「君もなかなか侮れないな。一見ただの獣人と思ったが、本質は違うようだ」
白髪のエルフことダーガは、俺を見定めるように見つめてから言った。
「もう分かっていると思うが、私が今しがた話した内容は正確ではない。
信用できない者には、真実を打ち明けるわけにいかんのでな。
ガレーキープは、この近くへ着陸などしない。
着陸すれば当然ながら危険が増すわけだからな。
あれに乗り込む方法は、二つある。
ガレーキープは、食料や奴隷を地上から調達している。
そのために、森のあちこちに罠が仕掛けられている。
それらの罠にかかって引き上げられるのが、一つ目の手段。
もう一つの手段は、サグラフの兵士訓練所へ行き、乗員として雇われる事だ」
そこまで語った後、ダーガはもう一度、俺の目を覗き込んだ。
「君の目的は、そうか、ザラダン本人に会う事だな。
ザラダンの潜む部屋には、あるマークが記されているという。
直接の答えを私は知らないが、この詩編なら知っている。
《それは、火と氷の争いを止めるもの/火と氷の間に立つもの/
火と氷を分かつもの/赤でなく、白でなく、青きもの》――と」
ダーガに言われた文言を、頭の中で復唱する。
情報には感謝するが、少しばかり疑問が残った。
ここまで知っているのなら、なぜ堂々と戦わない?
このエルフには、何か別の、本当の目的があるようにも思えた。
「理由など無い。私には、ザラダンと戦う資格も無い。
ダーガ・ウィールズタングという防人は、もう存在しない。
今の私は、一介の旅人、ホワイトリーフに過ぎんよ」
白髪のエルフはそう言うと、手を一振りしてから森の中へと消えていった。