和食研究で有名な熊倉功夫先生。先生が書いたNHKテキスト「こころを読む 和食という文化」をやっと入手。忙しかったので入手そびれて、やっと読みました。実に興味深い本です。熊倉先生も忙しい中でお書きになっている様子です。 読みどころ満載なので、数回に分けて内容をご紹介します。
今回は、あの有名な東北大学の都築毅先生の研究成果から出た「1975年ごろの食事が健康に良い」説の致命的欠陥を、熊倉先生が指摘したことを紹介します。両者ともアプローチ手法は別ですが「和食は良い」という点では一致されている方ですが、実は都築先生ご本人が、ご自身の研究結果を人間にあてはまることについて慎重な立場を表明されてもいるので、都築先生もこれを聞いたらむしろ安堵されるのかもしれません。
熊倉先生は同書の166頁以降で、都築先生の研究手法を説明しました。1週間分の献立をいちどに作り、これを全て混ぜて粉砕し、粉食にして、ラットに与えたことを。そして熊倉先生はなんと3頁にもわたって、攪拌して粉食にする前にはどんな料理だったのかを一覧表として載せています。例えば、ラットに与えられた「1975年の日本人の食事」の欄には、伝統的メニューに混じってサンドイッチ・コンソメスープ・ベーコンエッグ・オムレツ・クリームシチュー・フルーツヨーグルトなどの洋風のメニューがたくさん含まれることが示されました。
あの~~~私ですが~~~この3ヶ月間にコンソメスープもベーコンエッグもオムレツも全く食べてないので、この「1975年のメニュー」は令和の私の食事よりも洋風で大変驚きました。熊倉先生はこの研究について「和食の中でも一九七五年ごろの和食が日本人の健康を守る上で、すばらしい食文化であったことを、科学的に証明した画期的研究でした。」と述べて和食というのは洋食と中華料理がふんだんに混ざっている料理であることを認めながら直後に、実はこの研究成果をそのまま受け止めてはいけないとも指摘しました。熊倉先生は文化論がご専門なので、この一覧表をみて「和食だ」と言い切った以上、サンドイッチもベーコンエッグもオムレツも和食であると認めたことになります。
さて、上記の文章の後、熊倉先生は同じ頁で大変有名な栄養学者の豊川裕之先生の言葉を引きました。「人間は個体差が実験動物とは比較にならぬほど大きいので、実験結果を適用して説明するのに難しさがある」と。そして、熊倉先生はこうも指摘しました。実は都築先生の研究もご本人自身が非常に慎重な姿勢であること、この研究成果を極端に評価することはフードファディズムに陥りかねない、と。だからこの研究などについて「冷静に食と健康の関係を見ていく必要がありましょう。」と熊倉先生は締めくくっています。
そうです、全くその通りで、ラットやマウスの研究は、単一の成分についての効果を調べて人間に外挿することは可能でも、「食事メニュー」という何十種類もの物質の複合体をぐちゃぐちゃ混ぜて喰わせた結果を人間に外挿してよいのかということについては、疑問がつねに残るのです。
ラットやマウスに人間の「食事メニュー」を与えた時の結果を人間にあてはめていけない理由は他にもあります。
(1)実はラットやマウスは人間よりも食が植物性に偏っていること。
(2)人間には健康に役立つ成分が入っているのにネズミ類には毒になる食品があります。一例を挙げればネギ・タマネギがそうです。そういう食品が混ざっている研究は信用できません。
(3)一週間分の食事を全部一気に攪拌して粉砕・粉にして与えるのと、毎日それぞれの料理を皿や椀にとって少しずつ食べるのでは、血糖値の上昇パターンなどの生理反応が全く異なること。例えば同じおこめでさえも、炊いて食べるのと粉にして食べるのでは、粉で食べる方が血糖値が上がりやすい事実は有名です。だから、都築先生の研究は、人間の食事を反映した餌のように見えて、実際には、人間の食品と全く性質が異なる餌を喰わせているのです。
だからこそ、豊川先生の説明を引いて、熊倉先生は「都築先生の研究を極端に持ち上げるのはフードファディズムだよ」と言っているのです。そして、都築先生ご自身も、非常に慎重に、ご自身の研究成果を本当に人間に当てはめていいのかどうかをお話されていますので、読者の皆さんも、ちまたの「1975年の和食が体に良い」説はフードファディズムだから警戒してくださいね。
また、サンドイッチ・コンソメスープ・ベーコンエッグ・オムレツ・クリームシチュー・フルーツヨーグルトなどを食べても和食だと熊倉先生が認めたことは絶対に記憶してくださいね。
さーて、結局、なにが和食で何が洋食なのか、さっぱり分かりませんよね。世間の「和食が良い」という言葉が何を指してるのか、人によって全然ちがうんですから。これじゃ和食が良い悪いと議論しても、ボタンの掛け違いしか生じませんね。雑誌や新聞も、和食特集を組むときは、最初に「当社では和食とはこれこれだと考えます。」ってはっきり定義してから書いて欲しいものです。
