タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

まだ間に合う!映画「クラブ ゼロ(Club Zero)」必見です。

2025年01月05日 | Weblog
食育に関するすべての方にお知らせします。もうすぐ上映が終了しますが、間に合えば、今映画館で上映中の「クラブ ゼロ」を見てください。ヨーロッパのある町の私立高校を舞台に、ほんの善意で始めたはずの食育がカルト化して悲劇に陥る、現代社会を痛烈に批判した物語です。

映画は、不協和音の混じる不思議な音楽と、スタイリッシュな構図に美しい色彩の映像で始まります。
 舞台の私立高校は、富裕層が学ぶ上昇志向の高い学校。意識高い保護者の一人がインターネット検索で、最先端の栄養学を教えるという触れ込みのノヴァク先生という女性を見つけて、校長先生にうちの子どもたちに学ばせたいと推薦します。
 彼女は、自分の顔写真をパッケージに配した「断食茶」を販売する程度にカリスマなので、校長先生も彼女と面会してすっかり信用してしまいます。
 彼女は栄養学講座を作り、10名弱の生徒が集まります。そこで先生が指導するのは「コンシャス イーティング」、直訳すれば「意識高い食事」。それは少食である、と。
 先生の話を聞いた生徒は夢中になります。少食になれば、寿命も延びるし二酸化炭素排出量が減って地球環境に優しいし、食品メーカーのマーケティングの網から自由になって資本主義に鉄槌を打てる。そして、私たちが食べる量を減らせば、飢餓の国に食品が分配される。ああ、なんて素晴らしい考えなんだろう!パレオダイエットもビーガンも古い古い!

賢い皆さんはもう気がつきましたよね?贅沢な邸宅に暮らしてパソコンを使う富裕層のお子さんたちが少食になった位で、GAFAの資本主義の網の目から逃げ出せないし、世界各地の飢餓は食糧分配の問題なので、先進国が食べる量を減らせば穀物相場が下がり、穀倉地帯の作付け面積が減って価格が維持され、結局飢餓地域には食糧が届かないのです。
しかし、高校生のかれらはナイーブ過ぎて、そんな深い因果関係まで思いもつきません。少食になるメリットに夢中になり、ノヴァク先生に深い信頼を寄せるようになります。

すると先生は、今度は植物性の食品1つだけを食べるようにしましょうと言い出して、馬鹿馬鹿しくてついて行けないと一部生徒が離脱します。しかし、信じる学生が多かった。中には糖尿病でインシュリン投与が必要なのに、先生の言う通りにすれば薬も要らないと信じて注射を拒んで緊急入院する学生も。それでもみんなの、先生への信頼は揺るがず。

(以下ネタバレあり)

でも、実は先生には裏の顔があった。実は彼女は、オリエンタル系の謎のカルト宗教の信者で、母なる神様のために信者を集めようとしていたのでした。ある日先生は、選ばれた生徒たちに打ち明けます。「食べないと死ぬなんて話は嘘。一切何も食べないことで永遠の命を得られる秘密のクラブがあるの。本当はこの世界はもうすぐ滅びる。しかし正しい食事を選びより高い意識に移行する私たちだけが生き残れるのよ。」

これは宗教界ではドゥームズデイ・カルトと呼ばれる典型的な激やばカルトです。「もうすぐ滅びの日が来るが、信じる物は救われる~」というアレです。古くは日本でも平安~鎌倉時代の仏教がこれ化して、貴族たちも庶民も末法の世と信じて信仰を堅くしたわけですが。話を映画に戻すと、子どもたちの奇矯な行動に気がついた親たちが、まともな栄養の知識を取り戻させようとしますが、時すでに遅し。映画でこのあたりの場面は、それぞれの親の困惑や悲しみが丁寧に描かれて、特に貧しい中で精一杯息子のベンを育てて良い学校に入れたお母さんの悲しみは胸を打ちます。
しかし、各家庭の親たちの願いは叶わず、クリスマスの朝、美しい映像と音楽とともに悲しい別れが訪れます・・・・。

監督は、複数のカルト事件からこの脚本を作成したと述べていますが、おそらく欧米の多くの視聴者はマクロビオティックを連想したことでしょう。理由を列挙します。
・マクロビオティックは、アメリカでは1960年代に「禅」の1種の長寿法と偽ってひろめられた(映画では、先生の登場シーンで三味線が鳴り、先生と生徒の重要な会話シーンで障子が背景に使われ、先生の家の祭壇には蓮の花が飾られています。)
・正しい食事をすれば薬も不要であり、既存の常識を疑えと洗脳されます。(映画にまるごとそういうシーンあり)
・肉を禁止するゆるい食事制限から始まりますが、そのうち、植物しか食べてだめ、小麦を食べては駄目、と指導されるようになり、最終的には米しか食べてはいけないとなります。(映画では一つの植物性食品だけを食べましょうというシーンに相当)
・単なる健康法ではなくて、世界をよくする運動であり、自身をより高次の意識に持って行くための食事として指導されます(映画でほぼ同じ台詞あり)

さて、ここまで読んでくださった方の多くは気がついたと思いますが、これらの話は、ここ近年での日本の食育でも頻繁に登場した説と妙に重複すると思いませんか?
曰く「肉を食べるな、小麦を食べるな、たくさん食べるな、食育の目的は単なる健康だけではなく環境問題やよりよい生き方の指導にあるのだ、資本主義はおかしい、食品企業のマーケティングの魔の手から逃げろ、既存の科学や医療を疑え、食事だけで病気を治せ、薬は要らない!!」
で、こういう食育が広まるのを手助けしたのが誰を隠そう、先般お亡くなりになった、大変有名な料理学校の先生かつ農水省の食育検討会のトップなのです。お名前は伏せますが、彼は近年は、有機農業を推進すると称する、高次元意識と波動で世界を変えましょうという宗教っぽい団体を推賞していました。

大切な子どもたちを、食育と名乗るカルトに奪われる前に、この映画を見て、これまでの食育が日本のまともな教育をいかにむしばんできたのかを考えてみてはいかがでしょう。


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NHK「食卓の陰の星条旗」を落ち着いて見れば、「キッチンカーがパンを広めた」が間違いだと分かる

2024年12月07日 | Weblog
近年、「昭和30年代に米国の資金援助でキッチンカーと呼ばれる料理講習車が各地を走りパン食を広めたため、主食の座がお米からパンになった」という説を見かけます。お米の消費が減った原因がパンではないこと、お米が一人負けして消費が減ったことなどはこのブログで過去に何回も紹介していますので、ぜひ過去頁をご覧ください。

