ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

新しい郷土愛

2022-04-22 | アメリカ事情

foodsafetynews.com

 

 

 

南カリフォルニアに住んでいた時も、中部カリフォルニアに住む今も、地域は農業が盛んな地帯である。 北部ロサンジェルス郡と中部平原の南端カーン郡のちょうど境目にあるグレイプヴァインと呼ばれるテハチャピ山脈の南東端、テホン峠を頂点とする山地帯から、北は、特に野菜や果実やナッツ類そして葡萄栽培が盛んである。 ワイン用と食用にカーン郡南から葡萄栽培は始まる。 

砂漠のような広大な土地に葡萄園が、果樹園が、広がっている。 カリフォルニア州をハイウェイやフリーウェイで縦断すると、肥えた土壌や温暖な気候に恵まれているこの州がいかに豊穣かを実感する。 そしてどの農地においても畝や果樹の剪定状態などが美しく整然としているのが一眼でわかる。 それは多くが季節農作業をする国境の南からの移民労働者たちのおかげである。 勤める州立大学農学部の畑や果樹園や葡萄園も、耕作、植え付け、手入れ、収穫、そして剪定、その合間の畑への水入れなど全ては、こうした移民農作業者がほぼ100%担っている。 

朝はまだほの暗いうちから、畑で果樹園で熱心に働く人々を目にするたびに、その勤勉さに私は、ただただ敬服してしまう。 おかげでカリフォルニアが農業王国で、農産物は、合衆国だけでなく世界中へ出荷されている。 オリーブ、野菜・果実、穀物、酪農製品、ついでに綿花も、思わぬ海外のグローサリーストアなどでお目にかかる。 横浜のコスコで、カーン郡の親しくしている葡萄農家の葡萄が売られているのを目にしたし、あるいはデンマークやスエーデンのグローサリーストアの棚に、サンメイドのレーズンが積まれているのを見て、思わず破顔した。 1976年に大学生として来米して以来、西部三州に住んだが、ここカリフォルニア州での暮らしが一番長いので、石の上にも三年とやらで、外国でカリフォルニア州の産物を見かけると、嬉しくなってくるのは、いわば郷土愛である。 

夫が農業関連産業に長く携わっていることの影響かもしれないが、特に大都市ではない部分のカリフォルニアに住んできて、農業に対して一種の畏敬の念を持っている私は、よって農業機械に興味がある。 YouTubeで、そうしたヴィデオを選んで見ては圧倒されている私は孫息子たちと同じである。 牛馬の蹄を洗浄し、きれいに整えたり、痛がっている部分を治したりするための機器、羊を一頭ずつ壁のようなものに挟んで体重を測り、ついでに必要な予防接種を施したりする機器、ジャガイモや甜菜を収穫はもちろんそれを一箇所に集積してから一挙にまとめてトレイラートラックに積載する機械、林檎をドローンをいくつか使って収穫する機械、見ていて飽くことがない。 

ピスタシオ・ナッツを収穫するため使われる2台の機械車は、左右から木のそばで、機械の腕で木を5秒ほど揺さぶり、落ちてくる実を集めるもう片方の機械は、特に大好きである。 カリフォルニアピスタシオナッツは、収穫から加工品となるまでおよそ24時間である。 実際に大学の農園やちょっと数マイル行けばピスタシオ農園があるから、収穫期にはよくその光景を目にする。 そりゃあもう5歳ではないから、ほんの10分ほどの間しか見とれるだけなのだが。 

そのような機械を見ると、人間の智能が、満遍なく使われ、実際に人の役に立っていることがわかる。 少しでも目新しい機械を見つけると、実はすでに知っているだろう夫に「教えてあげられる」。 「なにを観ているのかと思ったら、」と笑われるが、東京生まれ横浜育ちの私にはとても楽しく、おのぼりさんの反対のおさがりさんで何が悪い?という勢い。 

農業が主産業である当地方、隣の郡では、1968年から開かれている、毎年二月の第二火曜日からWorld Ag Expo(世界農業万国博、とでも訳そうか)がある。 毎年世界中から10万人は軽く集客している。 いつか私も行ってみたいが、ニューヨーク州民の大半が、生涯で一度も自由の女神像をリバティアイランド(島)まで見に行ったことがないのと同じように、私もその範疇にいる。 その博覧会(商品展示会)では毎年新機器・機械が紹介され、農家にとっては垂涎の的だと簡単に想像がつく。 農園もなく、農家でもない私でも、心惹かれる農業機械の多いこと。 

 

Photo:Charles Hiller

 

下の写真は、ヨーロッパの穀倉地帯として有名なウクライナで、多分に大型農業機械を取り入れての農業を展開して来たようだ。 この世界農業万博にも足を運んだことのあるウクライナ農家・農業従事者もあることだろう。 小麦、大麦、雑穀、とうもろこし、ひまわりの種と油、などなど世界の食糧事情にも深く関係してきたウクライナは、いまや状況が一転し、国民に生死をかけた災難が降り掛かり、それ故に世界的な食糧危機を起こしかねない、いや既に起きつつあるらしい。 

 

fwi.co.uk

平和だった、つい近年のウクライナの機械化されている企業農場。

 

ウクライナの農地はすべて州に属しており、大企業はその80%以上を賃貸しているそうだ。 これは、国の大きさを考えると、小さな農場が比較的少ないことを意味し、約42,000 ほどで、平均的な農場(テナント農民)は100haを耕作し、あとは500,000haまで広がるいくつかの巨大な企業によって抑えられているらしい。 ほとんどの企業農場と個人農家は、穀物が主流の輪作を行っていたらしかった。 らしかった、と言わねばならぬことが胸を締め付ける。

楽しく鑑賞する農業機械・機器のトピックのはずがついウクライナ状況に飛んでしまった。 このウクライナが渦中にある艱難辛苦(かんなんしんく)を世界中の農業従事者や農業機械愛好者は、そしてそれ以外の人々は、一刻も早くそれが取り除かれることを切に願い、祈っている。 遠いウクライナ、まだ一度も足を運んだことのないウクライナ、それでも世界の人々はそこに新しい郷土愛を持ち始めたかのように、再び小麦やひまわりの豊穣がウクライナの地に帰ってくることを強く願っている。

Wallhere.com

 

 

 

 

 


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