お知らせ
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深夜の啓介(21期生・IGF所属プロレスラー)の登場だが・・・今日やって来た海斗に時刻を確認すると、たぶん午前2時あたりだとのこと。
啓介はできたての新しい名刺を差し出した。
俺の不安だが・・・啓介がIGFに採用されたのが4月だ。そしてその段階で橋本大地のIGF移籍がメデァでは取沙汰されていた。あまりにも安易にIGFに入社できたことに違和感があった。そこに移籍話だ。同じ世代としてIGFには中国籍のワンビンがいる。ワンビンは近い将来、IGFの中国進出の切り札となるはず・・・絶対に切れないカードだ。そして橋本大地も切れない。ゆくゆくは父親の宿敵だった小川直哉の引退マッチの相手を務めるという壮大な青写真がすでにできているはずだ。ゆえに大地も切れない。そこで啓介なのだ。
最近の啓介に対するコメント・・・練習場に来ない・・・練習嫌い・・・不穏な記事が試合前の一週間で対戦相手の大地からもIGFの先輩レスラーからも頻繁に出てきた。このコメントの含むもの・・・今回の第一試合がショボかったら啓介はIGFを追い出されるのではないか。猪木は常々第一試合が大切だとコメント。事実、大みそかには第一試合に乱入、選手の頬をピンタ。この時も啓介、そして今回の試合もまた内容次第ではIGFの絶対神の猪木が降臨。試合のショボさと練習嫌いとの評価も後押し、啓介を切ることで「IGFの大会において第一試合は特別である」と高らかに謳う気でいるんじゃないか。そのためにプロレスでは無名だった啓介をIGFに入団させた・・・これが俺の想像したアングルだった。
ところが啓介、覚悟を秘めて果敢に攻めた。どう考えても勝ってはいけない試合で勝ちにいった。相手に一切攻めさせず、相手の技を受けず、そして一方的に勝った。いい試合だった。しかし観客は戸惑っていた。試合後はすぐに電気が落とされた・・・勝利者がスポットがあたるなかを控室に帰るのがIGFではふつう、これまた異常だった。そして絶対神は降臨しなかった。
「クビにならんかったか」 「はあ、なんとか・・・」 「そりゃよかった、俺の心配はその一点だよ。もう第二の龍神はゴメンだ。でも、最後の決め技は何だった?」 「腕を決めたんですよ」 「そういや両足で腕をはさんでいたようだが・・・」
夕方になり中京スポーツがコンビニで発売・・・「大地、まさかの149秒負けで海外武者修行消滅」、これだ。この写真で分かる・・・大地の右腕、かなりの角度で曲がっている。
「腕を折る覚悟でいきましたから」 「・・・そうか」 「この試合で勝ったことでクビになるかもしれない、そう思いもしたんですがそれでも勝ちたい。大地には絶対に負けたくない、そう思ってました」 「すぐにレフェリーが止めたよな」 「ええ、危険だと分かったんでしょう」 「ともあれよかった・・・俺の杞憂やったかな。でも、最後に全選手がリングに集って猪木の挨拶で締めるよな」 「ええ」 「あそこに大地はいなかった」 「ええ・・・」
「次回に繋げる最後を大切にするのが商売人の猪木だ。そこに大地が出てこない」 「・・・控室で悔しがっていたみたいです。でも最後には、俺たちでIGFを盛り上げていこうと言ったら、納得してくれたみたいで『先輩、今日はありがとうございました』って言ってくれました」 「橋本大地っていい奴やん。・・・まあ、今日の試合のメインで小川が軍団を作るって息巻いてたけど、この試合で流れができた・・・大地の小川軍入りは確実だ」 「・・・それもありますね」 「絶対さ、小川軍団で親父の宿敵だった小川からガチガチにしごかれ独り立ち、そして最後は小川の引退試合の相手で大団円だ」 「先生、そんなことまで考えてるんですか」
試験間近の中3たちは演習に入った。ほとんどは教えた。あとは調練のみ、反復にかける最後の時間が趨勢を決する。完成度は徐々に高まりつつある。それと反比例するように、俺への質問がめっきり減った・・・俺はヒマだ。
この時期になると中3は外に出る・・・まあ、去年はそんなことはなかったが今年は2年ぶりに再開だ。
いい面もあれば悪い面もある。外に出る理由・・・騒がしい空間で勉強したくない、あるいは講師からぐちゃぐちゃ言われたくない。気持ち分からないでもない・・・しかし、自分だけの空間に浸ることで一人よがりの勉強に陥ることも多い。
ちなみに中3で隣の席を誰にも座らせないようにするタイプ・・・このタイプはなぜか落ちる傾向がある。あげく本を積み上げては俺のパソコンの側からの視線が届かないようにするタイプ、・・・かなり落ちる。
塾で勉強する。しかし、どのように勉強するかで大きく変わる。
俺は手前の彩花の返却された実力試験3回の答案を子細に見ている。一次関数でのミスが気になる。しかし5教科で469点だ。無視してもいいが・・・やはり気になる。2つの座標から式を出さずに傾きだけからアプローチしたはず・・・要注意だ。冬の課題として頭にインプットする。
真ん中にいるのは樹生也だ。あまりにも寝くさる。何度か大典(21期生・愛知大学法学部3年)に頭をはたかれていたが・・・寝る。今度寝たら水をかけてやろうと思っていたら大典が俺の気配に気づいたのか、席をここへ移動させた。このあたりにマージャンの上達がうかがえる。
勇太(三重大学工学部機械工院1年)の数学の授業。
