タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

ビーガンは、書道も日本画も鑑賞できないのでは

2024年11月17日 | Weblog
ビーガンとは、食だけではなく衣類や持ち物すべての動物性製品を避ける暮らしのことです。例えば羊毛の服や革靴なども禁止です。
するとビーガンは日本が誇る伝統文化「書」や「日本画」も鑑賞できないのでは?墨や日本画は動物の膠(にかわ)を使用しているからです。
昨年に某社から膠を使わない墨が販売されましたが、それ以前に発表されたほぼすべての書画は膠を使用しています。ビーガンさんは日本の美術館やお寺に来てどういう気持ちで作品を鑑賞しているのでしょう。

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和食を食べられない訪日客が多いという話は事実?

2024年09月16日 | Weblog
8月23日の東京新聞記事「訪日中 ビーガンだって和食食べたい!」が、いろいろな誤解をしている内容でした。なお、毎度繰り返しますが、新聞が時々間違った記事を書いたからとSNSやyoutubeの「新聞が報道しない事実」番組にはまる人が居ますが、そんなものよりは新聞の方が良いです。
 たまに新聞も間違えるので、こういうブログで「信頼できる専門家の情報によると、実態はこうですよ」と訂正情報を提供していますが、基本的に私は新聞の情報に信頼を置いています。

という訳で本題に入ります。
記事は、訪日客にはかなリの割合でベジタリアンやビーガンがおり、和食のかつおだしや天ぷらも食べられないので和食店にうっかり入られない、と主張していました。天ぷらの衣には卵が溶いてあるので野菜天ぷらも食べられない、という理屈です。
そして記事には海外におけるベジタリアンの割合グラフが掲載され、ベジタリアンの多い国順で、インド人の20%、台湾人の12.3%、カナダ人の12%がベジタリアンだとされていました。
ここまでを読んだ読者は、「そんなに訪日客にベジタリアンが多いのか!かつおだしを止めて天ぷらの卵を止めないと、和食店の商売あがったりになる!」と慌てたのではないでしょうか。ちょっと待った。実はこの記事は統計を間違えて用いているのです。

 訪日客が多いのは、韓国(28%)、台湾(17%)、中国(10%)、香港(8%)です。一方インド人は0.7%、カナダ人は1.7%しか居ません。(2023年JNTO推計値)。
後で述べますが台湾人の中でかつおだしが食べられない人はだいたい5%ぐらいです。
つまり訪日客の中で、かつおだしが食べられない台湾人は0.9%です。
同じ計算をすると、訪日客でかつおだしが食べられないインド人は0.1%、カナダ人0.2%です。
そうです。ベジタリアンの多い国ベスト3であるインド、台湾、カナダ合計を足し上げても、訪日客の中では1.2%しかいないのですよ。

同じ計算で他の国の人を足し上げても、ベジタリアンやビーガン故にかつおだしや卵入り天ぷらが食べられない訪日外国人は、せいぜい2%位と考えられます。もちろん、そんなニッチな訪日外国人を囲い込むビジネスはあり得ますが、わざわざ新聞社が写真やグラフを掲載して大きな記事で報道して「かつおだしや天ぷらの卵がインバウンドの障壁になる」と言うのは大げさな誤解です。

ここで、算出の根拠となった、ビーガンと各国のベジタリアンの違いおよびその割合についてまとめましょう。
まずビーガンとは動物性食品を一切食べない運動です。しかし、ビーガンは全世界で数が少ないのです。ビーガン運動が誕生したイギリス本国においてさえ、国民の1%も居ません(2019年データ、ジェトロの農水省補助事業「ベジタリアン・ヴィーガン市場に関する調査(英国、フランス、ドイツ)」より。)

次にインド式ベジタリアンを見てみましょう。
インドのベジタリアンの7~8割がラクトベジタリアン(牛乳・乳製品を食べるベジタリアン)です。これはインド政府が牛乳・乳製品を植物性食品と定義していることも関係しているそうです。これらの人は確かにかつおだしや卵が食べられません。また、インドのベジタリアンの1%がジャイナ教により、0.5%ほどがヴィーガンにより、かつおだしや卵が食べられません。しかし、インド人観光客は先ほど述べた通り非常に少ないので、そこをあまり気にかけても商売として成り立ちません。

次に台湾を検討しましょう。
台湾のベジタリアンは欧米のベジタリアンと全く概念が異なるのでいったん、今までの固定概念を捨ててください。台湾では動物食を食べないことを素食(スーシー)と呼びます。これが日本人にはベジタリアンと大雑把に誤解されている訳ですが、実際は仏教や斎教、一貫道などの宗教に基づく上、欧米のベジタリアンとは食べて良い食品と悪い食品の線引きが違います。

 ヴィーガンに一番似る「全素」(動物性食品とネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウを食べてはいけない食事のこと。)は台湾全人口のうちたった1.2%しか居ません。また、「蛋素」(卵を食べていいが魚と肉はだめ。)が全人口の4.2%です(台湾食品消費調査統計年鑑2017より)。この人たちは確かにかつおだしは食べられません。
でも足して5.4%にしかなりません。
じゃあ、東京新聞の「台湾人の12.3%がベジタリアン」とは?
実は、「時々素食にする人」が7.4%もいるからです。農業ごよみの1日と15日だけ素食にしたり、朝だけ素食にしたりする人です。「肉邊素」(何らかの事情で動物性食品が入っていても気にしない)も1%います(出典は同上。足して東京新聞と同じにならないのは、東京新聞とは統計の出典が違うためです。)

つまりですね、台湾人のベジタリアンの大多数は、食べて良い日や時間帯なら、安心して和食を食べられます。しかも台湾人のほとんどはベジタリアンでさえないから、台湾人観光客に「かつおだしや卵を止めました」と言ってもニッチですね。

最後にカナダをみましょう。ネットで日本語検索すると「カナダにはビーガンがたくさん居る」と主張する頁がありますが、それらはおしなべてドメインがcomだったり、マクロビオティックサイトで信用出来ません。カナダ政府公式データは調べても見つかりませんし、カナダのビーガン協会でさえも3~4%と見積もっているそうです。つまり、カナダ人ベジタリアンの多くは、ビーガンでは有りません。

