馬鹿正直で恋愛下手なあなたに：エターナル・サンシャイン(2005)

Eternal Sunshine of the Spotless Mind (2004)

ジム・キャリーとケイト・ウインスレット主演、フランス人ミシェル・ゴンドリー監督のヒューマン・コメディ。
この監督の名を覚えたのはあの「ヒューマンネイチャー」。見た人は判ると思いますが、なんちゅう変な映画を作るヤツだぁ？と驚愕したわけです。しかし彼の映画はどれも、突拍子もないストーリーのようでいて基本は同じ。人間は捨てたもんじゃない、人生って意外に楽しいもんなのよ、人を愛するって素敵なことなのよというストレートなメッセージ。気恥ずかしくなるような、おことば色紙みたいなこのテーマを突拍子もないシチュエーションで見せてくれる。

地味な青年ジョエル（ジム・キャリー）はバレンタインデーに、会社をサボって一人海岸に行きます。そこで出会った奇妙な女の子彼女クレメンタイン（ケイト・ウインスレット）。やっと幸せをつかめそうな予感がしていた矢先、何かがおかしいことにジョエルは気づきます。実は２人は・・・


ジム・キャリーとケイト・ウインスレット。

実は２人は・・・って、ネタバレしたくないんでこれ以上書きません。最初は普通の恋愛話かなあ？って思っていたらどんどん奇妙な方向に行ってしまう。なにしろ失恋したジョエルは彼女の記憶を消すために「記憶消去会社」へ行くんですよね。この記憶消去会社の存在がいかにもゴンドリーらしいです。「記憶は感情の核の周りに存在し、核を取り除くと記憶はゆっくり消滅する」なんて理論なんですけど、ああ、そうかもしれないなあ・・・と納得。強い感情を伴う記憶はいつまでも忘れない。楽しかった記憶が強ければ強いほど、それに付随する辛い思い出も強調される。辛い思い出だけ消すことは不可能で、感情の核を取り除いたら楽しい思い出だって一緒に消えてしまう。それに気づいたジョエルは何とかして彼女の記憶を残そうと自分の記憶の中を逃げ回る、その逃避行がこの映画の面白いところ。



記憶の中のイメージを表現するCGも面白いし、脇役もいつものとおり豪華で適材適所。マーク・ラファロはジョエルの記憶を消す技術者、イライジャ・ウッドはそのアシスタント、キルティン・ダンストは地味な様で重要な受付の女の子役。


マーク・ラファロとイライジャ・ウッド。

最後、ばらばらに見えていたストーリーがつながった時、再び「なんちゅう映画を作るヤツだぁ！」と驚愕させられました。こんな映画が作れるゴンドリーってひとは、きっと心底いい人なんだろうなあ、馬鹿正直でお人よしで、どんなに傷ついても人を信じることをやめないような。なあんて思ってしまったわけです。こころ温まる現代の御伽噺、なんて赤面しちゃうような形容が似合うこの映画、ハッピーになりたいときにお勧めの一本。