ORGANIC STONE

私達は地球を構成する生命を持った石に過ぎないのですから。

何処までも続く黒く塗られた闇:レンブラントの夜警(2008)

2008-02-26 00:37:48 | 映画:ミニシアター系
Nightwatching(2008)

英国映画界の鬼才ピーター・グリーナウェイの最新作、黄金期のオランダの肖像画家、レンブラントが「夜警」に秘めた陰謀の秘密とは?ストーリーは単純ながら、相変わらず奇妙で見るものを惑わせるこの人のスタイルは変りません。人生は辛く、不公平で不完全で、そして残酷。

世界の富が集中した中世オランダ。若くして肖像画家として成功していたレンブラントは、市民警備隊から肖像画を描くよう頼まれます。しかし警備隊の隊長が事故死したことを「殺されたのだ」と推理したレンブラントは、その陰謀を彼らの肖像画の中に描き込んで世間に知らせようとします。

誰もが見たことのあるレンブラントの「夜警」。ダイナミックな構図と彼独特の光と影を使った肖像画でありながら肖像画以上のストーリー性を感じさせる絵です。数々の小物や奇妙な衣装、人物たちの交わす視線も謎めいていますが、なによりも全部を描かず影の部分を想像させることにより見るものの想像力を刺激する彼のこの作品には、事実たくさんの秘密や謎解きが隠されているといわれています。そのただでさえ興味ぶかい謎解きに殺人事件を絡めたストーリーを鬼才グリーナウェイが料理するのですから、まあ期待しちゃってましたよ。グリーナウェイの映画としては100点満点で50点くらいでしょうか。衣装やセットは非常に凝っていますし、レンブラント役マーティン・フリーマンも飄々とした中にアーティストらしい知性とユーモアを感じさせる熱演なのですが、何かが足りない。グリーナウェイ的には薄味だからかな・・

映画というより劇を意識した構図やセット、台詞で、ほとんどのストーリーはレンブラントや他の登場人物によって語られます。・・・レンブラントの手に掛れば、絵の中では誰もが役者である。映画の最後でも繰り返されるこの言葉は、この映画のテーマなのでしょう。この映画の圧倒は絵が完成し、レンブラントが絵の意味を警備隊に説明する謎解き場面。実際の絵と俳優の似具合もかなり楽しいです。絵の中の落ちは、その事実は知っていましたが驚きました。

映画の中の絵を再現した1シーン。下は本物の「夜警」。


グリーナウェイの映画は、アート的だと評されます。アートとは、私は、オブジェクトをその本質とは違う美的付加価値を見出すことだと思います。グリーナウェイの映画にはそういったアート的感覚を強く感じるシーンが必ず出てきます。ゆっくりと這うナメクジや解体され吊り下げられた動物、人体に書かれた文字など、そのものの本質以外の「美しさ」を感じさせることに長けている監督だと思います。が、この映画にはそれが無い。どの場面も横長の比率を生かした、レンブラントの絵を髣髴とさせる光と影を使った見事な構図で美しいのですが・・・

グリーナウェイの映画の登場人物は皆、重く逃れられない贖罪のようなものを抱えているようです。この映画では虐待を受けているマリアケがその代表でしょう。彼の映画を包む英国の鉛空のようなどんよりとした不穏な空気。その中にほんの少しでも救いを見出そうとしても「何処までも続く黒く塗られた闇」に置き去りにされる・・・置き去りにされたくない人は見ないほうがいいかも。

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2 コメント

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難しそうですね~ (ラルフ)
2008-02-26 16:58:37
絵には詳しくないですけど、
こういうアート系の映画って興味あります!
観ないほうがいいですか!?w
ジュリアン・シュナーベルの「バスキア」を
もう一回観直したいなと思っているんですが
ptdさんはご覧になりましたか?
「クリムト」も気になってますが…
レンブラントに触れられなくてごめんなさいw
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あーグリーナウェイだわこりゃ、って映画 (ptd)
2008-02-26 17:39:54
ラルフさまこんぬつあ。
寒くてろれつが回りません。

絵には詳しくないですけど、
>こういうアート系の映画って興味あります!
>観ないほうがいいですか!?w
難しいですねえ。お勧め!ってほどいい訳じゃないです。
私はグリーナウェイが好きなので、それなりに楽しんだのですが、退屈していびきかいて寝てる人もいました。
映画としてはちょっと(かなり)変ってます。
画家自伝ものって多いけれど、
この映画はそれともちょっと違うし。
見終わった後は「あーグリーナウェイだわこりゃ。」
としか言い様の無い独特の寂寥感に襲われます。

>ジュリアン・シュナーベルの「バスキア」を
>もう一回観直したいなと思っているんですが
それはウォーホールを殺そうとしたバスキアの話のヤツ?
見たけど忘れちゃった・・・
かなり暗かった記憶がありますよ。

ではでは~
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