先日骨密度検査を受けたが、この時、きっちりと身長も測ってくれて、なんと20歳の頃よりも1インチ(約3センチ)伸びている。 そんなことがあるのだろうかと訝る私に医師は、「姿勢にいつも注意していますか?」と聞く。 姿勢は、大学時代に出会ったダンスをする日本人の友人が、始終気をつけているというのを真似して、なるたけまっすぐ背筋を伸ばしたり、猫背にならないように極力気をつけているが、それはどなたでもなさることだろう。 固めのベッドを好むことがよかったのだろうか? はて。
医師は、「あなたは、アルコール飲料もコーヒーも、タバコも嗜まないんでしたね? 水分補給も十分なようですし。」と言い、「きっとなにか今までの人生で健康でいられるような生活をなさってきたのでしょう」と理由付けする。 ???でいっぱいになった頭を傾げながら、オフィスへ戻ろうと車に戻った。 私は確かに日本人女性の平均身長よりすこし高い。 そして子供達の背丈について考えてみると、末娘が私と同身長で、長女は168cmはあり、息子たちは6フィート(182.88cm)かそれ以上で、夫は6フィート2インチ(187.96cm)である。
確かに水はよく飲むが、運動はトレイルを歩き回るくらいでヨガも高酸素運動もしてはいない。 その時ふと思い出したのは、数年前に読んだ医療ジャーナリストの記事である。 それは椎間板は、朝夕で伸び縮みする、という話で、下出真法(しもで まさのり)という整形外科医の話が書かれていた。その医師によると;
背骨は、骨盤の上に、椎骨という骨が24個も積み重なってできているものである。 小さな骨が連なっているから、全体が滑らかに曲がったりねじれたりでき、その椎骨と椎骨の間に挟まっているのが、椎間板だ。 これは弾力性に 富む組織で、背骨にかかる重さを支えるクッションの役割を果たすために髄核があり、そこが水分を蓄えることによって膨らみクッションとなる。 その髄核の水分の増減によって、人の身長は伸び縮みすると言う。 つまり、計算すれば、椎間板の厚みが1ミリ程変化すれば、全体で2センチ以上変わることになるそうだ。 その椎間板のわずかな厚みの変化が、身長を大幅に伸び縮みさせるらしい。
だから、朝と晩では、身長差が生じると言うことだ。 無重力宇宙に滞在して地球に帰還すると飛行士たちの身長は、4、5センチも増えているそうだが、私は最近宇宙から帰還した覚えはないし、宇宙をさまよう夢を見たことがあるだけだ。 地球上で朝晩で変わる身長差は、1、2センチなのに3センチ伸びていたならば、よもや夢か現かのどこかで私はひっそりと、幽体離脱でもしていたのだろうか。
とにかく椎間板には血流がなく、髄核が伸び縮みすることによって水分が循環させられているという話である。 そのため椎間板の健康を維持するには、その循環を妨げないために、背中への圧力を適度に変化させ、同じ姿勢を続けず、こまめに体を動かすることだそうである。 椎間板に適度に圧力をかけたり、休ませたりすることだ。 そうしないと髄核による水分の循環が悪くなり、酸素と栄養を供給できなくなり、椎間板の老化が進んでしまう。 だからといって、横になってばかりでもいけない。 適宜に歩いたり、こまめに動くことが大切だと下出真法医師は言う。
そうした知恵は、専門家から聞く機会がなかったが、その記事は役立った。 たまたま検査したのが朝だったので、帰宅後我が家の「あの」壁の前に立った。 子供達や孫達、子供の友人達、はたまた床を板に貼ってくれた作業員の身長まで記してある壁である。そこで測ってみたら、やはり朝のままであった。 そうか、それでは医師が言ったように、これまでの習慣だろうか。 水をよく飲むことや、固めのベッドを好むこと(ベッドが固めだと朝は早く起きられるし、固いが故にじっと同じ姿勢ではいられない)、走るのはしんどいから、歩くことを運動としようと決めて、知らず知らずのうちに背骨の健康につながっていた、ということに調子よく決めておこう。 これに熱心な断捨離活動が加われば、適宜に体を動かすことに繋がり、そうなると家も片付き、椎間板だけは健康のまま、思い残すことなく舟出できる、という一石二鳥となる筈だ。 あくまでも筈の話。
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