カナダ人ベジタリアンの多くは、卵を食べて良いオボベジタリアンや、牛乳乳製品を食べて良いラクトベジタリアンと考えられます。その理由は、完全にビーガンになると貧血などで体調を悪くする人があるため、長続きしないことが多いからです。ではオボやラクトのパーセンテージはどうでしょうか。大学のデータなどもひいて調べましたが、残念ながら統計が見つかりませんでした。(ベジタリアン関連協会やマクロビ団体のデータは、仲間が多いと主張するために多めにカウントしている可能性が高いためこのブログでは採用しません。)いずれにせよ、卵が食べられないと主張するカナダ人はカナダ人の中の数パーセント程度と見積もられますし、カナダ人観光客は少ないので、日本の和食店がそこを気にかけてもニッチですね。

さて、以上のように訪日外国人のほとんどは、卵もかつおだしも食べられるわけです。
ただ、どちらかというとかつおだしが食べられないケースの方がわずかに上回るので、それを気にするのだったら、味の素といの一番で調味すれば大丈夫です

お後がよろしいようで。

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日経好きなんだけど、今朝の春秋は残念です。

2024年08月04日 | Weblog
8月4日の日経春秋欄は、大きな間違いが混じっていてがっかりな内容でした。メディアを非難する目的はありません。新聞が間違いを報じたことで人々が既存メディアを見捨ててはいけないからです。世間では新聞の記事に間違いがあったからと言って、より信憑性の低いSNSに飛びつく人が多いので、私も嘆いています。SNSより新聞の方がずっと信憑性が高いです。新聞に一層良質なメディアになってもらい、読者を増やしてほしいと願っているからこそ、あえて投稿します。

春秋欄によれば、米国の資金援助でキッチンカーと呼ばれる料理講習車が各地を走り、小麦中心の食事を広めたため、主食の座がお米からパンや麺になったそうですが、それは故鈴木猛夫氏が広めた有名なデマなんです。デマを記事にしてはいけません。

1.キッチンカーの目的はタンパク質や脂質を取るため。
昔から日本人は糖質に偏った食事をしていたため、昭和30年の厚生省(今の厚労省)の研究者たちは健康状態の悪さを危惧し、どうしたらタンパク質や脂質を適正な量取るように指導できるかと苦心していました。
厚生省がいくら説明しても、当時の国民感情は「混ぜ物のない白米を漬物で腹一杯食べるなんて夢のような食事♡」でした。どうやったらコメだけで腹を満たすのではなく、副食(おかず)を食べるようにおすすめできないかと厚生省は苦心しました。

そんな折、オレゴン小麦農家連盟から厚生省に、日本にて小麦を宣伝したいし、そのために必要なお金を出すとの打診があり、厚生省担当官は名案を思いついたのです。交渉してなんと次の合意を取ったのです。
・パン食の宣伝は目的としない
・小麦粉を使った料理が1品さえあれば、あとは日本側がメニューを勝手に決めて良い。


その結果、キッチンカーを購入して、日本全国で紹介した料理はさあなんでしょう。ふふふ。「キッチンカーはパンを宣伝して日本人の食事を破壊した~」と熱弁する鈴木猛夫先生がやっと探し出して示した「ある日のキッチンカーテキスト」がこれなんで、思いっきり笑ってやってください。出典は鈴木さんの『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活』61頁です。

まず、広告欄にはしっかりと、ヤマサ醤油の広告が…。
テキストに書いてあったのは8種類のメニュー。和洋中で並べて記します。

和食;小アジの唐揚げ、ジャガイモとピーマンの酢味噌
和食;そうめんのごま味噌がけ
和食;いかのハヤシソース(イカはアメリカ人やイギリス人が嫌って絶対食べない食品でした。また、ハヤシソースは諸説ありますが、洋食をヒントに日本で発明されました。以上を考えると、これは和食です。)

和風中華;四宝涼拌(サイコロ状に切って醤油で煮詰めた牛肉に、こんにゃく、ジャガイモ、キャベツ、キュウリなどを混ぜたもの。醤油やこんにゃくを使っているなど、中華というより和食に近いメニューです。)
中華;涼拌麺(冷やし中華を当時はこう呼びました)
洋風中華;トーストパンと中華サラダ(鯨の大和煮に、キュウリや大根にんじんなどを短冊に切って味付けして載せたもの)

洋食;フィッシュサルシャード(あじの唐揚げにタマネギとトマトのソース)
洋食;なすのフリッター(なすの洋風天ぷらにトマトケチャップ)

お気づきですね。上記8品のうち、洋風中華と和風そうめんと冷やし中華を除けば、残り5つはごはんのおかずなんですよ!!
鈴木さんはあれほどキッチンカーが原因でパンが広まったと言いながら、自説を証明できる資料をとうとう見つけることが出来なかったんですよ!

2.そもそもお米を主食としていた人は限られていた。
春秋欄の冒頭でも大根飯について触れられている通り、戦後まもなくまでの伝統的な日本では、米飯をたくさん食べられるのは都市住民と、田舎では稲作の盛んな地域の富裕層でした。それ以外の層、つまり国民の大半は、ごく少量のコメに大量の大根や雑穀(麦など)を混ぜて炊いて食べていました。また、江戸時代から盛んだったそばやうどんなども、明治以降一層盛んになり、そばやうどんを主食にしていた地域もたくさんありました。

そんな中人口が増加基調のため、陸軍は資源の限られているコメが将来不足することに気づき、日本人の主食の一部をパンに置き換えようと考えました。政府も小麦増産運動をし実際に昭和初期は海外に輸出するほど大量の小麦粉を日本で生産していたのです。陸軍は農村で小麦栽培が盛んになったのを見て、農家もパンを作って食べようという指導を展開しました。戦前のマスコミも、パンが流行していると書き、パンが日本の食に定着するように働きかけていました。

さて、時は流れ戦争が終わり、戦後の昭和30年から連続してコメの大豊作が訪れました。それ以降、やっと一般の人も純粋な米飯を食べられるようになっていったのです。

それまでは富裕層しか食べられなかったピュア米飯に大人も子どもも大喜びし、莫大な量のコメが消費されるようになったのが昭和30年代という時代です。消費ピークは昭和37年。それ以降お米の一人当たり消費量が減ったのは、そろそろコメの「ドカ食い」に飽きて来た昭和30年代半ばにラーメンブームが発生したからです。

