覗 き 医 者
【主な登場人物】
親旦那 番頭 丁稚 嬢(いと)はん 医者のような者ほか
【事の成り行き】
え~、よぉこそのお運びでございます。本日のところはこの、いろいろとご趣向がおありやそぉで「当節世間で珍しぃ噺をやったらどぉや」といぅことやそぉで、まぁとりあえずお顔を見ていただいて、ボチボチおしゃべりをさしていただこかいな、と思とりますねやが。
この頃はこの、いろいろ考えてみますと世の中、何見てもあっち向いてもこっち向いても味気のなりました。
といぅのがまぁ、こないだ縁日、夜店へ行きましたんやけども、これもまぁ我々昔、子どもの時分のこと思うと情緒がなくなりましたなぁ。
もぉどこ歩いても食べもん屋さんばっかりですわ。
右見てもタコ焼き屋、左見てもタコ焼き屋、ほんでまたこっち見ると飴屋、またこっち首振ると飴屋さん、洋食屋さん、お好み焼き屋さん。
もぉ食べるもんばっかりですけども、まぁ昔はせやおまへんでしたなぁ。
といぅのがもぉ、食べもん屋さんがあるかと思うと、またちょっとした見せもん屋さんがあったりしましてな、ものを見たりして楽しむ。
こっちにこの古本屋さんが店並べてるかと思うと、またこっちでは口上付けて物を売っ
てる。そぉいぅのが昔はぎょ~さんありましたがなぁ。
で、またこっちで三味線弾ぃて歌うとたはるかと思うと、こっちでバヨリン弾ぃて演歌の本を売って歩くてな、そぉいぅのがちょいちょいありましたがなぁ。
まぁ最近は見とぉても見られまへんけども、ちょっと前、まだ今からそぉでんなぁ、年月にすりゃ何年ぐらいになりまっしゃろか?
ん~ん、まだ十年ぐらい前にはちょっとした見せもんがおましたなぁ。
ちょっとした広っぱやとかね、空き地、そぉいぅとこ見付けて、はじめはこの、何を言ぅてるや分からん。
そのうちにぐるりにぎ~っしり黒山のよぉに人集めて、で、こぉただものをしゃべって聞かすだけでも難しぃのにね、知らん間に財布の紐ほどいて、その縁日見物してる人に物を買わそ。こぉいぅ商売も昔はありまして、これも難しぃ商売やと思いますがなぁ。
我々のほぉの商売は楽ですわ、もぉしゃべりっ切りでっさかいね。
別にこれ、しゃべってあと何ぞ出して「買ぉてくれ」いぅ商売やおまへんさかいに。
けどまぁ、そぉいぅ人はもぉ難しぃ、しゃべるだけしゃべっといて、あとでこの物を、知らん間に買わそちゅうんでっさかい、こら難しぃやろと思いますけども。
まぁその代わり、あぁいぅ人はこの、手ぇにね、蛇かなんかそぉいぅ道具、長もんをきっと持ってますけどね。
【香具師(やし)・的屋(てきや)『蛇の薬売り』】
●えぇか、おい、よぉ見ぃよ。ボ~ッとしてたらあかんで、えぇか。
わしが今ここへぶら下げて持って出たこれ、何や分かるか……? 蛇や。
ただの蛇と違うで、これがホンマのハブっちゅう毒蛇や。
●えぇか、こらなぁ、今沖縄ちゅうとこは我が国になったけども、一時ちょっと向こぉへ行くのが難しかった時期があるなぁ、その時期にはこれ日本にはおらなんだんや、な。
これなぁ、バッと噛まれてみぃ、十歩と歩かんうちに死ぬっちゅう毒蛇やで。
●えぇか、俺がなんでもないよぉに持ってるさかい、おまはんらなんでもないよぉに思うやろけど、これがホンマの毒蛇、ハブっちゅうやっちゃ。
ドタマ見てみぃ、三角なってるやろ、な、これが毒があるっちゅう証拠や、えぇか。
●しかし今日は、どれだけの客がここへ集まってるか知らんけど、おまはんら皆えぇ日に来合わしたぞ。
今日はこの毒蛇にわしが自ら噛ましてみせるっちゅうねん。
えぇか、一年、三百六十五日こんなこと俺がしてると思たらあかんで。
めったにおら、こんなことせぇへんで。
●えぇか、バタバタすな、初もん食たら七十五日長生きするっちゅうけど、まぁこんなん見て帰れ。
こぉいぅ珍しぃことはまぁ見て帰ったほぉがえぇ、七十五日どころやないなぁ、十年は長生きすること請け合ぉたる。
●えぇか、この……、あのなぁ「お前らの蛇は毒が無いやろ」てなこと言ぅやつあったら、いっぺん犬でも猫でも何でもえぇわ、そこらへん這ぉとるやつ連れて来い。
目の前で噛まして見せたるわ、十歩と歩かんうちに死ななんだらお目にかからんちゅうやっちゃ。
●えぇか、何を……? その、めったに噛まさんことを、今日はお前なんで噛ますねん?