・小麦は戦前からあるってば https://blog.goo.ne.jp/ptamia/e/4d3336a33a347f5666c8acb7c39e2aef

・すぐ使える授業ネタ:米消費減の主因はパンではない!
https://blog.goo.ne.jp/ptamia/e/f54b534720a5feb8ce74cc5e8bbe837d

・松永和紀先生の「効かない健康食品 危ない自然・天然」をおすすめ!小麦戦略説は嘘だった!
https://blog.goo.ne.jp/ptamia/e/18bc1c8fcb80ae53beb611bbfe804905

ところが先日(11月29日夜)のNHKは、1978年放映のNHK特集「食卓の陰の星条旗」を再放送して、テレビ番組予告にキッチンカーが原因でお米の消費が減ったと明記してしまったのです。

実際に番組を見てみました。再放送にあたり番組冒頭とおしまいに池上彰先生と伊集院光さんのコメントを付け足して、お二人が代わる代わる「日本人はアメリカの策略にうかうか乗ってしまって戦後パンを食べるようになったんだ」と誤解をそのまんま話してしまったのです。二人の会話や本編の1978年の内容が、どちらも論理的に破綻しているので頭を抱え込んでしまいました。
番組では、「主食が米からパンに変わった」と繰り返し言っているものの、その主張を統計やデータで裏付けるものが一切提示されない上に、キッチンカーがパンを宣伝したとは番組中で誰も一言も言っていないし、キッチンカーで紹介している料理は麺類ばっかりだったのです!

録画した方は、私のこのブログと比較しながら、番組を再度見直してください。
ぼーっと見ているとキッチンカーが原因でパン食が広まったような印象を与える番組構成になっていますが、インタビューでの証言や画面の文字を丁寧に追うと、キッチンカーが原因であることを証明するものは一つも有りません。番組が映し出したキッチンカー料理は、そうめんや細めのうどん、クルミか大豆のようなものをすり鉢ですりつぶしたものでした。そうめんはそのまま食べたり野菜と一緒に油炒めにしていました。また、小さなグラスで日本酒に似た色の飲み物を飲むシーンや3センチ角ほどに切った餅か芋のようなもの、サラダという文字、おそらく菓子と思われる四角いまんじゅうのようなものも一瞬写っていました。しかし食パンや肉は一つも有りませんでした。

しかも、キッチンカーを資金援助した「アメリカ西部小麦連合会」のリチャード・K・バウム氏はNHKの取材に対して、キッチンカーで宣伝したのはパンではなく「小麦食品」(wheat foods)であるとはっきり証言したのです。字幕もきちんと「小麦食品」と書かれていましたので、当時の翻訳者は正確に翻訳していましたね。もしも宣伝したのが主にパンであれば、リチャード氏もブレッドなどだと言ったでしょうし、字幕もパンと書かれたはずでしょう。

そして、同じくNHKの取材を受けた、キッチンカーの日本側運営団体(財団法人日本食生活協会)の副会長松谷満子氏も、「米国側からの条件は、献立の中に小麦と大豆を使った料理が1品あれば良いという物だった。それ以外一切条件はありません。」と説明しました。

きっぱりと松谷さんが「キッチンカーの目的はパン消費拡大だろう説」を否定したのが悔しかったのでしょう。NHK取材班は、協会の壁に貼ってあったポスター(大豆をお箸で食べながら片手にフランスパンを握る少年のイラスト)を撮影して、松谷さんが「献立の中に小麦」と言った瞬間にこの写真を画面に提示しました。これはテレビ特有の、視聴者をミスリーディングさせるテクニックです。説明しましょう。

松谷さんの声は「小麦を使った料理」といっているのに、その瞬間に画面にパンのイラストが映ることで、視聴者は、松谷さんがしゃべった「小麦を使った料理」という言葉はパンに間違いないと思い込んでしまい、まさかそうめんなどを食べさせたとは想像もできなくなるのです。これはトーキー映画の初期からよく知られている、視聴者を誤解させるための映像トリックです。NHKは1978年からこんな印象操作をやっていたんですね。

番組を丁寧に見ると、キッチンカーはあくまでもそうめんなど麺類を宣伝していますし、また、番組の後半に登場する「10年前に米国政府が作った、米国農民向けの政府広報」の中には「米国が日本に、キッチンカーや学校給食で小麦を宣伝したので日本人もうどんなどの小麦加工食品や、特にパンを食べるようになった」というデマが盛り込んでありました。え?それがなんでデマだと分かるかって?映像を見ればすぐ分かるから簡単ですよ。
 だって昭和40年代の夕飯に、家族そろって外出用の着物を着て、うどんを汁をかけずに冷めたまま直径30センチほどの平皿にのせてみんなで箸でつつき合い、食パンと小麦トッポギ(韓国の食材)と味噌汁と牛乳と一緒に食べているんですよ。小学生の女の子が黄色い和服を着込んで、平皿に乗った真っ白なうどんを一生懸命口に入れていましたが、当時の少女はちびまるこちゃんのような洋服を着て暮らしていました。和服を着るのは盆踊りと七五三ぐらいでしたよ。腹を抱えて笑うでしょ、これ。
 めんつゆを一滴もかけてない、真っ白で冷たいうどんなので、箸で持ち上げると団子状にくっついてしまっている。これを手のひらほどの平らな小皿(!)に取り分けて真っ白なまま口の中に入れています!!日本では食品ごとに器が細かく規定されているのを知らなかったんでしょうね。
 こんなのを演じたからには、この人たちは日本人でさえなかったことでしょう。アメリカ国内でセットを作って、日本文化をよく知らないスタッフが東洋人にテキトーに演技させた画像です。つまり、1968年に米国政府は、米国国内の農家を奮い立たせるために、「日本人は米国産小麦をこんなにたくさん食べています」というデマ映像をこさえた、ということが分かりました。
そんなでたらめな米国政府広報の「米国が日本に、キッチンカーや学校給食で小麦を宣伝したので日本人もうどんやパンを食べるようになった」という台詞が真実であると考える方がオバカですよ。本当は戦前から日本人はうどんやパンを食べていたんですが、米国政府がアメリカ農民の支持を得るために「我々米国人が指導したおかげでうどんやパンを食べるようになったんだ」と見栄を張って見せたんですよ。

でも、この、米国政府が農民に使ったおべんちゃらは、実は日本政府にとっても都合が良かった。NHKがこの番組を作ったのは福田赳夫内閣時代です。当時の日本の農民は「何故米余りになったのか。日本政府は何をしてるんだ」と激怒して、各地で大集会を開き、特に米価審議会というお米の価格を決める会議では大規模デモが行われたんです。そんな時に、NHKが日本の農家に「皆さんが苦しんでいるのは日本政府の失政ではなくて、アメリカの戦略が原因ですよ」という話を吹き込むのは、福田総理や福田派(清和会、後の安倍派)にとっては日本の農家のガス抜きをするとっておきの話術だったわけです。

