『気前のいい家』
新潮文庫、番号28、『ボッコちゃん』収録。
ある種、今まで紹介してきたショートショートの集大成のような作品。
強盗というモチーフは『悲しむべきこと』を思わせるし、被害者と加害者の奇妙な関係については『猫と鼠』を連想するし、終盤に関しては『デラックスな金庫』に通じる。
「変な博士の変な発明品」シリーズでもある。
そんでもって、出てくる人の名前は王道の「エヌ氏」である。
ただ、初読時は勢いで納得させられるものの、冷静に何度も読み返すと、そこかはとなく違和感がある。
この話に出てくる防犯装置。
家に新しく据えるなら、そもそも新築するのと同時に、セットでこしらえなければ厳しくないか。
それに、家の中から金銀を一切持ち出せないというのは、一見安心のようで、不便にも感じる。
例えば引っ越しする際とか面倒そうである。
もっと言えば、災害などで家から脱出する時にも持ち出せない。非常時にこそ使える財産なのに。
何より、家主自身が引っかかったらどうなるかという疑問。
『デラックスな金庫』の場合は警備が駆けつけてくれるが、この話だとどうだろう。
解除方法があるなら、それを敵に知られたら結局無意味になるし。
もしかしたら、この話の先に『デラックスな金庫』がつながるのかもしれない、という空想で今回は〆。
それでは。また次回。