春秋欄によれば、キッチンカーが原因でそれまで主食だったごはんがパンや麺に置き換わったという主張ですが、いや、キッチンカーの指導は、ごはんを主食にする方に寄与したことでしょう。

キッチンカー以前から日本人は軍隊や菓子店でパンを食べ慣れていたし、そうめんを食べていたから、キッチンカーこんなメニューを見せられた程度でパンやそうめんの消費が増えるでしょうか?むしろ「お米のおかずにぴったりだわ」と当時の主婦は考えたことでしょう。

実際、小麦の一人当たり消費増は昭和37年に急に伸びて40年で止まっています。キッチンカーが原因ならこんなのび方をするわけ有りません。だってキッチンカーは昭和31年から35年までの指導でしたから、年代が合いません。

昭和37~昭和40年の小麦の消費増の理由は、4割がラーメンなどが原因で、5割は主食パンではなくおやつ目的であろうと、財団法人食生活研究会「パンの消費動向と企業の対応」という本に書いてあります。

キッチンカーのせいでコメが主食の座を明け渡したという春秋欄の主張はどう考えても無理すぎです。私は新聞の良心を信じています。

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日本のアイスが海外で好評!ちょっとうれしい話と統計トリック。

2024年07月16日 | Weblog
7月12日の読売新聞記事は、良記事だと思います。日本のアイスが海外で大受けしているという内容で、森永乳業や日本アイスクリーム協会などにも取材して、財務省統計なども使って説得力のある記事を提供してくれています。
この記事に載ったグラフもとても興味深くて、2014年以降のアイス販売額と輸出額がどちらも右肩上がりです。
輸出の伸びの理由は、訪日客が様々なアイスを買って、帰国後も日本の味を求めているからで、もちろん抹茶味や小豆味も根強い人気があるが、和風味ではないものも含めて日本の現地の味というのが諸外国の人気を集めているそうです。

さて、先日どこかの新聞社(名前は言わない)が、「海外へのラムネ輸出が拡大している理由は、ユネスコの和食の無形文化遺産登録のおかげで知名度が増したからだ、その証拠に2014年以降輸出金額が右肩上がりだ」という趣旨の記事を書いていました。頭が痛くなる内容でした。1年前に別の新聞社もそっくりのを書いていて、このブログで間違いを多数指摘したことがあるからです(ラムネが人気になったのはユネスコとは無関係で、①瓶を開ける面白さ、②もともと欧米の飲料だったのが消えてしまったのに日本にはまだ残っていた!と欧米人が喜んだこと、③日本アニメの影響、④市場流通の工夫で海外消費者が買いやすくなったことです。)

2014年以降のグラフが右肩上がりだから、ユネスコ登録が原因だ、という理屈が通るなら、日本のアイスが海外で大人気なのもユネスコ登録が原因なんですかね?違いますよね。2014年以降、日本の貧困率も少しずつ右肩上がりですし、一人暮らし家庭の数も増えていますが、それもユネスコのおかげですか?違いますよね。あるグラフと偶然似た動きをしている別のグラフを見て「因果関係がある」と言い張るのは、古典的な統計トリックです。

このブログを読んでいる皆さんは論理的思考が身についている方だとは思いますが、改めて言います。だまされないでください。

和食をユネスコ登録するようになった最初の理由は、京都の有名料亭の大物料理人が発案し、国も協力することになったからだと聞いています。まあ要するに、ユネスコ登録の成果が高級和食店の賑わいだけで終わってしまうと、お金持ちへの利益誘導に国税が使われたと言われかねないので、国としては「登録の成果が様々な食品に波及した」と言いたくて仕方ないのです。魚心あれば水心。新聞社も「ユネスコ登録のおかげで様々な食品業界がハッピーになった」という幻想を振りまいているのかもしれませんね。

そういう和食万歳な風潮の中でも「日本アイスが海外で好評なのは美味しかったからだ」と、道理を貫いた記事を書いてくれた読売に大変好感を持ちました。

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日経6月2日「コメとタンパクと食文化」記事は事実関係を取り違えている。

2024年06月16日 | Weblog
このようなことを言うのは申し訳ないですが、コメ関連の話題については、大勢のマスコミの方がなんか誤解されているようです。特に、今回はこの記事でその傾向を感じました。

記事にはいろいろな誤解が含まれていました。
例えば冒頭では宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」を引き合いに出して、昔の日本人は玄米4合を食べていた、と記者が断言しています。でもあの詩のラストは「そういう者に私はなりたい」オチです。「私宮沢賢治は実際はそんなにたくさん米を食べてないので、もっとたくさん食べるようになりたい」という詩ですよ。

時代背景を知れば賢治の意図が分かります。
まず第一に、昭和5年の大豊作で米の価格が大暴落します。そこへ昭和6年は東北地方で大冷害が。賢治は岩手の農家の困窮に心を痛めたのでせめて自分も慎ましい暮らしをしようと心に誓ったのです。お金持ちのボンボンなので、魚でもかまぼこでも納豆でも様々なおかずを買えるのに、あえて安いお米で腹を満たして、あとは味噌と少しの野菜だけで腹を満たす人になりたい、と心に誓うことで、貧しい人の立場に寄り添いたかったのではないでしょうか。

第二の理由ですが、この当時、玄米を食べれば他の食品は不要だという変な説が都会で広まっていたので、賢治もおかしな健康情報にかぶれてしまったようです。

というわけで、宮沢賢治の詩を根拠に昔の日本人はみんな玄米4合食べていたなんて言うのは大間違いです

そもそも論を言うと、戦前の日本人は階級や地域によって違う物を食べていたので、米消費量の平均値をどうこうこと自体あまり意味がありません。そばや雑穀ばかり食べていた家庭もあったし、うどんの多い家庭もあったし、都会のハイカラ家庭はパン食を常食していました。日本人全員が米を食っていたなんて主張は歴史の勉強不足ですよ。

さて、次に記者は慶応大学教授の「白米を食べると頭が悪くなる」という説を紹介して「日本の食卓にごはんが並ぶ機会は結果的にその後減り続けた。日本的な食生活が後退したからだ。」と玉虫色の文章を書きました。さらっと読むとこの説のせいで米消費が落ち込んだように読めるが、実はそんなこと一言も言っていない文。誤読させる気満々で書いてますね?良心が痛みませんか?