そして中学生の部屋・・・郁也がいないのが気になるね。
試験が終わっている人也、理科が山形で大ブレーキ。中1の植物分野と化学分野・・・ここは中1の中間と期末試験からやり直しだ。同様に彩花、数学の相似を進めるように指示をする。
昨夜の飲み会は駅前の『魚民』・・・ここの最大のネックは狭いことだが、台風の夜に開けるような店は個人店では無理、あとは『昭和食堂』くらいなもんだ。
マッツン(7期生・1階美容室経営)が俺に言った。「でも先生とアキラの親父さんは長い付き合いですね」 「まあね」と俺。「君らが知らん塾頭の恥部なら俺はなんでも知ってるで・・・言おか?」と刀称ことアキラの親父。「つまらん話はええよ」と俺。
「俺たちはさ、俺や君らの塾の先生はさ、・・・ぼうふらのように生きてたな、大学時代にさ。たとえばさ、ミナミかキタかどっかの道を歩いててさ、ゆっくりとどっかの自動車学校のバスがやって来る。誰からともなく手を挙げるねん。じゃあバスも止まってくれる。ドアが開いて誰も何も言わずにバスに乗り込む。どこへ行くか分からへん。でさ、どっかの街で降りてさ、あるいは降ろされてさ、そっから皆で考えるやな・・・なっとして下宿まで帰ろうかって・・・」
・・・そうだった、いつだって俺たちはぼうふらみたいに生きていた。
深夜に啓介(21期生・IGF所属プロレスラー)に起こされたこともあり、朝起きるのは久しぶりに苦痛。アキラの親父が泊まったホテル『AU』でモーニングを食べる予定だったが、約束の時間に30分遅刻して到着。『AU』の1階、夜は飲み屋になる店だ。
コーヒーお代わり自由で500円・・・なかなかである。
アキラの親父とは鈴鹿回生で抗がん剤治療に取り組んでいる名張の酔っ払いの話になった。避けにいやしい酔っ払いは上越の『SAKE祭』での復活を目指して頑張っている。最も過酷な治療が先週から始まっている。今まではさしたる副作用もなかった酔っ払いもさすがにきつそうなブログを書いている。
「 SAKE 祭に酔っ払いが来れるようなら、俺は翌日の大垣マラソンには不参加、上越に行くよ。そして快気祝いや」
ぼうふらの快気祝いである。
昨日は啓介(21期生・IGF所属プロレスラー)の晴れ姿を見にいった・・・しかし、プロレスを永年見てきた俺からすれば昨日の試合で啓介は勝てない・・・勝ってはいけない試合だったはず。なにせ相手は故橋本真也の息子の大地だ。将来のタマに飢渇しているプロレス界にしてみれば大切に育てないといけない逸材。ここは大人の判断・・・自分の強さを観客に見せつけ、それでいて負ける。・・・かつての藤原喜明のような役割になる、そんな気分で見にいった。
久しぶりだ、4年ほど前に辻本(4期生・JMU)に誘われてメッセで行われた試合を見て以来か・・・その試合はどこの団体だったかすら忘れている。
試合は啓介がハナッカら仕掛けた。ひたすらに攻め続け、啓介の蹴りが見事に伸びて大地の側頭部を襲う。アリ-ナからはどよめきが起こる。啓介は大地の技を一切受けようとせずに、グラウンド中央で啓介が上になってこう着・・・2分29秒でレフェリーが大きく手を振って試合を止める。レフェリーストップで啓介は勝ち名乗りを挙げた。さわつく場内、奇妙な戸惑いが広がる。最後のグラウンドではどこを決めたのかは2階からは分からないが、レフェリーが慌てて止めたように見えた。
やはり予期していたように不穏な試合となった・・・掟破りか。
台風の警報・・・愛知県の情報が携帯からひっきりなしに届く。そんな雨のなかを駐車場に歩く。越知(4期生・旭洋)は地下鉄で帰るとのことで体育館を出たところで別れた。かなり濡れながら辻本の車に乗り込んだが、なかなか動かない。それでも啓介の勝利にみんな気をよくしてゆったりと構えていた。
久居に帰りアキラの親父の提案、とりあえずは飲もうかとなった。アキラの親父は俺の大学時代のダチ、左側の臼井(4期生。臼井自動車)とは旧知の仲だ。そんな長いれいめいウオッチングのなかでアキラの親父が驚嘆した新しいキャラクターは辻本。
見事に今の斜陽のプロレス界を分かりやすく解説してくれる(真ん中)。その辻本とタイマン張れるレベルが右の諒(21期生・三重大学工学部物理工4年)。左はマッツン(7期生・1階美容室経営)である。
今年40歳になる4期生たち、そのなかで辻本は勉強では今いち。農林に進学後、ボクシング部に入ったのがきっかけとなったのか、プロレスや格闘技が大好きになっていく。昔は俺はプロレス界のことを勉強を教える以上に丁寧に教えていた。しかし今、俺は辻本から現状のプロレス世界についてご教授願っている。BGMは・・・ボブ・ディランの「時代は変わる」か・・・
俺はみなで乾杯した後、出るのを期待せずに啓介に電話・・・「ご苦労様です」・・・出たがな! 「啓介、初勝利おめでとう」 「ありがとうございます」 「今から塾の先輩たちと乾杯してやるからな。聞いとけよ!」 皆で再びブラスを重ねる。「啓介、初勝利乾杯! おめでとう!」
塾に帰ると奥さんとれい(18期生・某高校情報科講師)がいてくれた。台風のなか、まだ海斗と亮が残っていたからだ。少しばかり試合の話をしてスラムに沈んだ・・・飲みすぎたかもしれない。
俺を起こす気配・・・起き上がると啓介が笑っている。夢か・・・まわりを見渡すと海斗が勉強している。夢じゃない・・・「先生、今日はありがとうございました」 いつもながら礼儀正しい啓介がそこにいる。