愛について最も詳しい職業：恍惚（2003）

Nathalie（2003）

週一本BSで知らない映画を「えいっ！」見ることにしているのですが、こちらもその「覆面鑑賞アワー」で見た作品。大人の作品ですね。でも強烈な、フランス映画らしい、味のある映画です。アンヌ・フォンテーヌ監督、大人のオンナの風格漂うカトリーヌ（ファニー・アルダン）が、セックスレス状態だった夫ベルナルド（ジェラール・ドパルデュー）の浮気に気づき、高級娼婦のマルレーン（エマニュエル・ベアール）に夫を誘惑してくれ、と頼む。マルレーンは「ナタリー」という普通の「女の子のフリをして、夫と関係を持ち、情事をカトリーヌに逐一報告する。そして回を追うごとにベルナルドとナタリーは親密になり、ついに・・・

ってことで、なんですかねこの邦題「恍惚」って。原題はナタリー。娼婦マルレーンがベルナルドに近づくための偽名を題名にしたのは、大きな意味があるのです。カトリーヌは夫の情事の内容を知りたかったのですが、マルレーンの赤裸々な報告を聞くうちにマルレーン演じるナタリーに感情移入して行くように私は思ったからです。ナタリーはカトリーヌの分身で、彼女の報告を聞くことで自分も行為を追体験しているかのようです。物語の要、マルレーンの情事の報告はかなりエロエロです。実際には全く情事のシーンは出てきません。が語られる内容のディープなこと。何でもありです。それに聞き入るファニー・アルダンの表情は恍惚とし、怪しい雰囲気。同時にエマニュエル・ベアール演じるマルレーンと、カトリーヌの女同士の一種即発的な性的緊張感は凄いと思いました。


カトリーヌ（ファニー・アルダン）奥、とマルレーン（エマニュエル・ベアール）。目に星がっ？！

なんと言ってもこのマルレーン役のエマニュエル・ベアールの魅力は抗いがたいです。６３年生まれって嘘でしょーって思いますよね！娼婦の厚化粧は妖艶ですし、素顔は食ってしまいたいほど可愛いですし、フフンと口をひんまげて鼻で笑ったりするところは目が点になるほど魅力的です。夜は高級娼婦をし、昼はメイクアップアーティストを目指してコスメ店で働く彼女、誰よりも人生について、そして愛について深く熟知した者のもつ雰囲気を漂わせています。生きるために、何かの目的をかなえるためには手段を選ばない、タフで感情を表に出さないこのマルレーンを、エマニュエル・ベアールはあの冷たい石のような目をほんの少し動かすだけで表現しています。このタフさと冷静さが、最後の彼女の「言い訳」を聞いたときにポッキリ折れる。ネタバレですから書きませんが、やられたーって思いました。本当に可愛いです。


MIのときも可愛かったわ、そういえば。

映画の中の素顔の写真が見つからなかったのでこれで。

この映画には意外なオチがあり、それが非常に印象に残りました。そういうことだったのか、と全ての複線が繋がったとき、この映画は「ちょっと変った官能映画」からそれ以上の物へ昇華しました。あのオチかあったからこそ、全ての疑問に解答が与えられ、各登場人物の性格がより印象的になる。いい映画です。星５つ。でもとってつけたようなジョイ・ディヴィジョンの話は唐突でしたねぇ？あと登場人物タバコ吸い過ぎですけど・・・