次に記者は、牛のゲップで地球温暖化しているからお米の価値を見直す機運が来ていると言うのですが、これもとんでもないです。日本の温暖化ガス(GHG)排出量は11億7000万トンで、うち牛のゲップはたった772万トン(2021年データ)です。温暖化ガスは主に自動車などの工業や電気関係から出ているけど経済新聞としてはトヨタなどの批判を書けないから、牛のせいにしてるんですよね。

まあその次の段落の、米タンパク質の機能性への期待は、医学的研究取り組みは多様性があった方がいいから納得して読みました。しかしさらに次の段落で、米に含まれるタンパク質を増やすことで食糧問題を解決出来ると考える某先生を紹介しているので、ああやっぱりだめかと落胆しました。
某先生の着眼点は悪くはないのですが、実はお米のタンパク質を増やすことは、お米嫌いを増やすことと同じなんです。
もちろん記者も、日本人はタンパク質の多いお米を嫌うと書いていますが、某先生の助言により、インドでは米のタンパク質が嫌われてないどころかむしろ品種改良の目標になっていると述べています。

インドがそうだから日本も可能というのは楽観視しすぎです。なぜなら、現代の日本人は本当に本当にお米のタンパク質が苦手で、タンパク質が多いと食味評価が落ちて価格や地域の評価まで下がるんですよ。
毎年米の味について、あそこの産地のコシヒカリは特Aを取ったとかあそこの産地はA評価だったとマスコミが報道するでしょう?あの評価で、各市町村は毎年一喜一憂しているんですが、評価に重大な影響を与えるのがタンパク質です。タンパク質が多いほど雑味がある米として評価が落ちるんです。
だから地域としてはなんとしても低タンパクのお米を作って、うまい米の産地としてマスコミで大きく報道されたいのです。記者さんもこんな米業界の事情を知っていたら、ここまで楽観的な記事は書けなかったでしょうね。

どうしてもお米にタンパク質を多く含ませたいなら、いっそのことグルタミン酸などのアミノ酸をガンガン蓄積させる方向で育種しては。そうすれば、味の素を入れてないのに最初からうまみがついている米になります。チャーハンなどに使えば美味しいと言われるかもしれません、楽観的な意見ですが。

さて、記事の最後は、米のタンパク質含量を増やすことで、大切な主食を未来に伝える一助になると期待したいと述べています。いやいや、米はそんなことしなくても十分に日本人の主食でありつづけますよ。だって、日本人に聞けばほとんどの人が、主食は米だと言うじゃありませんか。それにも関わらず消費量が減退したここ最近の理由は、少子化とITの浸透が主因です。パクパク大量に食べる若者と肉体労働が減れば、そりゃお米の消費も減るわけです。

消費は減っても日本人の心の中で常にお米は主食です。だから、変な杞憂をこじらせて、米のタンパク質を増やせだの、唐突に米で頭悪くなる説を出して前後関係が不明瞭な文章を書くのは、もう止めてください。統計データと豊富な科学的な知見に基づいた良質な記事を期待しています。

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農水省がニセ医療に加担している!?

2024年05月04日 | Weblog
ショックな話題です。このブログでは、繰り返し、農水省の公表する和食や伝統食関係の情報に間違いが多く含まれていることを指摘していました。農水省は日本史や医療や栄養学などの面で事実と異なる説をしょっちゅう垂れ流しているので、問題を指摘していました。

しかも、最近調べた結果、農水省はここ2,3年ほどマクロビオティック(以下略称マクロビ。)を消費者に広めていることが分かりました。マクロビは死者や被害者を大勢生み出しているやばいニセ医療です(注1)。国民にどう責任を取るつもりでしょうか。

農水省後援のマクロビ講演会が開催されたり、優良農村事例としてマクロビを取り入れた町を紹介した事例がありました。農水省ホームページの人気コーナー「にっぽん伝統食図鑑」にもこんな例があります。

「「宮城県北部と岩手県南部で食されてきた、油で揚げた麩のこと。油で揚げているので香ばしく、独特の風味と口当たり、ボリュームがあるのが特徴。精進料理にルーツをもつ高タンパクな食材で、近年、肉が苦手な人の食事やベジタリアン料理、マクロビオティック食で注目されている。また、保存が利くので非常食としての活用を促す声もある。」(https://traditional-foods.maff.go.jp/menu/aburafu)」

伝統食の油麩を紹介すると見せかけて、さりげなくマクロビの知名度を上げる文章を埋め込んでいます。国がマクロビの広告塔になるのは国民に対して無責任です。

さらに農水省の近畿農政局は、食育指導者紹介欄で「調理実習、レシピ・メニュー提案ではビーガンやマクロビオティック、薬膳などアレルギー、養生食などの対応も可能です。」(https://www.maff.go.jp/kinki/syouhi/seikatu/syokuiku/hyogo03.html)なんて紹介しています。食育でマクロビだなんて、まともな医者が聞いたら止めさせる類いの危険な行為です。

なぜなら、マクロビは菜食主義の一種ですがお米(特に玄米)が身体に一番良いというのが基本原理で、付け合わせる野菜の選び方やその調理方法まで煩瑣な制限をかけていて、野菜を食べるのもしんどくなるので、栄養バランスが崩れて身体を壊すのです。

実は、20数年前に仕事の関係で農水省の女性職員と話が合い、彼女に誘われて当時は全然知らなかったマクロビの店に連れて行かれました。それが私のマクロビ初体験だったのですが、おかしな水の話が貼ってあってぞっとしました。

彼女はマクロビ料理教室にも通っている、と自慢げに言ってましたが、3ヶ月後に会った時には、やつれてもうろうとした様子でした。尋ねたら、料理教室の、前世が見える仲間の為にあれこれを買わなければならなくなり大金を支払ったと言うのです。
その教室は変ですよと答えたら、「あなたは真実に目覚めてないのよ!マクロビの先生に教わったけど、砂糖は戦後にGHQの陰謀で日本人の身体を壊すために広められたのよ!」と陰謀論を言うのでした。でも日本は、戦前から砂糖を台湾などから大量に手に入れて、あんこなどの和菓子や駄菓子を通じて現代人よりもむしろ多くの砂糖を食べていたんですよ。