 池上さんも伊集院さんもそれなりの年齢だからこの番組がどれほど馬鹿馬鹿しいか分かっているはずだし、この番組を理性的な大人がクリティカルに見れば、「パンを食べたから米消費が減ったんだ」と繰り返ししゃべっているのに一切因果関係の証拠を提示していないと分かるはずです。そして池上さんや伊集院さんは本来そういう知性の方と思っていたのですが。明治時代からあんパンを食べていた国と知ってるはずなのに伊集院さんったら「パンを食べるようになったのは戦後なんですね」とボケをかましてくれるので驚きました。まさかどこかの政治家にそう言えと言われたんではないかと心配します。

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ビーガンは、書道も日本画も鑑賞できないのでは

2024年11月17日 | Weblog
ビーガンとは、食だけではなく衣類や持ち物すべての動物性製品を避ける暮らしのことです。例えば羊毛の服や革靴なども禁止です。
するとビーガンは日本が誇る伝統文化「書」や「日本画」も鑑賞できないのでは?墨や日本画は動物の膠(にかわ)を使用しているからです。
昨年に某社から膠を使わない墨が販売されましたが、それ以前に発表されたほぼすべての書画は膠を使用しています。ビーガンさんは日本の美術館やお寺に来てどういう気持ちで作品を鑑賞しているのでしょう。

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和食を食べられない訪日客が多いという話は事実?

2024年09月16日 | Weblog
8月23日の東京新聞記事「訪日中 ビーガンだって和食食べたい!」が、いろいろな誤解をしている内容でした。なお、毎度繰り返しますが、新聞が時々間違った記事を書いたからとSNSやyoutubeの「新聞が報道しない事実」番組にはまる人が居ますが、そんなものよりは新聞の方が良いです。
 たまに新聞も間違えるので、こういうブログで「信頼できる専門家の情報によると、実態はこうですよ」と訂正情報を提供していますが、基本的に私は新聞の情報に信頼を置いています。

という訳で本題に入ります。
記事は、訪日客にはかなリの割合でベジタリアンやビーガンがおり、和食のかつおだしや天ぷらも食べられないので和食店にうっかり入られない、と主張していました。天ぷらの衣には卵が溶いてあるので野菜天ぷらも食べられない、という理屈です。
そして記事には海外におけるベジタリアンの割合グラフが掲載され、ベジタリアンの多い国順で、インド人の20%、台湾人の12.3%、カナダ人の12%がベジタリアンだとされていました。
ここまでを読んだ読者は、「そんなに訪日客にベジタリアンが多いのか!かつおだしを止めて天ぷらの卵を止めないと、和食店の商売あがったりになる!」と慌てたのではないでしょうか。ちょっと待った。実はこの記事は統計を間違えて用いているのです。

 訪日客が多いのは、韓国(28%)、台湾(17%)、中国(10%)、香港(8%)です。一方インド人は0.7%、カナダ人は1.7%しか居ません。(2023年JNTO推計値)。
後で述べますが台湾人の中でかつおだしが食べられない人はだいたい5%ぐらいです。
つまり訪日客の中で、かつおだしが食べられない台湾人は0.9%です。
同じ計算をすると、訪日客でかつおだしが食べられないインド人は0.1%、カナダ人0.2%です。
そうです。ベジタリアンの多い国ベスト3であるインド、台湾、カナダ合計を足し上げても、訪日客の中では1.2%しかいないのですよ。

同じ計算で他の国の人を足し上げても、ベジタリアンやビーガン故にかつおだしや卵入り天ぷらが食べられない訪日外国人は、せいぜい2%位と考えられます。もちろん、そんなニッチな訪日外国人を囲い込むビジネスはあり得ますが、わざわざ新聞社が写真やグラフを掲載して大きな記事で報道して「かつおだしや天ぷらの卵がインバウンドの障壁になる」と言うのは大げさな誤解です。

ここで、算出の根拠となった、ビーガンと各国のベジタリアンの違いおよびその割合についてまとめましょう。
まずビーガンとは動物性食品を一切食べない運動です。しかし、ビーガンは全世界で数が少ないのです。ビーガン運動が誕生したイギリス本国においてさえ、国民の1%も居ません(2019年データ、ジェトロの農水省補助事業「ベジタリアン・ヴィーガン市場に関する調査(英国、フランス、ドイツ)」より。)

次にインド式ベジタリアンを見てみましょう。
インドのベジタリアンの7~8割がラクトベジタリアン(牛乳・乳製品を食べるベジタリアン)です。これはインド政府が牛乳・乳製品を植物性食品と定義していることも関係しているそうです。これらの人は確かにかつおだしや卵が食べられません。また、インドのベジタリアンの1%がジャイナ教により、0.5%ほどがヴィーガンにより、かつおだしや卵が食べられません。しかし、インド人観光客は先ほど述べた通り非常に少ないので、そこをあまり気にかけても商売として成り立ちません。

次に台湾を検討しましょう。
台湾のベジタリアンは欧米のベジタリアンと全く概念が異なるのでいったん、今までの固定概念を捨ててください。台湾では動物食を食べないことを素食(スーシー)と呼びます。これが日本人にはベジタリアンと大雑把に誤解されている訳ですが、実際は仏教や斎教、一貫道などの宗教に基づく上、欧米のベジタリアンとは食べて良い食品と悪い食品の線引きが違います。

 ヴィーガンに一番似る「全素」(動物性食品とネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウを食べてはいけない食事のこと。)は台湾全人口のうちたった1.2%しか居ません。また、「蛋素」(卵を食べていいが魚と肉はだめ。)が全人口の4.2%です(台湾食品消費調査統計年鑑2017より)。この人たちは確かにかつおだしは食べられません。
でも足して5.4%にしかなりません。
じゃあ、東京新聞の「台湾人の12.3%がベジタリアン」とは?
実は、「時々素食にする人」が7.4%もいるからです。農業ごよみの1日と15日だけ素食にしたり、朝だけ素食にしたりする人です。「肉邊素」(何らかの事情で動物性食品が入っていても気にしない)も1%います(出典は同上。足して東京新聞と同じにならないのは、東京新聞とは統計の出典が違うためです。)

つまりですね、台湾人のベジタリアンの大多数は、食べて良い日や時間帯なら、安心して和食を食べられます。しかも台湾人のほとんどはベジタリアンでさえないから、台湾人観光客に「かつおだしや卵を止めました」と言ってもニッチですね。

