PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

日本縦断トリエステ精神保健講演会

2010年10月29日 09時13分22秒 | イベント告知
                  故フランコ・バザーリア(1976年当時)

既に色んなルートから、お知らせが行ってるかと思いますが。
まもなく「日本縦断トリエステ精神保健講演会」が開催されます。
東京、横浜、大阪、長崎と、まさに縦断です。

このうち、横浜会場は、既に満席打ち止めだとか。
東京会場も、そろそろ危ないと、昨日聞きました。
組織基盤の全くない企画なのに、関係者の関心の強さが伺えます。

実は、今回、来日する方々、皆さん、渡航費は自前です。
精神科医療後進国の日本に、以前から強く来ることを希望されていました。
イタリアで精神病院をなくした経験を、日本の関係者に伝えたい。
メッセージを運ぶことを自らのミッションとして、強く意識しておられます。

僕自身はイタリアに行ったことがないので、偉そうなことは何も言えませんが…。
皆さん、ご存じのように、イタリアには単科の精神病院(マニコミオ)は、ありません。
もともとあった精神病院は、すべて解体され、廃止されました。
そこまでには、四半世紀に及ぶ長い改革の歴史があります。

その動きを、僕が最初に知ったのは、1985年です。
S・シュミットの、『自由こそ治療だ』(半田文穂訳、悠久書房)を読んでです。
この本で、精神科医フランコ・バザーリアらの取り組みが、活き活きと描かれています。

時に「政治主義」と揶揄されたバザーリアですが、元々はごく普通の精神科医だったそうです。
1971年にトリエステの県立精神病院院長に着任し、最初にやったのは病棟の開放化です。
日本でも精神医療改革を志した人々が、最初に行ったのが開放運動でした。
今では当たり前にある開放病棟も、当初は危険視されていたのは一緒です。

精神病院廃絶をうたう法律180号、通称バザーリア法が議会を通過したのは、1978年。
その後、この法律はイタリア全土に拡がり実行されるはずでしたが、そうはなりませんでした。
急進的な法律制定により、大都市や南イタリアでは展開が遅れたとも言われています。
州法の制定は大幅に遅れ、断片的で国法と矛盾することもしばしばだったようです。
従来の精神病院、精神科医たちは、猛反発し、バザーリアらは多くの批判に晒されました。

国民保健計画のもと、最初の精神保健対策事業が発表されたのは1994年です。
1999年、イタリアの保健省が、全精神病院の閉鎖が完了したことを宣言しました。
四半世紀に及ぶ年月を経て、イタリアの精神病院は前世紀のものとなったのです。

1980年に、道半ばでバザーリアは亡くなりますが、その志を継いだ人々が頑張りました。
当初はラディカルと評される一歩が、大きく時代を動かしていったのは確かです。
それまでの常識が打ち破られると、後にはそれが当たり前になってくるんですね。

今回、来日されるのは、バザーリアと歩みをともにした、今も改革の渦中にある方々です。
司会を務める大熊一夫さんが、イタリアを訪ね、「いつか日本へ」と約束した方々です。
『精神病院を捨てたイタリア、捨てない日本』(岩波書店、2009年)に出てくる方々です。

なお、主催や共催は、各会場によって、異なります。
まったく手作りで、この企画のために連動している方々です。
当初、第53回日本病院・地域精神医学会総会で、という話も提案されていたようですが。
結局、認められなかったようで、とても残念です。

あ、もし、もう、どこも、事前申し込みで満席になっていたら、ごめんなさい。
忙しくて、記事としてアップするのが、遅れましたこと、お詫びします。
詳しいことは、各会場の主催連絡窓口に、お問い合わせください。

蛇足ながら、トリエステの取り組みや現状は、本や映画でもご覧になれます。
『トリエステ精神保健サービスガイド』(小川昭夫訳、現代企画室、2006年)
トリエステ精神保健局による、おしゃれなガイドブックです。
どんな施設が今あって、どんなプログラムが提供されているか、わかります。
映画では≪Si puo' fare(シ・プオ・ファーレ)≫が、来春日本でも一般公開です。
邦題は『やればできるさ』になるのでしょうか?
病院解体後の協同組合で過ごす当事者たちの姿が、活き活きと描かれています。