その後また仕事で農水省の窓口に行ったら彼女がいないので他の男性職員に尋ねたら、僻地に飛ばされたそうです。
ま、こんな経験があったので、農水省はマクロビ反対派だと信じて安心していたのですが、年月が経ちマクロビ賛成派が台頭してきたようです。

マクロビは中医学や漢方に擬態した理論なので(正確な中医学や漢方とは異なります)、中医学や漢方を軽くかじった程度の人が「私、スゴイ理論を学んでしまってステージが上がっちゃった♪」と感動してどハマりし、低栄養で脳がむしばまれてマクロビのしもべになるんです。

農水省にも、あたし頭のいい官僚なのよ賢いあたしの信じている食だから正しいに決まっているわ!と他の職員に押しつける官僚がいると見られます。去年、職員数十人を対象に数ヶ月間、農水省内でマクロビチャレンジも行われたそうです。あんたら官僚は国民をなめているんですかね。

おそらく農水省官僚はマクロビを利用したつもりがマクロビ指導者に利用され、そのうち日本中の農家や消費者に大迷惑をかけて大変なことになるでしょう。官僚は責任逃れしたがるから、私たち市民が、官僚をしっかり見張らないと行けません。皆さんも気をつけて農水省のマクロビを監視しましょう。そうしないと半病人が大量に生み出されますよ。

注1 1962年、ニューヨークでマクロビオティックを実践していたリサ・ボノーさんが栄養不足が原因で死亡し、全米を揺るがす事件に発展しています。その後も繰り返し、マクロビで体調不良になった人がいたので、諸外国で問題視されています。

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決定版!これが正しい一汁三菜だ!

2024年03月31日 | Weblog
このブログではこれまで数回にわたり、農水省の食育を指導している某服部先生の、「和食の基本は一汁三菜で、これを食育の基本としましょう。」という主張が歴史的に間違っていることをお伝えしておりました。
本論に入る前に、改めて繰り返しますが、今までの私の主張はこうです。

・平安~江戸時代にかけて、和食の基本を一汁三菜だと記した書物がない。
・千利休が創設した茶の湯の懐石料理は一汁三菜が基本だが、「ティーセレモニーに客人を呼ぶ時の簡素な食事」設定なので、普段の食ではない。
・いろいろな学者も調べたが和食の基本を一汁三菜と断定するに足りる証拠がない。
・江戸時代に本膳料理(ごちそう)の分野で一汁三菜、二汁五菜などがあったが、あくまでもパーティー料理なので、日常の食と接点がない。
・江戸時代の大名や有名人も一汁二菜等の記録がよく見かけられる。
・明治から昭和初期の普通の人の食事は一汁一菜。良くて二菜。
・日本で一番専業主婦が多かった1970年代でさえ一汁二菜が普通だったのに、いったいいつの時代に誰が一汁三菜なんて手のかかる料理を担っていたんですか。
・昭和後半に栄養学で一汁三菜を勧める声があったが「スープやおかずは洋風でも良くて、ごはんを中心に和洋中の料理を食べて栄養バランスを取ろう」という指導だった。だから和食の基本ではない。
日本政府が和食をユネスコに登録申請した時も一汁三菜という言葉は一切使っていない。
・「和食の基本は一汁三菜だ」という言葉は2014年頃突然農水省の記録に掲載され、翌年のミラノ万博日本館で展示された言葉。

さて、やっと、戦前の貴重な資料を発見してしまいました。昭和5年(1930)に発行された「嫁入叢書 礼法編(実業之日本社)」という本の中に「正しい一汁三菜」の記載があったのです!!本日はこれを皆さんに紹介しましょう♪

その前にご注意!この本は、社交界や舞踏会のお作法などを記した、ハイソサエティ向けの本なので、そういう本で一汁三菜について事細かに盛り付け型や提供の仕方を図解、順番を説明していることはつまり、ハイソサエティのご家庭でも一汁三菜はまれなことだった訳です。
そんな食事がどうして日本の国民のスタンダードなんでしょうかね?

さて、著作権も切れているので国会図書館から入手した写真を紹介します。

ごらんの通り、正しくはお膳が3つもあるんですよ。しかも、最初にお茶とお菓子を出して、召し上がっていただいてから、お吸い物のお膳だけを先に出すのです。

お吸い物も召し上がっていただいてから、初めて、ごはんやおかずの乗っている二つのお膳を出すのです。おかずのバリエーションは必ず「なます+平+焼き物」です。なますは酢の物か和え物、平は煮物、焼き物や焼き魚などです。
この三種の調理法で一汁三菜となるため、そのほかの調理法(例えば油で揚げる天ぷらとか蒸し物とか)は正式な一汁三菜になりません。
服部先生は食育で一汁三菜を広めると言うのですがすると天ぷらも茶碗蒸しも郷土食豊かな鍋料理なども全部アウトですね。正式な一汁三菜は郷土料理・地方料理を破壊する怖い料理だと判明しました。じゃじゃ~ん(恐怖音楽のメロディを頭に思い浮かべてみましょう♪)
 


さて、ごはんとおかずのお膳が出たらどうするかというと、最初にお米を二口食べてから汁物をいただきます。そしてなますを食べてからお米を食べて、次に平をいただきます。焼き物のお膳はこの後に食べられます。

以上が、昭和初期の正しい一汁三菜の食べ方です。

で、くどいですがこれは、社交界デビューする若奥様向けの本でして、そんな本で手取り足取り一汁三菜を説明しているということは、ハイソサエティのお嬢さんたちでさえもお嫁入りするまで正しい一汁三菜を知らなかったわけです。知らないということはつまり、普段はハイソ家庭でもお父さんが娘たちの目の前で一汁三菜を食べなかったということになります。
男尊女卑の時代、妻が一汁三菜を主人と客人に差し出すシステムだから、結婚するときに初めてその知識を仕入れる必要があったのです。

