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声に出すということ

2007-05-26 20:43:14 | 朗読あれこれ
映画でも話題になった、小川洋子著「博士の愛した数式」を
遅ればせながら読み始めました。

数式の美を讃えるーーー。

読むきっかけは、作品の中に流れる、
数式に対する博士のそんな愛情に興味をもったのです。
どんな偏屈オヤジが出てくるんだ?
そんなことも思いながら(笑)。

博士が、賞金のかかった数学の問題に応募したとき
「証明が美しくなければ台無しだ」
と云ってのけるのを読んで、
昔、ある予備校の数学の教師が
「漸化式をみると心がやすらぐ」とのたもうたのを
思い出しました。
数学を拒否してきた人には、嫌味か、あるいは
もはや何のことだかワケが分からない別次元の言葉にきこえるでしょう。

漸化式というのは、簡単にいうと
数列の規則をあらわす関数・・・でいいのかな・・・たぶん。
えーっと、その予備校の教師はきっと、
その漸化式を解いてゆくことによって
並んだ数の関係がクリアになり、
そこにえも言われぬ安らぎを感じたのかもしれません。
あくまで想像ですが(^^;


朗読に纏わる話に移しますと、
朗読のヒントになる下りを
「博士が愛した数式」の中に見つけましたーーー。

博士の家に通う家政婦の10歳になる息子。
博士は彼を「どんな数字でも嫌がらず自分の中にかくまってやる、
実に寛大な記号」になぞらえて「ルート」と名付ける。
あの√です。
博士がルートの算数の宿題をみてやっているとき、
博士は問題を音読させるのです。そして云います。
「問題にはリズムがあるからね。音楽と同じだよ。
 口に出してそのリズムに乗っかれば、
 問題の全体を眺めることができるし、
 落とし穴が隠れていそうな怪しい場所の見当も、
 つくようになる」

これだと思った。
音読のなせる技です。
たとえそれが算数や数学の問題でも、声に出すと
問題の促すところやからくりが見えてきたりする。
解き方が分かるのではなく
(最終的には解答しなきゃいけないんだけど)
問いを声に出すことによって
まず文章を自分なりに心に留めておく作業となる、というか。

博士は、ルートが算数の問題を音読するのをきいて
「一篇の詩のように聞こえたよ」
とまで云いました。

素敵です。

朗読をする意義・・・、そんなエラそうなものでないけど
朗読することは
作品を声に出して語ることは
自分がその作品に向かっていることなんだと
作品を知ろうとしていることなんだと思いました。
それは目で読み拾っているときより
能動的なのです、きっと。

当たり前のことかもしれないけど発見でした。


読み始めの「博士の愛した数式」。
期待以上に得るものがありそうです。