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日本縦断トリエステ精神保健講演会ツアー日程

[主催・共催団体]
日本縦断トリエステ精神保健講演会実行委員会(会長:堂本暁子、事務局長:大熊一夫)
フランコ・バザーリア記念財団
NPO法人 地域精神保健福祉機構・コンボ
精神保健従事者団体懇談会
東京大学グローバルCOE「死生学の展開と組織化」
東京大学精神看護学分野
神奈川県精神障害者家族会連合会
NPO法人横浜市精神障害者家族連合会
NPO法人川崎あやめ会
NPO大阪精神医療人権センター(同センター設立25周年記念事業)
社会福祉法人南高愛隣会

[講演]
●「バザーリア法は世界で最も進んだ精神保健福祉法」
マリアグラツィア・ジャンニケッダ
フランコ・バザーリア記念財団理事長、サッサリ大学教授
社会学者、WHO精神保健アドバイザー、イタリア改革の生き字引
●「家族会は精神保健改革の強力なエンジン」
ジゼッラ・トリンカス              
イタリア家族会連合会長
サルデーニャ州精神保健改革の立役者
●「病院ではできなくて地域センターならできること」
ジョヴァンナ・デル=ジュディチェ
バザーリアの愛弟子の精神科医
“精神保健不毛の地”カンパーニャ州とサルデーニャ州にトリエステ型の地域精神保健サービス網を築いた責任者
●「欧州最古最大の精神病院を閉めた経験から」
トッマーゾ・ロザーヴィオ
バザーリアの愛弟子の精神科医、ローマ大学哲学科客員教授
トリエステの歴史的改革を担い、ローマの巨大マニコミオ閉鎖プロジェクトで最高責任者○「精神病院に頼りすぎるニッポン!」
(コメンテーター・司会) 大熊一夫
朝日新聞記者時代の『ルポ精神病棟』はあまりにも有名。
大阪大学教授を定年後も、精神保健福祉の問題を追究し、第1回フランコ・バザーリア賞を受賞。

※イタリア語逐語通訳つき
※演題は演者の意向で変更になることがあります。

★第1弾 東京 11月16日(火)
事前申込みが必要です【残席僅少】
会場:北とぴあ つつじホール
交通:JR京浜東北線王子駅北口より徒歩2分
地下鉄南北線王子駅5番出口直結
都電荒川線王子駅前駅より徒歩5分
時間:18:30~21:30(開場18:00)
資料代:1,500円
お申込方法:FAXまたはメール
FAX: 047-320-3871
メール: tokyo.trieste@gmail.com
お名前・ご住所・電話番号・FAX番号・メールアドレスをご明記ください。
先着順で、満席になり次第締め切ります。

★第2弾 横浜 【参加申込終了】

★第3弾 大阪 11月20日(土)
【事前申込み不要・直接会場へ起こし下さい】
〔会場〕大阪市中央区民センター
(地下鉄堺筋線・中央線「堺筋本庁」下車)
時間:14:00~16:30 
資料代:当事者・学生 500円   一般:1,000円
問い合わせ先:大阪精神医療人権センター Tel:06-6313-0056
大阪精神医療人権センター設立25周年記念事業として行われます。
講演会は14:00からですが、記念行事は13:30分から開始します。

★第4弾 長崎 11月21日(日) 
事前申込みが必要です。
会場:諫早市民センター
時間10:30~16:30(開場10:00)
お申込方法:FAXまたはメール
FAX:0957-21-0572
メール:nagasaki.trieste@gmail.com
お名前・ご住所・電話番号・FAX番号・メールアドレス・お弁当の申込の有無(お茶付き800円)を明記してください。
http://trieste.jpからFAXのお申込用紙をダウンロードすることができます。