真っすぐに穏やかに・・・ボクを優しく、包み込むように見つめる目がそこにある。ボクも・・・その気持ちに応えるかのように、穏やかな気持ちで真っすぐに見つめ返した。
目の前にいるその人の・・・ポツリポツリと呟くような短い言葉にボクはうなづき・・・そして短い言葉を重ねて添える。テーブルの向かいに佇むように座るその人の、やわらかで静かな物腰と仕草、あどけなくて屈託のない無防備なほどの笑顔に、ボクは、これまでに感じた事のない、焦がれるような・・・刹那くて愛おしい気持ちを抱いていた。穏やかで優しい目に見つめられるだけで、ボクは穏やかで優しい気持ちで満たされていくのを感じていた。
“早く逢いたい”・・・色褪せて、忘れかけていたような、こんな気持ちになったのはいつ以来だろう。待ちあわせの時間に間に合うように仕事を切り上げ、ボクは平静を装いながらパソコンの電源を切って退社した。はやる気持ちが、ボクを足早に地下鉄の駅へ向かわせた。
吊り革につかまって、揺れる地下鉄に身を委ねていたボクは、駅に着くたびに携帯電話の時計を確かめ、胸の鼓動が大きくなっていくのを全身で感じていた。
地下鉄が動き出しすと、列車の窓に、一人で微笑んでいるボクの顏が映った。
会社帰りは、いつも気怠そうにゆっくりと歩くボクだったが、今日は違った。
いつもは決して歩きはしない長いエスカレーターを、心が浮き足立つような軽い足取りで登りきった。ボクは、地上に出て、携帯電話で時間を確かめると、約束の時間までにはまだ20分くらいはあって、ゆっくり歩いて行っても10分前には着ける事を確認し、少し緊張していた。
普段は人通りが多くて、自分のペースでは歩けないイライラする歩道で、気持ちを落ち着けようと、ゆっくりと深く酸素を吸いこみ、少し歩幅とペースを落として歩いた。
待ち合わせの場所へ向かっている間、ボクは、焦がれるような気持ちで、道を行き交う人々目で追いかけ始めていた。もしかしたら・・・あの人も、ボクと同じタイミングで待ち合わせの場所へ向かっているかもしれないと思ったのだ。刻一刻と近づいてくる時間を思うと、ボクの鼓動は高鳴り、胸は踊り、心の温度がどんどん高くなっていくのを感じていた。
交差点で、赤信号が青に変るのを待っていた時、背後から肩を“ポンポン”と二度たたかれて振り返ると、恋い焦がれている人が、はにかんだような穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
背後は全く気にもしていなかったボクには不意打ちだった。ボクは、時が止まる魔法をかけられたように、振り返ったまま止まった。そして、目元と口元をゆっくりと緩めた。
信号が青になって回りの人が動き出すと、ボクとその人は言葉もそこそこに、お互いの顏を覗き込みながら、ゆっくりと歩き始めた。ボクの気持ちは潤いで満たされていった。
隠れ家的な雰囲気で、通りには面していない、あまり知られていないような店に行くまでの5分程、ボクらはあまり会話は交さなかった。店のいちばん奥のテーブルに、向きあうように静かに座ると、時はゆるやかに過ぎ、時間が経つのも忘れていった。
お互いによく喋るタイプではなかったが、ただ一緒にいるだけで、ただ時々、見つめ合うだけで、ただそれだけでよかった。お互いの思いや、感じている事が、手に取るように解った。
波長が合うその人との間には、言葉はいらなかった。
ボクは、このまま時が、止まってしまえばいいのに・・・とさえ感じていた。
恋しくて、愛おしくて、刹那くて・・・その甘い感覚で、ボクの心は溢れていた。
目の前にいるその人の・・・ポツリポツリと呟くような短い言葉にボクはうなづき・・・そして短い言葉を重ねて添える。テーブルの向かいに佇むように座るその人の、やわらかで静かな物腰と仕草、あどけなくて屈託のない無防備なほどの笑顔に、ボクは、これまでに感じた事のない、焦がれるような・・・刹那くて愛おしい気持ちを抱いていた。穏やかで優しい目に見つめられるだけで、ボクは穏やかで優しい気持ちで満たされていくのを感じていた。
“早く逢いたい”・・・色褪せて、忘れかけていたような、こんな気持ちになったのはいつ以来だろう。待ちあわせの時間に間に合うように仕事を切り上げ、ボクは平静を装いながらパソコンの電源を切って退社した。はやる気持ちが、ボクを足早に地下鉄の駅へ向かわせた。
吊り革につかまって、揺れる地下鉄に身を委ねていたボクは、駅に着くたびに携帯電話の時計を確かめ、胸の鼓動が大きくなっていくのを全身で感じていた。
地下鉄が動き出しすと、列車の窓に、一人で微笑んでいるボクの顏が映った。
会社帰りは、いつも気怠そうにゆっくりと歩くボクだったが、今日は違った。
いつもは決して歩きはしない長いエスカレーターを、心が浮き足立つような軽い足取りで登りきった。ボクは、地上に出て、携帯電話で時間を確かめると、約束の時間までにはまだ20分くらいはあって、ゆっくり歩いて行っても10分前には着ける事を確認し、少し緊張していた。
普段は人通りが多くて、自分のペースでは歩けないイライラする歩道で、気持ちを落ち着けようと、ゆっくりと深く酸素を吸いこみ、少し歩幅とペースを落として歩いた。
待ち合わせの場所へ向かっている間、ボクは、焦がれるような気持ちで、道を行き交う人々目で追いかけ始めていた。もしかしたら・・・あの人も、ボクと同じタイミングで待ち合わせの場所へ向かっているかもしれないと思ったのだ。刻一刻と近づいてくる時間を思うと、ボクの鼓動は高鳴り、胸は踊り、心の温度がどんどん高くなっていくのを感じていた。
交差点で、赤信号が青に変るのを待っていた時、背後から肩を“ポンポン”と二度たたかれて振り返ると、恋い焦がれている人が、はにかんだような穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
背後は全く気にもしていなかったボクには不意打ちだった。ボクは、時が止まる魔法をかけられたように、振り返ったまま止まった。そして、目元と口元をゆっくりと緩めた。
信号が青になって回りの人が動き出すと、ボクとその人は言葉もそこそこに、お互いの顏を覗き込みながら、ゆっくりと歩き始めた。ボクの気持ちは潤いで満たされていった。
隠れ家的な雰囲気で、通りには面していない、あまり知られていないような店に行くまでの5分程、ボクらはあまり会話は交さなかった。店のいちばん奥のテーブルに、向きあうように静かに座ると、時はゆるやかに過ぎ、時間が経つのも忘れていった。
お互いによく喋るタイプではなかったが、ただ一緒にいるだけで、ただ時々、見つめ合うだけで、ただそれだけでよかった。お互いの思いや、感じている事が、手に取るように解った。
波長が合うその人との間には、言葉はいらなかった。
ボクは、このまま時が、止まってしまえばいいのに・・・とさえ感じていた。
恋しくて、愛おしくて、刹那くて・・・その甘い感覚で、ボクの心は溢れていた。
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