世話やきやなぁ、ホンマに。
今日はな、ちょっと俺の心嬉しぃ日ぃや、せやさかいこぉいぅことをして見せたんねん。
●何を……? 何がお前、そんな心嬉しぃ?
世話やきが多いなぁホンマに、言ぅたろか、今日の俺の心嬉しぃのはな、うちのお母んの間男の十三回忌に当たんねん、えぇか。
●よぉ見とれよ、めったにこんなことせぇへんで……、あッ、その前に言ぅとくわ。
えぇか「お前らの蛇はホンマは毒が抜いたぁるさかい、お前大口叩いて安心してその蛇に噛ませるねやろ」憎たらしぃこと言ぅやつあったらいかんさかいな、いっぺん毒が有るか無いか、どっから毒が出て来るか、よぉ見せたるわ。
●えぇか、よぉ見ぃよ……、いよッと、それッ、見えるかおい?
上にこぉ牙が二本出とるなぁ、この根元から毒が出んねん。
えぇか、分かったなぁ、よぉ見ぃよ。後ろ、見えなんだらこっち回れこっち、こっちのほぉが空いとる。
●おい、ちょっとそこらこっち回ったれこっち。
お互いに見たいのは一緒や、な、前のほぉ座ったり前のほぉ、後ろ見えへんねん、前座ったれ。
そぉそぉそぉ、皆まんべんなしに見たいねん。
●えぇか、おいおいおい、そこの子ども、チョロチョロすな、そこへじっと座っとれじっと……、座わんのはえぇわ、その前ちょっと閉めとけお前、可愛らしぃのが覗いてるわ、キビショみたいなん、ホンマにもぉ。
●えぇか、よぉ見てくれよ、めったに俺かってこんなことせぇへんねんで。
ホンマにさっきも言ぅたけども、初もん食たら七十五日長生きするっちゅうけども、ホンマにおまはんらえぇ日に来合わしたで、めったにおら、こんなことせぇへんねんでホンマ。
●命がけやで、こっち。
おまはんら何でもないよぉに見とるやろけど……、えぇか、よぉ見ぃよ……、こらッ子ども、チョロチョロすな。あのな、おっさんこれからバ~ッと噛ますねん、血がビャ~ッと出るわ、おとなしぃ見とれ、えぇか。
●ほで、後ろ、今も言ぅたよぉにこっち回ったれこっち、こっちが空いとんねん。
お前らかたまるな、こっち寄れこっち……、そぉじゃ、えぇか、よぉ見ぃよ……、めったにこんなことせんぞ。
●えぇか……、何? どっち噛ますかハッキリせぇ? 何かしとんねん、よ
し、こぉなったら、何ぞ仕掛けがあるよぉに思たらいかんさかいな、おまは
んらの注文どぉりのほぉかぶらしたろ。
●右がえぇのんかい、左がえぇのんかい? 何を……? どっちでもかめへん、早よかぶらせ? 人のことや思て薄情な、何をぬかしとんねん。
えぇか、さぁ……、今までゴチャゴチャ言ぅてたけど、今度はホンイキやで、えぇか。
●ガッ……、と赤い血が出たら、お目通りご喝采っちゅうやっちゃ。
えぇか、見てみぃ「今から結構な血が吸える」生き生きした目ぇしとるやろ、えぇか、よぉ見ぃよ……
●んッ……、と、そこのお婆ん、そんな泣きそぉな顔するなおい「可哀想にあの兄ぃ、蛇に噛まれて死んでしまいよる」てな、そんな哀れな顔してくれな。
もぉ気ぃ抜けて力がシュ~ッと抜けるわ。
なぁお婆ん、心配してくれんでもえぇわい。
