませんか!似合ってますよ」
ああ、そういえば声がしま○ろうに似ているどころかまんまだな。
とアヴェンジャーが悟り、いい感じに割烹着の悪魔に玩具にされてるのを見て。
思わず自分とカレンの関係を連想させ、親近感が沸いた。