『四つの終止符』(by西村京太郎)、読了。
初出は1964年。著者初の長編書き下ろし。
地元の小さな図書館で、1987年発行の選集を見つけた。
以前読んだ『天使の傷痕』が共に収録されている。
本作もまた、現在の世に出す事は不可能だろう。
いわゆる「不適切な表現」問題が大きすぎるのだ。
本作最大のテーマは、聴覚障害者への誤解。
親しい人さえ、「聞こえないなら話しかけない方がいい」と避けてしまうという問題点。
一方、聾学校での発声訓練について紙幅を割かれ、聴覚障害者は「ことば」の概念を得がたいという実状も描かれる。
ここまででも先駆的と評価したいところを、本作は更に上を行く。
差別されている自分は理解されない、と命を絶った聴覚障害者キャラに対し、健常者のキャラは、彼を救おうとしていたのに被害者ぶるな、と非難する。その後、芯から信じ切れていなかったと自戒もする。お互いに本当の意味で対等に接しようという問題提起。
このテーマ一つでも重いところを、介護問題、公害問題、学歴差別、男女差別、マスコミ偏向報道まで切り込む。
そして当然、本格ミステリとして面白い。
入手困難ですが、読む価値あります。
それでは。また次回。