●いやいや、わいかて一つしかない命やがな、これに噛まれて死ぬと分かっててみぃ、めったに噛ませへんがな。
な、わしがこの毒蛇に安心して噛ませるっちゅうのはやな、ここにこぉいぅ薬があるさかいや。
この薬はなぁ……
ちゅうて、蛇下へ置きよりまんねん。さぁ「もぉ噛ますか、もぉ噛ますか」思て見てても、な~かなか噛ましまへんな。
で、終いにこの、朝から晩まで立っててもね、蛇噛まさんと薬買わされてしもたりしまっさかいね。
ほらまぁ結構なお商売があったもんで、またこの、今ぐるりにぎっしり黒山のよぉに人が集まってる。
今ここでちょっと気ぃ抜いたり、おかしなこと言ぅたら、せっかく黒山のよぉに集まった客が逃げてしまう、散ってしまう。
そぉいぅ時には、ちゃ~んとこの足止めの法といぃまして、客の足をピタッ
と釘付けにする魔法みたいな方法がおまして。
●お~いッ皆、言ぅとくでおい、こんだけ人が集まっとんねん、銘々で懐中もん気ぃ付けてや、えぇか。こん中にスリが三人ほどおんねん、いやいや、おら長年こぉいぅ仕事して商売してんねんさかいな、わいがグ~ッと睨んだ目には狂いない。
●あいつと、あいつと、あいつがそぉやちゅうことは、おら分かってるけどやで、今言ぅたってもえぇ、言ぅたってもえぇけどな、あとのアタンが恐ろしぃ、仕返しが。せやから俺は黙って辛抱して言わんと見てるけど、あいつとあいつやっちゅうことは、ちゃ~んと分かったぁんねん。
●えぇか、あとで盗られてから俺んとこへ、どぉやこぉや言ぅて来たかて、おらぁ責任よぉ持たんで。
えぇな、こん中にスリが三人おる……。
こぉ言ぅて逃げたやつがそれや。
ほな、みんな動かれしまへんわなぁ「もぉボチボチあっちぃ行こかいなぁ」思てても、今動いたらスリや言われるさかいね。
ほとぼりの冷めるまで、用もないのにボ~ッと立ってんならん。
昔はこぉいぅ面白い見世物があっちこっちにこぉ、縁日、夜店なんかに店を並べてましてな、これをまた焼き芋をかぶったりなんかしながら見物してたもんで。
ほんでまた、こっちのほぉへ行きますと、あの「覗きからくり」てな、そぉいぅもんがありましたなぁ。
小ぃ~ちゃいこの、レンズをはめた台がありましてな、でこの、幾つかレンズが並んでまして、銘々その中をこぉ覗いて見ると、貼り絵をしたね、いろんなこの風景描写が描いてありまして。ほんでそれを覗いてると、上のほぉから歌を振りかけてくれましてな。
「♪あぁ~えッ、三府の一の東京でぇ~、波に漂うますらおのぉ~、儚き恋にさ迷ぉてぇ~、父は陸軍中将で、片岡子爵の長女にてぇ~、その名、片岡浪子嬢ぉ~ッ、♪ほいぃ~ッ」(コット~ン)ちゅうてね。
いろいろとこの、次から次から風景を変えて見せる。
そのあいだに、今のよぉな歌をこぉ頭の上から振りかけてもらう。
見てて「あぁえぇなぁ、あぁ面白いなぁ、おぉ可哀想に」そぉいぅことを言ぃながら皆、見物をしてたも
んで。
今やりました「覗きからくり」といぅのは、これはいわゆる明治の終わりぐらいから昭和の初めぐらいに流行った「覗きからくり」やそぉですけども、落語のほぉにはまだこれのもぉ一つ前の、もぉひと時代前「古い覗きからくり」ちゅうのが残ってまして、そらどんなんかといぃますと。
