ご隠居さんと熊さんこと熊五郎さんの会話です。
熊さん「ご隠居、あたしのとこのター坊のことでご相談なんですが。」
ご隠居「小学生のお子さんですね。また何かやらかしたんですか。」
熊さん「とんでもねえ。夏休みの自由研究の相談ですよ。
ター坊が、学校の食育で、先生からこう習ったんですよ。
『なんとか農法で栽培した野菜は、普通にスーパーで売ってる野菜よりも体に良い』、ってね。それは、どちらが先に腐るかという実験で、わかるっていうんですよ。」
ご隠居「ああ、食育や食農教育の本に時々そういう話が載ってますね。
実は、本によって、薦める農法が違うのですが。」
熊さん「さすがはご隠居。何でもご存じだ。こいつは話が早い。
実はター坊が、先生の説明した実験をまねてみたんですよ。
なんとか農法の野菜を切ってシャーレに入れる。
スーパーで買った普通の野菜も同じくする。
で、どちらが先に腐るかを観察するって具合で。」
ご隠居「で、どうなりましたか?」
熊さん「それが、3回やって3回とも、先生と反対の結果になりましたんで、困ってるんですよ。」
ご隠居「ほほう。」
熊さん「先生は、こう言ったんですよ。
『スーパーの野菜はすぐ腐るが、なんとか農法は腐りにくい。
きっと抗酸化成分だかなんだかのおかげだから、体に良い』と。
ところがター坊の実験は、なんとか農法の方が先に腐りやがった。」
ご隠居「あっはっは。それなら簡単なことですよ。
自由研究の考察欄にこう書かせなさい。
『腐らない野菜というのは不自然だ。
なんとか農法の方がすぐ腐ったから自然で体に良い。』と。
これは私のアイデアではなくて、実際に、
別の農法を薦める本に書いてある話ですよ。」
熊さん「なるほど、さすがご隠居。
・・・あれ?でもその論法だと、どっちにしても
スーパーの野菜の方が体に良いって言い張れるんじゃ?」
ご隠居「ほほう、どういうあんばいに言うんですかね?」
熊さん「そうっすねー。
『なんとか農法は先に腐る。不衛生でばい菌まみれなんじゃないか?スーパーの方が衛生的で安全安心だ。』ってな具合にね。
で、逆になんとか農法が長持ちしたら『腐らないのは不自然だ。』って言い張るんですよ。」
ご隠居「全く熊さんにしては上出来ですな。」
熊さん「それって褒めてくださってんですか?
でたらめな論法って分かってて、あたしに薦めるとは
冗談きついですよ。」
ご隠居「まあまあ、おこりなさんな。今の話を整理しましょう。
その先生の説明した実験は、何かを説明してるように見えて、実は本当の説明にはなってない。実験結果の考察の段階で出た意見はあくまでも仮説です。この仮説を別の実験で立証してこそ正確な科学実験になるのですが、なぜかそこの段階をはぶいた、実験もどきの詭弁が、食育や食農教育を通じて広まっているのです。」
熊さん「ちょっとあたしには難しいので。別の実験で立証とは?」
ご隠居「なぜ先に腐ったか、あるいは腐らないのはどうしてかを考察しても、それはこの段階ではまだ仮説なので、別の実験をしなければならないって意味ですよ。例えば、先生の言う抗酸化成分説が本当なら、その成分の含有量を分析するなどの実験が必要です。その成分だけを抽出して、カビの生育を防ぐ作用の有無も確認しなければ。」
熊さん「先に腐る野菜が自然だ、という仮説は、どう実験するのですかね?」
ご隠居「それは無理ですよ。人によって、自然な野菜というのは違うものですから。ある人は有機農法だといい、別の人は有機肥料を与えるのも不自然だと言う。さらに別の人は、波動農法だとかEMだとか言う。人間が人為的に選抜したのが今の野菜だから、野草でないとだめだ、という人だっている。機械を使って収穫したら不自然だ、という人もいる。だから、腐る野菜が自然、という説明には意味がないのです。」
熊さん「なるほど。」
ご隠居「先生は何かの食農教育の本でこの『実験もどき』を読んで、そのまままるごと信じてお話されているのでしょう。まあ、最近の小学校の先生方は忙しいですから、詭弁を見抜けない方も、中にはいるのでしょうな。」
熊さん「うーん、ター坊がクラスでいじめられるかも。心配です。」
ご隠居「つらい話ですねえ。先生がなんとか農法にはまってしまったばかりに。先生と異なる研究結果になっても、なんとか農法が体に良いと詭弁を言わなければならないとは。」
熊さん「いやいや、キベンとかいうのには頼りません。
ター坊にはこの自由研究をそのまま提出させますよ。」
ご隠居「そんなことして大丈夫ですか。」
熊さん「もちろん大丈夫です。PTAの会長が当たっちまったんですよ。小学校の校長とクラスの父兄に、このブログを印刷して渡しますから。」
