Four Season Colors

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読書のよもやま(2024.01.15)

2024-01-15 | 雑文
「文明の生態史観[増補新版]」梅棹忠夫
(中公文庫)

著者が1955年に学術探検隊として、西南
アジアを旅したことを始まりとして、文明文
化の発生発展論をまとめたもの。

インドを中心にアジアと呼ばれる地域の文明
を整理し、いわゆる西と東の単純比較ではな
い視点を展開する。

そして、文明や文化の発生と発展を、地域と
経過で分類し、現代に至る世界の文明文化の
成り立ちを広く論じる。

これだけ目と耳で世界が近くなって、世界を
知識で知ったようなつもりになっていても、
その実態は単に言葉だけであることが多い。

さて、それではその世界がどういうもので、
どういう経過で、どうして発生し、どうして
今に至るのか。

恐らくそれは、今という地点では表層だけで
すら追うには対象はもはや長すぎるし、広く
なり過ぎている。

すれば、とある時間的区切りで特徴的に、そ
の時は過去をどう捉えて、どう総括していた
かを知るという簡易手法ができたりする。

それには、内容が間違っていたとか合ってい
たというような答え合わせではなく、その当
時の状況の正しい理解が必要となる。

その地点を理解するとともに、その地点から
見た過去も知ることができ、後は、それをい
くつか繰り返して繋げてみる。

現代の百年は、間違いなく歴史上のどの百年
よりも変化し、物理的な文明の発展を遂げて
いる。

たかだか70年の前のことが、もはや遠く、
尚且つ総括するには整理することが多すぎて
存在する。

長く自分たちは何者だと悩んできた日本人は、
この70年でそれを解き明かすでもなく、た
だ、時間的な忘却に安堵している。

戦後にいわゆる知識人たちが解き明かそうと
した日本の、世界の今を、当時はどのように
捉えようとしていたのか。

現代的な単純な正誤ではなく、どうしてそう
捉えたのかが見える本書。

70年という短い年数ですら、書籍を歴史書
みたいにしてしまう現代は、時代についてい
くだけでも大変ではある。

世界の最先端のようなフリをして、今だけを
見続ける。

それでも生きてはいけるけれど、やはりその
大変な70年を振り返らないではいられない
から、こうして出版され、読むのである。