午後13時半頃に新宿に着いたボクは、改札口を通り抜けると、小銭入れから500円玉を取り出して握りしめ、売店に立ち寄って煙草を買った。ボクの隣では、初老の男がスポーツ新聞を広げて読んでいて、“お客さん・・・それ●●円よっ”と売店のおばちゃんの一人にキッと睨まれていたが、男は気にしている様子がなかった。その場から数M程離れた所で、ボクはなんとなく後を振り返って売店を見ると、男は新聞を丸めて元に戻しているところだった。
売店のおばちゃんは、呆れたような顔をしたままで、立ち去る初老の男を見ていた。
そんな光景を見あと、ボクは階段を数段降り、紀伊国屋書店へ向かって新宿西口の地下を歩き始めた。平日の昼休み時を過ぎた時間は、土日と比べると人の往来はそれ程多くはない。混雑した人の往来が苦手になっているボクには、ちょうどいい人の密度だ。
歩き始めて数歩・・・首から下げた携帯電話にメールが着信し、ボクは歩く速度を落として、回りに人が交差したりスレ違ったりしない事を目で確かめながら、左手で携帯を掴んで指で操作してメールを開き、ゆっくりと歩きながら読んだ。“ふ~ん、そうなのかぁ・・・”取り急ぐ内容ではなかったので、返信を打つのは後回しにしようと思い、携帯から手を放し、左肩からズレ落ちそうになっていたショルダーバックを深く肩に乗せ返して真っすぐに顔を上げると、前方数Mから、警官がボクに近づいてきている事に気が付いた。ボクが歩く方向を少し斜めに変えると、警官もボクの進行方向に合わせて変えた。
“ちょっといいですか?”“はい??”警官に声をかけられたボクは、思わず回りをキョロキョロと見渡した。西口の地下には警官が数名いて、ボクと同じように声をかけられたらしいスーツを着た中年男性が、若い背の高い警官と何やら話をしているのが見えた。
通行人は、そんなボクらには気を留めずに、足早に先を急いでいる。
ボクよりも背が低くて若い警官の口元は、ゆるやかなカーブを描いていて、少し微笑みかけるような感じではあったが、何かを見透かそうとしているようかのような目は、全く笑ってはいない。「ちょっと鞄の中身を見せて欲しいんです」・・・そう警官に言われ、ボクは、近くの柱の影に連れて行かれた。訳が解らずに、ボクは頭が真っ白になった。
“新宿にはよく来られますか?”“えぇ度々来ますけど・・・”“では、お願いします”
そんな短い会話の後・・・肩から下げたショルダーバックを正面にし、ファスナーを開けて見せた。・・・“ナイフなんかは鞄には入っていませんよね?”“えっ?”・・・不躾な警官の問に、ボクは鞄の中を手でガサゴソと隙間を広げて見せ・・・“筆記用具とノートと財布くらいしか入っていませんけど”・・・と、口答では柔らかく、心の中ではムッとして告げた。
ボクはさっさと済ませて退散したかったが、鞄の内ポケットを目ざとく見つけた警官の手が 鞄に近づいた。やれやれ・・・警官に鞄を触られるの嫌だったはボクは、内ポケットを見えるように開け、印鑑とボールペン、通帳と社会保険の支払い伝票しかない事を確認させた。
警官はまたもや・・・“鋭利な刃物やナイフは入っていませんね?”・・・と淡々とした口調で言い放った。その間中、警官の伸びた手は空に浮かんで止まっていた。
確認が済んでも、警官の目はどこか・・・見透かそう・・・とするような感じのままだった。
鞄の中身を少しばかり整えながら・・・“何かあったんですか?”・・・と、ボクは警官に尋ねてみた。すると・・・“そこのトイレで殺人事件がありまして”・・・と、驚く答えが返ってきた。
“あっあの日だ”・・・一瞬で記憶が蘇り、そしてその時の謎が解けた。
“現場検証をしてたのは知ってます。人集りもありましたね。そのすぐ脇を通ったんですけど、何があったんだろう?って思ってたんですよ”・・・
“新宿は危険なんですよ”・・・最後に警官はそう言った。
時間にして3分程度の事で、ボクにはやましい事などないが、唐突な手荷物検査はあまりいい気持ちはしなかった。通りすがりの人を捕まえて、このような職務質問をしていると言う事は・・・まだ犯人は捕まっていないと言う事だろうか?
