お腹が空いたボクが時々利用する定食屋に入って席に着くと、店にあるTVはちょうどワイドショーが始る所だった。ボクが久しぶりに注文した定食“マーボナス”には・・・大嫌いな緑色した長ネギがお皿のあちこちに潜んでいる。以前は“入っていなかったのになぁ”・・・ボクは心の中で呟きながらネギを除けて茄子に箸を近づけた。TVを見ながら茄子をつまんで口に入れ、ご飯をほうばる・・・その繰り返しの中、皮一枚幅2cm程の緑色のネギが茄子に絡まった事に気が付かずにうっかり口にしてしまった。 . . . 本文を読む
氷をたっぷりと入れたグラスにアイス珈琲をおよそ500ミリ入れて2Fのボクの部屋に戻ったのは11時頃だった。皮膚から噴きだす大量の汗を吸い込むタンクトップ・・・額から吹き出す汗を拭う首にかけたタオル。尋常ではない暑さが身に染みる中、ボクは熱がこもりやすい部屋の角のPCを稼働させて椅子に座った。背後のステレオのカセットデッキにセットした懐かしい“80S邦楽”のサウンドがPCとステレオが放つ熱に混ざって暑さを増長させたが、ベランダの窓から反対側の開かれたドアへ向かって風が通り抜けると少しは涼しさを感じる事は出きた。 . . . 本文を読む
父の実家である本家は、我家から徒歩にして5分程度の至近距離にある。祖父母が亡くなった本家を父の兄が受け継いでから・・・ボクが本家に足を踏み入れたのはこの十数年でも数える程だ。子供の頃は伯父の同い年の息子、つまり従兄弟と遊んだりもしたが、いつしか疎遠になり今では全く交流が無い。ボクは飄々としてデリカシーの無い伯父が好きにはなれなかった。 . . . 本文を読む
TVに映し出される隅田川花火大会の模様を見ながら・・・ボクは仲間達と過ごした夏を思い浮かべていた。毎年・・・7月最終週の土日は海へ一泊の小さな旅が仲間内では暗黙の了解になっていたのだが、今年は企画すらしなかった事が今さらながら少々悔やまれた。TVでは進行上、司会やゲストが映し出される事が多くいのは仕方がないとしても・・・カメラのファインダーを通して見る“花火の映像”はなんとも味気の無いもので、今でも・・・記憶を辿ると蘇ってくる仲間と楽しんだ夏の夜の花火の情景の方がボクにはリアルに感じられた。 . . . 本文を読む
某会社を撤収させてもらってちょうど1週間が過ぎようとしている。辞めた事の後悔は微塵の欠片も無い。これから先の、ボクを待ち受けるだろう“未来”に対しても大きな不安は抱いてはいない。だが人生への焦りのような気持ちは少しづつ蓄積されては来ている。
若くして成功を掴んで影響力を持ったと思ったら、一瞬で全てを失う輩もいる時代・・・今から少しばかり、自分なりにジタバタしてみても遅くはないのかもしれない。 . . . 本文を読む
それは予想とは程遠いい・・・慌ただしくも呆気ない終わり方だった。ボクとしては・・・最後の日は緩やかに穏やかに時を過ごして・・・口先だけでも嘘でもいいから、惜しまれる言葉をかけてもらって照れ臭げに静かに幕を引いてみたかった。背中を見送られながら、振り返る事なく・・・なんて言う独り芝居にも程がある去り方も自分らしいかとも考えた。
でもいざ蓋を開けてみると、朝から時間に追われながら仕事をこなすハメになり・・・ホッと一息ついた昼休みの後は時間が足りないくらい忙しくて慌ただしく、片付ける事が山積みで次から次と用事が増えていった。今日に限ってどうした事かと言う程だった。 . . . 本文を読む
昨日はなぜだか怒濤の忙しさで忙殺されまくりだったのに、今日は打って変わって穏やかで緩い時間が流れていた。ボクの仕事は社員が動きやすいように環境の整備をしたり、フォロー/サポートする事が主である。社員同士は時間がポッカリと空くと、椅子に腰かけながら業界ネタや新聞ネタでたわいもない会話をする事が多い。ボクはそのそばで・・・今日やっておかなければならない雑事を淡々とこなしているので、その話している内容が否応無しに耳に入ってくる。ボクは、無関心/無表情で一線を画すように務めているので話が振られる事は滅多にないが、でも聞き耳だけは立てていたのだった・・・ . . . 本文を読む
金曜に続いて久しぶりに新宿へ出てきたボクが向かった先は電気の量販店・・・MACの内蔵電池を買う為である。エスカレーターで売り場へ上がってみるとMACの売り場面積が縮小されていた事に少しばかり悲しくなった。これではきっと在庫など置いていないだろう。近くにいた派遣らしい女性店員に尋ねてみると“お取り寄せになると思います。聞いてきますのでお待ち下さい。”と返答があり、その店員はウインドウズPC売り場で暇そうにしていた男性社員に聞きに行った。その言葉のやりとりは聞こえなかったが、男性社員の目は驚いたように“無いなぁ”と言う色を見せながら指示を出し、ペコリと一礼した女性店員がボクのところへ戻って来たのは僅か1分後であった。 . . . 本文を読む
仕事を終えてバスに乗り、携帯の電源を入れてメールの問い合わせをしてみると・・・Sさんから“カラオケのお誘いメール”が届いていた。明日明後日が休みだから帰宅が夜遅くなっても気分的には凄く楽で、月曜から日に日に溜まった疲労も一瞬で吹き飛んだボクだった。メール自体は9時前に届いていたのだが、会社内では携帯の電源を切らねばならないので確認できたのは17時半過ぎになってしまった。もう既に他に用事を入れているかもしれないと思いながら・・・ボクはメールで“ОK”の返事をすると、車窓の外の流れる景色を久しぶりに眺めた。 . . . 本文を読む
いつもとなんら変わらぬ・・・見せかけの愛想笑いを浮かべて日々を過ごしているつもりだったが、この数日で何かが変わった。ボクは、派遣先の人間関係や仕事に慣れるまでは他人と距離を置いて接する方だ。その方が誠実さや真面目さと言う評価を得やすいからでもある。そんな風に書くとボクは計算高くて嫌な人みたいに思われてしまうが、実際にはその間逆だ。
計算して人と付き合う事なんか出来ないし、気が弱くて打たれ弱くて相手の出方に合わせる性格だし、環境に慣れるまでには人一倍時間がかかってしまうのだ。だからと言って人見知りは無く・・・笑顔の自然体なのでコミュニケーションにはなんの支障もない。 . . . 本文を読む