今できることを丁寧に

　私が勤めているところは日本中にチェーン店がある誰でも名前を知っているようなお店。販売の仕事は以前にも少しが経験があるが、言葉遣いやら立ち居振る舞いやらあれこれ細かく取り決められていて、今まで勤めた中で一番厳しい。いい年した大人がマニュアル通りきちっとこなすのは、どうしてなかなかしんどい作業でもある。 　

　先日売り場の先輩から私のお釣りの渡し方が乱暴だという指摘を受けた。正直寝耳に水だった。元来そそっかしいほうなので、電話の応対がしどろもどろだったり、あわててレジ操作の手順を間違えてしまったり、言葉遣いを教えられた通りに言ってなかったりということは自分でも自覚しているので、言われても素直に受け止められる。 　

　ところがお金や商品をやり取りするといった基本的行為は自分ではちゃんと丁寧に出来ていると思っていたので、やや心外だった。よくよく自分の行動を省みてみると、カウンターにいる時の私の立ち位置が遠いことに気がついた。そのせいでお釣りの小銭が宙を舞い、結果的に渡し方が乱暴になっていた。自分自身が物怖じしていたんだ。そこでしっかり前に立ち、お客様の手の上まで確実にお金を渡すよう務めた。 　

　以前の私だったら自分で思ってもいなかった欠点を指摘されたら、
「私ちゃんとやってるのに。この人私にいちゃもんつけてるのかしら」
なんて思ってしまったかもしれない。アロマの実習で先生から
「ぴぐもんさんは雑すぎます。もっと丁寧にやってください！」
と再三言われていたから比較的素直に受け入れられたんだと思う。 　

　欠点を指摘されることは確かに面白いことではない。でも考えようによっては言われているうちが花。指摘されなくなったら自分で気がつくまで欠点は直らない。逆に注意してくれることに感謝しなければ・・・ 　パレ原宿の学院長がいつもこう言っている。

　　　「今、出来ることを丁寧にやりましょう」

　　　

   

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