着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

木を見て森を見ない着付けはダメなんです

2022-03-09 13:38:26 | 振袖着付け
私の下の息子が結婚することになり、先日お相手のご家族との顔合わせ会がありました。
向こうのお母さまもお嬢さんも着物が好きだとのことで、お嬢さんの方から
「顔合わせには母も私も着物を着ていきたいと思っています」
と言われましたので、
「それならば私も着物を着ていきますね」
ということになりました。
また、お嬢さんには私がお振袖をお着せすることになりました。

当日私は、息子が小学校の卒業式のタイミングで着用出来るように私自身が作成した長襦袢と付け下げ訪問着を着て出かけ、お嬢さまとの待ち合わせ場所でお振袖の着せ付けを済ませて、顔合わせをすることになっているお店へと向かいました。
そして、終始和やかに会は進み、無事に終えることが出来ました。

こういう時のカメラマン役はいつも主人です。
始終主人は様子をカメラに納め、私もスマホのカメラで二人の仲睦まじいさまのシャッターを切っていました。

さて後日、生徒さんとの会話の中で、その時私がスマホで撮影した写真をいくつかお見せした時に、
「先生、お嬢さまにはどんな帯結びをされたんですか?写真が見たいです」
と言われました。

「…」
なんと私、一枚も真後ろから、帯結びのアップの写真を撮っていませんでした。
何としたことでしょう。
でも、実は私、仕事でお客様の着せ付けを頼まれる場合は大人数のお客様をお着せする現場が多く、いちいちお一人お一人のお写真を撮れる環境にないこと、またそもそもクライアントさんから現場の着付師、美容師は
「自分のスマホやカメラにお客様の写真をおさめることをしないで」
と言われることが殆どです。
つまり、着物を着たり着せたりするのがあまりに日常すぎて、写真を撮る習慣が全くありませんでした。

私がお世話になったことがあるスタジオでは、
「着物を綺麗に着せてくれて帯も適正な位置に綺麗な柄が出る様にきっちり結んで帯揚げ帯締めも綺麗に仕上げてくださったならば帯結びなんてどうでもいい、全体のシルエットが美しくなるよう仕上げて欲しい」
と言われたことがあります。

着付け師は日夜、沢山の帯結びを考えたり研究したりしているのに、どうでもいいとはどういうこと?とその時は思いましたが、確かにそれはある意味当たっていました。
実際、今回の自然な写真撮影で、お嬢さんの後ろの帯結びだけを撮るという発想は誰にもなかったのだと思います。

「木を見て森を見ない着付け」ではダメだということですね。
今回の顔合わせではクライアントさんに言われたことが妙に腑に落ち、図らずとも大きな勉強になりました。

着物を綺麗にお着せ出来て、特別な一日を快適に過ごしていただけるよう、そのほんの一部のお手伝いをすること…、それが着付け師の仕事としては一番大切ということなんですね。
そういった意味で今回の着付けのお仕事は大成功でした。

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko

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