「♪ほぉ~や、ただいまお目にかけますからくりは、♪ほぉ~いッ、桂川
は連理の柵(しがらみ)とはしつらえまして、♪ほぉ~や、長右衛門は遠州浜
松古掛け集めの戻り道、お半は春めく道の伊勢参り、出会うところは石部の
出羽屋、奥の座敷では、恋のいろはを書き並べ、先へ回れば京都ぉじゃ~い、
京都ぉじゃ~い♪」
「♪ほぉ~ぃや、これよりあっさり気を変えて、芸州は安芸の宮島さん、♪よいよ~い、宮島さんは廊下の長さが百八間、裏は七(なな)浦、七えびす、どんどこ舟やら遊山舟、黄金(こがね)の灯篭数知れず、夜(よぉ)に入りますれば、火を上げます~、夜に入りますれば、火を上げます~♪」
てなこと言ぅて、でこの安芸の宮島さんの灯篭をズ~ッとしつらえてある
その遠景がありまして、で、その灯篭に一斉に火をとぼして、安芸の宮島さ
んの灯篭の夜景を見物に見せたもんやそぉで。
でまた、見物のほぉはそれを覗いてると、今までの絵ぇがいっぺんにガラッと変わって一斉に灯篭に火が灯る「おッ、綺麗ぇなぁ」その「綺麗ぇなぁ」といぅ見てる人の声に誘われて、またそれを「そないに綺麗のやったら俺もいっぺん覗こか」
これがこのからくり屋の計略でしてな「夜に入りますれば、火を上げます」それで一斉に火をとぼすといぅのがからくり屋の計略でして、まだこぉいぅ「覗きからくり」があった、古い時分のお噺ですけども。
* * * * *
ここにございましたのが、船場のさるご大家。
で、ここのお嬢さんがお年頃におなりになったんでボチボチよそへ縁付けないかん。
縁談が決まったところぉで「ま、よそへ縁付いたからにはそぉそぉ嫁の身で勝手なことができんやろ。今のあいだにそぉや、処々方々見物さしておいてやろぉ」
いわゆる親心ですなぁ。まぁそのお嬢さんを連れて、ほでからまぁ二人だけでは心もとないといぅので、ちょっと気の利ぃた番頭を一人、それから小者使いに丁稚を一人、計四人の人間でブラ~ブラ方々を見物して回りましてな。
で、とある田舎へ来て宿屋へ泊まったんですが、昔からよぉ言ぃますなぁ「水が変わると体の調子が変わる」「水変わりには気を付けないかん」てなことを言ぃますけども、そのお嬢さん水が変わったんかどぉしたんか、その宿屋へ泊まった晩に俄かの腹(はら)痛たで、ま、いわゆる腹痛(ふくつぅ)ですなぁ、えろぉ苦しみだした。
そこでその、旦那がえらい気にして。
■番頭どん、番頭どん
◆へッ
■いや「へッ」やないがな、あのな、ほれ、うちの嬢(いと)があのとぉりえろぉ苦しんでござる。
何じゃ分からん。
おかしなことになったらどもならんでな、すまんがちょっと医者を手配してくれんか、医者を。
◆ホンに、嬢はんえらいお苦しみのよぉでやんなぁ、こらいきまへんなぁ、へぇ、ほんならあの帳場へちょっと行て医者の手配をしてまいりますで、しばらくお待ちを
■早よぉ行とくれ
◆へッ。
* * * * *
◆お帳場の
▼へぇへぇ、何でございます?