最後にカナダをみましょう。ネットで日本語検索すると「カナダにはビーガンがたくさん居る」と主張する頁がありますが、それらはおしなべてドメインがcomだったり、マクロビオティックサイトで信用出来ません。カナダ政府公式データは調べても見つかりませんし、カナダのビーガン協会でさえも3~4%と見積もっているそうです。つまり、カナダ人ベジタリアンの多くは、ビーガンでは有りません。

カナダ人ベジタリアンの多くは、卵を食べて良いオボベジタリアンや、牛乳乳製品を食べて良いラクトベジタリアンと考えられます。その理由は、完全にビーガンになると貧血などで体調を悪くする人があるため、長続きしないことが多いからです。ではオボやラクトのパーセンテージはどうでしょうか。大学のデータなどもひいて調べましたが、残念ながら統計が見つかりませんでした。(ベジタリアン関連協会やマクロビ団体のデータは、仲間が多いと主張するために多めにカウントしている可能性が高いためこのブログでは採用しません。)いずれにせよ、卵が食べられないと主張するカナダ人はカナダ人の中の数パーセント程度と見積もられますし、カナダ人観光客は少ないので、日本の和食店がそこを気にかけてもニッチですね。

さて、以上のように訪日外国人のほとんどは、卵もかつおだしも食べられるわけです。
ただ、どちらかというとかつおだしが食べられないケースの方がわずかに上回るので、それを気にするのだったら、味の素といの一番で調味すれば大丈夫です

お後がよろしいようで。

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日経好きなんだけど、今朝の春秋は残念です。

2024年08月04日 | Weblog
8月4日の日経春秋欄は、大きな間違いが混じっていてがっかりな内容でした。メディアを非難する目的はありません。新聞が間違いを報じたことで人々が既存メディアを見捨ててはいけないからです。世間では新聞の記事に間違いがあったからと言って、より信憑性の低いSNSに飛びつく人が多いので、私も嘆いています。SNSより新聞の方がずっと信憑性が高いです。新聞に一層良質なメディアになってもらい、読者を増やしてほしいと願っているからこそ、あえて投稿します。

春秋欄によれば、米国の資金援助でキッチンカーと呼ばれる料理講習車が各地を走り、小麦中心の食事を広めたため、主食の座がお米からパンや麺になったそうですが、それは故鈴木猛夫氏が広めた有名なデマなんです。デマを記事にしてはいけません。

1.キッチンカーの目的はタンパク質や脂質を取るため。
昔から日本人は糖質に偏った食事をしていたため、昭和30年の厚生省(今の厚労省)の研究者たちは健康状態の悪さを危惧し、どうしたらタンパク質や脂質を適正な量取るように指導できるかと苦心していました。
厚生省がいくら説明しても、当時の国民感情は「混ぜ物のない白米を漬物で腹一杯食べるなんて夢のような食事♡」でした。どうやったらコメだけで腹を満たすのではなく、副食(おかず)を食べるようにおすすめできないかと厚生省は苦心しました。

そんな折、オレゴン小麦農家連盟から厚生省に、日本にて小麦を宣伝したいし、そのために必要なお金を出すとの打診があり、厚生省担当官は名案を思いついたのです。交渉してなんと次の合意を取ったのです。
・パン食の宣伝は目的としない
・小麦粉を使った料理が1品さえあれば、あとは日本側がメニューを勝手に決めて良い。


その結果、キッチンカーを購入して、日本全国で紹介した料理はさあなんでしょう。ふふふ。「キッチンカーはパンを宣伝して日本人の食事を破壊した~」と熱弁する鈴木猛夫先生がやっと探し出して示した「ある日のキッチンカーテキスト」がこれなんで、思いっきり笑ってやってください。出典は鈴木さんの『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活』61頁です。

まず、広告欄にはしっかりと、ヤマサ醤油の広告が…。
テキストに書いてあったのは8種類のメニュー。和洋中で並べて記します。

和食;小アジの唐揚げ、ジャガイモとピーマンの酢味噌
和食;そうめんのごま味噌がけ
和食;いかのハヤシソース(イカはアメリカ人やイギリス人が嫌って絶対食べない食品でした。また、ハヤシソースは諸説ありますが、洋食をヒントに日本で発明されました。以上を考えると、これは和食です。)

和風中華;四宝涼拌(サイコロ状に切って醤油で煮詰めた牛肉に、こんにゃく、ジャガイモ、キャベツ、キュウリなどを混ぜたもの。醤油やこんにゃくを使っているなど、中華というより和食に近いメニューです。)
中華;涼拌麺(冷やし中華を当時はこう呼びました)
洋風中華;トーストパンと中華サラダ(鯨の大和煮に、キュウリや大根にんじんなどを短冊に切って味付けして載せたもの)

洋食;フィッシュサルシャード(あじの唐揚げにタマネギとトマトのソース)
洋食;なすのフリッター(なすの洋風天ぷらにトマトケチャップ)

お気づきですね。上記8品のうち、洋風中華と和風そうめんと冷やし中華を除けば、残り5つはごはんのおかずなんですよ!!
鈴木さんはあれほどキッチンカーが原因でパンが広まったと言いながら、自説を証明できる資料をとうとう見つけることが出来なかったんですよ!

2.そもそもお米を主食としていた人は限られていた。
春秋欄の冒頭でも大根飯について触れられている通り、戦後まもなくまでの伝統的な日本では、米飯をたくさん食べられるのは都市住民と、田舎では稲作の盛んな地域の富裕層でした。それ以外の層、つまり国民の大半は、ごく少量のコメに大量の大根や雑穀(麦など)を混ぜて炊いて食べていました。また、江戸時代から盛んだったそばやうどんなども、明治以降一層盛んになり、そばやうどんを主食にしていた地域もたくさんありました。

そんな中人口が増加基調のため、陸軍は資源の限られているコメが将来不足することに気づき、日本人の主食の一部をパンに置き換えようと考えました。政府も小麦増産運動をし実際に昭和初期は海外に輸出するほど大量の小麦粉を日本で生産していたのです。陸軍は農村で小麦栽培が盛んになったのを見て、農家もパンを作って食べようという指導を展開しました。戦前のマスコミも、パンが流行していると書き、パンが日本の食に定着するように働きかけていました。

さて、時は流れ戦争が終わり、戦後の昭和30年から連続してコメの大豊作が訪れました。それ以降、やっと一般の人も純粋な米飯を食べられるようになっていったのです。

それまでは富裕層しか食べられなかったピュア米飯に大人も子どもも大喜びし、莫大な量のコメが消費されるようになったのが昭和30年代という時代です。消費ピークは昭和37年。それ以降お米の一人当たり消費量が減ったのは、そろそろコメの「ドカ食い」に飽きて来た昭和30年代半ばにラーメンブームが発生したからです。

