老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

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インボイスによる影響についての世論調査を東京新聞と城南信金が共同して行っている。これを見てフト思ったこと

2023-09-16 13:10:08 | 社会問題
9月15日付け東京新聞の一面に、10月から始まる予定のインボイス制度導入を控えて、その影響に関する世論調査を東京新聞が城南信用金庫の協力の下、城南の有する顧客企業に対して行った結果を載せている。

調査結果のポイントは、一つは現在及び今後の景況判断についての中小企業の見方であり、「現在の業況は良い」は前回7月とほぼ同じ26.1%だったが、「中長期の先行きの業況は良い」が前回から5.7%低下の27.2%と、現在の原材料高・エネルギー高そして人手不足感等の懸念が今後の業況に対する懸念を生み出している模様である。

そして二つ目のポイントの、インボイス制度の導入による影響への中小企業の意識であるが、懸念が指摘されている「個人事業主等の免税事業者がインボイスの導入により課税事業者から取引を敬遠されるのではないか」という懸念は、課税事業者の10.8%が「取引をやめるか、少なくとも取引継続に関して検討する予定」と回答しており、更にある識者の「10.8%に留まらず実際にはもっと多いのでは」との指摘もあり、インボイス制度の導入による懸念が実態として存在していることが伺われる調査結果となっているとしている。

今回フト思ったことは、インボイス制度とその影響についてのことが主眼ではない。「東京新聞が城南信用金庫と共同して世論調査を行った」という事実の確認により、フト頭に浮かんだ情景に関することになります。

常々、世論調査は我々市民の非常に大きな権利であり、その権利を実際に活用したいものだと考えております。

そしてもし現在の世論調査に欠陥があるのであれば尚更のこと、指摘される瑕疵を取り除くこと、そして原則上バイアスがほぼかかる恐れがないシステムを作りだし利用していくことが望まれると考えております。

その上で、市民の意識動向の定点観測値を得るシステムともいえる、市民による、市民が本来有する権利である市民の為の世論調査を実施して、公正で正確な市民の意識動向の結果を得、それを一つの判断材料として世の流れを構築できないものかと、常々思っております。

そんな普段考えていたことをふと思いだしたことから、世論調査の実態を含めて少し調べてみました。

2021年9月26日にJ CASTトレンドという媒体に「世論調査回答率低下で信頼性は かつては80%超が、今や40%台に落ち込みも」という記事があり、先ずはこの記事からポイントを拾って紹介すると

1) 近年、世論調査の回答率が落ちてきているという問題が起こっているという。
 日本の世論調査の歴史は長く、かつては80%を超す回答率で、信頼度も高かったと言われている。例えば内閣府の行う「国民生活に関する世論調査」の回答率は1984年までは80%以上。それが1995年には75%を割り、2004年には70%程度に、そして今では50%台という。
 同様に2021年8月29日公表の日経とテレビ東京の世論調査(内閣支持率やコロナ対策等)の回答率は46.6%(乱数方式採用の携帯含めての電話による調査)で50%を下回っている。
 菅首相の続投の是非を問うた朝日新聞の世論調査では固定電話の回答率が51%(1095世帯にかけて有効回答556人)、携帯の回答率は43%(1964人にかけて有効回答839人)。固定と携帯を合計すると回答率45.6%となる。

2) 世論調査の方法論の問題
 かつては、調査員による戸別訪問だったのが、個人情報の保護意識の高まりがあり、2006年の法改正により住民基本台帳の閲覧をもとにした調査が出来なくなり、代わりに登場したのが固定電話による調査、そして携帯やスマホといった時代に移り固定電話が縮小するという時代にあわせた世論調査へと変遷している背景がある。
 しかしこの時代に合わせたが為の結果、世論調査に課題が突きつけられている状況がある。
 一つは、世論調査の意義や重要性を調査対象者に伝えることが、かつての戸別訪問方式では出来ていたのに対して、携帯やスマホを含めての電話方式では意義や重要性を伝えることの困難さがそもそもあるという。
 踏み込んで言えば、世論調査電話がイタズラ電話や勧誘電話と区別できないという事実が一方にあり、そして通常人は未登録番号や知らない番号ましてや非通知の電話には「答えない」というケースが既に一定数存在しており、それが傾向として増加していく可能性があるというのである。
 現在の電話は、相手先が登録済の人からの電話か、あるいは見知らぬ非通知の電話か、が電話に出る前に判るまでになっており、敢えて非通知には対応しないのが常識化しているのが現在であろう。そしてオレオレ詐欺を筆頭に電話を手段にした詐欺師たちが手を変え品を変えて良からぬことに血道を挙げているという世の中の背景がある。
 従って、通知電話であろうが無かろうが見覚え聞き覚えの無い電話に対して、人は「見知らぬ電話には対応しない」が一般的になって来ている世相と思う。
 よって、見知らぬ電話に出る・出ないという事が調査結果に跳ね返ってしまう可能性を秘めた、現在主流の無作為抽出の電話世論調査には、とんでもない欠陥があると言える。そして、それが放置されたまま世の中でまかり通っているのが今の状況となります。
 またインターネット上で世論調査と類似の調査があるが、ここではネットの特定サイトを見ている人に偏った解答になりがちという欠点が存在している。