そんなマニアック料理ですからましてや一般庶民には全く縁の無い話だったという訳です。

服部先生って本当に食育の専門家なんですか。

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土井善晴先生がレシピに抱く複雑な思い。

2024年02月25日 | Weblog
最近、料理研究家土井善晴先生が気になります。2月8日にyahooニュースオリジナルで掲載された「”料理にレシピが必要”は思い込み」という記事で、先生は料理にレシピなんぞいらないのだと熱弁していました。それによると

「「一汁一菜」。つまりお味噌汁とご飯、漬物です。これを1日3食食べればなんの問題もありません。」(原文ママ)

また先生は今の日本のおかずの代表例として肉じゃがを例に挙げて、次のような説明をしました。
肉じゃがなどは火の通り加減や味付けのタイミングが問題で、料理が複雑である。味付けの上手下手が生まれてきて、それが原因で現代人は味付けに悩み、レシピを覚えなければ料理は出来ないと思い込んでいるのでは。レシピを覚えるのは非常に面倒くさい。一汁一菜にすれば具を味噌で煮込むだけで出汁も不要だからレシピなんてのも覚える必要がない。
・・・だそうですが、7つの視点から疑問がわきました。

1:肉じゃがは面倒くさいといういう指摘について
 現代ビジネス(2023年6月24日、執筆者は講談社資料センター)の3本の記事、
 『おふくろの味「肉じゃが」は昭和40年代の食卓にはなかった…!』
 『「肉じゃが」はいつから「おふくろの味」になったのか…?』
 『おふくろの味「肉じゃが」の名付け親は誰なのか…?』
によると、昭和40年代まで「肉じゃが」は家庭料理では無かったそうで、戦前戦後の家庭のじゃがいも料理は洋風や中国風が多かったそうです。これを家庭料理「お袋の味」として広めたのは昭和50~53年頃の雑誌・書籍料理記事で、その中でも有名だった一人が、土井勝先生だったそうです・・・そうです、土井善晴先生のお父様です。

(「肉じゃが」はいつから「おふくの味になったのか…?より。文中の「同年」は昭和52年です。)


(同じ記事より。写真は省きましたが、肉がやや少なく、緑の野菜が添えられている写真です。)

先生はお父様の偉業を否定されるのですか?専業主婦全盛時代に、多くの家庭の女性たちは社会との接点を失っていましたが、そんな中でも自分自身が出来るベストを尽くしたい、家族を喜ばそうとして、家庭料理に力を入れていました。その中でも全国的に愛されてリピートされたのが肉じゃがです。それぐらい美味しい料理なのです。
現代の共働き時代になって作るのが面倒くさいなら、惣菜コーナーで買えばいいじゃないですか。面倒だという理由で、なぜ肉じゃがを食べることまで排除するのでしょう。本当に不思議です。

2:土井善晴先生自身が肉じゃがを指導している件について。
普通に「土井 肉じゃが」で検索すると先生のレシピが大量に紹介されるんですが、それはいいんですか。スクリーンショットを撮ったので、紹介します。肉じゃがのレシピは面倒なのでそんなの覚えなくても味噌汁だけでいいんではなかったでしたっけ?



3:土井先生ご自身の職業の否定になりませんか?
土井先生は料理研究家です。出汁もとらず具を味噌の中に入れて煮るだけでいいと言い続けるのは、ご自身の否定になりませんか。
先日、2月24日日本経済新聞夕刊1面に先生が書いたエッセイ「おでんとかんとだき」でも、関東炊きの詳しいレシピを紹介されています。
引用します。
「関東炊きはたっぷりの出汁をひく。水15カップ、薄口醤油1カップと、薄口の半分の砂糖、鰹節だけでは弱いので、底味となる鯖節か煮干しと半々にして」以下作り方が8行も続くので省略します。長い文章で説明するところを見ると、普通の家ではうまく関東炊きを作れないと強調したいようです。

 お話を総合すると、「料理を作るのは一部の職人や料理マニアで良い、普通の共稼ぎ家庭は黙々と一日三食コメの飯と味噌汁と漬物だけを食べてろ。」って言っているように聞こえてきます。味噌汁以外に素人が手を出してはいけないのかな?と萎縮してきます。

4:スーパーでおかずを買っちゃ駄目ですか?
 味噌汁なら誰でも作れるから味噌汁がいいという先生の主張は、外食や中食を否定されているように読めます。仕事帰りにコロッケや焼き魚やインスタント味噌汁を買うのも否定されているような気がします。先生の本を読むと「常に、自分で、味噌汁だけを作れ」と強制されている気分になり、逆に憂鬱な気持ちになります。味噌汁はインスタントで十分です。あのデパ地下の赤魚の煮付けや大豆サラダを食べたーい。

5:先生の言うそれ、一汁一菜と違います。
 「一汁一菜」について先生は「味噌汁とご飯と漬物」と言っていますが、それは一汁一菜じゃ有りません。先生が提案している料理は「一汁無菜」です。何故なら菜とはおかずのことです。先生の料理には菜が無い。漬物は菜じゃ有りません(熊倉功夫先生、江原絢子先生他より)。和食には様々な定義がありますが、漬物を菜に数えないのはほぼ全研究者の指摘する共通ルールです。
具だくさん味噌汁なら菜に数えていい、というなら「半汁半菜」と名乗る方が正確です。

6:栄養学的にどうも疑問です。
 土井先生の本を見る限り、毎日三食土井先生方式の一汁一菜をやっていたらおそらく栄養素の偏りが生じるはずと思います。計算をしてないのでざっとした感想ですが、カルシウムと鉄分、ビタミン類、タンパク質が不足し、逆に糖質は取り過ぎになると思います。また、食事素材の多様性が発がんを防ぐことも知られていますが、土井先生方式だとどうしても食べる品数やバラエティが限られているため、この点も心配です。
栄養面で十分だと言い出したのは先生の方ですから、まずは先生が先に、本当に栄養学的に大丈夫か、大勢の被験者を募って数年間食べ続けて証明してくださらないと、消費者としては困ります。