春秋欄によれば、キッチンカーが原因でそれまで主食だったごはんがパンや麺に置き換わったという主張ですが、いや、キッチンカーの指導は、ごはんを主食にする方に寄与したことでしょう。

キッチンカー以前から日本人は軍隊や菓子店でパンを食べ慣れていたし、そうめんを食べていたから、キッチンカーこんなメニューを見せられた程度でパンやそうめんの消費が増えるでしょうか?むしろ「お米のおかずにぴったりだわ」と当時の主婦は考えたことでしょう。

実際、小麦の一人当たり消費増は昭和37年に急に伸びて40年で止まっています。キッチンカーが原因ならこんなのび方をするわけ有りません。だってキッチンカーは昭和31年から35年までの指導でしたから、年代が合いません。

昭和37~昭和40年の小麦の消費増の理由は、4割がラーメンなどが原因で、5割は主食パンではなくおやつ目的であろうと、財団法人食生活研究会「パンの消費動向と企業の対応」という本に書いてあります。

キッチンカーのせいでコメが主食の座を明け渡したという春秋欄の主張はどう考えても無理すぎです。私は新聞の良心を信じています。

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日本のアイスが海外で好評!ちょっとうれしい話と統計トリック。

2024年07月16日 | Weblog
7月12日の読売新聞記事は、良記事だと思います。日本のアイスが海外で大受けしているという内容で、森永乳業や日本アイスクリーム協会などにも取材して、財務省統計なども使って説得力のある記事を提供してくれています。
この記事に載ったグラフもとても興味深くて、2014年以降のアイス販売額と輸出額がどちらも右肩上がりです。
輸出の伸びの理由は、訪日客が様々なアイスを買って、帰国後も日本の味を求めているからで、もちろん抹茶味や小豆味も根強い人気があるが、和風味ではないものも含めて日本の現地の味というのが諸外国の人気を集めているそうです。

さて、先日どこかの新聞社(名前は言わない)が、「海外へのラムネ輸出が拡大している理由は、ユネスコの和食の無形文化遺産登録のおかげで知名度が増したからだ、その証拠に2014年以降輸出金額が右肩上がりだ」という趣旨の記事を書いていました。頭が痛くなる内容でした。1年前に別の新聞社もそっくりのを書いていて、このブログで間違いを多数指摘したことがあるからです(ラムネが人気になったのはユネスコとは無関係で、①瓶を開ける面白さ、②もともと欧米の飲料だったのが消えてしまったのに日本にはまだ残っていた!と欧米人が喜んだこと、③日本アニメの影響、④市場流通の工夫で海外消費者が買いやすくなったことです。)

2014年以降のグラフが右肩上がりだから、ユネスコ登録が原因だ、という理屈が通るなら、日本のアイスが海外で大人気なのもユネスコ登録が原因なんですかね?違いますよね。2014年以降、日本の貧困率も少しずつ右肩上がりですし、一人暮らし家庭の数も増えていますが、それもユネスコのおかげですか?違いますよね。あるグラフと偶然似た動きをしている別のグラフを見て「因果関係がある」と言い張るのは、古典的な統計トリックです。

このブログを読んでいる皆さんは論理的思考が身についている方だとは思いますが、改めて言います。だまされないでください。

和食をユネスコ登録するようになった最初の理由は、京都の有名料亭の大物料理人が発案し、国も協力することになったからだと聞いています。まあ要するに、ユネスコ登録の成果が高級和食店の賑わいだけで終わってしまうと、お金持ちへの利益誘導に国税が使われたと言われかねないので、国としては「登録の成果が様々な食品に波及した」と言いたくて仕方ないのです。魚心あれば水心。新聞社も「ユネスコ登録のおかげで様々な食品業界がハッピーになった」という幻想を振りまいているのかもしれませんね。

そういう和食万歳な風潮の中でも「日本アイスが海外で好評なのは美味しかったからだ」と、道理を貫いた記事を書いてくれた読売に大変好感を持ちました。

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日経6月2日「コメとタンパクと食文化」記事は事実関係を取り違えている。

2024年06月16日 | Weblog
このようなことを言うのは申し訳ないですが、コメ関連の話題については、大勢のマスコミの方がなんか誤解されているようです。特に、今回はこの記事でその傾向を感じました。

記事にはいろいろな誤解が含まれていました。
例えば冒頭では宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」を引き合いに出して、昔の日本人は玄米4合を食べていた、と記者が断言しています。でもあの詩のラストは「そういう者に私はなりたい」オチです。「私宮沢賢治は実際はそんなにたくさん米を食べてないので、もっとたくさん食べるようになりたい」という詩ですよ。

時代背景を知れば賢治の意図が分かります。
まず第一に、昭和5年の大豊作で米の価格が大暴落します。そこへ昭和6年は東北地方で大冷害が。賢治は岩手の農家の困窮に心を痛めたのでせめて自分も慎ましい暮らしをしようと心に誓ったのです。お金持ちのボンボンなので、魚でもかまぼこでも納豆でも様々なおかずを買えるのに、あえて安いお米で腹を満たして、あとは味噌と少しの野菜だけで腹を満たす人になりたい、と心に誓うことで、貧しい人の立場に寄り添いたかったのではないでしょうか。

第二の理由ですが、この当時、玄米を食べれば他の食品は不要だという変な説が都会で広まっていたので、賢治もおかしな健康情報にかぶれてしまったようです。

というわけで、宮沢賢治の詩を根拠に昔の日本人はみんな玄米4合食べていたなんて言うのは大間違いです

そもそも論を言うと、戦前の日本人は階級や地域によって違う物を食べていたので、米消費量の平均値をどうこうこと自体あまり意味がありません。そばや雑穀ばかり食べていた家庭もあったし、うどんの多い家庭もあったし、都会のハイカラ家庭はパン食を常食していました。日本人全員が米を食っていたなんて主張は歴史の勉強不足ですよ。

さて、次に記者は慶応大学教授の「白米を食べると頭が悪くなる」という説を紹介して「日本の食卓にごはんが並ぶ機会は結果的にその後減り続けた。日本的な食生活が後退したからだ。」と玉虫色の文章を書きました。さらっと読むとこの説のせいで米消費が落ち込んだように読めるが、実はそんなこと一言も言っていない文。誤読させる気満々で書いてますね?良心が痛みませんか?

