▶今日はフラウエンシュタインまで出かけます。
❤ フランエンシュタイン・バイ・モルン、教区巡礼教会(教会・修道院52) 遠くからはとても高い山に見えました。
▶今日はリンツからの日帰りの旅です。
今日の目的は、リンツからフラウエンシュタイン・バイ・モルン(以下フラウエンシュタイン)に行って
7)巡礼教会にあるグレゴールの「庇護マントの聖母子像」を見ること
でした。
ここもビーゼルバッハ同様に、地図上では位置が確かめられてもバスを降りてからどの位歩くのか見当が付きにくい教会で少々不安でした。今回の旅で一番冒険になるだろうと思っていたのはチェコのアダモフ、二番目がオーストリアのマウアー、そして今日訪ねるフラウエンシュタインが三番目でした。ビーゼルバッハはドイツ国内だし、アウクスブルク駅から直行のバスにさえ乗れたら何とかなるという安心感もあって四番目と位置づけていました。さて実際はどうだったでしょうか。
◆2022年10月11日(火曜日)15516歩
今日は久しぶりにホテルでの朝食です。6時少し前に目覚めたので食堂に下りたのは6時半頃でした。まだ早いかなと思いながら食堂に行くとなんと活気あふれる光景でしょうか。仕事着の男の人たちが10人ほども来ていてどんどんパンがなくなり、みんなすごい勢いでおかわりして食べています。パンやおかずを補充する女性が忙しく立ち働いています。そして私たちが食べ始めようとする頃に男性たちはサーッと出ていったのでした。これから一斉にどこかのお仕事が始まるような感じがしました。もしかしたら地域の人々の朝食を賄うホテルなのかもしれません。
ヨーグルトと炒り卵は見あたりませんでしたが、ゆで卵、ハム、チーズ類、トマト、パプリカに果物と内容も潤沢でした。目が欲張ってオレンジを取ったらこれはまだ堅くて食べにくく、三津夫が取ったマンゴーのような色と形をした果物は美味しい梨でした。
リンツ・ドナウ中央駅を7時57分発の IC に乗ってしばらくしたときのこと。何と昨日のニコニコ車掌さんがまた検札に来て「今まで元気でしたか」と言うのです。朝から気分良く「はい、元気です」とやりとりして元気になりました。約40分でキルヒドルフ・クレムス駅に到着。ここからバス433番の Steyr City Point via Molln 行きで Molln Steyr Marktstraße で下車すればよいようなのですが、ここも運転手さんに聞いて確かめないと不安でした。乗るときに「フラウエンシュタインの教会に行きたいのですが」と言うと、合図するからと言われました。
バスに乗っているときに段々不安になったのは、遠くの小高い丘の上に教会の尖塔が見え隠れしてきたことです。もし、あそこがフラウエンシュタインだとすると結構高い場所にあります。歩いてどれだけ上らなければならないのでしょう。バスが走っている道路自体も少しずつ上り坂にはなってきましたが。
運転手さんに「ここですよ」と言われて下車したバス停は予想していた通りの Molln Steyr Marktstraße でした。9時18分にバスを降りました。バス代は2人往復で11.2ユーロ、乗車時間は28分ほど。ビーゼルバッハに行った時は40分乗って17.6ユーロで高いと思いましたが、順当だったのかもしれません。
さて、どれだけ歩くことになるのかまだ想像は付きませんが、私は長いことこの庇護マントの聖母子像を見たいと願ってきたので何時間かかろうと上らなければ。少し歩くとフラウエンシュタインへの登り口の表示が立っていました。
❤ フランエンシュタインへの標識
上の写真でカメラを構えている三津夫の右側の道に曲がって歩き始めました。数分坂を上ったところで黒い乗用車が来て横に止まりました。運転していた女性が窓を開けて「どちらまで?」と聞きます。「教会まで行きたいのですが」「それならどうぞ乗ってください。私もそちらに帰るところですから」と親切に声をかけてくれたのです。私たちも嬉しくなって乗せていただきました。「助かります」とお礼を言うと、「ここは不便なんですよね。でもとても良いところなんですよ。私はここで生まれて今も住んでいるんです」と言い、しばらく上ったら「教会はこのすぐ上です」と車を止めてくれました。本当に天の助けとはこのことです。フラウエンシュタイン教区巡礼教会(教会・修道院52)はすぐそこに見えていました。
恐る恐る教会の扉を開けようとすると開きません。「あら、鍵が閉まっているのかしら?」とドキドキしてきました。念のためもう一度ゆっくり落ち着いて押したらちゃんと開きました。中に入ると人は誰もいません。教会の中央にはグレゴール特有の眼差しのマドンナが幼子イエスを膝に抱き、天使たちがマントを広げて中にいる信者たちを守っていました。グレゴールの父親であるミヒェル・エーアハルト作「守護マントの聖母像」(『新・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』表紙、127~134頁)はマリア様自身が凜と立ってマントを広げていました。人々を守る強い決意を表しているような姿でしたが、こちらの聖母は座して諦めたような悲しいような雰囲気を漂わせています。マリア様のお顔も作者の思いが反映するのだと思いますが、グレゴールはどんな気持ちでこのマリア様を彫っていたのでしょうか。
❤ フランエンシュタイン、教区巡礼教会「庇護マントの聖母子像」 グレゴール・エーアハルト 1510年頃 (写真:三津夫)
❤ 教会の前に貼ってあった案内。皆さん。どこか「あれ?」と思いませんか?
▶帰りは歩かないとね。
ゆっくり撮影させていただき、回りの表示も読んで帰り支度。幸い帰る前にお手洗いも使えたことですし、空は曇っていましたが心は爽やかでした。坂道を上ってくるエネルギーを使わずに済んだので、下るぐらいは自分たちの足で歩かなければ。でも回りの景色が美しいので疲れを感じませんでした。
※なお、上の写真では大事な聖母子像が裏焼きなんです。うっかりしてしまったのでしょうね。
❤ フラウエンシュタイン、シュタイア川
バス停まで戻ってきたのは11時少し前でしたが、11時44分まで待ってバスに乗車。キルヒドルフ・クレムス駅で20分ほど列車を待って午後1時過ぎにリンツまで戻ることができました。
ホテルの部屋に荷物を置き、町へ出て昼食に良いところはないかと歩くと Tokyo という回転寿司があったので入ってみました。一皿の値段がわからないのでどこまで食べて良いか不安でしたが、2人で合計7皿食べて28.9ユーロでした。味は良かったのでまぁ体験料と思うことにしましょう。その後、昨日は休館していたリンツ城博物館(美術館・博物館㉕)を目指して歩きました。地図ではその辺にあるはずなのにどうも見つからず、最後は裏口の崖下に着いたのでした。結局そこから石段を155段も上がる羽目になってしまい、入館した時にはぐったり。
館内の展示はなかなか面白く、巨大な動物たちと一緒に写真を写したりして楽しみました。最後に後期ゴシックの彫刻がたくさん出てきました。三津夫は何度もカタログで見ていた Passau、Kefermarkt、Altätting などのマイスターと名前が出ていると感激していました。 私には Kefermarkt の作家以外はまだあまりなじみがありませんでしたが、貴重な作品群だったと思います。
❤ リンツ、城博物館(美術館・博物館㉕)こちらが正面でした。
▶明日はザルツブルクへ移動します。
ザルツブルクはドイツとの国境近くに位置し、今までにも何回か出てきた大理石の産地でもあります。明日はリンツからザルツブルクに向かいます。
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