3) かかる状況のもとで、現在の世論調査を手掛けている専門家らがどう状況を捉えているかを見ると、
 日経リサーチの世論調査部長の佐藤寧さんは、回答率を高めるために、例えば1問だけでも良いとして、他の設問を無回答としてしまうと無回答が不自然に多い偏った調査になり、また回答が期待できる年齢層を狙っての調査を行うと回答率は上がるもののある特定の年齢層に偏った調査結果になるとして、「回答率が高いことはイコール品質が高い望ましい方向ではないという点に注意する必要がある」と指摘している。
 その上で、原則として「調査の趣旨を丁寧に説明して調査対象者の理解の上での世論調査活動」の重要性を指摘している。「この努力を怠ると、現状の方式の無作為抽出の電話方式では突然の電話にも対応するという人柄がよいというか警戒心の薄い人の集団からの世論調査結果を追い求め、拾い集めるという恐れがある」としている。佐藤さんは「自動音声応答通話(オートコール)方式の調査は世論調査ではない」とさえ言いきっている。

総括としてJ CASTは「回答率が低くとも、きちんと対象者が選定されていたら、精度の高い調査は可能ということなのかもしれない。デジタル時代になっても、世論調査は『人力』に頼る部分が大きいようだ。」と結論付けている。

ここで今回の東京新聞の世論調査の方法論を見ると、「調査は9月11~13日、城南信金が東京都と神奈川の本支店を通じて実施。取引先の企業892社から回答を得て東京新聞が分析した」となっている。電話での調査ではないと思われ、この点は評価できそうだが、もう一つの問題点の回答率の高さに関しては判断する情報がないのが気にかかる。

市民の権利としての世論調査の方法論は、やはりかつての対面方式が望ましいと思う。機械音声のオートコールは問題外だが、携帯や固定電話を使用する人力による現状の調査様式は指摘される根本的な欠点があるものだということが明らかになった今、重要な市民の権利である市民の意識の大勢を公正で正確に掴むことが出来ていない現状は放置していてはいけない課題を残しているといえる。

世論調査の形式・様式上の瑕疵の存在を指摘したが、別の課題の存在も指摘してみたい。それは物語(narrative)に絡む問題である。

何事も常に、人・もの・金を支配する権力者や彼ら所属の組織が、彼らにとって都合のよい物語(narrative)をこしらえることから世の流れは始まると言える。

そして、現代の人・もの・金を支配している人なり組織は、技術革新競争至上主義にいち早く気付いた主体者(権力者・強国)であり、彼らは概ね都市部に生息し、農・漁村地域や森林・山岳地域という周縁部を切り離して活動しているのが特徴といえる。

この構図により支配者vs.被支配者、グローバルノース(グローバルウェストという人もいる)vs.グローバルサウスという対立構造が国内的にも、また国際間にも生じている由縁である。

この構図で具合の悪いのは、都合のよい物語(narrative)をこしらえることが出来たのが、都市部に生息する権力者であり強国だけであったという歴史の存在であるといえる。

彼ら主体者らが作った都合のよい物語には、周縁部に追いやられ、そして無視されてきていた人々のことは先ずは語られることはなかった。この周縁部にはグローバルサウスの国々が入っており、そしてグローバルノースに含まれているものの、やはり周縁部の地域が無視され続けていることは限界集落のことを持ちだすまでもなく自明のことであろう。

しかし自明ではあったとしても、実態としては主体者らが作る都合のよい物語(narrative)には参加出来て来なかったのである。ここに構造的な課題・宿題が存在して現在に続いているのである。

しかし、この根本的問題の改革に最近ようやく世界的には目が向けられ始めたと思われる兆しが出てきている。

BRICSが打ち出した5カ国から来年には11カ国へと拡大であり、G20インド会議にアフリカ連合の参加をModi首相が主導したことであり、そしてケニアのRuto大統領が主導し先頃開催のナイロビでのアフリカ気候変動会合の結果である。

今まで声が届かなかった、いや先進諸国があえて聞こうとして来なかった、主にグローバルサウスの国々の声を聞こうとするBRICSの動き、Modi首相の試み、そしてアフリカからアフリカの総意としての声を発信しようとする試みであるRuto大統領の試みは、グローバルサウスが世界に向けて壮大な物語(narrative)を提示して世の中・世界の今後の行方に正当であり真っ当なインパクトを与えようとする大きな動きと見ることが出来る。

Modi首相の語る今後の物語。Ruto大統領が代表するアフリカからの物語。ナイロビでのこのアフリカの発する物語は11月末のDubaiCOP28に向けたアフリカの意見集約であると既に表明されている。COP28の動向への期待が膨らむところである。

この様な今まで権力と無縁であった人々や組織の声を聞く耳を権力者らが持つこと、そして権力と無縁の人々や組織が声を発することの権利を真っ当に主張して、正当な主張を世に提示していけるシステムを作ること、そのシステムを活用して権力と無縁の立場の人々が物語(narrative)を作って提示していくという世の中の流れを作っていくことが、権力者や権力者に忖度する識者らからのみの物語を基にした現在の世論調査の問題を、多方面からの物語の競い合いを基盤とする真っ当な世論調査にしていく上で必要な作業であり、今現在この宿題が残っていると考えております。

最後に東京新聞の世論調査活動に一つ期待を込めて注文するとすれば、全国にある各地方紙と共同して、かつての戸別訪問形式の世論調査制度の構築をお願いできないか、である。手足となって動いてくれることを期待したい組織は、例えば全国の大学の社会学関係の先生であり高校の先生も協力が期待できるのではと思っている。

敢えて物語(narrative)という言い回しをふんだんに使っていますが、これはnarrativeというキーワードを含んだ文を用いてネット検索すると結構面白い情報に辿りつけることを体験しているからです。キーワードという言葉にこだわることも調べる上で大切なことと最近考えております。ご参考までに。

「護憲+BBS」「 新聞記事などの紹介」より
yo-chan

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