◆いやあのな、お嬢(じょ~)さんが俄かの腹痛たじゃ、えらいすまんがちょっと医者を呼んできてくれんか?
▼腹痛た? はぁ、こらえらいことになりましたなぁ。
◆えらいことやから、医者を呼んできてくれっちゅんじゃ
▼さぁ、それでえらいことになった
「医者を呼んできてくれ」っちゅうのに「えらいことになった」ちゅのは?
▼わけを言わな分かりまへんがなぁ、ご承知のとぉりこのへん割と草深いとこでなぁ、医者といぅのはおりまへんのじゃ
◆こぉら難儀ななぁ、あのとぉりほれ、ここまで唸り声が聞こえてるじゃろ。
よっぽどお苦しみじゃ、な、何とかならんのか?
▼さぁ、さよぉおっしゃられましてもこれ、何とかするにもせんにもその、医者が……、あッ、医者はおりませんけどな「医者の、よぉな者」ならこのへんにおりますがなぁ
◆妙なこと言ぅなぁ、何やその「医者の、よぉな者」ちゅな?
▼へぇ、こらわけをお話せな分かりまへんねけどもな、実はこの村のもんでしてな、若い時分にな「大阪行て一旗上げる」ちゅて、ビャ~ッと飛び出して、でまぁ、覗きからくりをやったり何じゃかんじゃしてな、ほでちょっと医者の書生に住み込んだこともあるちゅうの聞ぃて。
ほんでまぁちょっとした腹痛た、できもの、そんなんならな、村重宝して使ことりますので。
▼その、医者ではおまへんねけど、医者のよぉな者ならおりまんねやが、それでもよかったら
◆医者のよぉな者でも何でもえぇ、それで嬢はんのお腹痛たが治るんなら、何でもえぇ、ちょっとも早よぉそれ呼んできとくれ。
「へッ、少々お待ちを……」それから手配をいたしまして、しばらくするちゅうと、その医者の書生に住み込んでた、元覗きからくりをやってたといぅ得体の知れんよぉなお医者はんが。
それでもやっぱりこの、病家を見舞うときは医者の格好をせないかんといぅのでな、頭をお医者さんのよぉなクワイ頭に結(い)ぃましてな、で、手に薬(くすり)箱と言ぃますか、薬(やく)箱と言ぃますか、小さな引き出しの付いた箱を提げまして、袖をこんなとこへちょっと手を入れてな……
★はいはい、はいはいはいはい、あのぉ~、ご病人は?
◆あぁ先生、お越しで
★あぁあぁ、ご病人は?
◆あの、奥におりますんで
★はぁはぁさよぉか、で、どんな模様じゃ? ん? 唸ってござる? あぁ大丈夫だいじょうぶ、いやいやわしが来たからには、少々の病なら請合う。あぁ大丈夫じゃ。
★あのな、それからこれは固く申しておきますがな、よろしぃかな、わたしがご病人の部屋へ入ると、あとはどなたも入ってはいけませんぞ。よろしぃか、わたしとその患者さんと二人っきりにしといてもらわんと、思うよぉな治療がでけませんでな。
★よろしぃな、わたしが入ったあとは誰も来たらいかん、二人きりにしといてくだされや、はい、ごめん……
ピシャッと、襖を閉めてしもた。
■番頭どん
◆へッ
■「へッ」やないがな、あの得体の知れんわけの分からんのと嬢と二人きりにしといて、もしもおかしなことがあったらどもなりゃせんで、ちょっと様子見てきとぉくれ
◆そら親旦さんのご心配もごもっともでやす、へッ、ほなちょっと行て参じます……
◆なんちゅう医者やろなぁホンマ
▲あッ、番頭はんお越しやす
◆なんじゃ定吉、お前来てたんか?