7 「味付けの苦しみ」って結局なんのことか分かりません。
土井先生はyahoo記事の冒頭で、こういうことも言っています。日本ではお箸で料理を食べる民族なのに西洋の栄養学を取り入れたから和洋中の料理が入ってきてしまい(あのー、栄養学をなんだか悪いことのように言うの止めてくれません?)、箸のために肉類は小さく切るから、調理の工夫が必要だし、肉と野菜と一緒に調理したりすると火加減や味付けタイミングが難しくて味付けで悩むのだ・・・・と。はっきり申し上げるとそんな説明には全然実感がわきません。

スープやチキンレッグのような西洋料理を作ったなら、ナイフとフォークやスプーンで取り分けて、お好みで塩コショウして食べれば美味しいですよ。クレイジーソルトや粉チーズ、チリソースなどで美味しくいただけます。
肉と野菜を細かく切って一緒に調理する和風料理の時なら、スーパーの調味料コーナーに行けば、様々なキットがCookDoや永谷園やキッコーマンやエスビーなどから販売されて、選ぶのが楽しみです。キャベツのなんとか味とか、大根のなんとか味とか。豊富な調味料があるので、見ているだけでもこのような豊かな日本に生まれたことの幸せを実感します。袋に書いてある通りに作れば簡単で美味しいですよ。味付けで悩んでいるって日本人の10人に1人もいない珍しい人じゃないですか?

こういう市販の調味料を否定する目的でしょうか、最近の土井先生は、他人の味付けに舌が慣らされるのは自分の人生を生きてないことだと唱えているそうです。すると江戸時代から平成20年代まで多くの男性は自分の人生を生きてなかったのですね。

総合すると、土井先生の主張は私ら共働き主婦を救っているように見えて実際には、「貧乏人の共稼ぎ家庭は家で味噌汁だけを作れ、金のある家だけ外食で職人の作ったおかずを食べてもいいよ。」と呪縛してるように見えるので、心身によろしくないのではと思うのです。

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ショック!高校家庭科教科書に痛恨のミス!

2024年01月27日 | Weblog
東京書籍の文部科学省検定済教科書「家庭総合 自立・共生・創造」(2東書・家総307)に、和食の説明でとんでもないミスがありました。この教科書(2東書・家総307)は平成28年から今年頃まで使用されていたので、令和6年度からの高校生は新しい教科書で習うからいいのですが、今の大学生や新人社会人の方は間違った教育を受けているので、このブログをよくよんで間違いを訂正してください。

間違いの部分は175頁の下記記載「ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食の特徴」」の左から2番目の「栄養バランスに優れた健康的な食生活」という部分と「一汁三菜を基本とする食事スタイル」の部分です。写真を引用したのでご覧ください。

このブログでこの2年ほど繰り返し言っていますが、ユネスコは一汁三菜なんて登録せず、様々な形態があるとして登録しています。またユネスコは和食を健康的なんて一言も言っていません(詳しくは前回の投稿をご覧ください)。

しかも表の下には、江原絢子先生の論文に基づいてこの表を作成したと書いてありましたので、実際にその論文を読んだら、江原先生は、和食の特徴が一汁三菜だなんて一言も書いていませんでした!ねつ造レベルの出来事で呆然となってしまいました。著作権の関係で江原先生の論文の全てを掲載出来ませんので、一部分を紹介しますが、これこの通りです。


 武家の供応食(お客様へのおもてなし料理)の本膳料理というのがあり、本膳料理は普通は複数のお膳で出される料理だが、その中の「一の膳」と呼ばるパーツが一汁三菜だったと明記されています。
 つまり、一汁三菜は「お客様向け特別料理の中の、さらに、メインディッシュの部分だ」ということになります。一汁三菜は普段自分が食べる料理のことではありません。
 日常食は大名レベルでも一汁一菜か二菜で、飯・汁(すまし汁や味噌汁など)・菜(おかず。魚など)・香(漬物)を食べたと記されています。

 なお、一の膳は3つのお膳からなります。まず1つめがお茶や菓子ののったお膳でこれを先にお客様に召し上がっていただきます。宴会ではお酒も出します。お茶もお菓子も召し上がった後で、2つめの飯と汁となますなどののったお膳を召し上がっていただきます。そして3つめが焼き物(焼き魚などですね)のお膳となります。この3つのお膳で一汁三菜というご馳走が形成されます。
 こんなパーティー料理を召し上がったことがある方はおそらく100人に一人もいないと思いますがいかがでしょう。こんなパーティー料理が和食の基本ですか?食育で有名な服部某先生は農水省の食育では「和食に回帰して日頃から和食の基本である一汁三菜を食べるべきだ」と唱えていますが、こんな料理を準備するなんて私たち主婦には無理ですよ。

 なんで服部先生も文部科学省も農水省もこうやって歴史を偽造するんでしょうか。「どうせだれもユネスコのホームページの英文を読まないだろう」と高をくくっていたのですか。また、東京書籍と文部科学省は江原先生に謝るべきではないでしょうか。


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ユネスコは和食をどうして無形文化遺産に登録したのか。

2024年01月14日 | Weblog
1月11日の読売新聞で、海外での和食レストラン増加はユネスコが和食を無形文化遺産に登録したことが契機であるかのような文章が書かれていましたが、ミスリードを招く文章で残念です。今回、改めてユネスコが和食を登録した経緯を詳しく書きます。
特に、現在日経夕刊で連載中の土井先生も、ユネスコ登録経緯について少々誤解して学士会講演会を開いたので、木曽功先生著の「世界遺産ビジネス」(小学館新書)などを参考に、詳しく紹介します。

 まず、登録された和食が農山村など地方に残る消えつつある伝統的家庭料理であることは、このブログで繰り返し書いた通りです。
ところがですね、実は10数年前、ユネスコ登録のために国内で組織されたNPO法人の「日本料理アカデミー」は京都の料亭「菊乃井」を中心に組織されたもので、目的も実は、高級料亭の「日本料理」を登録することでインバウンドを狙ったものでした。
 なぜなら2010年にフランスの美食がユネスコの無形文化遺産に登録されてフランス料理業界が活気づいたからです。この登録は当時のサルコジ大統領が活発なロビイング活動をして、ユネスコ担当者が嫌がるなかで無理矢理押し通されたものでした。それで、日本の高級料亭も、フランスがそうくるなら日本も・・・と考えたのです。
 この菊乃井の村田吉弘さんらが農水省と文化庁に声をかけて、最初は和食ではなく、「美味しくて身体に良い日本料理」を登録しようとしたのです。

