好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

「蒼紅の冒険者」第38話「生死の二択」

2010-04-13 | ゲームブック二次創作
嫌な夢を見た。
どんな夢だったかは、目覚めたら忘れてしまった。
というのも、奇妙な台詞でエッジに起こされたからだ。

「……無闇に動くな、ニック……!」

まぶたを上げた次の瞬間に、ぼくはその台詞の意味を知った。
ぼくはベッドの上に、革ひもで厳重にくくりつけられていた。
その上、さらに、ぐるぐると部屋の壁を巡っている綱がある。
片端は、ぼくの左手首にゆるく巻きつけられている。
そしてもう片端には、朝日に照らされた銀色の刃が結ばれている。
ちょうど、ぼくの首の真上で。ギロチンのように。

部屋の戸口には、宿の主人と、その主人に剣をつきつけるエッジとが居た。

「不覚を取ってしまった。どうやらこの主人、鬼に魂を奪われている拷問狂だったようなのだ」
「くけけけけけけけけけ! コロス! コロス! テキハコロス!」

……どー考えても、脅したり諭したり出来る相手じゃない。

ぼくは深呼吸を繰り返し、改めて壁のカラクリを見つめた。
この左手首の綱。ほどくべきか、引っぱるべきか。

「普通の人だったら、きっと焦って……手繰り寄せようとするよね」

だから、その逆をやればいいと考えたぼくは、綱をほどいた。



エッジは宿の主人を剣の柄で気絶させてから、ベッドから下りたぼくに歩み寄った。

「よくも切り抜けたな。生死の二択を」
「そんな大げさな話じゃないよ。
 相手が仮にも拷問狂なら、まさか即死させるような事もないだろ」
「コレを見ても、まだその台詞を言えるか?」

エッジは、今は天井近くにぶら下がっているギロチンの綱を切った。
ドズン!という音を立て、ベッドの綿が真っ二つに切り裂かれた。
ぼくは腰を抜かした。
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