本心から言います。坂本さん、ありがとう。
感激で涙が止まらなかった。長年あなたのあの言葉を願っていました。
・・・・坂本龍一さんが、ある保険会社の広告記事に登場しました。一読して感銘を受けました。過去を振り返りながら、これからの生き方を考えた内容だったからです。
坂本さんは、デビュー当時から少々ナルシストな発言で逆に人気を集め、作品も画期的で才気ほとばしる新時代を切り開くものばかりでした。でも、いくら素晴らしい才能があるとは言え「時々イリーガル(違法)でいい」という腰を抜かす発言もありました。ドリンク剤のCMに提供した曲「エナジーフロー」が大ヒットした時、テレビに出演して「こんな曲がなんで流行るのかな、僕はもっといい曲を沢山作っているのに。」とお話しして、ファンを悲しませたこともありました。
坂本さんは90年代末からはかなり極端な玄米食運動にはまって、熱心に他人に勧めてました。坂本さんの応援したのはビーガン運動とはまた異なるもので、「厳格な玄米食をすれば、ガンにならず、小柄だが心身健康になり、宇宙と一体化する。魚や牛乳や果物などを食べると病気になり、邪悪な心になる。」という不思議なものでした。この考えにはまった人は、栄養学指導者を激しく糾弾していたのです。「魚と肉を食べるな!みかんやトマトが体に良いなんてウソだ!」と。そのため、このムーブメントが大流行した2005~2014年頃は、栄養士や普及員などが断罪されるできごとが生じました。
坂本さんがあまりに素晴らしい曲を作るだけに、そんな神がかりな話を信じるとは「なんとも残念な方」という印象は拭えませんでした。
その坂本さんが、ガンにかかって、しかも治療法は一切外部に話さないと発表したのが2014年のこと。私はこのニュースを聞いて、坂本さん、どうか代替医療にはまりすぎて西洋医学を否定しないでくださいと願いました。
その後、坂本さんは無事復帰し、ある保険会社のインタビュー広告記事に出るようになったのです。そこでご自身が語られたのは、疑似科学にはまった自身を振り返り、どんな生活をしてもガンになることがあると気がつき、極端な考え方にとらわれてはいけないと悟ったことでした。
ニューヨークで放射線治療を受けていた間、痛みでスイカ以外のどを通らない時期もあって「スイカに生かされたようなものです」と語り、治療後オムライスを食べて「普通のことができるありがたさをしみじみと実感しました」と語っていました。坂本さんが信じていた玄米食運動では、スイカはあまり食べてはいけない食品、卵やトマトは食べちゃいけない食品に分類されてるので、ああ、坂本さんは本当に脱出できたんだなあ、と、ほろりとしました。
最後に坂本さんはこう締めくくってました。音楽を作ったり聴いたりすることはなんて幸せなことかと。「それは普通のご飯が食べられるしあわせに似ている。一膳の白いごはんのようなもの。それぐらいありふれたものであることが、しあわせなんだ。」
坂本さんが信じていた運動では「白いご飯は毒だから玄米を食べろ」と指導するので、坂本さんの声は運動否定そのもののです。当たり前の幸せ、あまりにも近くにありすぎて気がつかない幸せ、だけど「どこか遠く」に、「とても気高い理想があるに違いない」と信じて、そして時々、うっかり私たちは道を踏み外してしまうのかもしれません。それは、坂本龍一さんが出演した映画「戦場のメリークリスマス」と重なることに気がつきました。
(以下、映画と原作「影の獄にて」のネタバレが含まれます)。舞台は、第二次世界大戦中の、ジャワ島の日本軍捕虜収容所。坂本さんが演じたヨノイ大尉は、形式的規律を重視し過ぎて、自分の信じる正しさを他人に押しつける役柄です。ヨノイは審美眼が高い故に、収容されたセリアズ少佐の美しさに心を引かれます。でも、セリアズには、美しい心と声と恵まれない容姿の弟がいて、弟は学校でいじめに遭っていた。弟に負い目を感じたセリアズは、後悔の念から1人で信念を貫くぶれない生き方を目指し、それが、第三者の目には反抗的にも映るのでした。
クライマックスシーンでは、ヨノイが重病の捕虜を無理に歩かせよと命じ、捕虜の集団と日本兵は一触即発の危機に陥ります。そこへ唐突にセリアズが前に出て、ヨノイに頬ずりします。セリアズは自分の命を投げ出して、集団同士の対決の構造を個人対個人の構図に切り替えたのです。その頬ずりはフランス軍隊の激励の仕草にそっくりだった、と原作に書いてあります。しかし文化の違いでセリアズは処刑されてしまいます。ヨノイはセリアズの真意を悟り、戦後に特赦になった後、「この世になによりも大切にしていた」と、セリアズの遺髪を神社に納めて、その御霊に祈るのです・・・・。
戦場のヨノイの姿は、ある種の玄米食運動が普通の人の食事を否定する姿、に重なって見えます。坂本さんが、今は純白の心で言葉を紡いでいることを尊く思い、しみじみ感慨にふけりました。これからも坂本さんを応援します。
・・・メリークリスマス、坂本龍一さん、メリークリスマス。