今回は、あの有名な東北大学の都築毅先生の研究成果から出た「1975年ごろの食事が健康に良い」説の致命的欠陥を、熊倉先生が指摘したことを紹介します。両者ともアプローチ手法は別ですが「和食は良い」という点では一致されている方ですが、実は都築先生ご本人が、ご自身の研究結果を人間にあてはまることについて慎重な立場を表明されてもいるので、都築先生もこれを聞いたらむしろ安堵されるのかもしれません。
熊倉先生は同書の166頁以降で、都築先生の研究手法を説明しました。1週間分の献立をいちどに作り、これを全て混ぜて粉砕し、粉食にして、ラットに与えたことを。そして熊倉先生はなんと3頁にもわたって、攪拌して粉食にする前にはどんな料理だったのかを一覧表として載せています。例えば、ラットに与えられた「1975年の日本人の食事」の欄には、伝統的メニューに混じってサンドイッチ・コンソメスープ・ベーコンエッグ・オムレツ・クリームシチュー・フルーツヨーグルトなどの洋風のメニューがたくさん含まれることが示されました。
あの~~~私ですが~~~この3ヶ月間にコンソメスープもベーコンエッグもオムレツも全く食べてないので、この「1975年のメニュー」は令和の私の食事よりも洋風で大変驚きました。熊倉先生はこの研究について「和食の中でも一九七五年ごろの和食が日本人の健康を守る上で、すばらしい食文化であったことを、科学的に証明した画期的研究でした。」と述べて和食というのは洋食と中華料理がふんだんに混ざっている料理であることを認めながら直後に、実はこの研究成果をそのまま受け止めてはいけないとも指摘しました。熊倉先生は文化論がご専門なので、この一覧表をみて「和食だ」と言い切った以上、サンドイッチもベーコンエッグもオムレツも和食であると認めたことになります。
さて、上記の文章の後、熊倉先生は同じ頁で大変有名な栄養学者の豊川裕之先生の言葉を引きました。「人間は個体差が実験動物とは比較にならぬほど大きいので、実験結果を適用して説明するのに難しさがある」と。そして、熊倉先生はこうも指摘しました。実は都築先生の研究もご本人自身が非常に慎重な姿勢であること、この研究成果を極端に評価することはフードファディズムに陥りかねない、と。だからこの研究などについて「冷静に食と健康の関係を見ていく必要がありましょう。」と熊倉先生は締めくくっています。
そうです、全くその通りで、ラットやマウスの研究は、単一の成分についての効果を調べて人間に外挿することは可能でも、「食事メニュー」という何十種類もの物質の複合体をぐちゃぐちゃ混ぜて喰わせた結果を人間に外挿してよいのかということについては、疑問がつねに残るのです。
ラットやマウスに人間の「食事メニュー」を与えた時の結果を人間にあてはめていけない理由は他にもあります。
(1)実はラットやマウスは人間よりも食が植物性に偏っていること。
(2)人間には健康に役立つ成分が入っているのにネズミ類には毒になる食品があります。一例を挙げればネギ・タマネギがそうです。そういう食品が混ざっている研究は信用できません。
(3)一週間分の食事を全部一気に攪拌して粉砕・粉にして与えるのと、毎日それぞれの料理を皿や椀にとって少しずつ食べるのでは、血糖値の上昇パターンなどの生理反応が全く異なること。例えば同じおこめでさえも、炊いて食べるのと粉にして食べるのでは、粉で食べる方が血糖値が上がりやすい事実は有名です。だから、都築先生の研究は、人間の食事を反映した餌のように見えて、実際には、人間の食品と全く性質が異なる餌を喰わせているのです。
だからこそ、豊川先生の説明を引いて、熊倉先生は「都築先生の研究を極端に持ち上げるのはフードファディズムだよ」と言っているのです。そして、都築先生ご自身も、非常に慎重に、ご自身の研究成果を本当に人間に当てはめていいのかどうかをお話されていますので、読者の皆さんも、ちまたの「1975年の和食が体に良い」説はフードファディズムだから警戒してくださいね。
また、サンドイッチ・コンソメスープ・ベーコンエッグ・オムレツ・クリームシチュー・フルーツヨーグルトなどを食べても和食だと熊倉先生が認めたことは絶対に記憶してくださいね。
さーて、結局、なにが和食で何が洋食なのか、さっぱり分かりませんよね。世間の「和食が良い」という言葉が何を指してるのか、人によって全然ちがうんですから。これじゃ和食が良い悪いと議論しても、ボタンの掛け違いしか生じませんね。雑誌や新聞も、和食特集を組むときは、最初に「当社では和食とはこれこれだと考えます。」ってはっきり定義してから書いて欲しいものです。