▲へぇ、わたいもぉ早よぉから来て、ここへいてまんねん。
あの医者、妙なこと言ぃましたやろ「嬢はんと二人きりにしといてくれ」いぅてな、おかしなことになったらどもならんと思たんで、わたいここでズッと見てまんねん。
◆これッ、子どもがこんなとこ覗くもんやあれへん、早よあっち行きなはれ
▲そんなこと言ぃなはんな、わて早よからここで番取ってまんねや
◆そな、芝居見てるよぉなこと言ぃなはんな。ちょっとほな、静かにしてなはれや。
言ぃながら、襖の隙間からそぉ~ッと中を覗いて見ますと。
★さぁさ、心配要らん。あぁあぁすぐ治して進ぜる。
あのな、わたしの言ぅとぉりしてくだされや、よろしぃかな。
あのな、まずそのオイドをクルッとまくって、四つん這いになってくだされ。
★いやいや、恥ずかしぃことありゃせん、恥ずかしぃことありゃせん、誰も見てへんわしだけじゃ。
わしに見せんことには病気が分からん、さぁさ、恥ずかしぃことありゃせん、オイドまくって、そぉそぉ、オイドまくって……
▲うわぁ~ッ、嬢はんのオイド、白ぉて綺麗ぇ~ッ!
◆喧しぃ、大きな声出さんと黙って見てなはれ
▲そぉかて、嬢はんのオイド、あない真っ白けでツルツル、スベスベして……
▲あぁ、あぁ、あぁ~ッ! 嬢はん、四つん這いになってまっせ。
オイド、クルッとまくって。
あんな嬢はん、わて見たことおまへんで。
おッ、おッ、オイド、オイド、こっち向けはりましたで、オイド。
▲あッ、なんじゃ白いオイドのとこへ黒いポッチリがちょっと見えてまっせ。
あの黒いポッチリちゅうのん何んでっしゃろ?
◆喧しぃ言わんと黙って見てなはれ。
番頭が息を殺して見てますと、その先生、薬箱を手元へ引き寄せましてな、薬を出すのかと思うとせやおまへん。
何と、取り出しましたのが遠眼鏡。
遠眼鏡といぃますと、あの双眼鏡で二ぁつあるやつやなしに、長いこの一本のやつで、伸ばすとスルスル~ッとこぉ三十センチぐらいに伸びよぉかといぅ。
その遠眼鏡を出しましてな、スルスルッと伸ばして、四つん這いになってるお嬢さんのオイドの穴からニュ~ッと中へ入れよって……、中をジ~ッと覗いてたかと思うと、一調子張り上げよって。
★「♪ほぉ~や、ただいま嬢の腹中眺むれば、♪ほぉ~い、肝の臓やら心の臓、♪ほぉ~い、あばらの骨が十三枚……」
さぁ、これ聞ぃたお嬢さん、気ぃが移ったとみえましてな。
●♪もぉしもぉし、先生さま
★♪ほぉ~い
●♪水の変わりか、風邪の障りか知らねども
★♪ほぉ~い●♪お腹がシクシク痛みます
★♪ほぉ~い、そこであげますお薬は、エキキトォ、レキキトォ、チュ~コン、ゲコンを巡らして、そなたに飲ませば即座に、本復ぅ~、ほんぷくぅ~。
ズボ~ッと抜きますとな、お嬢さん気持ち良ぉなったとみえて……
●ブブッ、ブゥ~ッ!
★これッ、医者に屁ぇかます人がおますかいな。
【さげ】
●♪良ぉなりますれば、屁をあげます~。
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