感激で涙が止まらなかった。長年あなたのあの言葉を願っていました。
・・・・坂本龍一さんが、ある保険会社の広告記事に登場しました。一読して感銘を受けました。過去を振り返りながら、これからの生き方を考えた内容だったからです。
坂本さんは、デビュー当時から少々ナルシストな発言で逆に人気を集め、作品も画期的で才気ほとばしる新時代を切り開くものばかりでした。でも、いくら素晴らしい才能があるとは言え「時々イリーガル(違法)でいい」という腰を抜かす発言もありました。ドリンク剤のCMに提供した曲「エナジーフロー」が大ヒットした時、テレビに出演して「こんな曲がなんで流行るのかな、僕はもっといい曲を沢山作っているのに。」とお話しして、ファンを悲しませたこともありました。
坂本さんは90年代末からはかなり極端な玄米食運動にはまって、熱心に他人に勧めてました。坂本さんの応援したのはビーガン運動とはまた異なるもので、「厳格な玄米食をすれば、ガンにならず、小柄だが心身健康になり、宇宙と一体化する。魚や牛乳や果物などを食べると病気になり、邪悪な心になる。」という不思議なものでした。この考えにはまった人は、栄養学指導者を激しく糾弾していたのです。「魚と肉を食べるな!みかんやトマトが体に良いなんてウソだ!」と。そのため、このムーブメントが大流行した2005~2014年頃は、栄養士や普及員などが断罪されるできごとが生じました。
坂本さんがあまりに素晴らしい曲を作るだけに、そんな神がかりな話を信じるとは「なんとも残念な方」という印象は拭えませんでした。
その坂本さんが、ガンにかかって、しかも治療法は一切外部に話さないと発表したのが2014年のこと。私はこのニュースを聞いて、坂本さん、どうか代替医療にはまりすぎて西洋医学を否定しないでくださいと願いました。
その後、坂本さんは無事復帰し、ある保険会社のインタビュー広告記事に出るようになったのです。そこでご自身が語られたのは、疑似科学にはまった自身を振り返り、どんな生活をしてもガンになることがあると気がつき、極端な考え方にとらわれてはいけないと悟ったことでした。
ニューヨークで放射線治療を受けていた間、痛みでスイカ以外のどを通らない時期もあって「スイカに生かされたようなものです」と語り、治療後オムライスを食べて「普通のことができるありがたさをしみじみと実感しました」と語っていました。坂本さんが信じていた玄米食運動では、スイカはあまり食べてはいけない食品、卵やトマトは食べちゃいけない食品に分類されてるので、ああ、坂本さんは本当に脱出できたんだなあ、と、ほろりとしました。
最後に坂本さんはこう締めくくってました。音楽を作ったり聴いたりすることはなんて幸せなことかと。「それは普通のご飯が食べられるしあわせに似ている。一膳の白いごはんのようなもの。それぐらいありふれたものであることが、しあわせなんだ。」
坂本さんが信じていた運動では「白いご飯は毒だから玄米を食べろ」と指導するので、坂本さんの声は運動否定そのもののです。当たり前の幸せ、あまりにも近くにありすぎて気がつかない幸せ、だけど「どこか遠く」に、「とても気高い理想があるに違いない」と信じて、そして時々、うっかり私たちは道を踏み外してしまうのかもしれません。それは、坂本龍一さんが出演した映画「戦場のメリークリスマス」と重なることに気がつきました。
(以下、映画と原作「影の獄にて」のネタバレが含まれます)。舞台は、第二次世界大戦中の、ジャワ島の日本軍捕虜収容所。坂本さんが演じたヨノイ大尉は、形式的規律を重視し過ぎて、自分の信じる正しさを他人に押しつける役柄です。ヨノイは審美眼が高い故に、収容されたセリアズ少佐の美しさに心を引かれます。でも、セリアズには、美しい心と声と恵まれない容姿の弟がいて、弟は学校でいじめに遭っていた。弟に負い目を感じたセリアズは、後悔の念から1人で信念を貫くぶれない生き方を目指し、それが、第三者の目には反抗的にも映るのでした。
クライマックスシーンでは、ヨノイが重病の捕虜を無理に歩かせよと命じ、捕虜の集団と日本兵は一触即発の危機に陥ります。そこへ唐突にセリアズが前に出て、ヨノイに頬ずりします。セリアズは自分の命を投げ出して、集団同士の対決の構造を個人対個人の構図に切り替えたのです。その頬ずりはフランス軍隊の激励の仕草にそっくりだった、と原作に書いてあります。しかし文化の違いでセリアズは処刑されてしまいます。ヨノイはセリアズの真意を悟り、戦後に特赦になった後、「この世になによりも大切にしていた」と、セリアズの遺髪を神社に納めて、その御霊に祈るのです・・・・。
戦場のヨノイの姿は、ある種の玄米食運動が普通の人の食事を否定する姿、に重なって見えます。坂本さんが、今は純白の心で言葉を紡いでいることを尊く思い、しみじみ感慨にふけりました。これからも坂本さんを応援します。
・・・メリークリスマス、坂本龍一さん、メリークリスマス。