次に記者は、牛のゲップで地球温暖化しているからお米の価値を見直す機運が来ていると言うのですが、これもとんでもないです。日本の温暖化ガス(GHG)排出量は11億7000万トンで、うち牛のゲップはたった772万トン(2021年データ)です。温暖化ガスは主に自動車などの工業や電気関係から出ているけど経済新聞としてはトヨタなどの批判を書けないから、牛のせいにしてるんですよね。

まあその次の段落の、米タンパク質の機能性への期待は、医学的研究取り組みは多様性があった方がいいから納得して読みました。しかしさらに次の段落で、米に含まれるタンパク質を増やすことで食糧問題を解決出来ると考える某先生を紹介しているので、ああやっぱりだめかと落胆しました。
某先生の着眼点は悪くはないのですが、実はお米のタンパク質を増やすことは、お米嫌いを増やすことと同じなんです。
もちろん記者も、日本人はタンパク質の多いお米を嫌うと書いていますが、某先生の助言により、インドでは米のタンパク質が嫌われてないどころかむしろ品種改良の目標になっていると述べています。

インドがそうだから日本も可能というのは楽観視しすぎです。なぜなら、現代の日本人は本当に本当にお米のタンパク質が苦手で、タンパク質が多いと食味評価が落ちて価格や地域の評価まで下がるんですよ。
毎年米の味について、あそこの産地のコシヒカリは特Aを取ったとかあそこの産地はA評価だったとマスコミが報道するでしょう?あの評価で、各市町村は毎年一喜一憂しているんですが、評価に重大な影響を与えるのがタンパク質です。タンパク質が多いほど雑味がある米として評価が落ちるんです。
だから地域としてはなんとしても低タンパクのお米を作って、うまい米の産地としてマスコミで大きく報道されたいのです。記者さんもこんな米業界の事情を知っていたら、ここまで楽観的な記事は書けなかったでしょうね。

どうしてもお米にタンパク質を多く含ませたいなら、いっそのことグルタミン酸などのアミノ酸をガンガン蓄積させる方向で育種しては。そうすれば、味の素を入れてないのに最初からうまみがついている米になります。チャーハンなどに使えば美味しいと言われるかもしれません、楽観的な意見ですが。

さて、記事の最後は、米のタンパク質含量を増やすことで、大切な主食を未来に伝える一助になると期待したいと述べています。いやいや、米はそんなことしなくても十分に日本人の主食でありつづけますよ。だって、日本人に聞けばほとんどの人が、主食は米だと言うじゃありませんか。それにも関わらず消費量が減退したここ最近の理由は、少子化とITの浸透が主因です。パクパク大量に食べる若者と肉体労働が減れば、そりゃお米の消費も減るわけです。

消費は減っても日本人の心の中で常にお米は主食です。だから、変な杞憂をこじらせて、米のタンパク質を増やせだの、唐突に米で頭悪くなる説を出して前後関係が不明瞭な文章を書くのは、もう止めてください。統計データと豊富な科学的な知見に基づいた良質な記事を期待しています。

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農水省がニセ医療に加担している!?

2024年05月04日 | Weblog
ショックな話題です。このブログでは、繰り返し、農水省の公表する和食や伝統食関係の情報に間違いが多く含まれていることを指摘していました。農水省は日本史や医療や栄養学などの面で事実と異なる説をしょっちゅう垂れ流しているので、問題を指摘していました。

しかも、最近調べた結果、農水省はここ2,3年ほどマクロビオティック(以下略称マクロビ。)を消費者に広めていることが分かりました。マクロビは死者や被害者を大勢生み出しているやばいニセ医療です(注1)。国民にどう責任を取るつもりでしょうか。

農水省後援のマクロビ講演会が開催されたり、優良農村事例としてマクロビを取り入れた町を紹介した事例がありました。農水省ホームページの人気コーナー「にっぽん伝統食図鑑」にもこんな例があります。

「「宮城県北部と岩手県南部で食されてきた、油で揚げた麩のこと。油で揚げているので香ばしく、独特の風味と口当たり、ボリュームがあるのが特徴。精進料理にルーツをもつ高タンパクな食材で、近年、肉が苦手な人の食事やベジタリアン料理、マクロビオティック食で注目されている。また、保存が利くので非常食としての活用を促す声もある。」(https://traditional-foods.maff.go.jp/menu/aburafu)」

伝統食の油麩を紹介すると見せかけて、さりげなくマクロビの知名度を上げる文章を埋め込んでいます。国がマクロビの広告塔になるのは国民に対して無責任です。

さらに農水省の近畿農政局は、食育指導者紹介欄で「調理実習、レシピ・メニュー提案ではビーガンやマクロビオティック、薬膳などアレルギー、養生食などの対応も可能です。」(https://www.maff.go.jp/kinki/syouhi/seikatu/syokuiku/hyogo03.html)なんて紹介しています。食育でマクロビだなんて、まともな医者が聞いたら止めさせる類いの危険な行為です。

なぜなら、マクロビは菜食主義の一種ですがお米(特に玄米)が身体に一番良いというのが基本原理で、付け合わせる野菜の選び方やその調理方法まで煩瑣な制限をかけていて、野菜を食べるのもしんどくなるので、栄養バランスが崩れて身体を壊すのです。

実は、20数年前に仕事の関係で農水省の女性職員と話が合い、彼女に誘われて当時は全然知らなかったマクロビの店に連れて行かれました。それが私のマクロビ初体験だったのですが、おかしな水の話が貼ってあってぞっとしました。

彼女はマクロビ料理教室にも通っている、と自慢げに言ってましたが、3ヶ月後に会った時には、やつれてもうろうとした様子でした。尋ねたら、料理教室の、前世が見える仲間の為にあれこれを買わなければならなくなり大金を支払ったと言うのです。
その教室は変ですよと答えたら、「あなたは真実に目覚めてないのよ!マクロビの先生に教わったけど、砂糖は戦後にGHQの陰謀で日本人の身体を壊すために広められたのよ!」と陰謀論を言うのでした。でも日本は、戦前から砂糖を台湾などから大量に手に入れて、あんこなどの和菓子や駄菓子を通じて現代人よりもむしろ多くの砂糖を食べていたんですよ。

その後また仕事で農水省の窓口に行ったら彼女がいないので他の男性職員に尋ねたら、僻地に飛ばされたそうです。
ま、こんな経験があったので、農水省はマクロビ反対派だと信じて安心していたのですが、年月が経ちマクロビ賛成派が台頭してきたようです。

マクロビは中医学や漢方に擬態した理論なので(正確な中医学や漢方とは異なります)、中医学や漢方を軽くかじった程度の人が「私、スゴイ理論を学んでしまってステージが上がっちゃった♪」と感動してどハマりし、低栄養で脳がむしばまれてマクロビのしもべになるんです。