思えばあの日・・・帰宅して家族にも見たままを話したが、そんなニュース報道はなかったと聞いている。PCでネット配信記事を検索しても記事は出て来なかったし、ボクの他でブログに書いている人もいなかった。翌日の新聞にもそんな記事はなかった。
“あぁあぁ~警官に職務質問されちゃって~手荷物検査もされちゃったぁ~”
“怪しいからなんじゃないのぉ~やだねぇ~呼び止められるなんてぇ~”
その直後に妹にメールを打つと、すぐにそんな返事が来た。
警官に声をかけられた直後のボクは、咄嗟にキョロキョロとして、端から見ると確かに挙動不審だったかもしれない。
関連記事 → WHAT WAS A HAPPEN ←9/27付けの当ブログ
売店のおばちゃんは、呆れたような顔をしたままで、立ち去る初老の男を見ていた。
そんな光景を見あと、ボクは階段を数段降り、紀伊国屋書店へ向かって新宿西口の地下を歩き始めた。平日の昼休み時を過ぎた時間は、土日と比べると人の往来はそれ程多くはない。混雑した人の往来が苦手になっているボクには、ちょうどいい人の密度だ。
歩き始めて数歩・・・首から下げた携帯電話にメールが着信し、ボクは歩く速度を落として、回りに人が交差したりスレ違ったりしない事を目で確かめながら、左手で携帯を掴んで指で操作してメールを開き、ゆっくりと歩きながら読んだ。“ふ~ん、そうなのかぁ・・・”取り急ぐ内容ではなかったので、返信を打つのは後回しにしようと思い、携帯から手を放し、左肩からズレ落ちそうになっていたショルダーバックを深く肩に乗せ返して真っすぐに顔を上げると、前方数Mから、警官がボクに近づいてきている事に気が付いた。ボクが歩く方向を少し斜めに変えると、警官もボクの進行方向に合わせて変えた。
“ちょっといいですか?”“はい??”警官に声をかけられたボクは、思わず回りをキョロキョロと見渡した。西口の地下には警官が数名いて、ボクと同じように声をかけられたらしいスーツを着た中年男性が、若い背の高い警官と何やら話をしているのが見えた。
通行人は、そんなボクらには気を留めずに、足早に先を急いでいる。
ボクよりも背が低くて若い警官の口元は、ゆるやかなカーブを描いていて、少し微笑みかけるような感じではあったが、何かを見透かそうとしているようかのような目は、全く笑ってはいない。「ちょっと鞄の中身を見せて欲しいんです」・・・そう警官に言われ、ボクは、近くの柱の影に連れて行かれた。訳が解らずに、ボクは頭が真っ白になった。
“新宿にはよく来られますか?”“えぇ度々来ますけど・・・”“では、お願いします”
そんな短い会話の後・・・肩から下げたショルダーバックを正面にし、ファスナーを開けて見せた。・・・“ナイフなんかは鞄には入っていませんよね?”“えっ?”・・・不躾な警官の問に、ボクは鞄の中を手でガサゴソと隙間を広げて見せ・・・“筆記用具とノートと財布くらいしか入っていませんけど”・・・と、口答では柔らかく、心の中ではムッとして告げた。
ボクはさっさと済ませて退散したかったが、鞄の内ポケットを目ざとく見つけた警官の手が 鞄に近づいた。やれやれ・・・警官に鞄を触られるの嫌だったはボクは、内ポケットを見えるように開け、印鑑とボールペン、通帳と社会保険の支払い伝票しかない事を確認させた。
警官はまたもや・・・“鋭利な刃物やナイフは入っていませんね?”・・・と淡々とした口調で言い放った。その間中、警官の伸びた手は空に浮かんで止まっていた。
確認が済んでも、警官の目はどこか・・・見透かそう・・・とするような感じのままだった。
鞄の中身を少しばかり整えながら・・・“何かあったんですか?”・・・と、ボクは警官に尋ねてみた。すると・・・“そこのトイレで殺人事件がありまして”・・・と、驚く答えが返ってきた。
“あっあの日だ”・・・一瞬で記憶が蘇り、そしてその時の謎が解けた。
“現場検証をしてたのは知ってます。人集りもありましたね。そのすぐ脇を通ったんですけど、何があったんだろう?って思ってたんですよ”・・・
“新宿は危険なんですよ”・・・最後に警官はそう言った。
時間にして3分程度の事で、ボクにはやましい事などないが、唐突な手荷物検査はあまりいい気持ちはしなかった。通りすがりの人を捕まえて、このような職務質問をしていると言う事は・・・まだ犯人は捕まっていないと言う事だろうか?
思えばあの日・・・帰宅して家族にも見たままを話したが、そんなニュース報道はなかったと聞いている。PCでネット配信記事を検索しても記事は出て来なかったし、ボクの他でブログに書いている人もいなかった。翌日の新聞にもそんな記事はなかった。
“あぁあぁ~警官に職務質問されちゃって~手荷物検査もされちゃったぁ~”
“怪しいからなんじゃないのぉ~やだねぇ~呼び止められるなんてぇ~”
その直後に妹にメールを打つと、すぐにそんな返事が来た。
警官に声をかけられた直後のボクは、咄嗟にキョロキョロとして、端から見ると確かに挙動不審だったかもしれない。
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