私は、35年ほど前に、サウジアラビアの紅海側のヤンブーというところに、セメント工場建設のため、1年余り滞在してました。滞在期間を終えて、帰国が近くなった時に、知り合いのアラビア人が彼の自宅に夕食を一緒にと招いてくれました。彼の家族は奥さんと子どもが二人です。
サウジアラビアでは、奥さんの顔を直接見ることは出来ません。彼の家に入ると、部屋がカーテンで仕切られていて、カーテンの向こう側では、奥さんが料理を並べている音がします。しばらくすると、奥さんが、パンパンと手を打ちました。それが、料理の準備が出来たから、入っていいよ、という合図です。
料理の並べてある部屋に入りますと、テーブルの真ん中に、大きなお皿の上で、肉とご飯が湯気を立てています。周りは、果物などご馳走が並んでいます。ふと、私が座る席の前に、小皿が置いてあって、その小皿の上に、ウィンナソーセージみたいなものが、2本並んでいるのに気付きました。友人のアラビア人は、「お前のために、一匹ヤギを料理した。ヤギの一番おいしいものがそれだ。さー食べて」と言いました。私は、何だろう?と考えながら、食べてみると、味はチーズみたいです。ここで、問題です。これは何だと思いますか?ヒントは2本という点です。
さて、答えですが「ヤギの目玉」です。それを聞いたら、2本目はマジマジと見てしまって、食べるには勇気が要りました。目玉というのは、結構奥行きのあるものなのですね。でも、考えてみると、魚の目玉を好む人はいますので、慣れの問題なのでしょう。今となっては、随分と昔の話になりましたが、ふと、小皿に載った目玉を想い出します。