農水省にも、あたし頭のいい官僚なのよ賢いあたしの信じている食だから正しいに決まっているわ!と他の職員に押しつける官僚がいると見られます。去年、職員数十人を対象に数ヶ月間、農水省内でマクロビチャレンジも行われたそうです。あんたら官僚は国民をなめているんですかね。

おそらく農水省官僚はマクロビを利用したつもりがマクロビ指導者に利用され、そのうち日本中の農家や消費者に大迷惑をかけて大変なことになるでしょう。官僚は責任逃れしたがるから、私たち市民が、官僚をしっかり見張らないと行けません。皆さんも気をつけて農水省のマクロビを監視しましょう。そうしないと半病人が大量に生み出されますよ。

注1 1962年、ニューヨークでマクロビオティックを実践していたリサ・ボノーさんが栄養不足が原因で死亡し、全米を揺るがす事件に発展しています。その後も繰り返し、マクロビで体調不良になった人がいたので、諸外国で問題視されています。

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決定版!これが正しい一汁三菜だ!

2024年03月31日 | Weblog
このブログではこれまで数回にわたり、農水省の食育を指導している某服部先生の、「和食の基本は一汁三菜で、これを食育の基本としましょう。」という主張が歴史的に間違っていることをお伝えしておりました。
本論に入る前に、改めて繰り返しますが、今までの私の主張はこうです。

・平安~江戸時代にかけて、和食の基本を一汁三菜だと記した書物がない。
・千利休が創設した茶の湯の懐石料理は一汁三菜が基本だが、「ティーセレモニーに客人を呼ぶ時の簡素な食事」設定なので、普段の食ではない。
・いろいろな学者も調べたが和食の基本を一汁三菜と断定するに足りる証拠がない。
・江戸時代に本膳料理(ごちそう)の分野で一汁三菜、二汁五菜などがあったが、あくまでもパーティー料理なので、日常の食と接点がない。
・江戸時代の大名や有名人も一汁二菜等の記録がよく見かけられる。
・明治から昭和初期の普通の人の食事は一汁一菜。良くて二菜。
・日本で一番専業主婦が多かった1970年代でさえ一汁二菜が普通だったのに、いったいいつの時代に誰が一汁三菜なんて手のかかる料理を担っていたんですか。
・昭和後半に栄養学で一汁三菜を勧める声があったが「スープやおかずは洋風でも良くて、ごはんを中心に和洋中の料理を食べて栄養バランスを取ろう」という指導だった。だから和食の基本ではない。
日本政府が和食をユネスコに登録申請した時も一汁三菜という言葉は一切使っていない。
・「和食の基本は一汁三菜だ」という言葉は2014年頃突然農水省の記録に掲載され、翌年のミラノ万博日本館で展示された言葉。

さて、やっと、戦前の貴重な資料を発見してしまいました。昭和5年(1930)に発行された「嫁入叢書 礼法編(実業之日本社)」という本の中に「正しい一汁三菜」の記載があったのです!!本日はこれを皆さんに紹介しましょう♪

その前にご注意!この本は、社交界や舞踏会のお作法などを記した、ハイソサエティ向けの本なので、そういう本で一汁三菜について事細かに盛り付け型や提供の仕方を図解、順番を説明していることはつまり、ハイソサエティのご家庭でも一汁三菜はまれなことだった訳です。
そんな食事がどうして日本の国民のスタンダードなんでしょうかね?

さて、著作権も切れているので国会図書館から入手した写真を紹介します。

ごらんの通り、正しくはお膳が3つもあるんですよ。しかも、最初にお茶とお菓子を出して、召し上がっていただいてから、お吸い物のお膳だけを先に出すのです。

お吸い物も召し上がっていただいてから、初めて、ごはんやおかずの乗っている二つのお膳を出すのです。おかずのバリエーションは必ず「なます+平+焼き物」です。なますは酢の物か和え物、平は煮物、焼き物や焼き魚などです。
この三種の調理法で一汁三菜となるため、そのほかの調理法(例えば油で揚げる天ぷらとか蒸し物とか)は正式な一汁三菜になりません。
服部先生は食育で一汁三菜を広めると言うのですがすると天ぷらも茶碗蒸しも郷土食豊かな鍋料理なども全部アウトですね。正式な一汁三菜は郷土料理・地方料理を破壊する怖い料理だと判明しました。じゃじゃ~ん(恐怖音楽のメロディを頭に思い浮かべてみましょう♪)
 


さて、ごはんとおかずのお膳が出たらどうするかというと、最初にお米を二口食べてから汁物をいただきます。そしてなますを食べてからお米を食べて、次に平をいただきます。焼き物のお膳はこの後に食べられます。

以上が、昭和初期の正しい一汁三菜の食べ方です。

で、くどいですがこれは、社交界デビューする若奥様向けの本でして、そんな本で手取り足取り一汁三菜を説明しているということは、ハイソサエティのお嬢さんたちでさえもお嫁入りするまで正しい一汁三菜を知らなかったわけです。知らないということはつまり、普段はハイソ家庭でもお父さんが娘たちの目の前で一汁三菜を食べなかったということになります。
男尊女卑の時代、妻が一汁三菜を主人と客人に差し出すシステムだから、結婚するときに初めてその知識を仕入れる必要があったのです。

そんなマニアック料理ですからましてや一般庶民には全く縁の無い話だったという訳です。

服部先生って本当に食育の専門家なんですか。

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土井善晴先生がレシピに抱く複雑な思い。

2024年02月25日 | Weblog
最近、料理研究家土井善晴先生が気になります。2月8日にyahooニュースオリジナルで掲載された「”料理にレシピが必要”は思い込み」という記事で、先生は料理にレシピなんぞいらないのだと熱弁していました。それによると

「「一汁一菜」。つまりお味噌汁とご飯、漬物です。これを1日3食食べればなんの問題もありません。」(原文ママ)

また先生は今の日本のおかずの代表例として肉じゃがを例に挙げて、次のような説明をしました。
肉じゃがなどは火の通り加減や味付けのタイミングが問題で、料理が複雑である。味付けの上手下手が生まれてきて、それが原因で現代人は味付けに悩み、レシピを覚えなければ料理は出来ないと思い込んでいるのでは。レシピを覚えるのは非常に面倒くさい。一汁一菜にすれば具を味噌で煮込むだけで出汁も不要だからレシピなんてのも覚える必要がない。
・・・だそうですが、7つの視点から疑問がわきました。

