巻頭写真 : モン・ドォル周辺のメンヒル『メニール・ド・シャン・ドレン』
海と島と岩と
異民族で異言語を持ち異なる独自のキリスト教信仰を持ち
ケルト文化と古代巨石文明を起床する
全てにおいて異世界のブルターニュ
70
異民族で異言語を持ち異なる独自のキリスト教信仰を持ち
ケルト文化と古代巨石文明を起床する
全てにおいて異世界のブルターニュ
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最終回
ブルターニュはケルト文化の国
ローマ化したガリア人とゲルマン人との混血であるフランスの「中央政権」とは
人種が違い
言語も伝統の宗教のあり方も違い
ローマ滅亡以来フランス(フランク族カロリンが王朝とのちのフランス王家)
による千福行動に対抗し
独立を守る戦いが政治・外交・軍事面で15世紀まで延々と続いた
他の地方よりフランスへの併合がずっと遅かった分
その独自性が強く残った
キリスト教信仰の中の「Grand Pardon パルドン祭」はその最たるもの
「Grand Trémine 大トレミーヌ祭」とも呼ばれる
詳しくは『ロクロナン』の項を参照されたい
そして
ブルターニュのキリスト教会で欠かせない独特のものが
「カルヴェール」と「ブルトン十字架」
がある
詳しくは「ギミィヨー」「サン天テゴネック」などの項を参照
カルヴェールは礼拝堂や教会の建物の周りを低い塀で取り囲み
その中に墓地や納骨堂などの一緒に作られる
新約聖書の情景を表した彫刻が多く集まった十字架のこと
『Saint-Jean de Trolimon 聖トロリモン』のカルヴェール
『Plougonven プルゥゴンヴェン』のカルヴェール
同
『サン・テドネック』のカルヴェール
同
『Guéhenno』のカルヴェール
『Pleyben』のカルヴェール
「Croix bretonne ブルトン十字架」とは
カルヴェールを簡略化して十字架だけにしたもので
架刑にされたイエスがいることもあるが
普通に見られるイエスの彫刻を十字架にくっつけたものではなく
全体を一枚岩を削って作った十字架のことで
街道筋の交差部や見晴らしの良い丘の上や岬の先端などに建てられている
『Croix de Carantec カランテックの十字架』
『Croix de Guisény ギゼニィの十字架』
特に「ケルト十字」で作られたものは
古くからの土俗信仰が抜けきっていない時代感覚を伝えている
Croix celtique ケルト十字架
ケルト十字はキリスト教の十字架より二千年ほど起源は古く
アイルランドがキリスト教化された時に
アイルランド人が転用し
ブルターニュに伝わってきた
『Fontaine de l'Île Saint-Cado サン・カド島の泉』の十字架
これは「エテル川に沿って」の項の「サン・カド島」を参照ください
ケルト文化の伝統といえば
主だった町では必ず夏に毎年繰り広げられる「ケルト祭り」
皆さんこの時とばかりに民族衣装で身を飾り
バグパイプの楽団が町を練り歩き伝統的ダンスで大騒ぎです
『Coiffes de pays Bigpourden ビグゥルデン地方の髪飾り』
これはおそらくもっとも狭い範囲でのみ伝わる衣装で「コルヌアイユ地方」の
「グゥエゼック村」と「サン・トワ村」
だけに伝わる晴れ着
『Coiffes et Binious de Quimper カンペールの衣装』
この衣装「ビニウ」と髪飾りはコルヌアイユ地方の首都「カンペール」のもの
とにかく
ブルターニュの夏はどこの町でもお祭りです
前からも
後ろからも
民族衣装のオンパレード
大人も
子供も
手拍子も
女性部隊も
男女混合も
親子の組も
昼も
夜も
ブルターニュの夏は暑く燃えます
ケルト衣装の乱舞です
忘れてならないのが古代の巨石文明
その中で
変わり種のメンヒルを一つ挙げておこう
紀元前5000年 〜2000年くらいの間のものだろうと推定されており
高さ7m40
(ただし地中に1/3ほど埋まっている分を除く)
幅2m60
キリスト教伝来とともに
キリスト教化されたメンヒルとして名高い
彫り込まれている文様は
太陽と月から始まって
円にリボンその他「ケルトのシンボル」が多い
十字架は別の石で作られて頭頂部にはめ込まれた
そして
やはりすごいのは「カルナック」の列柱
狭い範囲の三箇所に分散して合計で8000本ほどのメンヒルが列をなす
巨大な石から小さなものへと順番に並ぶ様は圧巻
そして
最大のドルメン『妖精の岩』の驚くべき姿
食文化で言えば
ブルターニュは海の幸
内陸は土地が痩せていて歴史的には小麦が育たず
蕎麦とニンニクしか採れないと言われた
海の幸といえば「オマール海老」
特に「Omard bleu 青いオマール」は特別に稀少で非常に美味
これだけ大きいと1k500はありそうなのでお値段も.....
ちなみに茹でると赤くなるので調理の前に実物をご披露するのがお約束
北海岸の「Côte Armor アルモル海岸」の港に行けば
例えば「ペロス・ゲリック」(既出)など
漁師が獲ってきたオマールを自分で売っているところに出くわすこともある
『Trebourden トレブゥルデン』(既出)の港にて
ここまでになると齢二十年とかになる
ハサミはゴムバンドでぐるぐる巻きに縛っておかないと
挟まれたら悲劇が起こることも
さらには
「アワビ」も特産
パリでは
運が良くても小型のトコブシしか見つからないが
ブルターニュでは
時期によって大型のアワビを出してくれるレストランもある
それから「牡蠣」
『Huître de Belon ブロンの牡蠣』
「ポンタヴェン」(既出)の南のアヴェン川が海に注ぐ河口のすぐ東に
V字型になるように北東から出てくる入り江のような川「ブロン川」の特産で
「ヨーロッパ・ヒラカキ」という和名がある
丸くて平らな牡蠣は古代ローマ人が大好きで
「輸入」の手間を省きたいばかりに
海軍を送りつけて戦闘力で占領してしまったという史実すらある
陸の名物は
今でもニンニクは特産だが
それに加えて「アーティチョーク」も名産地として名高い
ドルメンを背景にアーティチョーク畑
茹でたりオーヴンで焼いたものの「ガク」を一枚一枚はがして
ヴィネガーソースに浸して根元を歯先でこそぐようにして食べる
芯の部分はヤツガシラのような味と舌触り
特筆すべきは
ブルターニュは豚の放し飼いをする
塩を舐める場所
放牧されるのは巨大なメスで
それぞれの寝ぐらとして「一軒家」を与えられている
いわば「家付き娘」
生まれた子豚も一緒に住む
お菓子も
全国区として名高いのが二つ
『Far Breton』
「ブルターニュの朝飯(粥)」みたいな意味で
半干しプルーンを使ったフラン(蒸しカスタード)みたいなもの
『Nantais』
「ナントの(菓子)」という
まるで「ジャパニーズ」という名のお菓子があるみたいなウエメセな名前
もともと『Gateau Breton ブルターニュのお菓子』という名のパウンドケーキが有って
それを平たい円形に作って天面を砂糖で厚くグラッセしたもの
長く続けましたブルターニュ紀行はこれで終わります
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