日活ロマンポルノの新たな歴史を開く5人の監督たち。(左から)塩田明彦、白石和彌、園子温、中田秀夫、行定勲
日活が1988年に製作をやめた「日活ロマンポルノ」の新作映画を撮るプロジェクトが本格的に始動した。同社は14日、第一線で活躍している塩田明彦(54)、白石和彌(41)、園子温(その・しおん、54)、中田秀夫(54)、行定勲(47)の監督5人がオリジナル脚本の新作にそれぞれ挑むことを発表した。5人はこれまでロマンポルノを撮ったことがなく、どんな作品になるか興味津々だ。
ロマンポルノが生誕45周年を迎える今年、日活は「再び裸を題材にした人間の本質的なドラマ=『裸の物語』を作ることに挑戦したい」と意気込んでいる。同社がロマンポルノの旧作の上映やソフトの販売、新作の製作を行う「リブートプロジェクト」を発表したのは、昨年5月1日。ついにその内容が明らかになった。
抜擢された監督5人は、「歴史あるロマンポルノを撮ってみたい」「ロマンポルノで活躍した先輩監督や俳優らを尊敬し、大胆な演技をものともしない女優を起用して撮りたい」という意欲を持っている。新作のタイトルは未定だが、各監督が手がけるテーマは決まっている。
塩田監督は「バトル」。ロマンポルノの名手・神代(くましろ)辰巳監督(1927~95年)を尊敬しつつ、奔放な女と翻弄される男の駆け引きを軽妙に描く。白石監督は「社会派」。初長編作「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」に続く作品で、田中登監督(1937~2006年)の「牝猫たちの夜」(72年)にオマージュをささげ、現代社会を生きる女たちを描く。最年少の白石監督は、中村幻児監督(69)や若松孝二監督(1936~2012年)の下で成人映画の製作に多く携わってきた。
「映画 みんな! エスパーだよ!」などでお色気描写に定評のある園監督は「アート」。極彩色の幻想的な世界で少女の妄想と現実が入り乱れる過激で美しい問題作となりそうだ。「リング」などホラーの巨匠・中田監督は「レズビアン」。師匠の小沼勝監督(78)に敬意を込め、レズビアンの世界に挑む。行定監督は「ロマンス」。「世界の中心で、愛をさけぶ」など純愛ラブストーリーを手がけているが、「愛の本質=性愛」に挑み、切なく官能的な大人の愛を描くという。
5人は、旧ロマンポルノと同様の製作条件で撮影する。「10分に1回程度、絡みのシーンを作る」「上映時間は70~80分前後」のほか、各作品が同じ製作費で撮影期間は1週間程度となる。
女優はオーディションで決める。新作は今年末から現在リニューアル中の新宿武蔵野館(東京・新宿)で順次公開予定。傑作が誕生しそうな予感がする。(伊藤徳裕)