 このときに国内でもパブコメが行われ、一部の消費者は、「日本食といえば日本料理というイメージを植え付けて、伝統的な日本食がカルシウムや脂質・タンパク質が非常に少なく不健康だった事実を隠うそうとしているのではないか」と反発する動きもあったそうです。しかし日本政府側がうやむや言って押し切ったと聞いております。

 しかしいずれにせよ、日本料理アカデミーと政府側のこの働きかけは失敗寸前に陥りました。ユネスコ側としては保護しなければ滅びそうな文化を登録したかったのです。
それなのにサルコジ大統領(当時。)らの熱心な圧力に屈してフランス料理をいやいや登録するはめになったものですから、日本料理にも冷たい態度でした。そこで、日本政府側はユネスコのパネルミーティング専門家のアジア枠に日本人の愛川紀子氏を送り込みました。パネルミーティング専門家はくじ引きで選ばれるので、くじ運が良くて入れたそうです。愛川さんはユネスコ専門家同士がとんでもないことを話しているを耳にします。「(日本料理はすでに)大ブームで商業的に成立している。無形文化遺産で保護する必要はない」と。

はい、ここで繰り返しますよ。ここ近年いろいろな新聞・雑誌で、ユネスコが和食を無形文化遺産に登録したから和食ブームが起きたんだという情報が流されています。しかしそれは完全なミスリードなのです。登録される前から、ユネスコの皆さんたちも、すでに日本の料理は世界中で人気でレストランも世界各地に出来ているし保護する必要がないと考えていたのです。
嘘だーというあなたのためにもう一つ情報を。日本料理はまず1980年代に北米でスシが大ブームになり、やがて、1990年代後半になると世界各地で日本食レストラン(スシやラーメンやどんぶりものなど様々な料理です。)が開かれるようになりました。しかし、現地人などが店主をやって、現地の好みの味付けに変えられたので、これを快くなく思った日本政府(農水省)は、2006年に「海外日本食レストラン認証制度」を導入して、「正しい日本食」を海外に広めようとしました。ところがこれを知った世界中の国々から、食文化は各地に広まるうちにそれぞれの国の文化に合わせた味付けに変わるもので、それを止めさせようとするのはまるで警察かお前らは!と叫んで「スシポリス!!」と揶揄したのです。確かに日本人が食べているビーフカレーやナポリタンなんかを見れば、インド人もイタリア人もびっくりですからお互い様です。

農水省はこのスシポリスという批判に、振り上げた旗を降ろしました。しかし、海外で生じている「日本食レストランブーム」に対してはなんとしても「正しい日本食」を広めたい。だから菊乃井さんの提案に賛成して、ユネスコ登録に力を入れようとした訳です。

それで、あとはいままでブログに書いた通りですが、愛川さんの機転のおかげで、ユネスコには、和食とは正月のおせち料理を代表とした年中行事を基盤とした食文化全体であり、モチや旬の野菜や魚など非常に多種多様なものであると説明し、おかげでユネスコ側もそんならと登録した訳です。
繰り返しますが、ユネスコに登録されたのは一汁三菜ではありません。しかも健康に良いとも一言も書かれていません。

ユネスコの登録URLをご覧ください。
https://ich.unesco.org/en/RL/washoku-traditional-dietary-cultures-of-the-japanese-notably-for-the-celebration-of-new-year-00869
ユネスコ側の登録文書翻訳をあえてもう一度掲載します。

「和食、日本人の伝統的な食文化、特に新年のお祝い

和食は、食品の生産、加工、準備、消費に関連する一連のスキル、知識、実践、伝統に基づいた社会的実践です。それは、天然資源の持続可能な利用と密接に関係する、自然を尊重するという本質的な精神と結びついています。和食に関連する基本的な知識と社会的および文化的特徴は、通常、新年のお祝いの際に見られます。日本人は新年の神様を迎えるためにさまざまな準備をします。餅つきをしたり、新鮮な食材を使った特別な食事や美しく装飾された料理を用意したりしますが、それぞれに象徴的な意味があります。これらの料理は特別な食器で提供され、家族で、またはコミュニティ全体で共有されます。この習慣は、さまざまな自然食品の摂取を促進します。米、魚、野菜、山菜など地元産の食材を使用。家庭料理の正しい味付けなど、和食に関する基礎的な知識や技術は、共通の食事の時間の中で家庭内で伝承されています。草の根団体、学校教師、料理講師も、公式および非公式の教育や実践を通じて知識やスキルを伝達する役割を果たしています。」
     身体に良いなんてどこにも書いてないでしょう。
(原文はこちら)
「Washoku is a social practice based on a set of skills, knowledge, practice and traditions related to the production, processing, preparation and consumption of food. It is associated with an essential spirit of respect for nature that is closely related to the sustainable use of natural resources. The basic knowledge and the social and cultural characteristics associated with Washoku are typically seen during New Year celebrations. The Japanese make various preparations to welcome the deities of the incoming year, pounding rice cakes and preparing special meals and beautifully decorated dishes using fresh ingredients, each of which has a symbolic meaning. These dishes are served on special tableware and shared by family members or collectively among communities. The practice favours the consumption of various natural, locally sourced ingredients such as rice, fish, vegetables and edible wild plants. The basic knowledge and skills related to Washoku, such as the proper seasoning of home cooking, are passed down in the home at shared mealtimes. Grassroots groups, schoolteachers and cooking instructors also play a role in transmitting the knowledge and skills by means of formal and non-formal education or through practice.」」

身体に良いという文章は、日本政府側が提出したノミネーション文書の中の文です。ユネスコはそれについてはイエスともノーとも言っていません。
ユネスコの立場は「日本政府は健康に良いって言っているけど、健康面を確認するのはWHOの業務。うちは文化遺産として保護対象かどうかを判断しているだけ。」です。
文化遺産に登録されたことで「和食が身体に良いと世界が認めた」なんて言っている土井さん、あなた国際機関の仕組みを知らないですね?

国際歌唱コンテストに応募した男性がノミネーション文書に「僕は柔道も書道も師範級です」と書いて、ステージで歌って受賞しても、本当に書道師範級かまではコンテスト委員会がチェックしてないのと同じです。

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