おあとがよろしいようで・・・。
熊さん「ご隠居、あたしのとこのター坊のことでご相談なんですが。」
ご隠居「小学生のお子さんですね。また何かやらかしたんですか。」
熊さん「とんでもねえ。夏休みの自由研究の相談ですよ。
ター坊が、学校の食育で、先生からこう習ったんですよ。
『なんとか農法で栽培した野菜は、普通にスーパーで売ってる野菜よりも体に良い』、ってね。それは、どちらが先に腐るかという実験で、わかるっていうんですよ。」
ご隠居「ああ、食育や食農教育の本に時々そういう話が載ってますね。
実は、本によって、薦める農法が違うのですが。」
熊さん「さすがはご隠居。何でもご存じだ。こいつは話が早い。
実はター坊が、先生の説明した実験をまねてみたんですよ。
なんとか農法の野菜を切ってシャーレに入れる。
スーパーで買った普通の野菜も同じくする。
で、どちらが先に腐るかを観察するって具合で。」
ご隠居「で、どうなりましたか?」
熊さん「それが、3回やって3回とも、先生と反対の結果になりましたんで、困ってるんですよ。」
ご隠居「ほほう。」
熊さん「先生は、こう言ったんですよ。
『スーパーの野菜はすぐ腐るが、なんとか農法は腐りにくい。
きっと抗酸化成分だかなんだかのおかげだから、体に良い』と。
ところがター坊の実験は、なんとか農法の方が先に腐りやがった。」
ご隠居「あっはっは。それなら簡単なことですよ。
自由研究の考察欄にこう書かせなさい。
『腐らない野菜というのは不自然だ。
なんとか農法の方がすぐ腐ったから自然で体に良い。』と。
これは私のアイデアではなくて、実際に、
別の農法を薦める本に書いてある話ですよ。」
熊さん「なるほど、さすがご隠居。
・・・あれ?でもその論法だと、どっちにしても
スーパーの野菜の方が体に良いって言い張れるんじゃ?」
ご隠居「ほほう、どういうあんばいに言うんですかね?」
熊さん「そうっすねー。
『なんとか農法は先に腐る。不衛生でばい菌まみれなんじゃないか?スーパーの方が衛生的で安全安心だ。』ってな具合にね。
で、逆になんとか農法が長持ちしたら『腐らないのは不自然だ。』って言い張るんですよ。」
ご隠居「全く熊さんにしては上出来ですな。」
熊さん「それって褒めてくださってんですか?
でたらめな論法って分かってて、あたしに薦めるとは
冗談きついですよ。」
ご隠居「まあまあ、おこりなさんな。今の話を整理しましょう。
その先生の説明した実験は、何かを説明してるように見えて、実は本当の説明にはなってない。実験結果の考察の段階で出た意見はあくまでも仮説です。この仮説を別の実験で立証してこそ正確な科学実験になるのですが、なぜかそこの段階をはぶいた、実験もどきの詭弁が、食育や食農教育を通じて広まっているのです。」
熊さん「ちょっとあたしには難しいので。別の実験で立証とは?」
ご隠居「なぜ先に腐ったか、あるいは腐らないのはどうしてかを考察しても、それはこの段階ではまだ仮説なので、別の実験をしなければならないって意味ですよ。例えば、先生の言う抗酸化成分説が本当なら、その成分の含有量を分析するなどの実験が必要です。その成分だけを抽出して、カビの生育を防ぐ作用の有無も確認しなければ。」
熊さん「先に腐る野菜が自然だ、という仮説は、どう実験するのですかね?」
ご隠居「それは無理ですよ。人によって、自然な野菜というのは違うものですから。ある人は有機農法だといい、別の人は有機肥料を与えるのも不自然だと言う。さらに別の人は、波動農法だとかEMだとか言う。人間が人為的に選抜したのが今の野菜だから、野草でないとだめだ、という人だっている。機械を使って収穫したら不自然だ、という人もいる。だから、腐る野菜が自然、という説明には意味がないのです。」
熊さん「なるほど。」
ご隠居「先生は何かの食農教育の本でこの『実験もどき』を読んで、そのまままるごと信じてお話されているのでしょう。まあ、最近の小学校の先生方は忙しいですから、詭弁を見抜けない方も、中にはいるのでしょうな。」
熊さん「うーん、ター坊がクラスでいじめられるかも。心配です。」
ご隠居「つらい話ですねえ。先生がなんとか農法にはまってしまったばかりに。先生と異なる研究結果になっても、なんとか農法が体に良いと詭弁を言わなければならないとは。」
熊さん「いやいや、キベンとかいうのには頼りません。
ター坊にはこの自由研究をそのまま提出させますよ。」
ご隠居「そんなことして大丈夫ですか。」
熊さん「もちろん大丈夫です。PTAの会長が当たっちまったんですよ。小学校の校長とクラスの父兄に、このブログを印刷して渡しますから。」
おあとがよろしいようで・・・。