1:肉じゃがは面倒くさいといういう指摘について
 現代ビジネス(2023年6月24日、執筆者は講談社資料センター)の3本の記事、
 『おふくろの味「肉じゃが」は昭和40年代の食卓にはなかった…!』
 『「肉じゃが」はいつから「おふくろの味」になったのか…?』
 『おふくろの味「肉じゃが」の名付け親は誰なのか…?』
によると、昭和40年代まで「肉じゃが」は家庭料理では無かったそうで、戦前戦後の家庭のじゃがいも料理は洋風や中国風が多かったそうです。これを家庭料理「お袋の味」として広めたのは昭和50~53年頃の雑誌・書籍料理記事で、その中でも有名だった一人が、土井勝先生だったそうです・・・そうです、土井善晴先生のお父様です。

(「肉じゃが」はいつから「おふくの味になったのか…?より。文中の「同年」は昭和52年です。)


(同じ記事より。写真は省きましたが、肉がやや少なく、緑の野菜が添えられている写真です。)

先生はお父様の偉業を否定されるのですか?専業主婦全盛時代に、多くの家庭の女性たちは社会との接点を失っていましたが、そんな中でも自分自身が出来るベストを尽くしたい、家族を喜ばそうとして、家庭料理に力を入れていました。その中でも全国的に愛されてリピートされたのが肉じゃがです。それぐらい美味しい料理なのです。
現代の共働き時代になって作るのが面倒くさいなら、惣菜コーナーで買えばいいじゃないですか。面倒だという理由で、なぜ肉じゃがを食べることまで排除するのでしょう。本当に不思議です。

2:土井善晴先生自身が肉じゃがを指導している件について。
普通に「土井 肉じゃが」で検索すると先生のレシピが大量に紹介されるんですが、それはいいんですか。スクリーンショットを撮ったので、紹介します。肉じゃがのレシピは面倒なのでそんなの覚えなくても味噌汁だけでいいんではなかったでしたっけ?



3:土井先生ご自身の職業の否定になりませんか?
土井先生は料理研究家です。出汁もとらず具を味噌の中に入れて煮るだけでいいと言い続けるのは、ご自身の否定になりませんか。
先日、2月24日日本経済新聞夕刊1面に先生が書いたエッセイ「おでんとかんとだき」でも、関東炊きの詳しいレシピを紹介されています。
引用します。
「関東炊きはたっぷりの出汁をひく。水15カップ、薄口醤油1カップと、薄口の半分の砂糖、鰹節だけでは弱いので、底味となる鯖節か煮干しと半々にして」以下作り方が8行も続くので省略します。長い文章で説明するところを見ると、普通の家ではうまく関東炊きを作れないと強調したいようです。

 お話を総合すると、「料理を作るのは一部の職人や料理マニアで良い、普通の共稼ぎ家庭は黙々と一日三食コメの飯と味噌汁と漬物だけを食べてろ。」って言っているように聞こえてきます。味噌汁以外に素人が手を出してはいけないのかな?と萎縮してきます。

4:スーパーでおかずを買っちゃ駄目ですか?
 味噌汁なら誰でも作れるから味噌汁がいいという先生の主張は、外食や中食を否定されているように読めます。仕事帰りにコロッケや焼き魚やインスタント味噌汁を買うのも否定されているような気がします。先生の本を読むと「常に、自分で、味噌汁だけを作れ」と強制されている気分になり、逆に憂鬱な気持ちになります。味噌汁はインスタントで十分です。あのデパ地下の赤魚の煮付けや大豆サラダを食べたーい。

5:先生の言うそれ、一汁一菜と違います。
 「一汁一菜」について先生は「味噌汁とご飯と漬物」と言っていますが、それは一汁一菜じゃ有りません。先生が提案している料理は「一汁無菜」です。何故なら菜とはおかずのことです。先生の料理には菜が無い。漬物は菜じゃ有りません(熊倉功夫先生、江原絢子先生他より)。和食には様々な定義がありますが、漬物を菜に数えないのはほぼ全研究者の指摘する共通ルールです。
具だくさん味噌汁なら菜に数えていい、というなら「半汁半菜」と名乗る方が正確です。

6:栄養学的にどうも疑問です。
 土井先生の本を見る限り、毎日三食土井先生方式の一汁一菜をやっていたらおそらく栄養素の偏りが生じるはずと思います。計算をしてないのでざっとした感想ですが、カルシウムと鉄分、ビタミン類、タンパク質が不足し、逆に糖質は取り過ぎになると思います。また、食事素材の多様性が発がんを防ぐことも知られていますが、土井先生方式だとどうしても食べる品数やバラエティが限られているため、この点も心配です。
栄養面で十分だと言い出したのは先生の方ですから、まずは先生が先に、本当に栄養学的に大丈夫か、大勢の被験者を募って数年間食べ続けて証明してくださらないと、消費者としては困ります。

7 「味付けの苦しみ」って結局なんのことか分かりません。
土井先生はyahoo記事の冒頭で、こういうことも言っています。日本ではお箸で料理を食べる民族なのに西洋の栄養学を取り入れたから和洋中の料理が入ってきてしまい(あのー、栄養学をなんだか悪いことのように言うの止めてくれません?)、箸のために肉類は小さく切るから、調理の工夫が必要だし、肉と野菜と一緒に調理したりすると火加減や味付けタイミングが難しくて味付けで悩むのだ・・・・と。はっきり申し上げるとそんな説明には全然実感がわきません。

スープやチキンレッグのような西洋料理を作ったなら、ナイフとフォークやスプーンで取り分けて、お好みで塩コショウして食べれば美味しいですよ。クレイジーソルトや粉チーズ、チリソースなどで美味しくいただけます。
肉と野菜を細かく切って一緒に調理する和風料理の時なら、スーパーの調味料コーナーに行けば、様々なキットがCookDoや永谷園やキッコーマンやエスビーなどから販売されて、選ぶのが楽しみです。キャベツのなんとか味とか、大根のなんとか味とか。豊富な調味料があるので、見ているだけでもこのような豊かな日本に生まれたことの幸せを実感します。袋に書いてある通りに作れば簡単で美味しいですよ。味付けで悩んでいるって日本人の10人に1人もいない珍しい人じゃないですか?

こういう市販の調味料を否定する目的でしょうか、最近の土井先生は、他人の味付けに舌が慣らされるのは自分の人生を生きてないことだと唱えているそうです。すると江戸時代から平成20年代まで多くの男性は自分の人生を生きてなかったのですね。

総合すると、土井先生の主張は私ら共働き主婦を救っているように見えて実際には、「貧乏人の共稼ぎ家庭は家で味噌汁だけを作れ、金のある家だけ外食で職人の作ったおかずを食べてもいいよ。」と呪縛してるように見えるので、心身によろしくないのではと思うのです。

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